<憑依>未来の医療~深淵ヲ覗イテ~

”医療用憑依薬”を用いて、
世界を牛耳る総合医療連盟。

この世の身体は全て、彼らの玩具ー。

そんな”医療の未来”は望んでいない。
Dr友崎が、最後の戦いへと、赴いていくー。

未来の医療の最終作デス!

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南部第3病院へと入り込んだDr友崎は、
総合医療連盟の老人たちの本体が
生命維持装置に繋がれて眠っていると言う
地下を目指す。

総合医療連盟に憑依された女性たちをいくら
撃退したところで、老人たちは「次の身体」を見つけるだけだ。

きりがないし、犠牲者が、増えるだけ。

総合医療連盟による支配は、
本体を潰さない限り、終わらないのだー。

「--きゃはははははははははっ!」

廃虚の病院内に不気味な笑い声が響き渡る。

この病院は、数年前に閉鎖されている。
おそらく、総合医療連盟の老人たちの本体を
”安全”に保管するため、
あえて閉鎖したのだろう。

閉鎖されて、打ち捨てられた病院を、
好き好んで訪れる人間は、居ない。

「---まさか、まだあきらめてなかったんだ~!
 おじさんもしつこいね~!」

病院内に声が響き渡る。

この声は、総合医療連盟の老人に憑依された
小さな女の子の声だー

「----…くそっ」
Dr友崎は呟く。

響き渡る不気味な声はー
”ホログラムのものではない”

つまりー
あの少女が、既にこの廃病院の中に居る、ということだー

「おじさん~、
 そんなに命かけてどうするの~?
 
 おじさんが大人しく院長やってれば、
 おじさんの娘も妹も助かるんだよ~?

 それなのに、どうして~?
 てへへっ!ドMさんなのかなっ?」

馬鹿にするように、少女の声が響く。

どこに少女が居るのか、位置を把握できない。

不気味だが、先に進むしかない。
Dr松原が調べてくれたデータでは、
この廃病院の地下に、やつらがいるらしい。

生命維持装置に繋がれた状態で。

それを断ち切ればー
あの、邪悪な老人たちを排除することができる。

「--お~~~じさん!」
背後から声がして、Dr友崎が振り返ると、
そこには小さな少女が居た。

小学校かそのぐらいの、可愛らしい子だー

「---ママに教わらなかった?
 悪い事しちゃいけないって!」

少女が笑う。

Dr友崎は反論した。

「--悪い事をしているのは、どっちだ?
 お前たちだろうが!」

そう叫ぶと、少女がクスリと微笑んだ。
そして、突然軽い身のこなしで
バック宙をすると、Dr友崎の肩に飛び乗ってきた。

「あははは!おじさんの肩車~!」
無邪気に笑う少女。

「ーーどけ!」
Dr友崎が怒鳴りつける。

この無邪気な少女の中身は、
60を超えた、邪悪な老人なのだ。

「--あはははははは!あははははははは!」
少女は、肩車の状態で、Dr友崎の首を絞めはじめた。

「死んじゃえっ!」
少女は嬉しそうに叫ぶ。

だが、中身はどんなに邪悪でも、
身体は幼い少女のもの。

Dr友崎は少女を振り払うと、そのまま背負い投げをした。

少女は、古びた担架にぶつかり、そのまま勢いよく地面に
激突した。

「う~っ!いった~~~い!」

わめく少女を無視して、
Dr友崎は、先へと急ぐ。

とにかく、総合医療連盟の老人たちの本体をどうにかすることができれば、
世界は”医療の呪縛”から解放される。

Dr松原から預かったデータをもとに、
老人たちが眠る地下へと向かう。

「---なんだ?」
Dr友崎が人の気配を感じて身を隠す。

そこにはー
意思を失い、ゾンビのように歩く少女たちの姿があった。

「これはーー」

「--その人たちはね~!
 試作段階の薬を飲ませて廃人にしちゃったの!
 今は何でもわたしたちの言うことを聞く
 操り人形よ!てへっ♪」

再び可愛らしい少女が、姿を現す。

幼いその身体はもうボロボロだ。
けれど、支配している老人にとって、
そんなことはどうでもいいのだろう。

彼女は、嬉しそうに笑っている。

総合医療連盟の老人たちの本体を世話するために
特殊な薬で操り人形にされた女性たちが
病院内を徘徊していた。

うつろな目で、皆痩せ細っている。

「---悪魔め…!」
Dr友崎はそう叫ぶと、構わず走り出した。

この先の”第2治療室”という部屋に
総合医療連盟のトップ5の身体が
生命維持装置に繋がれて保管されているらしい。

急がねばー。

「あははっ!逃がさないよ~!」
少女が笑う。

すると”操り人形”の女性たちがゾンビのように
襲いかかってきた。

「くそっ!邪魔だ!どけ!」
Dr友崎は、彼女たちを振り払い、必死に
第2治療室に向かおうとする。

「---おじさん~!わたしたちと遊ぼうよ~!」
ゾンビのような操り人形たちに交じって
総合医療連盟に憑依されている幼い少女も
襲いかかってくる。

もみくちゃにされるDr友崎。
集団に殴る、蹴るの暴行を加えられながらも、
Dr友崎は思った。

”俺がここで立ち止まったら、総合医療連盟のやつらはこれからもー”

「ぬおおおおおおおっ!」
Dr友崎は叫んだ。

人間、追いつめられると
普段出せないような力を発揮するのだと言う。

今のDr友崎は、まさにそれだった。

追いつめられて、
普段は出せないような力を、発揮した。

群がる操り人形の女子たちを突き飛ばし、
そして、最後に総合医療連盟の老人に憑依されている
少女を投げ飛ばした。

「ぎゃあっ!」
少女がボキっという音と共に、床に崩れ落ちる。

骨のどこかがイッたのかもしれない。

だがー
もう、構っている暇はない。

Dr友崎が地下に入り込み、
そしてー
総合医療連盟の老人たちが眠っていると言う
場所に辿り着いたー

そこにはー
生命維持装置に繋がれ、
ベットの上で横たわる5人の老人たちが居た。

60、70、80代ぐらいだろうか。
よぼよぼの老人たちがー
機械に繋がれて生きながらえている。

もちろん、中身は空だー。
ここにいる5人は、まったく無関係の女性に
憑依しているのだからー

ブゥン…!

壁についているモニターが突然起動した。

「--そこまでよ」
総合医療連盟のチャイナドレス美女が言う。

「---お前たちは終わりだ!
 今からお前らの本体を、俺がこの手で殺す」

Dr友崎が叫ぶと、
チャイナドレス美女は笑った。

「果たしてどうかしら?」
モニターに、
Dr友崎の娘と、妹の姿が映し出される。

2人とも、邪悪な笑みを浮かべているー。

「お父さん…
 お父さんがこれ以上、私たちに刃向うなら、
 わたし、自分で自分の首を切っちゃうよ?」

総合医療連盟のトップ5の一人に憑依されている
娘が、自分の首筋にナイフを当てて微笑んでいる。

「--わたしは、自分の人生、滅茶苦茶にしちゃう!」
妹は、服を脱ぎ捨てて、そのまま外に飛び出そうとしている。

麻土香と阿佐美の姿を見て、
困惑するDr友崎。

しかし、Dr友崎は叫ばなかった。
あくまでも、冷静な表情をしている。

「---どうしたの?
 娘と妹が、死んじゃうかもよ~?」

チャイナドレス美女がモニター越しに笑う。

「ふふふふふふふふ…
 あはははははははははははは!!」

突然の笑い声。

モニターの向こうからDr友崎を見ている
チャイナドレス美女も
他の2人も、唖然としている。

笑っていたのはー
Dr友崎だったのだ。

「---な、何がおかしいの!」
チャイナドレス美女が叫ぶと、
Dr友崎は、眠ったままの老人たちをつなぐ
生命維持装置に近づいて、微笑んだ。

「--お前らが俺の娘と妹を
 傷つけるのと、
 俺が生命維持装置を切断するの…
 どっちが早いか、試してみるか?」

Dr友崎が言う。

「------!!」
チャイナドレス美女は、背筋の凍る思いで
その言葉を聞いた。

確かにー
Dr友崎の娘の首を切りつけるよりも、
自分たちが先に消滅してしまうかもしれない。

「---く…」
チャイナドレス美女が、モニターの向こうから
悔しそうに声をあげる。

「---追いつめられているのはお前らだ!
 何が医療用憑依薬だ!
 そんな、お前たちのための医療の未来なんて
 必要ない!」

Dr友崎がモニターに向かって叫ぶ。

その時だったー

「きえええええええええっ!」
という奇声と共に先ほど倒したはずの
幼い少女が襲いかかってきた。

「こいつ…まだ!」
Dr友崎はそう叫びながらも、少女を投げ飛ばすと、
少女は壁に激突して、そのまま意識を失った。

「----ごめんな」
乗っ取られているとは言え、小さな少女を傷つけた
Dr友崎の心は痛んでいた。

だがー
こうでもしなければ、
総合医療連盟の支配は止められない。

「----」
生命維持装置を停止しようと、その装置を見つめる
Dr友崎ー。

「---そこには!」
チャイナドレス美女が叫んだ。

今まで余裕だった彼女の表情が歪んでいる。
ようやく、追いつめられていることを自覚したのだろうか。

例え、Dr友崎の妹と娘を殺したとしても、
Dr友崎は、自分たちの生命維持装置を切断するだろうー

つまりー
総合医療連盟はもう”詰んでいる”

しかしー
まだ、切り札はあった。

「そこには、私たちが死ぬと爆発する爆弾が仕掛けられている!」
チャイナドレス美女がモニターの向こうから叫ぶ。

「---お前は…死ぬ!
 死んだら娘にも妹にも逢えなくなるぞ?
 それでもいいのか??」

チャイナドレス美女が叫び続ける。

「わしらをバカにしやがって!
 貴様のような若造が、”医療の未来”の邪魔を
 するなど、許せぬ!」

チャイナドレス美女は、焦りからか、素で話し始めた。

そしてー

「---どうだ?今なら今日のことはなかったことにしてやる。
 わしらとて、悪魔ではない。
 そこから大人しく立ち去れば、貴様は今まで通り、院長として」

「---悪魔だ」

Dr友崎の言葉に、チャイナドレス美女は口を止めた。

「--あ?」

「--お前たちは悪魔だ!
 俺が死んだってかまわない!
 俺は元々、患者を救うために医者になった!
 お前たちを殺すことが、患者を、世界を救うことになるなら
 俺は喜んで死んでやるとも!」

Dr友崎がそう叫び、
総合医療連盟の老人トップ5に繋がっている
生命維持装置を切断しようとした。

ーDr中岡
ー丸神内科部長
ー和久井院長

一緒に働いたものたちの顔を思い浮かべる。

3人とも、もう、この世にはいない。

憑依薬を悪用した同期の中岡は、
あの世で再会したらこっぴどく叱りつけてやろうー

巻き込んでしまった丸神内科部長にはお詫びをー、

和久井院長には、
”もう解放されました”と伝えようー

そんな風に想いながら、Dr友崎はー
生命維持装置をー

「--おのれえええええええええ!」
チャイナドレス美女が鬼の形相で叫ぶ。

彼女の中にいる老人は、この身体を捨てて、
今すぐ自分の身体に戻ろうと一瞬考えたがー

もう、手遅れだった。

ブチっ…!

生命維持装置はーー
停止したー

総合医療連盟トップ5の老人たちが、
痙攣を起こしてあっという間に死んでいくー

「ああああああああああああっ!」
モニターに映っていたチャイナドレス美女が苦しむ。

そして、Dr友崎の妹と娘もー。

3人とも、倒れてその場に気絶したー。

「---良かった…
 医療の未来…あとは、、任せたぞ」

Dr友崎が微笑みながら言うと、
仕掛けられていた爆弾が爆発しー
病院はーー大爆発を起こしたーー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3日後。

友崎院長は死んだー。

総合医療連盟と戦ってー。

そして、新院長として、
Dr友崎と一緒に、総合医療連盟の老人たちの
居場所を突き止めたDr松原が就任していたー。

「--新しい未来の医療に向けて、
 みんなの力が必要だ。
 よろしく!」

挨拶を終えると、Dr松原は院長室へと戻るー。

院長室の椅子に座ったDr松原は悲しそうに微笑む。

Dr友崎は、命を懸けて、総合医療連盟を倒したー

…と、思って死んでいったのだろうなー

と。

「--ご苦労様」

チャイナドレス美女のホログラム映像が現れる。

「--あなたに依頼して、世界だったわ」

Dr松原は「は…これも未来の医療のためです。」と頭を下げた。

Dr友崎と共に総合医療連盟の老人たちの居場所を
調べていたDr松原はー
既に総合医療連盟に懐柔されていたー。
Dr友崎が裏切ろうとしていることも伝えていたのだー。

松原自身が、この世界ー、
総合医療連盟が支配する世界で良い地位を得るためにー。

「悪いな…友崎」
Dr松原はそう呟くと、にやりと笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

総合医療連盟本部ではー
5人の女性が笑っていた。

「それにしても、友崎さんも可哀想ねぇ」
セーラー服姿の女子高生が笑う。

「--そうね~!
 まさか”わたしたちのお遊び”につき合わされた挙句
 無駄死にしたなんて思ってないでしょうね~!」
メイド服の少女が笑う。

「--あははっ!ざ~んねん!」
ランドセルを背負った少女が笑う。

「--ま、いいじゃない。
 友崎Drは、わたしたちを消し去れたと思いながら
 死んでいったんだから。

 あなたの演技も、なかなかだったわよ」

OL風の女性が言うと、
チャイナドレス美女がほほ笑んだ。

「--あの廃病院で寝ていたのは、
 何の関係もない老人ー。
 わしらの本体は、別の場所にあるからのぉ…」

総合医療連盟の老人たちは、
戯れでDr友崎に偽の情報を流し、
必死こいて、自分たちを仕留めに来るDr友崎の様子を見て、
楽しんでいた。

そして最後には、
何の関係もない老人の生命維持装置を止めて、
Dr友崎は、満足して死んでいったー

「馬鹿なやつだ」
チャイナドレス美女は立ち上がる。

残りの4人は、Dr友崎との争いで体を失った為、
また新しい少女たちに憑依したー。

Dr友崎の娘と妹は既に”処分”済みー。

「---我々が作るのだー。
 医療の未来をー」

チャイナドレス美女は、窓の外を見つめながら不気味に微笑んだー。

新院長に就任したDr松原は”知りすぎている”

チャイナドレス美女が合図をすると、
メイド服の少女とOLが微笑みながら外に出ていく。

Dr松原も、もう用済みだー。

”未来の医療のために、死んでもらおう”

医療は、未来に向かっていく。
これからもー
邪悪な老人たちの手の内でー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

”未来の医療”完結デス!
総合医療連盟の支配する世界…
これはもうどうにもなりませんネ…!

お読み下さりありがとうございました!

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憑依<未来の医療>
憑依空間NEO

コメント

  1. 飛龍 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    黒っ……ダークエンドですねぇ。
    Dr.友崎が満足して死ねたのが救いかもですね、客観的には無駄死にであっても……。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 黒っ……ダークエンドですねぇ。
    > Dr.友崎が満足して死ねたのが救いかもですね、客観的には無駄死にであっても……。

    本人は、満足して、逝ったので幸せだったかもしれませんネ…
    でも、とってもダークなエンドでした!

  3. 匿名 より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    父親のことを好きな幼児がいました。大人になったらパパと結婚するのが夢でした。しかし、友だちからパパとは結婚できないんだよと聞き、それ以来心のそこに押し殺してました。数年後、学校の図書館で偶然好きな人と両想いになるおまじないの本を見つました。そのおまじない通りにすると父親と入れ替わってしまいました。親子でセックスするとお互いの記憶が交換され、女の子になった元父親は女の子の記憶に支配され父親の時の記憶がなくなります。父親が大好きな女の子になりました。
    元女の子の方は女の子の時の記憶も父親の記憶もあります。
    父親になった女の子は母親と離婚し女の子になった父親からパパについて行くといわれ母親も仕方なく認めました。それから、2人で法律上は結婚できないが夫婦として生活し10年後元父親の女の子は妊娠します。そこで、元女の子の父親が、元父親の記憶をおまじないでもどします。記憶をもどした元父親は驚愕しぼうぜんとする。元父親にとってはダークな話となります。

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    リクエスト受け取りしました~
    ありがとうございます!

    混雑中なので、気長にお待ちください~!

  5. より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    松原も愚かだな。
    分かってたとは言え友崎が無駄死になのは悲しいです。
    まさにメリークルシミマス、か

  6. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 松原も愚かだな。
    > 分かってたとは言え友崎が無駄死になのは悲しいです。
    > まさにメリークルシミマス、か

    コメントありがとうございます!

    本人が決着をつけたと思ったまま…
    なのは、唯一の救いなのかもしれませんネ!

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