<女体化>三年間の心変わり③~こころ~(完)

女体化してからもうすぐ3年ー。

恭一は、すっかり女子高生になっていた。

しかし、ある日、事件は起きた…

--------------------------

3年生の冬ー。

3学期を迎えて、恭一や卓は、
まもなく卒業するタイミングを迎えていた。

女体化して京香になった恭一も、その親友の卓も
大学進学が決まり、
あとは、卒業の日を待つだけだった。

恭一は日に日に女らしくなり、
今ではすっかり女子高生になっている。
1年生のクリスマスの時から、付き合っている卓も、
恭一が、元々男子だったことなど、
忘れてしまいそうな勢いだった。

しかし、ある日ー。

卓が家で朝食を食べていると、
父親が近づいてきた。

「卓、例の事だが…」
と父は言う。

「例のこと?」
卓が聞き返すと、父は小声で言った。

「女体化した、お前の友達のことだー」

卓は、恭一が女体化したあと、研究者である父親に
”男に戻してあげられる方法はないか”と相談したことを
思い出した。

「--え?」
卓が”まさか”という表情で言う。

「あぁ…完成したよ。
 男に戻すための薬がな。
 企業秘密だから成分は言えないが、
 とにかく、必ず男に戻れる」

その言葉に、卓は複雑な感情を抱いた。

最初は”元男”である恭一と付き合うことに
違和感をぬぐえなかったが、
今は本気で女体化した恭一のことが
女として大好きだ。

だがー。

「--お前の、ためだもんな…」
卓は悲しそうにそう呟いた。

自分の想いのために、
恭一を女のままにしておくわけにはいかない

”俺は男だ!”
と必死に叫んでいたころの恭一を思い出す。

「---俺が、元に戻してやるからな」

卓は、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

卓は、恭一を自宅に招いた。

「--わ~!卓の家に来るなんて初めてだよ~!」
嬉しそうに言う恭一。

女子高生らしく、とてもおしゃれな格好だ。

「はは…ま、たまにはと思ってよ」

「おじゃまします♪」
礼儀正しく言う恭一。

卓はチラッと恭一の方を振り返る。

いつもの優しい笑みを浮かべる恭一。
もう、すっかり女子になりきっているー
”無理しているのか”
それともー心身ともに女になってしまったのかー

「ま、茶でも飲めよ」
リビングに恭一を通した卓は、お茶を出した。

「--うん!ありがと♪」
スカートを整えながら座る恭一。

「------」
卓は神妙な面持ちでそれを見ていた。

”ある日、急に男に戻った”

そういうことにするー。
それが卓と父親に出した結論だった。

父親によれば、
この薬はまだ明るみに出してはいけない薬なのだという。
そのため、恭一にも伝えることはできないー。

卓も、恭一に余計な心配をかけたくないとの思いから
自分の父親が、恭一を男に戻す方法を探っていた、
などと恩着せがましく言うつもりはなかった。

「--なんか、変わった味だね?」
恭一が微笑む。

「--ん?あぁ、親戚から貰ったお茶でさ。
 口に合わなかったか?」

卓が言うと、「ううん、美味しいよ」と恭一は答えた。

卓は、少し複雑な思いだった。
そのお茶には”男に戻す薬”を混ぜてある。
味に違和感があるのはそのためだ。

これを飲むと、1、2週間ほどかけて
少しずつ身体が男に戻って行くのだと言う。

「--お前のためだもんな」

女としての恭一ともっと一緒に過ごしたかった、と
思いながらも、それは自分の勝手な都合だ、と
卓は自分を押し殺して、恭一に男に戻らせるための
薬を、密かに飲ませたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「おはよ~!」
恭一の様子に変わりはない。

卓は、”やっぱ、父さんの薬、効果ないんじゃね?”などと
思いながらも、いつも通り、恭一に接していた。

2日目も、3日目も、変わらなかった。

しかしー
金曜日の放課後ー
4日目のことだった。

「--卓…」

放課後、一緒に歩いていると、恭一が口を開いた。

「-ん?」
卓が恭一の方を見ると、
恭一が呟いた。

「-ーーわたしに、何をしたの?」
恭一の言葉に、卓が「え?」と返事をする。

「---な、、何って?」
卓が返事をすると、
恭一は続けた。

「---わたしに、何かしたよね?」
恭一が問い詰めるように言う。

「-は、、?お、、俺は何も」
卓はとぼけようとした。

しかしー

「ねぇ!教えてよ!」
恭一が叫んだ。

「---ちょ、、お、、落ち着けよ」
卓がそう言うと、
恭一はセーラー服をまくってみせた。

腕にはー
男のような毛がはえはじめていた。

「---ねぇ!わたしに何したの?
 あの日ーー
 お茶に何か混ぜたでしょ?」

恭一の言葉に卓は動揺する。

「--嘘をついてるときの卓の顔、分かるもん!」
叫ぶ恭一。

「--お、、、落ち着け…
 お、、俺は!」
卓はどう返事をしていいか分からず、
困惑していた。

「---何を混ぜたの?
 ねぇ!教えて!」
恭一の言葉に、
卓は観念して答えた。

「----男に戻る…薬を…」
卓がそう言うと、
恭一は呟いた。

「どうして…?」
恭一が手を震わしている。

見た目はもうすっかり女の子ー
いや、高校生活3年間の間で、中身も女の子になったー。

「---お前が…男に戻りたいと…・言ってたから…
 ずっと、、父さんが研究してくれてたんだ…
 3年間…ずっと」

卓がそう言うと、
恭一がため息をついた。

「---急に女にされて、
 やっと女の子としての暮らしとか、
 生活とか楽しみ方に慣れたのに、
 今度は急に男に戻れって?」

恭一が問い詰める口調で言う。

「わ、、、悪かったよ…」
卓は困惑していた。

確かに、2年生になったあたりぐらいから、
恭一は”元に戻りたい”だとか
”俺は男だ”だとか、言わなくなった。

けどー
それは、無理をしているだけだと、そう思ってた。

「---ふざけないで!
 勝手に、、勝手に決めないでよ!
 なんで私に相談してくれないの!」

恭一が泣き叫ぶ。

「い…いつまでも…!
 いつまでも女で居るわけにはいかねぇだろ!」

卓が叫ぶ。

「大学は高校側の配慮でなんとかなったけど、
 就職はどうする?
 京香って名前は所詮偽名だ。
 お前は、恭一なんだよ。

 将来、そのままじゃ必ずお前は、壁に
 ぶち当たることになる。
 だから…」

「もう、いいよ!」
恭一は泣きながら走り去ってしまった。

卓は、恭一の後姿を見ながら思う。

”これで、いいんだ”

とー

例え、自分が嫌われても、
恭一を、男に戻すことがー
正しい事なのだとー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「いやだ…!いやだ!!」
恭一は自宅で泣き叫んでいた。

髪が1日1日、少しずつ変質していくー
短く、なっていく。

胸が、しぼんでいくー

そしてーー
股間に異変が起きるー

「---いやだ!!!!戻りたくない…!
 いやだ!!
 私は女よ…!男になりたくない…!」

恭一は、連日、泣き叫んだ。

しかし、
無情にも、1週間が過ぎたころには、
彼は男に戻っていた。

だがーーー

「----・・・」
学校で、恭一は卓と口を利かなくなっていた。

卓も、今はそっとしておいたほうが良い、と
恭一に話しかけることはしなかった。

「--」
卓の視線の先には、いつものように女子達と
おしゃれトークをしている恭一の姿がある。

髪も長く、
いつも通りー

「---」
卓には分かっていたー
もう、身体はとっくに男に戻っている。

だがー
恭一は女装をしているのだと。

男に戻った自分を受け入れることができずー
女装を続けているのだとー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そして、卒業式の日がやってきたー

卒業式が終り、
桜が散る中、卓は恭一に声をかけた。

振り返った恭一は、笑顔だった。

「卓…」

その言葉に、卓は言う。

「---もう、とっくに身体は男に戻ってるんだろ?
 …ずっと、そのまま、生きていくつもりか…?」

卓の言葉に、恭一は微笑むだけで、
返事はしなかった。

そしてー

「不思議だよね…
 最初は”俺は男だ”って思ってたのに、
 急に女になっちゃって、
 高校生活3年間を過ごしていたら、
 今度は私は女よ、って思っちゃってる」

悲しそうに言う恭一の言葉を、
卓は静かに聞きつづけた。

「---3年間で人ってこんなに
 変わっちゃうんだなぁ…って」

そこまで言うと、
恭一は卓の方に近づいて微笑んだ。

「---もう、お別れしましょ?」

と。

「---別れって…」
卓が言う。

卓と恭一は付き合っていた。
別れ、ということはもう自分は
嫌われてしまったということなのだろうー

だが、違ったー。

「---だって、男同士、付き合うわけには
 いかないでしょ?」

と恭一は微笑んだ。

顔は可愛いまま…
だが、よく見ると、男っぽい特徴が見受けられる。

必死に女装しているのだろうー

「--た、、確かにな」
卓は笑いながら返事をした。

そして、恭一は言う。

「ありがとうー」

と。

確かに男には戻りたくない。
けれど、卓が自分のことを必死に
考えてくれていたことは、
よく、分かる。

だから、恭一はお礼の言葉を述べたー

「--今日で…卒業かなぁ」
卓に背を向けて、恭一は桜を見上げながら微笑む。

「--高校だけじゃなく、
 女の子も卒業…」

その言葉は、女体化して、
再び男体化させられた人間にしか分からない
悲しい感情に満ちていたー

「---卓…
 ありがとう…

 ううん、ありがとな…」

そう言うと、恭一はにこっと微笑んで
そのまま立ち去って行った。

「---恭一…
 俺の方こそ、ありがとな…」

何だかんだで楽しい3年間だったー
卓は、悲しそうに恭一の後姿を見つめながら、
そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

4月ー

大学の門をくぐる、
爽やかな男子大学生の姿があった。

彼は、微笑んだー

「俺は、男だー」

と。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

3年間も過ごせば、
違う性別での生活にもきっと、
慣れちゃいますよネ…!
そんな心情の物語でした!

お読み下さりありがとうございました!

コメント