<憑依>捏造スクープ②~破滅~(完)

大物俳優の雄吾を追い詰めるために、
憑依を駆使してスキャンダルを捏造する勝正ー。

しかし、スキャンダルを捏造された雄吾も
黙ってはいなかった…。

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「--ーー授業とか、つまんねーんだよ!」

とある学校ー
真面目な容姿の女子高生が机を蹴り飛ばして、
先生を睨みつけているー。

ストレートヘアーの真面目な女子生徒の
豹変に、周囲は驚きを隠せなかった。

「---ど、、どうしたんだ?」
先生が戸惑っていると、
女子生徒は叫んだ

「真面目とか馬鹿らしくない?
 ほら、みんなも騒ごうよ!遊ぼうよ!
 きゃはははははっ!
 あ~あ、不真面目ってサイコ~
 今まで真面目にやってたのがばっかみたい!」

彼女はそう叫ぶと、
教室から笑いながら立ち去って行ったー。

ほどなくして彼女は、ギャルのような風貌に豹変しー、
学校に登校しなくなり、夜の街を徘徊するようになってしまったー・。

彼女はー
週刊誌記者の勝正に憑依され、
ツイッターに大物俳優のスキャンダル写真をツイートさせられた挙句
「--わたしは、不良の女の子…
 真面目に生きるなんて、馬鹿らしい」
と脳に刻まれてしまい、豹変した女子高生だー

勝正の憑依能力にとっては、
人一人を支配したり、豹変させたり、
スキャンダルで破滅に追い込むことはたやすいー。

「---奴から、訴えられた」

週刊ヘヴンの編集長・髭山が言う。

「---」
週刊誌記者の俣野勝正は、
デスクで頬杖を突きながら、AVを見て笑っていた。

「--おい!俣野!」
髭山が叫ぶと、俣野が言った。

「あ~いあい、心配はいりませんよ編集長。
 彼の訴えにも、対応済みですよ~」

勝正は笑った。

そう、仮に裁判になっても
勝ち目などないのだー

そしてー
勝正は徹底主義者だった。

相手を破滅に追いやると決めたら、徹底的にやるー。

後日ー
俳優の雄吾は、大金にモノを言わせて、
大物弁護士である、古御門 隆一郎(こみかど りゅういちろう)の
力を借り、裁判を起こしたー

週刊ヘヴンによる記事は、捏造であり
名誉棄損だと。

古御門弁護士は、得意の戦法で地固めを行い、
裁判で”必勝”するための陣容を整えた。

雄吾の妻や、関係者、彼を慕う後輩などー
あらゆる証言者や証拠を集めた。

また、あの日以来、豹変してAVへの出演などを始めた
浮気相手とされる女優・園香の”精神的異常”による妄想であり
写真もでっちあげであるとする証拠を、
古御門弁護士は揃えたのだったー

「--そんなことないですぅ~」
園香が、妖艶な格好で法廷に姿を現して、証言台に立っている。

夜の街を歩くような、妖艶な格好、
ハイヒールを履いて、甘い声で証言を続けるー。

周囲はざわついた。
園香の態度は、明らかに法廷を侮辱している。
週刊誌記者の勝正によって、完全に人を変えられてしまったのだー

「--これではお話になりませんな」
古御門弁護士が笑う。

そしてー
俳優・雄吾の妻が法廷にやってきた。

”浮気はあり得ないー”と証言するために

しかしー

「--夫が、浮気していることにはうすうす感づいていました」

妻が言う。

「な…なんだと!?」
雄吾が思わず立ち上がって叫ぶ。

昨日の夜”あなたのことを信じてるからー”と、
元アイドルグループの一員だった妻は言った。

20代後半にして献身的に支えてくれていた妻の
突然の裏切りに雄吾は驚いた。

「---最低なクソ野郎!私を裏切ってただで済むと思うな!」
穏やかなはずの妻は、法廷でそう叫んだ。

彼女はーーー
既に憑依されて、記憶を書き換えられていたー

「--ーククク」
週刊誌・ヘヴン側の弁護士、甘利 卓(あまり すぐる)は不気味に微笑んだー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--いつも助かるよ」
週刊誌記者・勝正が笑うと、
弁護士の甘利が金を受け取りながら笑った。

「---この裁判、奴らに勝ち目はない。
 お前は安心して、あの雄吾とかいう俳優に
 トドメをさしてやるといい」

甘利弁護士は笑った。

「真実は、捻じ曲げるためにあるー」
そう言うと、甘利弁護士と勝正は握手をして、別れたー。

甘利弁護士は、週刊誌記者・勝正の友人で、
同じく憑依する力を持つ男だー。
憑依能力に目覚めたばかりのころ、偶然、
同じ女子高生グループの女子に憑依して、知り合ったー。

今では、勝正の”捏造スクープ”にこうして
裁判方面で力を貸してくれている。

「さて…トドメを刺してやるか」
勝正はにやりと笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---浮気はしていない!」

後日、記者会見で雄吾はそう叫んだ。
いつも強気な態度の雄吾は、なおも強気だった。

”自分は浮気などしていない”

その自信が、雄吾を強気な態度に走らせた。
確かに、彼は浮気をしていない。
憑依された女優・園香に罠にはめられたのだ。

たしかに、キスはしたー
いや、勝手にされたー。

「---俺は、断じて、恥じるようなことはしていないー!」

開いた会見で、雄吾はそう答えた。

雄吾は苛立った様子で呟く。
「どうして、俺がこんなことに…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日。
さらに雄吾に追い打ちをかけることが起きた。

「わたしは、彼を愛していますー」
再び憑依された女優・園香が記者会見を開き、
そう宣言した。

わざと顔を赤らめながら、
涙目で、そう叫ぶ園香。

「--彼のためなら、わたしは
 女優を引退してもいい。
 わたしは、彼のためならなんでもするー。
 彼がわたしを、女として目覚めさせてくれたの」

集まった記者たちは、園香の豹変に只々驚いている。
彼女は、少し前まで清純派の女優だったのだから

「---雄吾さんは、わたしを幸せにしてくれると約束しました。
 雄吾さん、、、どうしてわたしを裏切るの…」

泣きじゃくる園香。
その姿が。全国に放送されたー。

”園香をおかしくさせたのは、雄吾だ”

そんな風潮が、世間を支配したー。

「--くくく…ははははははははは!」
控室で狂ったように笑う園香。

「--世の中ってのは馬鹿だよなぁ!
 この女が憑依されてることも知らずに…!」

園香は、乱暴な様子で、
椅子に座ると、足を組んでスマホをいじりだした。

「--お~お~!早速、騒いでやがる!」
ネットのSNSなどで、たった今、生放送された
園香の記者会見の話題が流れている。

中には
”園香ちゃん、どうしちゃったんだろう?”
などと、園香の豹変を心配するコメントも多い。

「--わたしがどうしたかって~?
 ふふふふふ…憑依されてぇ~変えられちゃったの~!」

鏡を見ながら甘い声を出す園香。

「くっ…なんてな…
 くくくく、あははははははははははっ!」

園香は、大笑いすると、
そのままその場で、笑った表情のまま意識を失った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--なんだ、、、これは…」
雄吾は驚く。

先日の園香の記者会見もそうだが、
今日発売された”週刊ヘヴン”にはさらに追い打ちをかけることが
書かれていたー。

”女たらし雄吾
 遊ばれた現役女子高生 涙の告白”

”第3、第4の愛人?女子大生悲痛の叫び”

彼女たちは、週刊誌記者の勝正に憑依されて、
”雄吾の愛人だった”と嘘をついた。

記憶も塗り替えられて、
彼女たちは、雄吾のことを本気で愛している女に
なってしまったー。

「くそっ!」
雄吾が週刊ヘヴンの雑誌を床に叩きつける。

「---訴えは、取り下げるしかありませんな」
弁護士・古御門の言葉に、雄吾は怒り、
拳で壁をなぐりつけた。

「--わたし…あの人に、ホテルに連れ込まれて…」
真面目そうな女子高生が涙ながらに言う。

「--あの人、あたしを弄んだんです!」
綺麗な女子大生が、取材に対してそう答えるー

「確かに…未成年なのかな~とも思ってました」
ラブホテルの女性従業員が答えるー

「---くくく…
 どんどん追いつめてやるぜ…」

勝正は、次々と女性に憑依し、
雄吾を追い詰めて行った。

そしてー

「---離婚しましょう」
雄吾の妻、久美恵が言う。

元アイドルだけあって、20後半でもとても綺麗な女性だ。

「---な、、何だって?」

雄吾は冷や汗をかく。
生きた心地がしなかった。

誰かが自分をはめようとしているー。
そう、思った。

「ま、待ってくれ!久美恵!俺は…!」
雄吾が叫ぶ。

「---浮気したあんたが憎い…!
 浮気しといて待て?ふざけんな!」
久美恵が叫ぶ。

彼女は既に、憑依によって思考を
塗りつぶされており、
夫を憎むだけではなく、
なんでも乱暴で解決するような
女性になってしまっていた。

そんな両親の喧嘩を見つめている
長女が居た。
まだ、小学校にも上がっていない小さな少女だ。

目に涙を浮かべているー

「---うっ…!」
そんな少女が身体を小さく震わせた。

そしてー不気味な笑みを浮かべる。

少女は躊躇なく、両親の前に飛び出して叫んだ。

「パパなんて、大嫌い!」
と。

「---鈴…」
雄吾が唖然とした表情で言う。

「いい?お前が謝罪しなきゃ、離婚するからな!」
男言葉で、久美恵がそう叫ぶと、
雄吾は困惑した様子で「わ、、わかった」と呟いた。

翌日。
雄吾は、謝罪会見を開いた。
全ての浮気を認め、土下座するー。

雄吾は、唇を噛みしめ、拳を振るわせて屈辱に耐えていたー。
家族にあそこまで言われてしまってはー。

「----はい、押して」
帰宅すると、離婚届に判を押すように、妻から迫られた。

「--な、、なんでだよ!!謝罪したじゃないか!」
雄吾が叫ぶ。

「----いいから押せよ。
 じゃない療育費ふんだくるぞ!」
久美恵の目は正気とは思えない。

雄吾は「何が起きたんだ…」と困惑しながら
娘を見る。

娘もイヤらしい笑みを浮かべている。

「---押せ。
 お~せ・・・!
 おら、おせよ!」
久美恵が腕を組みながら、離婚届を示す。

「---わ、、、分かったよ…
 分かったよ!書けばいいんだろ!」

雄吾はそう叫んだ。

後日ー
雄吾は離婚し、さらには芸能界引退にまで
追い込まれた。

彼は、怒りの形相で、
ある女性の元へ向かっていたー

女優の園香だー。
こうなる原因を作ったのは彼女だ。
園香のハニートラップに、違いない。

「---おい!」
雄吾が、園香を見つけて叫ぶ。

園香は「あら?雄吾さん~」と微笑んだ。

彼女は、最近ではAVにばかり出演していた。
あまりの豹変に世間は園香がおかしくなったのだと
囁いた。

足を大胆に露出したミニスカート姿の
園香は、雄吾を前に微笑んだ。

彼女はーー
先回りした週刊誌記者の勝正に憑依されていたー

「---お前・・・俺をはめたな!」
雄吾が叫ぶと、
園香は綺麗な髪を掻き毟りながら微笑んだ。

「あぁ、そうさ…」
汚らしい笑みを浮かべる園香。

「な…なんだって!」
雄吾は、予想外の返事に困惑する。

「---俺は週刊誌ヘヴンの記者だ」
園香の言葉に、雄吾は首をかしげる。

俺?
週刊誌ヘヴン???

「なにをいって…?」
雄吾が戸惑っていると、
笑う園香の耳から、霊体のようなものが飛び出した。

「---きひひひひひっ!
 俺はな~人に憑依する力を持っていてな…
 この女、こうやって自由自在に操れるんだよ~!」

園香が笑ながら言う。
だが、霊体が飛び出しているからかー
目は白目を剥き、体は痙攣しているー

「--な、、、な…」
雄吾は恐怖したー

「--おまえをスキャンダルを抹殺するために
 この女に憑依して、
 お前の妻に憑依して、娘に憑依して
 女子高生や女子大生、ラブホの店員、
 いろんな女に憑依してやったんだよ!

 あはははははははは!」

園香が口から泡を吹きながら笑う。

「な…な…ふざけるな!貴様!!!」
雄吾が園香に掴みかかる。

「あれぇ?いいのかなぁ?
 わたしの身体は、何の罪もないんだよ~
 えへへ…
 週刊誌の記者さんに乗っ取られて~
 変えられてAV女優にさせられて~~
 うふふふ、かわいそ~なわたし~!」

園香は白目のままそう言うと、
ミニスカートを塗らしながら微笑んだ。

「あ…悪魔…!」
雄吾はそう叫ぶと、
園香をにらんだ。

「---お、、お前のことを世間にばらしてやる!」
雄吾がそう叫ぶ。

園香から飛び出していた霊体は園香の中に戻ると微笑んだ。

「--そうは、、させないよ」
ニヤァ、と笑みを浮かべると、園香はそのまま倒れて
その場で痙攣を始める。

そしてーーー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

三日後ー
河川敷で、汚らしく寝ころぶ男が居たー。

雄吾だー

彼は、うつろな目で呟いていたー

「おれはー、ほーむれす…」
「おれは、ほーむれす…」

勝正に憑依されて”自分はホームレス”だと
刷り込まれた雄吾は、
もう、立ち直ることなどできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

髭山編集長が満足そうに微笑む。

「俣野!今回も流石だったな!」
憎き雄吾のスキャンダルを獲得して、
廃人にまで追い込んだ。

編集長の髭山は
”いったいどんな手段を?”と思いながらも、
彼の実力を認め、詮索しないようにしていた。

「---これからも、頼むぞ!」

髭山の言葉など、勝正は既に聞いていない。

「あぁん♡ あぁあああああっ♡」

勝正は、パソコンで、
AVを見ていたー

AV女優に転身した、園香のAVをー。

「---くくく」

勝正は、園香のエッチな姿を堪能し終えると、立ちあがって、
「今日は帰りま~す」とふざけた様子で呟いた。

憑依能力があれば、怖いものなどない。

スキャンダルは探すものではないー
作り出すものだー。

勝正は、にやりと不気味な笑みを浮かべたー

おわり

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コメント

憑依能力を悪意を持って
使うと、こういうことになってしまいますネ…!

お読みくださり、ありがとうございました~

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憑依<捏造スクープ>

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