<憑依>俺と離婚してくれ!①~父~

彼は、とにかく離婚したかった。

あまりにも、自分勝手な妻とー。

しかし、そう簡単には離婚できなかった…。

彼は叫ぶ。
「俺と離婚してくれー!」 と。

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岩城幸助(いわきこうすけ)は、悩んでいた。

妻の瑞穂(みずほ)と離婚したいのだが、
妻が応じてくれない。

なぜ、離婚したいのかー。

その原因は、瑞穂にあった。

瑞穂は、結婚前はとても心優しく、
協力的な女性だったのだが
結婚してから、豹変した。

家事を何もすることもなく、
毎日朝から晩まで働く幸助が返ってくると
舌打ちをする。

給料は全額、瑞穂に握られて
幸助の昼ごはんは日の丸弁当。

お小遣いは月500円で、
趣味のプラモデルは全て売却させられた。

しかし、それでも幸助は耐えていた。

妻が3000円のランチを楽しむ中、
日の丸弁当を食べさせられていても
幸助は瑞穂のことが好きだったし、

給料の入った袋を、
「ふん!」ということばと共に
奪い取られても、幸助は何も言わなかった。

だがー
それでも、着実に、”我慢の限界”は近づいていた。

ある日ー。
ボーナスが支給されて、
それを妻の瑞穂に手渡したときの反応が
「すくねぇな くっせ」
だったことで、
幸助はキレた。

そのままボーナスの入った袋を取り上げて
瑞穂をリビングまで引きずっていき、
机に座らせて離婚を告げた。

「もう、我慢の限界だ。
 俺と離婚してくれー」

と。

だがー

妻はー
泣きだした。

「--ぜんぶ、ぜんぶ、幸助のためなのー」

と。

意味が分からなかった。

お自分のためを思ってくれているのに、
なぜ日の丸弁当なのか?

なぜ、ボーナスを持ってきたのに
臭がられなくてはいけないのか。

幸助は、妻の泣きじゃくる姿を見て、
”なんて自分勝手な女なんだ”と思い、
そのまま妻を追い出した。

自分に至らない部分もあったのかもしれない。

だが、それでも
妻の態度はあんまりだと。

瑞穂を追い出して、
離婚届を渡し、
記入して送るように、幸助は言ったのだった。

だがー

妻は離婚に応じなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--幸助さんが、わたしのこと、もう嫌いだって…」

実家に逃げた瑞穂は、
あることないことを父親に吹き込んでいた。

「--どうしようもない男だな」

瑞穂の父親、隆三郎はつぶやいた。

「--おぉ、瑞穂…可哀想に」
泣きじゃくる瑞穂の頭を撫でて
瑞穂を抱きしめる隆三郎。

「---俺に考えがある」
瑞穂に向かって真剣な表情で隆三郎は言った。

「パパ…?」
瑞穂がそう言うと、
隆三郎は微笑んだ。

「--身体、貸してくれるか?
 離婚を取り消しさせてやる」

隆三郎の言葉に瑞穂が「え?」と首をかしげる。

隆三郎は製薬会社の研究所長で、
”憑依薬”という人間に憑依するための薬を完成させていたー。

「---うそ…そんなことできるの?
 パパ、すっご~い!」

瑞穂が子供のように言う。

そして、瑞穂はうなずいた。

父親の隆三郎と娘の瑞穂の関係は
通常の親子を超えるほどに固い絆で結ばれていた。

瑞穂は父親に憑依されることを受け入れると、
父親の隆三郎はすぐに憑依薬を飲みほし、
瑞穂に憑依した。

「--おい!佳代!出かけるぞ!」
憑依された瑞穂ががに股で歩きながら妻に叫ぶ。

妻の佳代は、夫が娘に憑依したことを悟り、
何も言わずに、夫の指示通りにした。

荷物を佳代から受け取ると、
瑞穂は微笑んだ。

「あの餓鬼が…!
 俺の娘を泣かせたことを後悔させてやるー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

妻を追い出してから2週間が経過した。

未だに離婚届の記入はしてもらえていない。

しかし、それでも、妻が居なくなった家で
幸助は穏やかな日常を送っていた。

あの妻が居なくなるだけで、
こんなにも平和になるとはー

しかし…
それは、突然訪れたー。

「---おい!開けろ!」
家の玄関が激しくノックされるー。

「--!?」
幸助は驚いて玄関の方を見る。

今日は土曜日。
せっかくの休みに
最悪の来訪者だ。

「おい!クソガキが!開けろ!」
外で大声で叫んでいるのはーー
ほかならぬ瑞穂だ。

幸助は居留守を使おうかと思った。
だがー
近所の目もある。

ため息をつきながら玄関を開けると、
そこには鬼の形相の瑞穂が絶っていた。

見た目はとても可愛らしいのだが、
幸助にとっては悪魔のような存在ー

それが、帰ってきた。

「--お…おい…!ふざけるな!
 離婚届はいつ書くんだ!」

幸助が叫ぶ。

もう、容赦はしない。
自分は瑞穂の召使ではないのだ。

言うべきことは言わなければいけないし、
今回ばかりは絶対に離婚する!

瑞穂は偉そうな態度で居間に入ると、
そこであぐらをかいて、腕を組んだ。

「---」
幸助は目のやり場に困ってしまう。

スカートをはいた瑞穂があぐらをかいているのだ。
中が見えている。

しかし、中に視線をやれば、また瑞穂が
何か怒りだすかもしれない。

「--俺の考えは変わらない。
 瑞穂、俺はもう君と暮らすことはできない。
 俺と離婚してくれ!」

幸助が叫ぶと、瑞穂は鼻息を荒くして答えた。

「---断る」

「なんだと!?」

幸助は叫ぶ。

ここまで好き勝手されて、いざ離婚を持ちだしたら
断るだと?

俺を何だと思ってるんだ!
と幸助は憤りを隠せなかった。

しかしー
瑞穂はさらに続けた。

「-きみは、娘を泣かせたな。
 父として、絶対に許すことはできん」

腕を組んだままの瑞穂が言う。

「--な、何を言っている?」
幸助は戸惑ったまま、
瑞穂の方を見る。

瑞穂は大声で叫んだ。

「俺の娘を泣かせるとは貴様…!
 どういう了見だ!」

とー。

「--な、、、こ、この2週間音信不通で何を
 考えていたのかと思ったら…?

 それか?」

幸助は呆れたように言う。

「お義父さんのふりをしたって無駄だぞ!
 俺はー」

幸助がそこまで言うと、瑞穂が
にやりと微笑んだ。

「--きみと俺の間でした約束、覚えてるか?」
瑞穂の不気味な笑みー。

確かにいつもの瑞穂とは違うー

「約束ー?」

幸助は記憶の引き出しを探る。

約束と言えばー
瑞穂の父親に初めて会ったとき、
1対1でファミレスに連れていかれて、
そこでーー約束した。

”娘さんを永遠に幸せにします
 何があっても、この手を放しません”

とー

「--って言ったよな君は?」
瑞穂が笑う。

「--なっ…」
幸助は身を震わせる。

「--あのとき君が頼んだのは
 ハンバーグセットとドリンクバー。
 飲んだのはメロンソーダ2杯とコーラ3杯、
 レモンソーダ2杯にオレンジジュース3杯だ。

 俺は腹をこわすと言ったが
 きみは「ドンリンクバーでは元を取らないといけない」と
 俺の言葉に聞く耳を持たなかった
 そして君は腹を壊して、俺の家のトイレで、腹を下した。」

瑞穂は早口で言った。

「------~~~!!」
幸助は唖然とする。

この早口で畳みかけるように相手に何かを言うのは
瑞穂の父親、隆三郎の典型的な癖だった。

「--ま、、まさか、本当にお義父さん?」
幸助が言うと、
瑞穂がにやりと笑みを浮かべて胸を触った。

「あぁ、そうだ。娘との離婚は認めない」

瑞穂が笑いながら胸を触っている。

「あんた…」
幸助は呟いた。

「自分が何をしているのか、分かってるのか?
 --この…とんだ変態だな」

幸助が呆れた様子で言う。
どういう仕掛けか知らないが、自分の娘を
乗っ取って胸を揉んでいるー
完全に変態だ。

「--それが男ってもんだろ?」
汚らしい笑みを浮かべると瑞穂は立ち上がる。

「--いっしょにするな!」
幸助が叫ぶと、
瑞穂は近づいてきて、
幸助の頬に手を触れながら呟いた。

「今から1週間、俺と…いえ、わたしと共同生活をして、
 離婚を許可するかどうか決める。
 異論はないな?」

瑞穂が高圧的に言う。

幸助は戸惑う。

瑞穂の身体を心配しているのではなく、
とにかく離婚したかった。

「---お断りします」
幸助がそう言うと、
瑞穂は突然服を脱ぎ捨てた。

「---な、、、何をして…?」

瑞穂が笑いながらポーズを決めると、
甘い声で言った。

「わたしが、このまま泣きながら外に出て行ったら
 どうなるかなぁ~?
 よ~く考えてごらん?」

その言葉に幸助は、凍りつく。

「くっ…」

瑞穂が髪の毛をわざとぐしゃぐしゃにして、
下着をイヤらしく乱すと微笑む

「--きゃ~!たすけて~!って
 叫んだらどうなるかなぁ~?」

瑞穂の脅すような口調に幸助は叫ぶ

「ひ…卑怯だぞ!」

その言葉に、瑞穂は笑った。

「俺の娘を奪っておいて、
 離婚しようなんて随分図々しいじゃないか?
 なぁ、幸助くんよ」

瑞穂が下着姿のまま、がに股で部屋を歩き回る。

「--悪い事は言わない。
 君は今から俺と、いや、わたしと共同生活をする。
 それしか選択はない

 選択肢はイエスか、サーだ。どっちだ?」

この父親を納得させるには
相手の条件に乗るしかない。

幸助はそうあきらめざるを得なかった。

「---…サーッ」
幸助が言うと、
瑞穂は「ふふ、今日からよろしくね!」と微笑んで、
幸助の頬にキスをした。

「~~~~~~~!」
結婚式以来初めてのキスだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよう~」

翌日、瑞穂はキッチンで電子レンジを使っていた。

「何してるんだ…?」
幸助はそう呟く。

”いつも妻に接していたように接しろ”と
言われたため、
中身を意識しないようにしながら幸助が言うと、
そこには、弁当箱が置かれていた。

「は~い!弁当!」

瑞穂が微笑む。

冷凍食品とは言え、
いつも投げ渡されていた日の丸弁当とは違うー
普通の弁当がそこにはあった。

「--お…俺にこれを?」
幸助は思わず目に涙を浮かべてしまう。

これまで、毎日日の丸弁当だったのにー
こんな…

「--な、、何泣いてるの~?」
瑞穂が笑いながら言う。

「---だ、、、だって、、俺…
 いつも日の丸だったから」

そう言って、男泣きしながら弁当箱を掴むと、
瑞穂は「つらかったんだな。君も。偉いぞ」と言って、
幸助の頭を撫ではじめた。

しばらくして幸助が落ち着くと、
幸助は我を取り戻して会社へと向かって行くー。

一人残された瑞穂はため息をつき、
ソファーに座る。

だらしなく座って新聞を手にすると、
険しい表情で、それを読み始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

幸助が仕事を終えて帰ると、
そこにはメイド服姿の瑞穂の姿があった。

「お帰りなさいませ♡ご主人様っ♡」

!?!?!?!?!?!?!?

幸助は、メイド服の瑞穂の出迎えに
驚きーー
その場で顔を赤らめたー

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

果たして幸助は瑞穂と離婚できるのでしょうか~?
明日をお楽しみに~!

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    これは…中身父の方が結婚生活上手くいきそうですね…w
    もう、このままでいいんじゃないかな

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > これは…中身父の方が結婚生活上手くいきそうですね…w
    > もう、このままでいいんじゃないかな

    コメントありがとうございます~!
    確かにそう見えますネ~笑