<入れ替わり>汚染される心①~事故~

少女とオッサンが追突事故を起こしたー。

そしてー
2人は入れ替わってしまうー。

おっさんの仕草丸出しのJCと、
困惑するおっさんの物語…?

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「--であるが故に、
 ”心”を移し替えることには、大きなリスクが伴います」

とある学会ー

”人間の身体を入れ替える”
ことについての、発表が行われていた。

医療に活かすことができるのではないか、ということで
密かに、入れ替わりの研究が進んでいたのだ。

だがー、
壇上に立つ教授は言う。

「入れ替わり…仮にこれを行うことで、
 考えられることは”浸食”です」

スクリーンに映像が映し出される。

「別の身体に移植された”心”は、
 元の身体の脳の影響を強く受けると考えられます。

 入れ替わった後、誰の脳を使うのか?
 それは、相手の脳であるわけです。

 つまり、元々の人間の記憶、思考、そういったものが
 流れ込んでくる」

教授の演説に、一人の男が口をはさむ。

「つまり、どうなるというんだね?」

その言葉に、教授は微笑みながら言った。

「--体を入れ替えても、
 最後には、”元の人間”に戻る、ということですー。
 Aの身体に入ったBの心は、
 Aの脳に浸食されて、完全にAになってしまうー
 そういうことですー」

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瀬上 舞(せがみ まい)
近所の中学に通う心優しき女子生徒ー。
成績も良く、真面目に勉強していることから、
先生たちからの評判もよく、
男女問わず分け隔てなく接することから友達も多い女子生徒だった。

「---さっきはありがと!」
友人の理沙子が笑いながら、舞に言う。

「どういたしまして~!」
4時間目の授業の数学の宿題を忘れていた理沙子を
舞が手伝ってあげたことに対するお礼だー。

笑いながら走り去っていく理沙子の後姿を見て
元気だなぁ、と思いながら、その姿を見送る。

いつもの放課後ー
今日も、このまま家に帰って、
いつものように過ごすはずだった。

確か、今日の晩御飯は舞の好物だったはず。
晩御飯を思い浮かべながら
舞は、通学路を歩いていたー

「--くっそぉ…!」
ランニングシャツ姿でママチャリをこいでいる男・
原谷 健一(はらたに けんいち)は叫んだ。

イライラしながらママチャリをこぐ健一。

彼はー
ギャンブルで大負けして、借金を背負っていた。
今日は、なんとかパチンコで負けを取り戻そうとしていたのだがー
さらに負けてしまった。

「くっそぉぉおおおおお~!」

ママチャリに乗った40代の中年男が大声で叫ぶ。
周囲は驚いて健一の方を見る。

しかし、健一はそんな周囲の視線をお構いなしで
呟いた。

「世の中は不公平だ!」

と。

彼は、親のお金で大学を卒業後、
コンビニのアルバイトを始めた。

就職活動をしなかった理由は
”まだ20代のうちは遊んでいたいからー”

しかしー
人生、そう甘くはなかった。

両親は病気で無くなり、
彼は一人になった。

コンビニバイトだけで暮らしていくには
ボロアパートに移り住むしかなく、
そこで彼は、細々と生活を続けていた。

ある日、客と喧嘩になり、コンビニバイトをクビになってからは
彼はギャンブルまみれになった。

そして、今ー
彼は借金を背負っており、
毎日のように取り立てから逃げながら
家賃も滞納しているような、生活を送っている。

まさに、地獄のような生活だった。

「---!?」

そんな彼がー
下校中だった少女ー
舞とーーー

正面衝突してしまったー

健一は、全く前を見ていなかったのだー

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風がつめたいー
風をつめたく感じた彼女は目を覚ました。

後ろから猛スピードで走ってきた自転車に
追突されてしまった舞。

「--くっそ…」
舞は呟く。

ーーー!?

ふと、近くを見ると”自分”がそこには倒れていた。

”な、なんだぁ?”

目の前に自分が倒れている。
そしてー
自分の肩には、綺麗な黒髪がーー

!?!?

「えっ、これは…!?」

舞は自分の口を押えながら困惑した様子で
オッサンを見つめる。

なんで自分が目の前に?
しかも、自分から今、出た声は
女の声だった。

これは一体?
舞(健一)は、そう思いながら、
目の前にいる自分を見た。

「--?!?」
入れ替わってる?

舞(健一)は自分の姿を見た。

「くふふふふ…これは、チャンスじゃないか?」
舞(健一)は笑みを浮かべながら、
自分の身体に近寄って、自分を叩き起こした。

「あ…」
健一(舞)が目を覚ます。

「---おい、オッサン」
ついいつもの口調で話してしまう舞(健一)

戸惑いながら目を開く健一(舞)に、
舞(健一)は嬉しそうにスキップしながら
身体を1回転させてみせた。

「え…!どうしてわたしが目の前に!?」
健一(舞)が、かすれた声で叫ぶ。

「--急にわたしにぶつかってきてさ、
 おじさん、失礼しちゃうわ!」

わざとらしい女言葉を口にしながら微笑む舞(健一)

その言葉を聞いて健一(舞)は
「え、、ど、、どういうこと!?」と叫んだ。

まだ、身体が入れ替わってしまったことを
理解できていないようだ。

そんな健一(舞)に対して
舞(健一)は投げキッスをして「じゃあね~!」と嬉しそうに微笑み、
そのままダッシュしたー。

JCの身体を手に入れたー
こんな夢のようなことはないー

舞の身体になった健一は猛ダッシュで走った。

「あははは!あはははは!すげぇぜ!」
舞(健一)が大声で叫ぶ。

まるで子供のようにスキップしながら、
汚らしい笑みを浮かべてー。

「うはははは!あはははは!あははははははは~!」

中2の女子が、狂ったように笑いながらスキップしている。

周囲の通行人たちは、何事かと振り返る者も多かったが
誰も、声をかけることまではしなかった。

一方、
ランニングシャツ姿のおっさんになってしまった舞は、
慌てて自転車に乗ると、
走り去って行った自分の身体を追いかける。

「---わ、、わたしの身体が、奪われた?」
健一(舞)はそう思いながら、
自分の身体が走って行った方に向かうー

しかし、
走り去って行った自分を見つけることは出来なかった。

「ど…どうすればいいの」
健一(舞)は困惑した表情を浮かべる。

だがー
途方に暮れていても仕方がない。

まずは、
母親や父親にこのことを伝えなくてはいけない。

自分の身体を奪ったこのおっさんが
何をしでかすか分からない。

健一(舞)は慌てて自転車を走らせながら
自宅へとついた。

ボロアパートの一室。

「--ふぅ」
健一(舞)はソファーに座って、ふと気づいた。

「あれ…?」

健一の身体になってしまった舞は思うー。
なにここ…?と。

自分の家に帰ろうとしていたのに、
なんとなくこの場所に来てしまった。

ここは、健一のアパートだ。

「--え…ちょ、ちょっと…」
健一(舞)は
”自分の家”を思いだそうとした。

けれどー
自分の家がどこか分からない。

自分の家を思いだそうとすると、
このアパートが浮かんでくる

「え…、わ、、、わたし…?
 嘘…
 自分の家が…分からない?」

健一(舞)は
怯えた様子でそう呟いたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方、舞(健一)は、自分の家に帰宅していた。

母親と父親に迎えられて
自分の部屋に歩いていく。

そしてー

自分の部屋で一息ついた舞(健一)は思うー

”なぜ、この女の家が分かったのか”と。

入れ替わった後、家に帰ろうと思ったが
自分の家が分からなかった。

なんとなく浮かぶイメージに身を任せて
やってきたのがこの家ー。

舞の家だった。

「ま、いっか。俺のボロアパートの場所なんて
 わかんなくてもよ」

舞(健一)はニヤニヤ呟きながら
部屋を歩き回る。

がに股で部屋を徘徊し、
何かを見つけては「すげぇ~!」と叫んでいる。

「--んは~っ!これが年頃の女の部屋か~!」
自分の髪の毛を掴んでニオイを嗅いでは、
顔を赤らめている舞(健一)。

「は~~~!っかし、疲れたな~」
ブレザーを脱ぎ捨て、リボンをだらしなく
放り投げると、
ベットの上であぐらをかいて、
スカートの中身が丸見えであることも気にせず、
部屋を眺めた。

「--」
未だに現実味がないが、
自分は舞という子と入れ替わったのだー。

借金まみれで、何も良い事のなかった自分の人生に
希望の光が見えてきたー

「くくく…俺が女の子かー」
自分の胸を見つめる。

まだ、年齢的な問題だろうか。
胸が膨らんできている最中のようだー

「ふふ…楽しみだな…これから」
舞(健一)が邪悪な笑みを浮かべて立ち上がる。

「その前に、小便いきてぇな」
平気でその言葉を口にすると、
髪の毛をぼさぼさに掻き毟りながら部屋から出ていく。

「っ、邪魔くせぇな女の髪って」
髪をイラついた様子でどかしながらトイレに歩いていく舞(健一)。

トイレでスカートを脱ぐのに苦戦しながらも
なんとか脱ぎ終えた舞(健一)は、
そのまま立ち小便をしてしまいーーー

「ああああああああああああっ???」

トイレと自分を、汚してしまったー。

「くそっ!」
叫びながら誤魔化すために尿のはねた場所を
ふき取る舞(健一)

「あ~面倒くせぇ!」
舞(健一)はイライラしながらトイレから出ると、
洗面台でおっさん臭い咳をしながら、
たんを吐き捨てた。

そこで、大きな音を立てながら鼻をかむ舞(健一)。

その行動は、完全におっさんだった。

「--ちょっと、もうちょっと女の子らしくしなさいよ~?」
母親が苦笑いしながら言う。

「まるでおじさんじゃない」
母親の言葉に舞(健一)は
「そうかもね~うふふ~」と適当に返しながら
洗面台の前から立ち去る。

冷蔵庫の中から勝手にビールと
ソーセージを取り出すと、そのまま自分の部屋に上がっていき、
「~~~ふぁ~仕事後のビールは最高だぜ!」と呟いた。

あぐらをかき、
リビングから持ってきた新聞紙を読みながら
ソーセージを貪る舞(健一)

ビールを飲みながら大きな音を立ててげっぷをすると、
空き缶を部屋の隅に放り投げて、
今度は、シャツをめくって、腹を掻きだした。

「あ~かゆいなぁ」
ベットに寝そべって、だらしなく足をぷらぷらさせながら
ソーセージを食べている舞(健一)。

新聞を音読しながら、
経済ニュースの部分に一人つっこみを入れながら、
げらげらと笑っているー

彼女のスマホに、友達からのLINEが届いていたが、
そんなものに興味はなかったー

口にソーセージが入ったまま
新聞にツッコミを入れてニヤニヤしている舞(健一)。

ふと、舞(健一)は自分の身体のことを心配したが
「ま、どうでもいいよな」と笑いながら
鼻をほじると、鼻から取り出したものを、
可愛らしい部屋のじゅうたんに投げつけて、
彼女は微笑んだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー

健一になってしまった舞は、
ボロアパートの中で、
あることに気付いていたー

「・・・・嘘…」
唖然とする健一(舞)

彼女は、
恐怖したー

”自分の名前を思いだせなくなっていることにー”

②へ続く

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コメント

下記のリクエストを題材とした作品デス!

(リクエスト原文)
ある事で女子中学生とオッサンが入れ替わったけど
少女になったオッサンは少女の口調で、
オッサンになった少女はオッサンの口調で自然に話されるのです。

この内容をもとに色々考えた
入れ替わりモノが今回の「汚染される心」ですネ!
リクエストの希望通りになっているかどうかは分かりませんが、
次回もぜひお楽しみください~

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おっさんとJCの入れ替わり!実に美味しい組み合わせですねぇ…

    精神浸食は入れ替わりだと定番ではありますが、無名さんの作品だと新鮮ですね。
    また、キャラ名が体(中身)表記になっているのは無名さんの入れ替わり物だと初?(前もあったらすみません)
    『奪われた青春』といい、新しい作風にチャレンジされているようで好きです

    今後JC(おっさん)側にも影響が出てくるのか…?
    次回が楽しみです!

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > おっさんとJCの入れ替わり!実に美味しい組み合わせですねぇ…
    >
    > 精神浸食は入れ替わりだと定番ではありますが、無名さんの作品だと新鮮ですね。
    > また、キャラ名が体(中身)表記になっているのは無名さんの入れ替わり物だと初?(前もあったらすみません)
    > 『奪われた青春』といい、新しい作風にチャレンジされているようで好きです
    >
    > 今後JC(おっさん)側にも影響が出てくるのか…?
    > 次回が楽しみです!

    ありがとうございます~!
    せっかくなので、作風の幅もいろいろにしたいな~と思ってます!
    ()名前付けは、ずっとやるのは初めてだったと思います☆