とある王国ー
国中を騒がせていた大悪党が捕まったー
サファイア王国の姫は、
その大悪党の処刑に立ち会うも…?
※リクエスト作品デス!
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サファイア王国ー
国の中心に飾られた巨大なサファイア、
ビッグ・サファイアを平和のシンボルとし、
長く繁栄してきた王国。
サファイア王国の姫・カナン姫は、
心優しく、国民一人一人に慈悲の心を
持って接する人物だった。
母が若くして病死し、父が病床に伏しているため
現在は、このカナン姫が、サファイア王国の
トップに立っているー
しかし、若く美しいだけではなく、
優しく、時に凛とした強さを持ち、
国民からの支持も絶対的なものだった。
カナン姫のもと、
サファイア王国は平和を謳歌しているー
が、そんなサファイア王国では
ここ1年で、連続強姦、盗み、数々の悪事を働くものが居たー。
辺境の地域の盗賊団を率いる男・ペレアス。
ペレアスは、数々の悪事を働きながらも、
数多くの悪巧みを企てて、
サファイア王国の王宮騎士団の追撃も逃れていた。
それでもー
ペレアスは次第に追いつめられてー
ついに、王宮騎士団団長・シオンによって
捕えられたのだった。
「--姫様」
王宮騎士団団長のシオンが、廊下を歩く
カナン姫に声をかける。
「---姫様がペレアスの処刑に立ち会うというのは
本当でございますか?」
シオンが姫と共に歩きながら言うと、
カナン姫は立ち止まってシオンの方を見た。
「--皆にだけ、苦しい思いをさせることはできませんから」
カナン姫が言う。
この国で処刑が行われるのは10年ぶり。
それほどまでに、ペレアスは大悪党だった。
「--いえ…カナン姫にご心労を与えるわけにはまいりません」
シオンがその場に膝をついて、
頭を下げると、カナン姫はシオンの肩に手を触れた。
「--シオン…この国で起きていることから、
姫として、逃げることは、私にはできない…
王宮騎士団のみんなにまかせっきりで、わたしは
何もできなかった…
だから、せめて最後だけでも立ち会わせて?」
カナン姫の言葉に、
シオンが顔をあげる。
「---姫」
「--昔はよく、わたしのお願い、聞いてくれたでしょ?」
カナン姫が笑う。
カナン姫とシオンは幼馴染だった。
しかし、今は、カナンは一国の姫。
一介の騎士の息子で、現在は王宮騎士団長ではあるものの、
その立場には、大きな差があった。
だから、普段は”幼馴染”としてではなく”臣下”として
振る舞っている。
「---姫…いけません…
姫は、、一国を支える者…私などに」
シオンがそう言うと、
カナン姫は「堅いんだから…」と笑いながら顔をあげる。
「…でも、シオンがどう言おうと、私は決めたの。
私には、この国を騒がせた大悪党の最後を見届ける義務がある…」
カナン姫は決意の眼差しでそう言うと、
シオンの方に向かって微笑んだ。
「--シオンの気持ちは嬉しいわ…!
私を心配してくれてるんだものね…?
ありがとう」
カナン姫の言葉に、シオンは顔を赤らめながら
頭を下げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「これより、盗賊団団長・ペレアスの処刑を行う」
王宮前の処刑場で、
王宮の重臣であるレオニードが大々的に宣言した。
民衆が集まっている。
カナン姫と王宮騎士団長のシオンも、
その場にやってきていた。
カナン姫は当初、大悪党であるペレアスの処断にも
反対していた。
しかし、国の長老たちや重臣、国民たちの世論に
押し切られる形で、こうしてペレアスの処断を
行うことになったのだー。
「---くそっ…!」
ペレアスが中央広間に手足を縛られた状態で
放りだされる。
「---…この悪党が」
王宮騎士副団長のロクシアンが、剣を構えながら
ペレアスを見下す。
副団長ロクシアンー
サファイア王国内の強硬派で、
ペレアスの処断を進言していた人物のひとり。
盗賊団の残党が潜むと言われる地への侵攻も進言したが、
それは、姫によって、却下されている。
「---よくもこの国を騒がせてくれたなぁ?」
ロクシアンが盗賊頭・ペレアスの胸倉をつかむ。
「---く…俺は…俺は死なんぞ!」
ペレアスは処断間近でも、ロクシアンを睨みつけた。
そして、ロクシアンの顔に唾を吐きかける。
「貴様…!」
ロクシアンが激高して、ペレアスの顔面を思い切りなぐりつけた。
「--おやめなさい!」
カナン姫が声を上げる。
「--はっ」
ロクシアンが姫の言葉に反応して、ペレアスから離れる。
「---罪人・ペレアス。
貴殿は…」
重鎮のレオニードが、罪状を読み上げ始める。
カナン姫とシオンがその様子を見つめる。
罪人・ペレアスはその罪状を聞きながら
心の中で叫んでいた。
”俺は、俺はしにたくねぇ”
とー。
ペレアスは顔をあげるー
少し遠くに、
心優しき姫が居るー
「くそが…!
生ぬるい平和に浸かりやがって…!
お前に、俺たちの苦労は分からないだろうよ…!」
ペレアスは内心で叫ぶ。
サファイア王国は平和だ。
しかしー
”影”の部分もあるー
辺境の村では、その日暮らしが苦しいような
状況になっているー
そういう”裏”があるのだー
カナン姫や、王国の主だった人間は、そのことを知らない。
重心のレオニードを中心とする人間たちが、
姫にも内密に、辺境の村を苦しめ、
私腹を肥やしているのだー
レオニードが罪状を読み終えると、
ペレアスをゴミのような目で見つめて微笑んだ。
ペレアスの心には怒りが巻き上がってくるー
そしてー
処刑の瞬間が訪れたー
王宮騎士副団長のロクシアンが剣を構える。
「あばよ、大悪党」
小声でロクシアンは呟いた。
姫はつらそうな表情で、処刑の光景を見ている。
「--姫…お辛ければ…」
シオンが言いかけると
カナンは首を振った。
「この国で起きていることから…
目をそらすわけにはいきません」
カナンは、罪人であっても処断されることに
心を痛めていたー
民衆たちが、かたずをのんで状況を見守る中ー
ロクシアンは剣を振り下ろした。
”死にたくねぇ”
ペレアスはその瞬間、
そう思ったー
ーーーーーーー!
今まで感じたことのない激しい痛みー
死にたくない!
この世への強い未練からペレアスは
心の叫びをあげた。
そしてー
サファイア王国に対する強い恨みを
叫んだー
ーーー感覚が薄れていく。
激しい痛みは一瞬にして消えて、
自分が自分でないような感覚を味わうー
これで、終わりかー
「うっ…!」
低いうめき声があがった。
「---姫様?」
ーー?
そう言われて、ペレアスは首をかしげる。
ゆっくりと目を開くと、
そこには、今、自分が処刑されたはずの
王宮前中央広場の光景が広がっていた。
「---姫様?どうかなさいましたか?」
そう呼ばれて、ペレアスは
そちらの方を見た。
確かこいつは王宮騎士団長シオンとかいう男だ。
「---あ…?」
思わずそう言って、
口から出た声にペレアスは驚く。
ふと、目の前を見ると、
”処刑された自分”と、
「大悪党・ペレアスは死んだ!」と叫ぶ
騎士団副長のロクシアンの姿があった。
「---これは…」
ペレアスは、自分がドレスに身を包んでいることに気付く。
「---…え…え…」
ペレアスはーー
この世への強い未練からー
死の間際にカナン姫に憑依してしまったー
「--姫様?」
シオンが不思議そうに姫の方を見ている。
”ま…まさかこの俺が、カナン姫に?”
ペレアスはそう思いながらも、気持ちの整理が
つけられず、困惑した。
いやー待て。
ここにいるやつらは全員、俺が死んだと思っている。
ならー
「---ち、、ちょっと疲れました」
カナン姫のことは何度か見たことがある。
確か、誰に対しても物腰軟らかい感じだったはずだ。
「---はっ…」
シオンは”罪人と言えど、処断の光景を見て、心を痛めているに違いない”と
判断し、他の騎士を呼びつけ、
カナン姫を自室に連れて行くように指示をした。
「--おおおおおおおおお!」
民衆たちが湧きあがっている。
重臣のレオニードと
騎士団副長のロクシアンが、
大罪人・ペレアスの死で民衆を焚き付けている
「---」
シオンは、過激派であるロクシアンたちを
抑え込めるかどうか、不安に思いながら、
その光景を見つめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--はい、ご苦労様…」
部屋まで連れ込まれたカナン姫は、
騎士に下がるように命じると、
部屋には一人残された。
「---」
鏡を見つめるカナン姫。
美しい姫の姿がそこにはあった。
「くくく…ふふふふふふふ…
あはははははははははははは!」
綺麗な声で笑い出すカナン姫。
「--はははははは!神は俺を見放さなかった!
まさか俺が姫になれてしまうなんて…!
いひひひひひひひっ!あはははははははははは!」
狂ったように両手を広げて笑うカナン姫。
「--おらぁ姫さんよ…!
どうしたよ?いつもの平和を望む笑顔はどうしたぁ?」
鏡に向かって話しかけるカナン姫の笑みは、
黒く染まっていた。
「--くくくくく…
これからは俺が姫だ…」
震えながらカナン姫は呟く。
「俺がこの手で…
いいや、私がこの手で王国を壊してあげるっ!
うふふふふ、あははははははははは!」
目から涙が零れ落ちる。
「なんだぁ?泣いてやがんのか!?
無駄だぜ!
もうこの身体は俺のものだぁ!」
そう叫びながらカナン姫は乱暴に
自分の胸をわしづかみにして大声で喘ぎ始めた
「んふふふふふふふっ♡ あはははははははははぁ♡」
ビクンと身体が震える。
ーー!?
「--あ…ああああああああああ!」
身体が突然激しく痙攣して、
あまりの衝撃に、カナン姫はそのまま床を
転がりまわったー
小さい頃のことー
姫として民衆の前に初めてたったときのことー
騎士シオンとの幼い日々のことー
重臣たちとのやり取りー
最近の日々ー
あらゆる記憶が流れ込んできたー
そしてー
痙攣を終えたカナン姫は笑みを浮かべた。
「くふ…姫さんの記憶も、、ゼンブ手に入れたぜ…!」
カナン姫は不気味な笑みを浮かべて、
その場に立ち上がったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
姫として通路を歩いていると
騎士のシオンが声をかけてきた。
「--姫様!もう大丈夫でございますか?」
シオンが声をかけると、
カナン姫は「えぇ。もう大丈夫です」と答えた。
「---…」
シオンはそんな姫の様子を見て、
少し間をおいてから呟いた。
「なんだか、今日の姫様は嬉しそうですね。
何か良い事でもありましたか?」
シオンがそう尋ねると、
カナン姫は微笑んだ。
「えぇ…とっても…
ふふふ」
ーーー!?
シオンは妙な悪寒を感じた。
カナン姫の笑みに”不気味な何か”を
本能的に感じ取ったのだー
「--ふふふふふふふふ…」
シオンと別れたカナン姫は
悪魔のような笑みを浮かべていた-
王国にー
暗黒時代が訪れようとしていたー
②へ続く
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コメント
リクエスト題材による作品です!
憑依された姫のご乱心は、明日のお楽しみ!!
コメント
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これは素晴らしくダークな話ですねぇ…!
姫の立場を使って何をしていくのか、次回以降が楽しみなのですよ
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> これは素晴らしくダークな話ですねぇ…!
> 姫の立場を使って何をしていくのか、次回以降が楽しみなのですよ
ありがとうございます~!
2話構成なので、内容キッツキツだったりします汗