<憑依>ばれんたいん・デス①~荒ぶる男~

2月14日ー

男は粗ぶっていた。
何故なら今日は、バレンタインデー。

そう、お菓子屋の陰謀の日だー。

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「--おはようございます~」

ポストから郵便物を回収していた男は、
アパートの隣の部屋に住む若い女性から
挨拶をされた。

「あ、どうも」
男は、いつも通り返事をした。

チラッと男は若い女性の持つ、紙袋を見たー

バレンタインデー。

自室に戻る男。

北崎 昭義(きたざき あきよし)は
荒ぶっていた。

”今日はバレンタインデーですね~”

ニュース番組で、チョコを持ったバカどもが
きゃっきゃっしている。

「馬鹿どもが…」
男が、呟いた。

昭義は、バレンタインデーというものが
反吐が出るほど嫌いだった。

小学生時代ー
初めて貰ったチョコの中に
からしが入っていたー

中学時代からは、貰えたチョコは0。
義理チョコもなかった。

いや、別にチョコなんて好きじゃないから、
どうでもいいー

昭義は、とにかく、バレンタインデーを憎んでいたー

42歳独身。
彼は、板チョコをバリバリ食べながら思う。

「俺はチョコなんて嫌いだから別に
 もらえなくたって構わない」

そう言いながら、
ニュースで特集されている
現代女子たちのチョコレート事情、という映像を見て、
昭義は叫んだ。

「---リア充爆発しろ~~~~!」

昭義は食べていた板チョコをテレビに向かって
投げつけると、冷蔵庫の扉を開いたー

冷蔵庫にはぎっしりとあらゆる種類の
チョコが詰め込まれている。

「チョコなんてもらえなくたって、
 自分で買えばいいじゃない~!
 くくく…ははははははははは~!」

昭義は笑いながら
次々と冷蔵庫からチョコを取り出して、
チョコをひとつ、またひとつと平らげていく。

「…お菓子屋の陰謀にはまるガキどもが」
昭義はそう呟いた。

これだけ大量のチョコを買いこんでいる自分こそが
一番お菓子屋の陰謀にはまっているのだが
それを棚に上げて、昭義は満面の笑みを浮かべる。

「さて…」

チョコを食べ終えた昭義は、
引き出しからあるものを取り出した。

”憑依薬”

彼の毎年のバレンタインデーの楽しみー

それはー
バレンタインデーを滅茶苦茶にすることー

「---し…嫉妬ではない!」
男は叫んだ。

「--お、、俺はお菓子屋の陰謀に対して
 孤高な戦いを続けているんだー!」

そう叫ぶと、昭義は憑依薬を一思いに飲み干した。

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国会。

野党が、江川総理大臣を追求していた。

「---どうなんですか!総理!」
野党の叫び声。

江川総理が追求されたことの答弁のために、立ち上がる。

その時、総理が一瞬”うっ”とうめき声を
あげたが、野次馬にかき消されて誰にも
それは聞こえなかった。

総理が答弁を始める。

「え~…今日はバレンタインデーであります」

野党も、与党の議員も!?の表情を浮かべた。

「バレンタインデーは、お菓子屋の陰謀であります」
「チョコの日は、死滅するべきであります」

その総理の発言に、
野党の議員は叫ぶ。

「総理!そんなこときいちゃいませんよ!紫亜乃巣学園への
 不正な…!」

野党の叫び声をかき消すように、総理は叫んだ

「--リア充は爆発するべきであります!」

とー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

総理への憑依を終えた昭義は笑う。

「さ~て!今日は大忙しだな」

昭義は、毎年、バレンタインデーを
滅茶苦茶にしている。

そう、滅茶苦茶に…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある高校ー

「~~おはよ~!」
クラス一の美少女・美空が、笑いながら登校した。

たくさんのチョコを持ってきた美空。
紙袋の中には本命のチョコレート。

昨日、本命の彼のために作ってきたものだ。

美空はチラッと本命の彼の方を見る。

”いつ渡そうかなぁ~”

そんな風に考えていると、
廊下にコツ、コツという音が聞こえてきた。

担任の荘野 眞帆(そうの まほ)先生のヒールの音だ。
まだ20代中盤で、可愛らしい容姿の先生は
男子生徒からも人気があった。

眞帆先生は、
教室に入ってくると、生徒たちを見て微笑んだ。

「みんなおはよう~!」
先生が言う。

生徒たちが挨拶を返すー

「--今日はばれんたいん……!?」

そこまで言うと、眞帆先生が
突然、手を止めた。

「先生…?」
美空が先生の方を見る。

先生が、身体をぷるぷると震わせているー

「--だ、だいじょうぶですか?」
美空や他の生徒が先生のことを心配して声をかけると、
先生はにこっと笑って呟いた

「デスー」

「--え?」

戸惑う生徒たち。

「今日は、ばれんたいん”デス”!」
眞帆先生はそう叫ぶと、生徒たちがシーンと静まり返った。

様子が明らかに変だー

「--(くくく…バレンタインをぶっ壊してやるぜ)」
眞帆先生は、
バレンタインを憎む男・昭義に憑依されてしまった。

眞帆先生は叫んだ。

「--さぁ!クズども!
 チョコを出しなさい!」

「--!?」
生徒たちが驚いて先生の方を見る。

「--早くしろクソガキども!
 チョコをだせっつてんだよ?あ~?」

眞帆先生がイラついた様子で叫ぶ。
昭義には1か所に構っている時間などない。

あらゆる場所のバレンタインを破壊しなくてはならない

「せ…先生?」
美空が困惑しながら聞き返すと、
眞帆先生は、一番前の座席の女子の鞄を
無理やり取り上げて、
逆さまにして、それを振った。

中から、チョコが出てくる。

「~~~出たぁ~!
 お菓子屋の陰謀にはまってる女子~!」

そう言って、手作りの可愛らしいチョコを掴むと
「せ、先生!やめてください!」という女子生徒を無視して
そのチョコの包装を破り、それを踏みつけた。

「きゃああああああ!」
手作りチョコを踏みにじられた女子生徒が泣きだす。

「せ、先生!」
「--何してんだよ!」
「-ーやりすぎじゃね?」

男子生徒たちが言う。

「--うっさいわね!
 男子は私の身体でも見て
 喜んでなさい!」

そう言うと、眞帆先生は、服を乱暴に脱ぎ捨てて
下着を露わにさせた。

「~~ひょ~!」
男子生徒たちが喜んだり、戸惑ったりしている。

男子を黙らせた眞帆先生は、
下着姿のまま、次々と女子のチョコを取り上げて、
それを踏みつぶしたり、食べたり、黒板に投げつけたりして
破壊していくー

「~~チョコなんて、
 メスガキどもの分際で色気づいてんじゃないわよ!」

眞帆先生が大声で叫ぶ。

泣きだす女子生徒や
文句を言いだす女子生徒ー

それを満足げに見つめながら
先生は、とある女子生徒から奪った
チョコレートを見つめる。

そこには、ラブレターが入っていた。

本命チョコだろうかー。

「~~くくく!
 これからこの手紙を音読しま~す!」

眞帆先生は嬉しそうに、
ラブレターの音読を始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼ー。

仲良しの大学生カップルが街を歩いていた。

男の方は小太りでお世辞にもイケメンではない。
女の方は、美人と称するにふさわしい。

「---」

中に霊体の状態で浮かんでいた昭義は
会話から2人がカップルであると確信する。

「ふん 女の紙袋に入っているのはチョコか」

そう言うと、昭義はその女に憑依する。

「あ、そうだ、今日はばれ…あひぃっ!?」
嬉しそうに話していた女子大生が声をあげる。

「---?ど、どうしたの?」
男の方が不安そうに彼女を見る。

すると…

「あ、いいチョコもってんじゃ~ん!」
紙袋から手作りのチョコを取り出すと、
彼女は突然、近くを歩いていたさえないおじさんに
「おじさん!大好きですぅ~♡」と叫びながら
本命チョコを手渡した。

「え?俺のこと好きなの?」
はげたおじさんが笑う。

「じゃあ~ホテルに行こっか」

「はい♪」

昭義に憑依された女子大生は嬉しそうに
ハゲたおじさんにしがみつきながら
ホテルへと向かってしまう。

「え??え??」
小太りの彼氏は一人取り残されて、
困惑することしかできなかった。

(ホテルに到着~さて、俺はこれで失礼するよ)

ホテルに到着したタイミングで、昭義は
女子大生から抜け出した。

どうなったって知らない。

バレンタインデーを壊すためなら、
俺は何だってするぞ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くへへへへへへへっ!あひひひひひひひひっ!」

とある会社内。

職場の花と、男性社員たちが好意を寄せている
若い女性社員が、突然服を脱ぎ捨てて、
胸に自分が持ってきたチョコを挟んで
潰し始めた。

「な、、何をやってるんだ…!」
上司が言う。

胸を曝け出した女性社員は笑うー

「--なにって~?
 わたしが作ったチョコを~
 胸で砕いてるんですぅ~!うふ♡」

大人しい彼女の豹変に
男子社員たちは只々驚くことしかできなかった…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”彼氏にあげるチョコ、楽しみ~”

ツイッターでそうツイートしている女子高生が居た。

昭義は、迷わず彼女に憑依した。

そしてー
チョコを踏みつける動画を投稿した。

”バレンタインデーなんて無くなっちゃえ!”とー

笑いながらチョコを
踏みつけるツイートをした彼女の
アカウントは、炎上したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ワイワイとチョコを交換している
小学3年生のグループがいたー。

そのうちの一人・リボンをつけた少女に
昭義は憑依するー

「--くっだらねぇ!」

突然そう叫んだ少女に、
周囲の友達は驚く。

「--おら!お前ら全員チョコを俺に
 よこせ!」

可愛らしいリボンの似合う少女は、
笑いながら、チョコの提出を要求した。

「え…な、なんで…?」
周りの友達は戸惑う。

「--うるせ~!出せ!」
男口調で怒鳴りつける少女。

驚いて、友達がチョコをその少女に渡す。

「~~くだらねぇ くだらねぇ!」
そう叫ぶと、
リボンの少女は、イライラした様子で
全員分のチョコを口に含み、
そして、汚らしく吐き出した。

「--あははははははは!あはははははは!」
泣きじゃくる周囲の友達を無視して、
リボン少女は叫ぶ

「バレンタインデーなんて、壊れてしまえ~!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ふぅ…

昭義は、リボン少女から抜け出して、
上空をさまよっていた。

15時―。

「--まだまだ、バレンタインデーはこれからだぜ」
昭義は笑いながら、
次のターゲットを探して移動を始めるのだった…

②へ続く

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コメント

2話モノなので、バレンタインデーは明日ですが
今日からバレンタインモノをスタートさせました~!

ちなみに、私はバレンタインデーを
憎んだりしてません(笑
憑依される側になってしまいそうデス汗

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    「ばれんたいん”デス”!」で一瞬無名さんが憑依したのかと…w
    好き放題やってますね~。次回どんな結末が待ち構えているのか、楽しみです♪
    私も昔からチョコにはあまり縁がないですが、バレンタインは憎んでいません。今年はくよちゃんからチョコを貰いましたので~

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 「ばれんたいん”デス”!」で一瞬無名さんが憑依したのかと…w
    > 好き放題やってますね~。次回どんな結末が待ち構えているのか、楽しみです♪
    > 私も昔からチョコにはあまり縁がないですが、バレンタインは憎んでいません。今年はくよちゃんからチョコを貰いましたので~

    ありがとうございます~!
    衝撃の結末が待ってますよ~☆

    くよちゃんからのチョコ~
    ツイートみていて微笑ましかったデス☆