大物俳優の雄吾を追い詰めるために、
憑依を駆使してスキャンダルを捏造する勝正ー。
しかし、スキャンダルを捏造された雄吾も
黙ってはいなかった…。
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「--ーー授業とか、つまんねーんだよ!」
とある学校ー
真面目な容姿の女子高生が机を蹴り飛ばして、
先生を睨みつけているー。
ストレートヘアーの真面目な女子生徒の
豹変に、周囲は驚きを隠せなかった。
「---ど、、どうしたんだ?」
先生が戸惑っていると、
女子生徒は叫んだ
「真面目とか馬鹿らしくない?
ほら、みんなも騒ごうよ!遊ぼうよ!
きゃはははははっ!
あ~あ、不真面目ってサイコ~
今まで真面目にやってたのがばっかみたい!」
彼女はそう叫ぶと、
教室から笑いながら立ち去って行ったー。
ほどなくして彼女は、ギャルのような風貌に豹変しー、
学校に登校しなくなり、夜の街を徘徊するようになってしまったー・。
彼女はー
週刊誌記者の勝正に憑依され、
ツイッターに大物俳優のスキャンダル写真をツイートさせられた挙句
「--わたしは、不良の女の子…
真面目に生きるなんて、馬鹿らしい」
と脳に刻まれてしまい、豹変した女子高生だー
勝正の憑依能力にとっては、
人一人を支配したり、豹変させたり、
スキャンダルで破滅に追い込むことはたやすいー。
「---奴から、訴えられた」
週刊ヘヴンの編集長・髭山が言う。
「---」
週刊誌記者の俣野勝正は、
デスクで頬杖を突きながら、AVを見て笑っていた。
「--おい!俣野!」
髭山が叫ぶと、俣野が言った。
「あ~いあい、心配はいりませんよ編集長。
彼の訴えにも、対応済みですよ~」
勝正は笑った。
そう、仮に裁判になっても
勝ち目などないのだー
そしてー
勝正は徹底主義者だった。
相手を破滅に追いやると決めたら、徹底的にやるー。
後日ー
俳優の雄吾は、大金にモノを言わせて、
大物弁護士である、古御門 隆一郎(こみかど りゅういちろう)の
力を借り、裁判を起こしたー
週刊ヘヴンによる記事は、捏造であり
名誉棄損だと。
古御門弁護士は、得意の戦法で地固めを行い、
裁判で”必勝”するための陣容を整えた。
雄吾の妻や、関係者、彼を慕う後輩などー
あらゆる証言者や証拠を集めた。
また、あの日以来、豹変してAVへの出演などを始めた
浮気相手とされる女優・園香の”精神的異常”による妄想であり
写真もでっちあげであるとする証拠を、
古御門弁護士は揃えたのだったー
「--そんなことないですぅ~」
園香が、妖艶な格好で法廷に姿を現して、証言台に立っている。
夜の街を歩くような、妖艶な格好、
ハイヒールを履いて、甘い声で証言を続けるー。
周囲はざわついた。
園香の態度は、明らかに法廷を侮辱している。
週刊誌記者の勝正によって、完全に人を変えられてしまったのだー
「--これではお話になりませんな」
古御門弁護士が笑う。
そしてー
俳優・雄吾の妻が法廷にやってきた。
”浮気はあり得ないー”と証言するために
しかしー
「--夫が、浮気していることにはうすうす感づいていました」
妻が言う。
「な…なんだと!?」
雄吾が思わず立ち上がって叫ぶ。
昨日の夜”あなたのことを信じてるからー”と、
元アイドルグループの一員だった妻は言った。
20代後半にして献身的に支えてくれていた妻の
突然の裏切りに雄吾は驚いた。
「---最低なクソ野郎!私を裏切ってただで済むと思うな!」
穏やかなはずの妻は、法廷でそう叫んだ。
彼女はーーー
既に憑依されて、記憶を書き換えられていたー
「--ーククク」
週刊誌・ヘヴン側の弁護士、甘利 卓(あまり すぐる)は不気味に微笑んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--いつも助かるよ」
週刊誌記者・勝正が笑うと、
弁護士の甘利が金を受け取りながら笑った。
「---この裁判、奴らに勝ち目はない。
お前は安心して、あの雄吾とかいう俳優に
トドメをさしてやるといい」
甘利弁護士は笑った。
「真実は、捻じ曲げるためにあるー」
そう言うと、甘利弁護士と勝正は握手をして、別れたー。
甘利弁護士は、週刊誌記者・勝正の友人で、
同じく憑依する力を持つ男だー。
憑依能力に目覚めたばかりのころ、偶然、
同じ女子高生グループの女子に憑依して、知り合ったー。
今では、勝正の”捏造スクープ”にこうして
裁判方面で力を貸してくれている。
「さて…トドメを刺してやるか」
勝正はにやりと笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---浮気はしていない!」
後日、記者会見で雄吾はそう叫んだ。
いつも強気な態度の雄吾は、なおも強気だった。
”自分は浮気などしていない”
その自信が、雄吾を強気な態度に走らせた。
確かに、彼は浮気をしていない。
憑依された女優・園香に罠にはめられたのだ。
たしかに、キスはしたー
いや、勝手にされたー。
「---俺は、断じて、恥じるようなことはしていないー!」
開いた会見で、雄吾はそう答えた。
雄吾は苛立った様子で呟く。
「どうして、俺がこんなことに…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
さらに雄吾に追い打ちをかけることが起きた。
「わたしは、彼を愛していますー」
再び憑依された女優・園香が記者会見を開き、
そう宣言した。
わざと顔を赤らめながら、
涙目で、そう叫ぶ園香。
「--彼のためなら、わたしは
女優を引退してもいい。
わたしは、彼のためならなんでもするー。
彼がわたしを、女として目覚めさせてくれたの」
集まった記者たちは、園香の豹変に只々驚いている。
彼女は、少し前まで清純派の女優だったのだから
「---雄吾さんは、わたしを幸せにしてくれると約束しました。
雄吾さん、、、どうしてわたしを裏切るの…」
泣きじゃくる園香。
その姿が。全国に放送されたー。
”園香をおかしくさせたのは、雄吾だ”
そんな風潮が、世間を支配したー。
「--くくく…ははははははははは!」
控室で狂ったように笑う園香。
「--世の中ってのは馬鹿だよなぁ!
この女が憑依されてることも知らずに…!」
園香は、乱暴な様子で、
椅子に座ると、足を組んでスマホをいじりだした。
「--お~お~!早速、騒いでやがる!」
ネットのSNSなどで、たった今、生放送された
園香の記者会見の話題が流れている。
中には
”園香ちゃん、どうしちゃったんだろう?”
などと、園香の豹変を心配するコメントも多い。
「--わたしがどうしたかって~?
ふふふふふ…憑依されてぇ~変えられちゃったの~!」
鏡を見ながら甘い声を出す園香。
「くっ…なんてな…
くくくく、あははははははははははっ!」
園香は、大笑いすると、
そのままその場で、笑った表情のまま意識を失った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--なんだ、、、これは…」
雄吾は驚く。
先日の園香の記者会見もそうだが、
今日発売された”週刊ヘヴン”にはさらに追い打ちをかけることが
書かれていたー。
”女たらし雄吾
遊ばれた現役女子高生 涙の告白”
”第3、第4の愛人?女子大生悲痛の叫び”
彼女たちは、週刊誌記者の勝正に憑依されて、
”雄吾の愛人だった”と嘘をついた。
記憶も塗り替えられて、
彼女たちは、雄吾のことを本気で愛している女に
なってしまったー。
「くそっ!」
雄吾が週刊ヘヴンの雑誌を床に叩きつける。
「---訴えは、取り下げるしかありませんな」
弁護士・古御門の言葉に、雄吾は怒り、
拳で壁をなぐりつけた。
「--わたし…あの人に、ホテルに連れ込まれて…」
真面目そうな女子高生が涙ながらに言う。
「--あの人、あたしを弄んだんです!」
綺麗な女子大生が、取材に対してそう答えるー
「確かに…未成年なのかな~とも思ってました」
ラブホテルの女性従業員が答えるー
「---くくく…
どんどん追いつめてやるぜ…」
勝正は、次々と女性に憑依し、
雄吾を追い詰めて行った。
そしてー
「---離婚しましょう」
雄吾の妻、久美恵が言う。
元アイドルだけあって、20後半でもとても綺麗な女性だ。
「---な、、何だって?」
雄吾は冷や汗をかく。
生きた心地がしなかった。
誰かが自分をはめようとしているー。
そう、思った。
「ま、待ってくれ!久美恵!俺は…!」
雄吾が叫ぶ。
「---浮気したあんたが憎い…!
浮気しといて待て?ふざけんな!」
久美恵が叫ぶ。
彼女は既に、憑依によって思考を
塗りつぶされており、
夫を憎むだけではなく、
なんでも乱暴で解決するような
女性になってしまっていた。
そんな両親の喧嘩を見つめている
長女が居た。
まだ、小学校にも上がっていない小さな少女だ。
目に涙を浮かべているー
「---うっ…!」
そんな少女が身体を小さく震わせた。
そしてー不気味な笑みを浮かべる。
少女は躊躇なく、両親の前に飛び出して叫んだ。
「パパなんて、大嫌い!」
と。
「---鈴…」
雄吾が唖然とした表情で言う。
「いい?お前が謝罪しなきゃ、離婚するからな!」
男言葉で、久美恵がそう叫ぶと、
雄吾は困惑した様子で「わ、、わかった」と呟いた。
翌日。
雄吾は、謝罪会見を開いた。
全ての浮気を認め、土下座するー。
雄吾は、唇を噛みしめ、拳を振るわせて屈辱に耐えていたー。
家族にあそこまで言われてしまってはー。
「----はい、押して」
帰宅すると、離婚届に判を押すように、妻から迫られた。
「--な、、なんでだよ!!謝罪したじゃないか!」
雄吾が叫ぶ。
「----いいから押せよ。
じゃない療育費ふんだくるぞ!」
久美恵の目は正気とは思えない。
雄吾は「何が起きたんだ…」と困惑しながら
娘を見る。
娘もイヤらしい笑みを浮かべている。
「---押せ。
お~せ・・・!
おら、おせよ!」
久美恵が腕を組みながら、離婚届を示す。
「---わ、、、分かったよ…
分かったよ!書けばいいんだろ!」
雄吾はそう叫んだ。
後日ー
雄吾は離婚し、さらには芸能界引退にまで
追い込まれた。
彼は、怒りの形相で、
ある女性の元へ向かっていたー
女優の園香だー。
こうなる原因を作ったのは彼女だ。
園香のハニートラップに、違いない。
「---おい!」
雄吾が、園香を見つけて叫ぶ。
園香は「あら?雄吾さん~」と微笑んだ。
彼女は、最近ではAVにばかり出演していた。
あまりの豹変に世間は園香がおかしくなったのだと
囁いた。
足を大胆に露出したミニスカート姿の
園香は、雄吾を前に微笑んだ。
彼女はーー
先回りした週刊誌記者の勝正に憑依されていたー
「---お前・・・俺をはめたな!」
雄吾が叫ぶと、
園香は綺麗な髪を掻き毟りながら微笑んだ。
「あぁ、そうさ…」
汚らしい笑みを浮かべる園香。
「な…なんだって!」
雄吾は、予想外の返事に困惑する。
「---俺は週刊誌ヘヴンの記者だ」
園香の言葉に、雄吾は首をかしげる。
俺?
週刊誌ヘヴン???
「なにをいって…?」
雄吾が戸惑っていると、
笑う園香の耳から、霊体のようなものが飛び出した。
「---きひひひひひっ!
俺はな~人に憑依する力を持っていてな…
この女、こうやって自由自在に操れるんだよ~!」
園香が笑ながら言う。
だが、霊体が飛び出しているからかー
目は白目を剥き、体は痙攣しているー
「--な、、、な…」
雄吾は恐怖したー
「--おまえをスキャンダルを抹殺するために
この女に憑依して、
お前の妻に憑依して、娘に憑依して
女子高生や女子大生、ラブホの店員、
いろんな女に憑依してやったんだよ!
あはははははははは!」
園香が口から泡を吹きながら笑う。
「な…な…ふざけるな!貴様!!!」
雄吾が園香に掴みかかる。
「あれぇ?いいのかなぁ?
わたしの身体は、何の罪もないんだよ~
えへへ…
週刊誌の記者さんに乗っ取られて~
変えられてAV女優にさせられて~~
うふふふ、かわいそ~なわたし~!」
園香は白目のままそう言うと、
ミニスカートを塗らしながら微笑んだ。
「あ…悪魔…!」
雄吾はそう叫ぶと、
園香をにらんだ。
「---お、、お前のことを世間にばらしてやる!」
雄吾がそう叫ぶ。
園香から飛び出していた霊体は園香の中に戻ると微笑んだ。
「--そうは、、させないよ」
ニヤァ、と笑みを浮かべると、園香はそのまま倒れて
その場で痙攣を始める。
そしてーーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三日後ー
河川敷で、汚らしく寝ころぶ男が居たー。
雄吾だー
彼は、うつろな目で呟いていたー
「おれはー、ほーむれす…」
「おれは、ほーむれす…」
勝正に憑依されて”自分はホームレス”だと
刷り込まれた雄吾は、
もう、立ち直ることなどできなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
髭山編集長が満足そうに微笑む。
「俣野!今回も流石だったな!」
憎き雄吾のスキャンダルを獲得して、
廃人にまで追い込んだ。
編集長の髭山は
”いったいどんな手段を?”と思いながらも、
彼の実力を認め、詮索しないようにしていた。
「---これからも、頼むぞ!」
髭山の言葉など、勝正は既に聞いていない。
「あぁん♡ あぁあああああっ♡」
勝正は、パソコンで、
AVを見ていたー
AV女優に転身した、園香のAVをー。
「---くくく」
勝正は、園香のエッチな姿を堪能し終えると、立ちあがって、
「今日は帰りま~す」とふざけた様子で呟いた。
憑依能力があれば、怖いものなどない。
スキャンダルは探すものではないー
作り出すものだー。
勝正は、にやりと不気味な笑みを浮かべたー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
憑依能力を悪意を持って
使うと、こういうことになってしまいますネ…!
お読みくださり、ありがとうございました~
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