駅でマナー違反を注意された男は、
その女子高生を逆恨みしたー。
憑依能力を駆使して、男は彼女を
殺人犯に仕立て上げてしまうー。
真実の為に、逃亡する少女ー。
果たして、その運命はー
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「-ー他の人の迷惑も考えて下さい」
女子高生・松川 梨桜(まつかわ りお)は、
駅のホームで、大音量のBGMを流していた男を注意した。
「あ?」
男は、スマホから大音量のBGMを流し、
大声で歌っていたー。
周囲は、そんな男に関わらないようにしていたが、
正義感の強い彼女は、そんな男を、注意した。
「--チッ」
男は舌打ちだけすると、そのままスマホをしまって
「うっせ~ガキだぜ!」と呟いて
そのまま立ち去って行く。
「--はぁ…」
梨桜は、ため息をつくと、
近くに居た友人の野畑 映奈(のばた えいな)の
方に近づいていく。
「ああいうの、困っちゃうよね」
梨桜が言うと、
友人の映奈は「そうだね…」と苦笑いした。
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翌日。
友人の映奈が放課後、
梨桜の家に遊びに来ることになっているー。
映奈と梨桜は幼馴染で、
高校生になった今でも、
お互いの家を行き来するほどの親友だった。
映奈はおしとやかな感じの眼鏡女子で、
真面目で控えめな性格をしている。
一方の梨桜は正義感が強く、
昨日のように、駅にいる迷惑客を
注意するぐらいには気が強い。
「--そういえば、梨桜ちゃんのお母さんと会うの
久しぶりだな~」
映奈が言う。
「--なになに、私のお母さんに会いたいの?」
梨桜が言うと、映奈が少し微笑んだ。
「梨桜ちゃんのお母さん、
お料理上手だから、いつもこっそり
テクニックを教わっていて」
「ふ~ん」
そんな雑談をしながら、
2人は梨桜の家の目の前に到着したー
インターホンを鳴らす。
しかしー
反応がない。
「あれ?おかしいな~」
梨桜が呟く。
いつもはインターホンを鳴らすと
母か妹が、鍵を開けてくれるのだがー
もう一度インターホンを鳴らしても、
返事がないー。
梨桜は「お母さんたち、出かけてるのかな?」と
呟きながら玄関の扉を開く。
するとー
キッチンの方から、ガシャガシャと物音が
することに気付いた。
「おかあさん~?いるの?」
梨桜が母を呼びながらキッチンに向かう。
映奈もそのあとに続くー
そしてー
「ひっーーー?」
キッチンに入った梨桜が悲鳴を上げたー
後から続く映奈も目を疑う。
そこに広がっていたのは、
すぐには受け入れがたい光景。
まるで、地獄のような光景だったー
「---よぉぉぉぉぉぉぉっ!」
そこには、昨日、駅で迷惑行為を注意された男が
ニヤニヤしながら立っていた。
その足元には、
梨桜の母親が倒れている。
男は、血のついた包丁を持って
にやりと微笑むと、
梨桜の方に向かって歩いてきた。
「---お、、お母さん…!」
梨桜は母親の方を見る。
しかし、母親は、目を見開いたまま
微動だにしない。
既に死んでいることが、すぐに理解できた。
「ひ…人殺し!」
梨桜は、近づいてくる男にそう叫んだ。
「---…あ…あ」
友人の映奈も、あまりの光景に身体を震わせている。
男は、梨桜に近づくと、微笑んだ。
「--お前みたいな小娘、むかつくんだよ」
男はそう言うと、梨桜を睨みつけた。
注意しただけで逆上されて
報復されるー
今の世の中には、時としてそんなことも起こり得るー。
梨桜は、自分も殺される!と
直感的にそう感じたがー
そんなことはなかった。
男はそのまま鼻歌を歌いながら
玄関の方に向かっていくー。
「---ま、、待ちなさいよ!」
梨桜が叫ぶ。
男は玄関前で立ち止まると、
ニヤニヤしながら振り返った。
「---娘に殺されるなんて、
ママさんも可哀想だなぁ…ケケ」
「は?それって、どういう意味!?」
梨桜がそう叫ぶと、男は手をあげながら
そのまま玄関から立ち去ってしまった。
「--り、、梨桜ちゃん…!梨桜ちゃんのお母さんが…!」
映奈が、倒れた梨桜の母親の前で声をあげる。
「--わ、、、わ、、、私は警察を呼ぶから、
え、映奈は、救急車を呼んで!」
動揺しながらも、梨桜は的確な判断をした。
泣きながら映奈が救急車を呼ぶ。
どう見ても、もう手遅れだー。
けれどー
「---お母さん…」
梨桜は、悲しそうに呟きながら
泣くのを我慢して、警察に通報するー。
泣くのは後だー
今は、できることをしなくてはならないー
「--」
警察に通報を終えた梨桜は、
泣きじゃくる映奈を慰めながら思う。
”そういえば、妹の文香(ふみか)は?”と。
文香はまだ中学2年で、
基本的に梨桜より先に帰ってきていることが多い。
いつも通りであれば、今日も既に帰宅しているはずだった。
だが、時々部活で遅くなることもあるから、
まだ帰っていないのかもしれないー
そう思いながらも、梨桜の頭の中に
最悪の考えが浮かぶー。
”すでに殺されているのでは?”とー。
文香の部屋は2階にあるー
もしも母親より前に、襲われていたら―。
そう思っていると、2階から足音が聞こえてきた。
「--文香?」
そう呼びかける梨桜ー。
2階から降りてきたのは、妹の文香だった。
まだ帰ってきたばかりだったのだろうか。
制服姿の文香は、梨桜の方を見たー
「---ふ、、文香…」
梨桜は、何て説明していいか困惑する。
”母親の死”
それは、文香にとって、ショックがでかすぎる。
梨桜は必死に文香にショックを与えないように
言葉を考えていると、
文香が叫んだ。
「---人殺し!」
とー。
「--え?」
梨桜が、妹の文香の言葉に戸惑っていると、
警官隊と救急車が到着した。
その応対をする姉を見ながら、
妹の文香は不気味に微笑んだ。
「---お前を、母親殺しにしてやるぜ…」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
男は笑うー。
まずは第1段階が終了したー。
男の手元にはー
”大量の憑依薬”が抱え込まれていたー
俺をコケにした罰だー
あの梨桜とかいう生意気なクソガキに、
死よりも辛い、地獄を見せてやるー。
男は、微笑むと、
再び憑依薬を飲むのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
友人の映奈は泣きじゃくっている。
梨桜は悲しそうな表情を浮かべたー
病院にやってきた梨桜はー
母親の死を確認したー。
殺人事件だ。
病院を歩きながら悲しみに暮れる2人ー。
そこに、警察官がやってきて、
警察手帳を見せた。
「松川 梨桜さんですね?」
「はい…?」
梨桜は不思議そうに警官の方を見た。
年配の渋い警官と、
若い婦警が一緒だ。
「ちょっと、署までご同行願えますか?」
若い女性警官の方がそう言うと、
梨桜は、「は…はあ」と言いながら警察官たちについていく。
「ごめんね…巻き込んで」
映奈にそう告げると、映奈は「うん…」と涙声で返事をした。
映奈と別れて警官たちと外に向かう梨桜。
そんな梨桜を見つめていた映奈は
クスクスと笑いだした。
「梨桜ちゃんは犯罪者…くふふ…ふふふふふふふ」
不気味な笑みを浮かべた映奈は
そのまま愉快そうに歩き始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--母親の清江さんを殺害したのは、
君だね?」
梨桜にそう告げる警察官。
年配の警察官が、
取調室で梨桜に言い放った言葉は、
梨桜が想像もしていない言葉だった。
「え…?そ、、そんな…?
違いますよ!」
梨桜は慌てて叫んだ。
年配の警察官も
若い女性警官も
疑うようにして梨桜の方を見ている。
「…それはおかしな話だなぁ…」
年配の警官が意味深な笑みを浮かべて言う。
「--君の妹さん…
文香さんだったっけ?
”お姉ちゃんがお母さんを殺した”
って、そう言ってたんだよ」
その言葉に梨桜は驚く。
そういえば、救急車が来る前にも、
妹の文香はそう言っていた。
男が逃走するまで、妹は2階にいたから
そう見えても仕方ないのかもしれない
「ち…違います!」
梨桜は困惑しながら頭をフル回転させた。
そして、叫んだ。
「え…映奈!友達の野畑 映奈ちゃんが
私と一緒にいたので、犯人を見ています!」
そう言うと、
警官は「病院で一緒に居た子か…」と呟いた。
「…ま、一応確認してみようか」とだけ呟いて、
取調室から出ていく。
梨桜は溜息をつく。
こんな風に勘違いされて取り調べを受けることになるなんて…。
取調室なんて、ドラマでしか見たことが無い…。
こんな…
こんな…
「---諦めろよ」
取調室に残っていた美人警官が呟く。
「--え?」
梨桜が声を出すと、
美人と称するにふさわしい女性警官が
近づいてきて、梨桜の座る机を叩いた。
「お前が何やっても無駄なんだよ!
クソガキが!」
女性警官の目は殺意に満ちていた。
「…ち、、違います…わたしじゃ…ない…!」
梨桜が言うと、
女性警官は梨桜の胸倉を掴んだ。
梨桜の座っていたパイプ椅子を蹴り飛ばすと、
女性警官は笑うー。
「俺だよ…」
と。
「え??」
梨桜が驚いて女性警官の顔を見る。
しかしー
どう考えてもこの人は知り合いではない。
「--駅でお前に恥をかかされた俺だよ…!」
梨桜はその言葉にぞっとしたー。
「ど…どういうこと…?」
意味が分からない。
今目の前にいる女性警官は
どう見ても女性だし、あの男ではないー
「俺はな…人の身体を奪うことができるんだよ…!
今、この女の身体も意識も俺のものだ!
くくく…
お前の妹の文香ちゃんだっけ?
お前の母親を殺す前にさ~
文香ちゃんに憑依してたっぷり身体で
遊んでやったぜ!くひひ…!」
梨桜はその言葉を聞いて、
震えあがった…
”人を乗っ取れる”
そんなこと、あるわけが…
「--信じてないなぁ~?なら見ろよ!」
女性警官は梨桜を投げ飛ばすと、
そのまま胸を触り始めた。
「ンんふぅ♡ あぁは♡ あはははっ♡
どう?警察官がこんなことすると思うぅ~?」
甘い声を出しながら胸を触る女性警官。
「ちょ…ちょっと…やめてください…!」
梨桜が言う。
しかし、女性警官は大きな声で喘いでいて、
顔を赤らめている。
”普通じゃないー”
梨桜はそう思った。
この人ー
本当にー
「--えへへへぇ♡
俺が憑依した体は、
誰であろうと思いのままだぜ…!
俺に恥をかかせた罰だ~!
お前を殺人犯に仕立て上げて、
地獄に突き落としてやるぜ」
がに股で歩きながら女性警官は微笑んだ。
ガチャー
「--何をしている?永橋(ながはし)」
戻ってきた年配の刑事が女性刑事の方を見て
驚いた表情を浮かべる。
「---!!」
梨桜はとっさに動いた。
憑依ー
そんなこと本当にあるはずがない、と思いながら梨桜は、
”もしそれが本当にあるなら、ここにいちゃいけない”と、
そう思ったー
「---ごめんなさい!」
梨桜はそう叫びながら年配刑事にタックルすると、
そのまま取調室から飛び出した。
「おい!貴様ぁ!」
年配刑事が叫ぶ。
その様子を見つめながら女性刑事は静かに微笑んだ。
「ふふふ…無駄よ…逃がさない…」
”憑依している間の記憶”を、
適当に書き換えて、男は女性警官から抜け出したー
”徹底的に、追いつめてやるー
地獄にな…”
男は不気味に微笑んだー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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今回は導入部分ですネ…!
次回から本番(?)デス!
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