<憑依>怨②~憎悪~

夜の学校からの脱出を目指すいじめっ子女子3人。

しかしー
里菜の憎悪と怨念が行く手を阻む…。

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1か月前ー。

「---ごめんなさい…もう、、許してーーー」

里菜が涙を流しながら土下座する。

”謝れば許してやるよ”と
4人のいじめっ子に言われた里菜は
土下座をしていた。

必死に謝る里菜。

しかし、そんな里菜の手を、
篤美は踏みにじった。

「---謝って済むなら警察はいらない。」

とー。

4人のいじめは、日に日に苛烈さを増して行ったー

そしてー
それが、”憎悪”を膨らませていることに、
この時の4人は、気づいていなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

不気味なチャイムが鳴り響く夜の高校ー

里菜は笑いながら、
廊下を走る3人を見ていた。

「--いじめでどれだけ苦しい思いをしたか…
 思い知らせてあげる…」

里菜がクスクスと笑う。

いつもの気弱な雰囲気の里菜ではないー
狂気と憎悪に支配された里奈は、
まるで別人かのような雰囲気を醸し出していた。

図書室に向かう3人を見つめながら
里菜は、目を赤く光らせたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くそっ!何なのよこれ!」
ショートへアーの真紀が叫ぶ。

廊下にも、教室にも、そこら中に
赤い文字で”怨”と書かれている。

「こ、、これ全部、あの子が一人で?」
ツインテールの菜々美がおびえた様子で言う。

篤美が可愛らしい腕時計を見る。
20時50分ー。

放課後、部活などで残っている生徒もいるはずだから、
18時ーいや、先生もいるはずだから19時?
学校に人が居なくなるまでには時間がかかる。

そもそも、警備員も居たはずだ。

なのにー
こんな学校中に”怨”と文字を刻んだり、
自分たちを拉致したり、
そんなこと、誰にもばれずに出来るのだろうか。

「---」
篤美は得体の知れない恐怖を感じながら、
図書室に走っていた。

図書室があるのは、C棟の4階。

2年の教室があるのはA棟だから、
連絡廊下を渡る必要があるー

しかしー
「--な…なにこれ…?」
ツインテールの菜々美が足を止めた。

目の前にはー
黒い渦のようなものが一面に広がり、
道をふさいでいた。

「--こ…これは…」
篤美も驚きを隠せない。

まるで、ブラックホールのようなものが連絡通路中に広がり、
先へ進むことを拒んでいた。

”ふふふ…どうしたのかしら?
 わたしをいつまで待たせるつもり?”

里菜の声が校内放送で響き渡る。

「---…下の階から迂回するしかないね」
ショートへアーの真紀が言う。

図書室は4階。

4階の連絡通路がダメなら、
一回、3階に下りて、連絡通路を渡り、
C棟まで行ったら、4階に上がればいい。

「そうね」
篤美もそれに応じて引き返そうとしたときだった。

「---きゃああっ!?」
背後で声がした。

篤美と真紀が振り返ると―
黒い渦から出現した不気味な黒い手が、
ツインテールの菜々美を引きずって行くのが見えた。

「菜々美!?」
篤美が叫ぶ。

しかしー
菜々美の姿はもう消えていた。

ボコッ…!

「--!?」
しばらくすると、黒い渦が膨張してーー

中から菜々美が出てきた。

「----な、、菜々美…?」
真紀が、距離を取りながら菜々美を呼びかけると、
菜々美が顔をあげた。

その目は赤く光りー
表情は歪んでいたー

「---くふふふふふふ…
 うっざいぶりっ子…」

菜々美が自分のことをそう言いながら、
クスクスと笑い続ける。

「--だ、、大丈夫…?」
篤美が菜々美にそう言いかけて、
あることに気付いた。

菜々美の手に、刃物が握られていることにー

”--菜々美ちゃんには、
 私の怨念を憑依させたわー。
 もう、菜々美ちゃんは、ただの操り人形。

 くふふ…図書室に簡単に辿り着けたら
 つまらないでしょ~?
 菜々美ちゃん、いいえ、殺人人形から
 逃げられるかしら~?

 くくく、あはははははははは!”

里菜の声が響き渡る。

それと同時に菜々美が、大笑いしながら真紀と篤美の方に
向かって走り出した。

「---ちょ…!逃げるわよ!」
篤美が叫ぶ。

篤美と真紀は走り出した。

菜々美はツインテールを振り乱しながら、
2人を追いかける。

「--あ、、篤美…なんか、おかしくない?」
走りながら真紀が言う。

「---何が?」
篤美がいらだった様子で言う。

「-ーーこれってさ…
 どう考えても、人間のできることじゃないよね?」
真紀が言う。

謎の黒い霧ー
最初に居た教室の開かない扉ー割れない窓。
憑依されて頭を打ちつけて死んだ薫。
渡り廊下をふさいでいた謎の渦。
そして、渦に取り込まれて豹変した菜々美。

「・・・・・・・」
篤美は走りながらも、答えない。

「わたし、思うんだよね」
3階に下りて、連絡通路に辿り着いた真紀は言う。

「--里菜…もう、死んでるんじゃないかって…
 あの子を、自殺に追い込んだ私たちへのー
 呪いなんじゃないかって」

真紀の言葉に、
篤美は走りながら返事をした。

「だとしてもー
 今は、逃げるしかないでしょ?」

篤美の言葉に真紀は「まぁね」とうなずいた。

「--チッ!」
篤美が舌打ちをする。

3階の連絡通路も黒い渦で塞がれていたー。

「--篤美!近づいちゃダメよ!」
真紀が叫ぶ。

篤美は「分かってるわよ!」と答えるー。

4階の連絡通路で、菜々美は、黒い渦に取り込まれた。
近づきすぎたためだー。

だから、二人とも渦に近づかず、すぐに引き返す。

2階の連絡通路なら通れるのか?
それとも、回り道した方がいいのか?

篤美と真紀は、判断を迫られた。

「--ひひひひひひひひひひ~!」

!!

包丁を持った菜々美が笑いながら近づいてきた。

「--な…菜々美!目を覚ましなさい!」
篤美が叫ぶ。

しかし、
菜々美は目を真っ赤に光らせて笑っているだけだった。

「クソッ!」
真紀が菜々美に突進して、菜々美を抑え込んだ。

「--篤美!先に行って、
 図書室に向かうことのできる道を見つけておいて!」
真紀が菜々美を仰向けに倒して、その上に多い被ると、
篤美に向かってそう叫んだ。

「--わ、わかった!」
篤美が走るー

2階の連絡通路もダメだったー。
そして、1階に下りる階段は、使えなかったー

赤い渦が道をふさいでいたからだー。

「--くそっ!なら回り道しかないわね!」
連絡通路を使わず、遠回りすれば、C棟に行くことができる。

篤美は、迂回してC棟をめざすー。

その途中ー

「---!?」
音楽室から、ピアノの音が聞こえてきたのだ。

「-…だ…誰かいる?」
篤美は、里菜が居るの?と一瞬思ったが、
里菜は図書室にいると言っていたー

嘘をついていない限り、里菜はここには居ない。

では、ピアノを弾いているのはー?

ふと、音楽の先生である、凜子先生の顔が浮かぶー。
凜子先生はよく、遅くまで学校に残っていることが多かった。

吹奏楽部の指導や、その後片付けなどでー。

もしかしたら、まだ凜子先生が学校にいるのかもしれないー

そう、ほんの少しだけ希望を抱いて、
篤美は音楽室の扉を開いたー

♪~~

♪~~~

♪~~~~

やさしいクラシック音楽のメロディを奏でる音楽室ー。

そこにはーーー

いなかったー。
少なくとも、正気を保った人間はー

「----えへへへへへ えへへへへへへへ~」
血まみれの凜子先生が、
白目でピアノを弾いているー

まだ20代後半で、可愛らしい風貌だった
凜子先生の容姿は、無残にも変わり果てて、
まるでゾンビのようだった。

「きゃああああああ!」
篤美は叫んで、音楽室から飛び出すー

”ふふふ…
 凜子先生はねぇ、
 わたしがいじめの相談をしたのに、
 相手にしてくれなかったの。

 だ~か~ら、
 復讐したの!ふふふ”

里菜の声が響き渡る。

”狂ってる”
篤美はそう思った。

そして、再び走り出す。

とにかく、里菜の元に行くしかない。

そのまま逃げようとも思ったが、1階に下りる階段には、どこも
赤い渦が存在していて、降りることができない。

そう、
今、この校舎は里菜とその怨念に支配されているー
里菜のところに行くしかないのだー

「---ここからなら行ける!」
篤美は少しだけ笑みを浮かべる。

回り道ルートには黒い渦の壁はなかった。
これなら、図書室に行けるー。

「----!!」
前から人の気配がした。

篤美は警戒して立ち止まる。

「---はぁ…」
前から歩いてきたのはー
いつも夜間警備をしている警備員のおじさんだった。

「--あ!」
篤美は思うー

やっぱりまだ校内に人がいたんだ!と。

今は夜の9時。
まだ無人になっていない可能性は充分にあった。

「あ…あの…!助けて下さい!」
篤美が叫ぶ。

しかしー
警備員のおじさんは無反応だった。

懐中電灯を持ちながら、あくびをして、
眠たそうに廊下を歩いている。

そう言えば…”怨”と言う文字がそこら中に
刻まれているのに、おじさんはまったく気にする
素振りさえ見せない。

「お…おじさん!?」
篤美の呼びかけにも応じない。

そしてー
おじさんに手を触れようとしたが、
謎の黒い霧が出現して、はじかれてしまった。

篤美を無視して、歩いていく警備員。

そのまま階段を下りて、1階へと向かう。

1階へと向かう道には、
ツインテールの菜々美が取り込まれた黒い渦。

「お…!おじさん!そこはあぶな…」

ーー!?

警備員のおじさんは何事もなかったかのように
黒い渦をすり抜けた。

「---!?ど、、どういうこと…?」

篤美は焦りを感じる。

まるで
”自分がここに存在しないかのような”

そんな、反応だったー

「---ひっ!?」
篤美が、廊下の窓からふと空を見上げると、
空が真っ赤に染まっていた。

「---な、、、何がおきてるの…?」

バン!

さっき出てきた音楽室から不気味な音が聞こえた。

「--!?こ、今度は何?」
篤美が振り返ると、そこには、
音楽の凜子先生が笑いながら立っていた。

「-ーーーーー」
凜子先生が自分の両方の胸を触って、にやりと笑みを浮かべる。

そして、クスクスと笑いながら
猛スピードで、篤美の方に走ってきた。

「ひっ…!?」
篤美は恐怖を感じて逃げ出した。

何もかもがおかしいー

早く図書室にいる里菜と会って。
里菜から目的と、何がおきてるのかを聞きださないと…。

篤美は走る。
迂回ルートにも黒い渦があった。

まるで、迷路のように、黒い渦で道が塞がれている。

しかし、篤美は、校内の構造を必死に思いだしながら、
図書室をめざす。

「--ひひひひひひひひひひひひひ!」
背後からは音楽の先生が追ってきている。

捕まったら何をされるか分からない。

階段を上るー。
図書室は4階ー。

2階から3階へー
3階からー

「---きゃあああああああああああ!」
篤美は叫んだ。

目の前にチェーンソーのようなものを持った
いじめ仲間の菜々美がいたー

「--うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ~!」
舌をペロペロしながら笑う菜々美。

ツインテールだった菜々美の髪は
ボロボロになり、制服も少し破けているー

「--篤美!先に行って、
 図書室に向かうことのできる道を見つけておいて!」

おかしくなった菜々美を食い止めてくれた
友人・ショートヘアーの真紀のことを思い出す。

真紀がここに居ないでー
菜々美がここに居るということはー

「----邪魔…しないで!」

階段の上にはチェーンソーを持った菜々美ー
背後からは音楽の先生・凜子。

「---こんなところで死にたくないの!」
篤美は叫んで、菜々美に突進した。

火事場の馬鹿力…

この瞬間、それが発揮されたのかもしれない。

菜々美を投げ飛ばし、階段の下に放り投げる。
菜々美はケラケラ笑いながら階段から転落して、
階段を後から登ってきていた凜子先生に激突した。

そしてー

「うひゃああああああああああ~~♡」
菜々美がそのまま、凜子先生を切り刻んでいく。

菜々美だけではなく、
凜子先生も笑っている。

「---ーーーみんな狂ってる!」
篤美は、明らかに狂っている2人から目を逸らして、
そのまま図書室に走るー

ガン!

ついに、ついに、図書室に辿り着いた。

「---ようこそー」
いじめられっ子の里菜が、机の上に座って
足を組みながら本を読んでいたー。

本を閉じると、そのまま本を放り投げて、
里菜は不気味に微笑む

「あ…あんた…!どういうつもり!」
篤美が叫ぶ。

すると、里菜の目が真っ赤に光り、
図書室中に”怨”という文字が現れるー

「---お前たちを、許さないー」
里菜は、目を光らせながら
憎しみを込めて、そう呟いたー。

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

狂気の真相は…?
明日をお楽しみに~

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憑依<怨>

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    警備員に見えてないなど、何かありげな描写が…?
    果たしてこれは現実なのか……。結末が楽しみです♪

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 警備員に見えてないなど、何かありげな描写が…?
    > 果たしてこれは現実なのか……。結末が楽しみです♪

    ふふふ…
    明日、全てが明らかになるのデス!