何気ない気持ちで電話ボックスに駆け込んだ女子高生。
しかし、彼女は知らなかった。
それが、自分の人生を大きく変えてしまうことに…
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「あ~~~!」
女子高生・城田 穂乃香(しろた ほのか)は
スマホを見つめながら叫んだ。
充電を忘れてたー。
”放課後、買い物頼みたいから電話してね”と
母親に言われていたことを思い出し、
電話しようとしたのだがー、
スマホの電池が切れてしまっていて、
電話どころではなかった。
「も~~~!」
穂乃香は拗ねた様子で呟く。
電話せずに帰れば、母親は
不貞腐れるだろうし、
適当に食材を買っていけば、
なんかネチネチ言われるのは目に見えている。
だからと言って、一度帰ってから買い物に行くのも
面倒くさいし、「スマホの充電を忘れてた」なんて
知られたら、また母親がネチネチ言う。
「--う~ん…どうしよう」
穂乃香が呟く。
そんな穂乃香の目に、
あるものが目に入った。
駅の近くにある電話ボックスー。
今ではほとんど見かけることも無くなった
公衆電話だ。
「--あ、ちょうどいいや!」
穂乃香はそう言いながら、嬉しそうに公衆電話の方に向かう。
ガチャ。
電話ボックスの中に入り、
古びた電話機を見つめて穂乃香は笑う。
「なんか汚い~!」
使い古された公衆電話は薄汚れていた。
「こんなの使う人、いまどきいるのかな~?」
自分が今、その公衆電話にお世話になろうとしていることも忘れて、
穂乃香は身勝手な台詞を呟く。
「-え~っと、確か使い方は…?」
穂乃香は説明を読みながら、10円玉を用意する。
テレホンカードを持っていれば楽だったが
そんなものは持っていないから、
現金で支払いをするしかない。
「な~んか、面倒くさいなぁ」
公衆電話の悪口をブツブツと呟きながら
穂乃香は、公衆電話にお金を入れて、
慣れない使い方に戸惑いながら、
自宅の電話番号を入力して、
受話器を手にした。
「あ~~!電話かけるのにも一苦労」
長い髪をなびかせながら
そう呟き、穂乃香は電話が繋がるのを待った。
呼び出し音が鳴るー。
母親は、家にいるだろうから、すぐに
出るだろうー
ガチャ
母親が出た。
”------”
「--あ、もしもし、お母さん?
学校終わったけど、何買ってく?」
穂乃香がそう言う。
”------”
しかし、相手から何の返事もない。
「あれ?お母さん?聞こえてる?」
”-----”
「ど、どうかした?」
穂乃香はそう呼びかける。
しかし、受話器からは、
ノイズのような音しか聞こえてこない。
「まさか、壊れてるの?」
”-----”
「も~!バカ!役立たず!」
公衆電話の本体を叩いたその時だった。
”おい…小娘…”
「---!?」
受話器の向こうから、不気味な声が聞こえた。
”おい…さっきから、、散々馬鹿にしやがって”
「---え…あ、、あの…
あ、ごめんなさい…!かけ間違えました!」
入力する番号を間違えた!
そう思った穂乃香は慌てて受話器を置く。
「も~~~!役立たず!」
そう叫んで、電話ボックスから出ようとした穂乃香はーー
”電話ボックスの扉が開かない”ことに気付いた。
「え?ちょ???扉まで壊れてるの?
も~~~!最悪!」
扉をガンガンと乱暴に開けようとする穂乃香。
しかし、電話ボックスの扉は開かない。
「も~~~~~!」
大声で叫んだ
その時だったー
”鳴るはずのない公衆電話”が鳴ったー。
「え??公衆電話に電話がかかってくることなんてあるの?」
穂乃香は戸惑いながらも電話に出た。
すると
”お前はもう出られないー”
そう、電話の相手は言った
「はぁ…?な、、何なの?」
穂乃香がうんざりして言う。
”---お前は俺をバカにした。”
また、さっきと同じようなことを言う。
「--な、、何よ!
あんた誰なの?」
イライラしていた穂乃香がそう言うと、
相手は笑った。
”人間ってのは勝手だよな。昔は
俺のことを散々利用していたのに、
最近はスマホだの何だので、まるで俺を
ゴミのように見つめるヤツばかり。
お前もそうだ”
「な、、何を言ってるの…?」
”俺たち公衆電話は、どんどん撤去されている。
俺たちへの感謝の気持ちも忘れて
人間ってのは身勝手だよなぁ”
「--は?ど、、どういうこと?」
穂乃香は戸惑う。
相手の意図が分からない。
「--あ、あんた誰なの?」
穂乃香はもう一度尋ねる。
すると、電話相手は言った。
”お前が今持ってる、公衆電話だよ”
「--!?」
穂乃香は表情を歪める。
そして、笑った。
「ごめん、そういうイタズラに付き合ってる時間はないの」
穂乃香はうんざりした様子で受話器を置いて、
外に出ようとしたー
しかしー
「--!?」
穂乃香は、自分の身体が動かないことに気付く。
”無駄だ”
電話相手は言う。
「え…ち、、ちょっと!?身体が動かない…?
ど、どういうこと!?」
穂乃香が叫ぶ。
”--お前の身体は俺が貰う”
「--え…?な、、何を言ってるの!?
ふざけないで!」
穂乃香の表情に焦りが浮かぶ。
”お前の身体を借りて、お前たち人間に復讐してやる”
そう声が聞こえると、
穂乃香は「たすけて!」と叫ぼうとしたが、
既に声も出せなくなっていた。
”ぴぴぴぴぴぴぴぴぴ”
謎の電子音が聞こえてくる。
「あ…あぁ…ひ…な、、、、なに…?」
やっとの思いで声を振り絞る。
”ごごごごごごごごごご”
変な音が聞こえる。
耳を通じて何かが入ってくる気がするー
「あ…あ…やめ…」
受話器を持ちながら穂乃香は
身体をピクピクと震わせる。
だがー
通行人たちは、そんな穂乃香の異常に
気付くことはなかった。
「あ…あ…あ…」
穂乃香の痙攣が落ち着いていく。
そしてー
「---ふふふ…」
公衆電話の受話器を置くと、
穂乃香は公衆電話を優しく撫ではじめた。
「---公衆電話の怒り…
思い知らせてやる」
穂乃香はクスクスと笑うと、
そのまま電話ボックスから外に出るー
「----す~~~~!」
空気を大きく吸うと、穂乃香は笑う。
「--これが人間の身体か~!」
ニヤニヤしながら、穂乃香はぎこちない様子で
歩きはじめた。
まだ、人間の身体に慣れていないー。
怪しい足取りで、裏路地に入ると、
穂乃香は、可愛いピンク色のスマホを取り出した。
そして、それを地面に叩きつけた。
音を立てて画面にヒビが入るスマホ。
「--」
穂乃香は鬼のような形相でそれを見つめた。
「うああああああああああああ!」
穂乃香は怒鳴り声を上げて
スマホを足で何度も何度も踏みつけていく。
「くくくく…ひひひひひひひひ!壊れろ!壊れろ!!!」
公衆電話の積年の恨みが、
穂乃香を突き動かした。
狂った笑い声をあげながら
穂乃香はスマホを何度も何度も踏みつぶす
「くくく…あはははははははははは!」
髪の毛を振り乱しながらスマホを粉々にした穂乃香は
満足そうに微笑んだ。
「---は~~~~!」
穂乃香は両手を広げて嬉しそうに笑っている。
「---んっ…この人間の家は、どこかな…?」
穂乃香はそう呟くと、
脳から記憶を引き出し始めた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ガチャ。
穂乃香の記憶を頼りに、自分の家に戻った穂乃香。
「おかえり~!ねぇ、電話してって言わなかったけ?」
母親がスマホをいじりながら言う。
「---」
穂乃香はスマホを睨みつけた。
これこそが、自分たちにとっての敵。
「--チッ」
穂乃香は舌打ちすると、そのまま母親を無視して2階へと上がる。
ガチャ。
部屋に入ると、そこに妹の萌未(もえみ)が居た。
「あ、おかえりお姉ちゃん」
萌未は、椅子に座りながらスマホをいじっている。
「--チッ どいつもこいつも」
穂乃香が呟く。
「え?」
よく聞こえなかった萌美は首をかしげた。
「--ねぇ、萌未…」
穂乃香の口調を真似て、萌未に声をかける穂乃香
「ん?なぁに?お姉ちゃん?」
三つ編みがよく似合う妹が微笑む。
「--公衆電話ってどう思う?」
穂乃香が言うと、
萌未は笑った。
「へ?いきなりどうしたの?お姉ちゃん?
公衆電話って、あの古臭いやつだよね」
萌未の言葉に、穂乃香は不機嫌そうな表情を浮かべる。
「--いまどき、あんなの使う人、ほとんどいないよ~!
テレホンカードとか貰ってもいらないし、
そもそも公衆電話ってなんか薄汚れてて汚くない?」
「汚くて悪かったな!」
穂乃香が大声で叫んで、萌未の胸倉をつかんだ。
「ひっ!?お、、お姉ちゃん!?」
萌未が驚いて声をあげる。
「テメェ!もう1回言ってみろ!」
穂乃香が大声で怒鳴る。
「---ちょ、、ちょっと待って…!
ど、、どうしたの?
お姉ちゃんだって、この前、
裏にある電話ボックス見て
笑ってたじゃない!」
萌未が言うと、
穂乃香は「なんだとぉ」と呟く。
「--公衆電話をバカにするな!」
穂乃香が目に涙を浮かべながら言うと、
萌未をグーで殴りつけた。
「きゃあっ…!な、、何するのよ!」
萌未が叫ぶ。
机に置いてあった萌未のスマホを見つけると、
穂乃香はそれを殴り始めた。
「-許せない!!許せない!」
穂乃香が怒り心頭な様子で、
萌未のスマホを殴りつける。
「--はぁ…!くそが…くそが…くそがあああ!」
穂乃香が、出したこともないような大声で叫ぶ。
萌未は恐怖で声を出すこともできなかった。
綺麗な手に痣が出来るまで、
力強くスマホを殴りつけると、
穂乃香はボロボロになったスマホを窓の外に放り投げた。
「ちょ…お姉ちゃん!何するのよ!」
萌未が叫ぶ。
「--ーー公衆電話に謝れ」
穂乃香が萌未を見て言う。
「--え…?」
萌未の腕をつかむと、穂乃香は
そのまま萌未を外に連れ出した。
「ちょっと!お姉ちゃん!どこに行くのよ!」
「--いいから来い!」
高校の制服姿のまま、穂乃香は
妹を無理やり引っ張って行く。
そして、
自宅の裏通りにある公衆電話前にやってきた。
「--この前、この女とお前が笑ったって言う
公衆電話はこれか?」
穂乃香が言うと、萌未が
「な、、なにいってるの?」と呟く。
「--公衆電話に謝れ!」
萌未に謝るように叫ぶ穂乃香。
「お…お姉ちゃん!言ってることの意味が分からないよ!
急に怒りだして、
わたしのスマホ壊して!
ふざけないでよ!」
パチン!
穂乃香が萌未をビンタした。
「いいから、謝れ!」
萌未を無理やり土下座状態にさせると、
穂乃香は叫んだ
「公衆電話に、謝れ!!!」
穂乃香の表情は正気を失っているように見えた。
「お…おねえ…ちゃん…?」
萌未は恐怖を感じて、公衆電話に向かって
「ごめんなさい…」と呟いた。
すると、穂乃香が言う。
「この女も公衆電話を笑ったんだよな」
そう言うと、穂乃香は自分も土下座を始めて、
道路に額を打ちつけながら言った。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
穂乃香が何度も何度も頭を打ちつけながら
公衆電話に謝る。
「お、、、お姉ちゃん!ちょっと…おかしいよ!」
妹の萌未が止めに入る。
「どけ!」
穂乃香が萌未を突き飛ばすと、
萌未は電話ボックスの中に入って
公衆電話を舐めはじめた。
「んんふ~…
ほら、お前も掃除するんだよ!」
穂乃香が公衆電話を舐めながら叫ぶ。
「---お…お姉ちゃん…どうかしてるっ!」
萌未はそう叫ぶと、
そのまま泣きながら走り去ってしまった。
「--ーーくそ女!」
穂乃香はそう吐き捨てると、
そのまま電話を丁寧に舐めはじめた。
イヤらしく舌を出して
じっくり丁寧に公衆電話を舐める穂乃香ー。
通行人が驚いて穂乃香の方を見るが、
誰も相手にしなかった。
しばらくして、公衆電話を舐め終えると、
穂乃香は満足そうに微笑んで、
公衆電話を撫ではじめた。
「--頑張って」
優しく微笑む穂乃香。
そして、電話ボックスから出た穂乃香は、
そのまま家に帰ることなく、歩き出したー。
仲間たちに会うためにー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
公衆電話の怨念に憑依された穂乃香ちゃんは
どうなってしまうのでしょうか…
続きは明日デス!
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