<憑依>公衆電話①~出られない!~

何気ない気持ちで電話ボックスに駆け込んだ女子高生。

しかし、彼女は知らなかった。
それが、自分の人生を大きく変えてしまうことに…

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「あ~~~!」
女子高生・城田 穂乃香(しろた ほのか)は
スマホを見つめながら叫んだ。

充電を忘れてたー。

”放課後、買い物頼みたいから電話してね”と
母親に言われていたことを思い出し、
電話しようとしたのだがー、
スマホの電池が切れてしまっていて、
電話どころではなかった。

「も~~~!」
穂乃香は拗ねた様子で呟く。

電話せずに帰れば、母親は
不貞腐れるだろうし、
適当に食材を買っていけば、
なんかネチネチ言われるのは目に見えている。

だからと言って、一度帰ってから買い物に行くのも
面倒くさいし、「スマホの充電を忘れてた」なんて
知られたら、また母親がネチネチ言う。

「--う~ん…どうしよう」
穂乃香が呟く。

そんな穂乃香の目に、
あるものが目に入った。

駅の近くにある電話ボックスー。

今ではほとんど見かけることも無くなった
公衆電話だ。

「--あ、ちょうどいいや!」
穂乃香はそう言いながら、嬉しそうに公衆電話の方に向かう。

ガチャ。

電話ボックスの中に入り、
古びた電話機を見つめて穂乃香は笑う。

「なんか汚い~!」

使い古された公衆電話は薄汚れていた。

「こんなの使う人、いまどきいるのかな~?」

自分が今、その公衆電話にお世話になろうとしていることも忘れて、
穂乃香は身勝手な台詞を呟く。

「-え~っと、確か使い方は…?」

穂乃香は説明を読みながら、10円玉を用意する。
テレホンカードを持っていれば楽だったが
そんなものは持っていないから、
現金で支払いをするしかない。

「な~んか、面倒くさいなぁ」
公衆電話の悪口をブツブツと呟きながら
穂乃香は、公衆電話にお金を入れて、
慣れない使い方に戸惑いながら、
自宅の電話番号を入力して、
受話器を手にした。

「あ~~!電話かけるのにも一苦労」

長い髪をなびかせながら
そう呟き、穂乃香は電話が繋がるのを待った。

呼び出し音が鳴るー。

母親は、家にいるだろうから、すぐに
出るだろうー

ガチャ

母親が出た。

”------”

「--あ、もしもし、お母さん?
 学校終わったけど、何買ってく?」

穂乃香がそう言う。

”------”

しかし、相手から何の返事もない。

「あれ?お母さん?聞こえてる?」

”-----”

「ど、どうかした?」
穂乃香はそう呼びかける。

しかし、受話器からは、
ノイズのような音しか聞こえてこない。

「まさか、壊れてるの?」

”-----”

「も~!バカ!役立たず!」

公衆電話の本体を叩いたその時だった。

”おい…小娘…”

「---!?」

受話器の向こうから、不気味な声が聞こえた。

”おい…さっきから、、散々馬鹿にしやがって”

「---え…あ、、あの…
 あ、ごめんなさい…!かけ間違えました!」

入力する番号を間違えた!
そう思った穂乃香は慌てて受話器を置く。

「も~~~!役立たず!」
そう叫んで、電話ボックスから出ようとした穂乃香はーー
”電話ボックスの扉が開かない”ことに気付いた。

「え?ちょ???扉まで壊れてるの?
 も~~~!最悪!」

扉をガンガンと乱暴に開けようとする穂乃香。

しかし、電話ボックスの扉は開かない。

「も~~~~~!」
大声で叫んだ
その時だったー

”鳴るはずのない公衆電話”が鳴ったー。

「え??公衆電話に電話がかかってくることなんてあるの?」
穂乃香は戸惑いながらも電話に出た。

すると

”お前はもう出られないー”

そう、電話の相手は言った

「はぁ…?な、、何なの?」
穂乃香がうんざりして言う。

”---お前は俺をバカにした。”

また、さっきと同じようなことを言う。

「--な、、何よ!
 あんた誰なの?」

イライラしていた穂乃香がそう言うと、
相手は笑った。

”人間ってのは勝手だよな。昔は
 俺のことを散々利用していたのに、
 最近はスマホだの何だので、まるで俺を
 ゴミのように見つめるヤツばかり。
 お前もそうだ”

「な、、何を言ってるの…?」

”俺たち公衆電話は、どんどん撤去されている。
 俺たちへの感謝の気持ちも忘れて
 人間ってのは身勝手だよなぁ”

「--は?ど、、どういうこと?」

穂乃香は戸惑う。

相手の意図が分からない。

「--あ、あんた誰なの?」

穂乃香はもう一度尋ねる。
すると、電話相手は言った。

”お前が今持ってる、公衆電話だよ”

「--!?」
穂乃香は表情を歪める。

そして、笑った。

「ごめん、そういうイタズラに付き合ってる時間はないの」

穂乃香はうんざりした様子で受話器を置いて、
外に出ようとしたー

しかしー

「--!?」

穂乃香は、自分の身体が動かないことに気付く。

”無駄だ”

電話相手は言う。

「え…ち、、ちょっと!?身体が動かない…?
 ど、どういうこと!?」

穂乃香が叫ぶ。

”--お前の身体は俺が貰う”

「--え…?な、、何を言ってるの!?
 ふざけないで!」

穂乃香の表情に焦りが浮かぶ。

”お前の身体を借りて、お前たち人間に復讐してやる”

そう声が聞こえると、
穂乃香は「たすけて!」と叫ぼうとしたが、
既に声も出せなくなっていた。

”ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ”

謎の電子音が聞こえてくる。

「あ…あぁ…ひ…な、、、、なに…?」
やっとの思いで声を振り絞る。

”ごごごごごごごごごご”

変な音が聞こえる。
耳を通じて何かが入ってくる気がするー

「あ…あ…やめ…」

受話器を持ちながら穂乃香は
身体をピクピクと震わせる。

だがー
通行人たちは、そんな穂乃香の異常に
気付くことはなかった。

「あ…あ…あ…」
穂乃香の痙攣が落ち着いていく。

そしてー

「---ふふふ…」
公衆電話の受話器を置くと、
穂乃香は公衆電話を優しく撫ではじめた。

「---公衆電話の怒り…
 思い知らせてやる」

穂乃香はクスクスと笑うと、
そのまま電話ボックスから外に出るー

「----す~~~~!」
空気を大きく吸うと、穂乃香は笑う。

「--これが人間の身体か~!」
ニヤニヤしながら、穂乃香はぎこちない様子で
歩きはじめた。

まだ、人間の身体に慣れていないー。

怪しい足取りで、裏路地に入ると、
穂乃香は、可愛いピンク色のスマホを取り出した。

そして、それを地面に叩きつけた。

音を立てて画面にヒビが入るスマホ。

「--」
穂乃香は鬼のような形相でそれを見つめた。

「うああああああああああああ!」
穂乃香は怒鳴り声を上げて
スマホを足で何度も何度も踏みつけていく。

「くくくく…ひひひひひひひひ!壊れろ!壊れろ!!!」
公衆電話の積年の恨みが、
穂乃香を突き動かした。

狂った笑い声をあげながら
穂乃香はスマホを何度も何度も踏みつぶす

「くくく…あはははははははははは!」
髪の毛を振り乱しながらスマホを粉々にした穂乃香は
満足そうに微笑んだ。

「---は~~~~!」
穂乃香は両手を広げて嬉しそうに笑っている。

「---んっ…この人間の家は、どこかな…?」
穂乃香はそう呟くと、
脳から記憶を引き出し始めた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガチャ。

穂乃香の記憶を頼りに、自分の家に戻った穂乃香。

「おかえり~!ねぇ、電話してって言わなかったけ?」
母親がスマホをいじりながら言う。

「---」
穂乃香はスマホを睨みつけた。

これこそが、自分たちにとっての敵。

「--チッ」
穂乃香は舌打ちすると、そのまま母親を無視して2階へと上がる。

ガチャ。

部屋に入ると、そこに妹の萌未(もえみ)が居た。

「あ、おかえりお姉ちゃん」
萌未は、椅子に座りながらスマホをいじっている。

「--チッ どいつもこいつも」
穂乃香が呟く。

「え?」
よく聞こえなかった萌美は首をかしげた。

「--ねぇ、萌未…」
穂乃香の口調を真似て、萌未に声をかける穂乃香

「ん?なぁに?お姉ちゃん?」
三つ編みがよく似合う妹が微笑む。

「--公衆電話ってどう思う?」
穂乃香が言うと、
萌未は笑った。

「へ?いきなりどうしたの?お姉ちゃん?
 公衆電話って、あの古臭いやつだよね」

萌未の言葉に、穂乃香は不機嫌そうな表情を浮かべる。

「--いまどき、あんなの使う人、ほとんどいないよ~!
 テレホンカードとか貰ってもいらないし、
 そもそも公衆電話ってなんか薄汚れてて汚くない?」

「汚くて悪かったな!」
穂乃香が大声で叫んで、萌未の胸倉をつかんだ。

「ひっ!?お、、お姉ちゃん!?」
萌未が驚いて声をあげる。

「テメェ!もう1回言ってみろ!」
穂乃香が大声で怒鳴る。

「---ちょ、、ちょっと待って…!
 ど、、どうしたの?

 お姉ちゃんだって、この前、
 裏にある電話ボックス見て
 笑ってたじゃない!」

萌未が言うと、
穂乃香は「なんだとぉ」と呟く。

「--公衆電話をバカにするな!」
穂乃香が目に涙を浮かべながら言うと、
萌未をグーで殴りつけた。

「きゃあっ…!な、、何するのよ!」
萌未が叫ぶ。

机に置いてあった萌未のスマホを見つけると、
穂乃香はそれを殴り始めた。

「-許せない!!許せない!」
穂乃香が怒り心頭な様子で、
萌未のスマホを殴りつける。

「--はぁ…!くそが…くそが…くそがあああ!」
穂乃香が、出したこともないような大声で叫ぶ。

萌未は恐怖で声を出すこともできなかった。

綺麗な手に痣が出来るまで、
力強くスマホを殴りつけると、
穂乃香はボロボロになったスマホを窓の外に放り投げた。

「ちょ…お姉ちゃん!何するのよ!」
萌未が叫ぶ。

「--ーー公衆電話に謝れ」
穂乃香が萌未を見て言う。

「--え…?」
萌未の腕をつかむと、穂乃香は
そのまま萌未を外に連れ出した。

「ちょっと!お姉ちゃん!どこに行くのよ!」

「--いいから来い!」

高校の制服姿のまま、穂乃香は
妹を無理やり引っ張って行く。

そして、
自宅の裏通りにある公衆電話前にやってきた。

「--この前、この女とお前が笑ったって言う
 公衆電話はこれか?」

穂乃香が言うと、萌未が
「な、、なにいってるの?」と呟く。

「--公衆電話に謝れ!」
萌未に謝るように叫ぶ穂乃香。

「お…お姉ちゃん!言ってることの意味が分からないよ!
 急に怒りだして、
 わたしのスマホ壊して!
 ふざけないでよ!」

パチン!

穂乃香が萌未をビンタした。

「いいから、謝れ!」
萌未を無理やり土下座状態にさせると、
穂乃香は叫んだ

「公衆電話に、謝れ!!!」

穂乃香の表情は正気を失っているように見えた。

「お…おねえ…ちゃん…?」
萌未は恐怖を感じて、公衆電話に向かって
「ごめんなさい…」と呟いた。

すると、穂乃香が言う。

「この女も公衆電話を笑ったんだよな」

そう言うと、穂乃香は自分も土下座を始めて、
道路に額を打ちつけながら言った。

「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
穂乃香が何度も何度も頭を打ちつけながら
公衆電話に謝る。

「お、、、お姉ちゃん!ちょっと…おかしいよ!」
妹の萌未が止めに入る。

「どけ!」
穂乃香が萌未を突き飛ばすと、
萌未は電話ボックスの中に入って
公衆電話を舐めはじめた。

「んんふ~…
 ほら、お前も掃除するんだよ!」

穂乃香が公衆電話を舐めながら叫ぶ。

「---お…お姉ちゃん…どうかしてるっ!」
萌未はそう叫ぶと、
そのまま泣きながら走り去ってしまった。

「--ーーくそ女!」
穂乃香はそう吐き捨てると、
そのまま電話を丁寧に舐めはじめた。

イヤらしく舌を出して
じっくり丁寧に公衆電話を舐める穂乃香ー。

通行人が驚いて穂乃香の方を見るが、
誰も相手にしなかった。

しばらくして、公衆電話を舐め終えると、
穂乃香は満足そうに微笑んで、
公衆電話を撫ではじめた。

「--頑張って」
優しく微笑む穂乃香。

そして、電話ボックスから出た穂乃香は、
そのまま家に帰ることなく、歩き出したー。

仲間たちに会うためにー

②へ続く

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公衆電話の怨念に憑依された穂乃香ちゃんは
どうなってしまうのでしょうか…

続きは明日デス!

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憑依<公衆電話>

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