人は、変わるー。
ある日、女体化してしまった男子高校生は、
戸惑い、困惑し、そして叫んだ。
「俺は男だ!」とー。
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「ーーっかし、お前は本当にいい加減だよな」
男子高校生の卓(すぐる)が笑いながら言う。
「いいじゃねぇか。真面目にやってりゃ。
見た目を気にするなんて、時間の無駄だぜ」
高校1年の、棚井 恭一(たない きょういち)は、
笑ながら言う。
彼はイケメンなのだが、
身だしなみを一切気にしない男子だった。
髪の毛がぼさぼさになっていても気にしないし、
鼻毛が出ていても気にしない。
イケメンで、成績も良くて、真面目なのだが、
そういう部分には無頓着な男子だ。
とにかく、彼は面倒臭がり屋だったのだ。
「ふぁ~あ」
あくびをする恭一。
友人の卓は「そんなんじゃモテねぇぞ~!」と笑う。
「--モテなくてもいいんだよ!
彼女とか、面倒くさいだけだろ~!」
恭一は笑いながらそう答えたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スマホのアラーム音で目を覚ます恭一。
今日も朝がやってきた
「ふぁ~あ」
めんどくさそうに起き上がる恭一。
恭一は頭をかきむしりながら
そのまま階段を下りていく。
”今日もめんどうくせぇ1日の始まりだ”
そんな風に思いながらそのままトイレに入った恭一は
首をかしげる。
「あん???」
用を足そうと思ったのだがー
そこにーーー
アレがなかった。
「---!!!!!!!!
ね、、、ねぇええええええええええええ!」
大声で恭一は叫んで
慌てて部屋に戻った。
そして、手鏡を見るとー
彼はーーー
女になっていたーー
長い黒髪ー
可愛らしい目ー
膨らんだ胸ー
綺麗な肌ー
「--うっ…ええええええええええええええええええ!」
恭一は大声で悲鳴をあげた。
声も、カワイイ声だった。
「ちょ、ちょっと待てよ…
なんだこれ?
俺、女になってる?」
唖然としながら恭一は言う。
可愛い声が口から出てー
さらに違和感を感じる。
「--ど、どういうことだよ」
恭一は慌てて、下に降りる。
か、家族に何て言えばいいんだ?と思いながら。
「---か、、母さん!俺…
俺、、、お、、女になっちゃった…!」
そう言う、恭一を唖然とした様子で見る母ー
数秒間の沈黙。
恭一は母がなんて言いだすかとドキドキしながら
沈黙に耐えた。
そしてー
「あら、、、そう…」
母親はそれだけ言うと、面倒くさそうに
キッチンの方に目をやった。
「反応うすっ!」
恭一は思わずそう叫んだ。
そうだー
棚井家はー
”面倒臭がり屋”ばかり揃っているー
自分も、母も、父もだー
母は、女体化した息子を見て、
面倒くさいとでも思ったのだろう
あっさりと、それを受け入れてしまった。
「---はぁ…」
母がため息をつく。
やっぱり混乱しているのだろうか。
「--女の子用の、洋服買わないとねぇ」
そこかよ!
恭一は突っ込まずには居られなかった。
普通、息子が女体化したらびびるだろ?
「---母さん!俺は男だぜ!
女物の服なんて…」
恭一は叫ぶ。
すると、背後から出勤の準備をしていた父親が
やってきて、恭一の胸を背後からわしづかみにした
「ひゃあっ!?」
思わず変な声を出してしまう恭一
「いい胸してるじゃないか。
それに、髪も」
父親が笑う。
「--お、、親父!気持ち悪い事すんなよ!
ってか、何でおれ、女に…?」
恭一が言うと、
父親は笑った。
「考えるのも面倒臭いし、
なっちまったものは仕方ないだろう」
とー。
どういう思考なら、こんなにあっさりと息子の
女体化を受け入れられるんだー?
そう思いながら恭一は叫ぶ。
「お、、俺は男だ!男に戻してくれ!」
恭一の言葉に
父親は首を振った。
「もう一晩、寝れば治るかもしれないぞ」
父親の言葉に
”確かにそうだな”と思い、恭一は、
今日、学校を休むことにして、
1日を家で過ごした。
「髪も胸も邪魔だなぁ…まったく」
あぐらをかきながら
みすぼらしいシャツ姿で、
ため息をつく恭一。
「あ~あ…寝るか」
こんな姿じゃ落ち着かない。
寝れば、治るかもしれない。
そう思って、恭一は寝ることにした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
「戻ってねぇええええええええ!」
恭一は、大声で叫んだ。
「ねぇ、どうすんだよこれ…」
母親と父親を前に朝食を食べながら、
不貞腐れた様子で言う恭一。
父親がにやっと笑った。
「心配するな。学校には説明しておいた」
「はぁ!?」
父親の言葉に恭一が叫ぶ。
「説明したって、どうやって?!」
恭一が言うと、
父親は「ま、とにかく説明は済んだんだ」と
言って、玄関に置いてあった袋を持ってきて、
それを手渡した。
「女子になったからには、制服も替えなきゃな」
父親が持っていたのは、恭一が通っている高校の
セーラー服だった。
「えぇえええええええええええええ!」
恭一は叫ぶ
「そ、、、そんな恥ずかしいもの着れるかよ」
恭一の言葉に父親は言う。
「でも、女の子が男の制服着てたら変だろ?
ほら、着るんだ」
父親の言葉に恭一は怒りながら叫んだ。
「俺は女の子じゃねぇ!俺は男だ!」
とー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--くそっ!」
恭一はセーラー服姿で高校に向かって歩いていた。
結局、制服を着ることになってしまったのだ。
学校に登校すると、
先生が昇降口で待っていた。
「ーーー今日から転校してくる、
棚原 京香さんだね?」
棚原 京香?誰だそりゃ。
俺は棚井 恭一だぞ。
「ーーーは?先生、俺は…」
そこまで言うと、先生は指を
口に開けてしーっという仕草をした。
「---女体化なんて、誰も信じるわけないだろう?
だから、君のお父さんとお話して、
棚井恭一は転校して、
代わりに棚原京香が転入してきたー
そういう設定にすることにした」
先生が言う。
混乱を避けるためだ、と言う。
「--ふ、ふざけないで下さいよ!
俺は男だ!」
恭一が叫ぶと、
先生は首を振りながら鏡を見せた。
「どう見ても、女の子だー
しかも、可愛い」
鏡に映る自分はー
完全に女の子だったー
「-----くそっ!くそっ!」
恭一はそう叫びながら、先生に連れられて
教室に向かうのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うぉぉぉ~可愛いじゃないか!」
「--先生~!その子の名前は~!?」
教室に入った恭一は、
クラスメイトたちの大歓声を受けた。
「こいつら…」
恭一は拳を握りしめる。
”俺は男だ!”と叫んでやりたかった。
だが、確かに自分が女体化したなんて
誰も信じないだろう。
父と、先生の判断は
正しいー。
「ーーーたない…」
自己紹介をしようとすると、先生が咳をしてみせた。
”棚井じゃなくて棚原だろ?”
と目が訴えていた。
そうだー
新しい名前まで用意されているんだー
「--は、、、はじめまして…」
怒りに震えながら、恭一は声を出した。
可愛らしい声が出る。
自分に腹が立つ。
ここで、用意された名前で女の子として自己紹介することはできる。
けど、それは、自分自身に嘘をつく行為だ。
「---棚原…京香です…」
恭一はそう挨拶すると、
「お~京香ちゃん!」
と男子生徒の一部が声を上げた。
「ーー座席は、あそこが空いてるから」
先生が指を指す。
指をさした場所は、
友人の卓の隣だった。
「---お~~~!俺のとなりか!やったぜ~!」
笑う卓。
恭一は、スカートから覗く足にあたる空気に
違和感を感じて、落ち着かない足取りで、
自分の座席に向かう。
「よろしくな。棚原さん」
卓が手を差し出した。
恭一は、
我慢の限界だった。
「-------だ」
小声でぼそっと呟く。
「---え?」
卓が首をかしげる。
恭一はクラスメイトたちの方を見て叫んだ
「----俺は男だ!」
!?
騒然とするクラスメイトたち。
そして、恭一は叫んだ。
「何が棚原京香だ!
俺は、棚井恭一だ!」
我慢できなかった。
女の子として生きろだ?ふざけるな!
俺は男だ!
その想いが、爆発してしまった。
「---お、、、おいっ!」
担任の先生が唖然としている。
「--昨日、朝起きたらこんなになってたんだけどよ…
俺は男だ!」
恭一は、可愛い声で、そう叫んだ。
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クラスは大騒ぎになった。
恭一が突然転校したと聞かされて、
代わりに京香というカワイイ子がやってきたと思ったら
その子は女体化した恭一だった…
混乱しないはずがない。
だが、面倒臭がり屋の恭一の性格がー
周囲に恭一の女体化を信じさせることになったー
「--ちょっと、お前、その座り方はまずくね?」
卓が言うと、
恭一は笑った。
「俺は男だから、別にみられたってかまわないぜ」
カワイイ声でそう言うと、卓は溜息をついた。
「お前はそれでもいいかもしれないけどなぁ…
今、お前は自分が可愛い女の子になってるってこと
忘れんなよ?
俺たち、目のやり場に困るし、
それに変な気を起こすやつもいるかもしれねぇだろ?
確かにお前の気持ちも分かるけどよ…
女になっちまったんなら、
それなりの過ごし方ってもんがあるだろ?」
卓の言葉に、
恭一は、うるせぇ!と声をあげる
「俺は男なんだよ!」
なんなら明日からズボンを穿いてきてやろうか?と
口にする恭一。
しかし、例え元男であっても、学校の規則上、
それは許されないとして、先生に却下されてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はぁ~あ」
自分の部屋でため息をつく恭一。
「髪の毛…邪魔くせぇな…」
自分の長い髪を触りながら
苛立ってくる恭一。
なぜ、自分はこんなになってしまったのか。
俺は男だ。
女になんてなりたくない。
この胸も邪魔だし・・・
恭一はイライラした様子で胸を力強く押し込んだ。
「くそっ!膨らみやがって!
へこめ!へこめ!」
恭一に苛立ちは止まらない。
女体化すれば、喜ぶ男子高校生もいるだろう。
けれど、恭一はそうではなかった。
女になりたい、などという願望はなかったし、
普通に男として、高校生活を過ごしたいー
そう思っていた。
「くそっ!なんでこんなに可愛い顔になってるんだよ…」
鏡を見ながら恭一は自分を睨みつけた。
「くそっ!ふざけんな!ふざけんな!」
恭一は、自分の顔が映る鏡を、
何度も何度もこぶしで殴りつけたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
学校に登校した恭一を見て、
クラスメイトたちはざわついた。
長かった髪は男のように短く切られ、
メイクは何もしていない状態。
さらには、セーラー服ではなく、
男子用の制服を着て、登校したのだ。
「お…おい…お前!」
卓が驚いて言う。
「---うるせぇ!俺は男だ!」
可愛い顔、
可愛い声、
膨らんだ胸ー
それは消せない。
けれどー
自分は男なのという精一杯の反抗だった。
だがー
「棚井!ちょっと来てくれ」
恭一は、先生に呼び出されて、
そのまま連行されていくのだったー。
②へ続く
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コメント
ある日突然女体化してしまった男の子の物語デス!
このあと、どのように心境が変化していくかを
上手く描けたらな~、と思います!
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