<TSF>ブラッディ・ベーカリー①~パン~

とある裏路地に、怪しげなパン屋があった。

その名をブラッディ・ベーカリーと言う。

そこで売られているパンは、特殊なパンばかりだった。
憑依パン、洗脳パン、女体化パン、入れ替わりパン…。

そんな、パン屋の物語ー。

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小日向 清十郎(こひなた せいじゅうろう)
彼は、パンを焼いている。

人通りのない、この裏路地で。

寂れた裏路地で、
お世辞にも綺麗とは言えない雰囲気のパン屋。

店内は、パン屋によくある明るい雰囲気などではなく、
パン屋とは言えないような、暗い雰囲気を醸し出している。

その上、大音量でベートーベンのクラシック音楽が
流されており、
店主は店内に設置したテレビで憑依体験アンビリバボーという
番組を見ながらニヤニヤしている。

とてもじゃないが、売れそうにないパン屋だ。
事実、ほとんど、売れていないー

売られているパンは、
カレーパン、メロンパン、チョココロネの3種類のみ。

そもそも、清十郎は、元科学者だ。
パンになど興味はないし、
正直、どうでもいい。

けれども彼は科学者を辞め、
パン屋を開いた。

「---いらっしゃい」
清十郎が愛想なく、やってきた客に言う。

営業スマイルなんてクソ喰らえだと彼は思っている。

いつ焼きあがったのかもわからない
干からびたパンを見て、客は笑う。

「--へへ、相変わらずやる気がねぇな」
その男は、常連客のようだった。

「ーーーうるせぇよ」
清十郎は、テレビを見つめながらそう言った。

店内に流れる大音量のベートーベンの曲に
聞き入りながら、常連客は言った。

「--例のヤツ、貰えるか?」
男がそう言うと、店主の清十郎はニヤッと笑った。

「--どれだ?」

その問いに、男が答える

「洗脳パンを一つー」

このパン屋は、普通のパン屋ではないー。
清十郎が科学者時代に辿り着いた特殊な成分を
利用したパンが主力商品だ。

店内に並んでいる干からびたカレーパンやチョココロネは
カモフラージュに過ぎない。
素人の清十郎が適当に焼き上げた愛情のカケラもないパンだ。

この店の主力商品は、
裏メニューだ。

”洗脳パン” 1個3万円
食べさせた相手を1日だけ洗脳できるパンー。

”憑依パン” 1個10万円
食べさせた相手に、1日だけ憑依できるパン。
また、自分が食べることで、自分が霊体化できる
憑依パン辛口(1個15万円)も存在するー

”入れ替わりパン” 1セット10万円
2個入りのパンで、食べたもの同士の身体を入れ替えるパン。

”女体化パン” 1個20万円
その名の通り、食べると女体化するパン。

これらが、
ブラッディ・ベーカリーの主力商品なのだ。

男が1万円札を3枚取り出して
清十郎に支払う。

洗脳パンを袋に入れながら、清十郎は笑う

「どうだった?娘さんを洗脳した気分は?」

この常連客の男は、前回、洗脳パンを購入した際に、
高校2年になる娘に洗脳パンを使うと言っていた。

「---へへ、最高だったぜ。
 反抗期の娘が、まるでメス犬のように俺にご奉仕してくれたよ」

「へへ、そうかそうか」
清十郎は客の喜ぶ顔を見て笑う。

そしてー

「―-藍華(あいか)ちゃんは今日はいないのか?」
常連客の男の言葉に、
清十郎は答えた。

「今日は、材料の買い出しに行ってるよー」
清十郎の言葉に常連客は笑った。

「そっかそっか。
 じゃ、洗脳パン、楽しませてもらうよ。
 今度は会社の生意気な新人女子社員に使ってやるぜ」

そう言うと、男は満足そうに店を後にした。

パンを1個売るだけで3万円ー。
そう、パンがほとんど売れなくても、
ブラッディ・ベーカリーは大の黒字なのだ。

「---ただ今もどりました」

入口から、美人と表現するにふさわしい女性が
入ってきた。

ブラッディ・ベーカリーで住み込みで働く女性・藍華だ。

彼女は、1年前まで、上京してきて、必死に
頑張っていた女子大生だった。

しかしー
運悪く、このパン屋を見つけてしまい、
好奇心から、パン屋に入ってしまった。

藍華は、あまりの店主の愛想のなさと、
3種類しかないパンに呆れて
そのまま店を出ようとした。

が、店主の清十郎が、
藍華の美脚と可愛らしい顔に目をつけ、
無料でパンを提供した。

”せっかくだからー”という
清十郎に勧められて、パンを口にした藍華ー。

そのパンは、”洗脳パン”だったー。

それから、藍華はブラッディ・ベーカリーで
住み込みで働く操り人形になった。

「--さぁ、今日もこれを食べなさい」

「はい…」
ショートパンツ姿で綺麗な足を大胆に
見せびらかしている藍華は、
虚ろな目のまま、洗脳パンを口にした。

洗脳パンの効力は1日。
だが、こうして洗脳パンを洗脳した状態で食べさせれば
永遠に洗脳することができるのだ

「おまえは、わたしのものだー」
藍華の太ももを指でなぞりながら言う。

「--はい、わたしはご主人様のものです」
藍華はうつろな目で洗脳パンを食べながら呟いた。

ガラン…!

店の入り口が開いた。

「---けけけ…」
見るからに怪しいごつい男だ。

「---」
清十郎には、客に興味などない。

ベートーベンの音楽を聞きながら、
そのリズムに身をゆだねた。
客に見向きもせずにー

「おい!さっき、ここに入ってった子?
 可愛かったなぁ?」

ごつい男は言う。
住み込みで働く藍華のことだろう。
さっき帰ってきたときにその姿を見たに違いない

「--なぁ、ちょっとでいいからその子と話をさせてくれよ」
男は言う。

怪しげな裏路地に店を構えているから、
こういうチンピラみたいな男がやってくるのは
日常茶飯事だった。

「ーーー下心丸出しだな」
清十郎は愛想なく言った。

「あぁん?」
チンピラ風のごつい男が言う。

「そんなに、女が好きか?」
清十郎が言うと、

「あぁ、好きだね!女を抱いてヤリまくるのが俺の夢さ!」
ごつい男がそう言うと、
清十郎は立ち上がってごつい男に近づいた。

「なら、ヤリまくれる夢をかなえてやる」
清十郎の言葉に、ごつい男は汚らしい笑みを浮かべた。

「お?話が分かるねぇ、さっきの女、紹介してくれるのか?」
男の言葉に、今度は清十郎が笑みを浮かべた。

そしてー

「お前が女になるんだよ!」
と叫び、
女体化パンをごつい男の口に押し込んだ。

「むぐっ…!?ひぐっ!?」
女体化パンを食べさせられた男が苦しみ出す。

もがいている男は、
髪が伸びはじめて、肌がつやつやになり、
胸が膨らみ始めて、そして男のそれが収縮して、消えたー。

「--あぁ、、、あ、、えぇっ!?」
男の声は可愛らしい声に変質して、
みるみる美少女の姿になっていったー

ゴツさのオモカゲはなくー
そこには美少女の姿があった。

「え…あぁ、、、ま、、まじかよ!?」
サイズが合わず、ぶかぶかになった
タンクトップ姿で、美少女になった男ー
いや、美少女は叫んだ

「ウチの主力商品の一つ、女体化パンだ。
 どうだ?」
清十郎が言うと、
美少女は嬉しそうに胸を触りながら
「ふぉぉぉぉぉぉっ!」と叫んでいる。

「---さ、、最高だぜ!」
美少女が叫ぶ

「--ウチには入れ替わりパンや憑依パンという
 パンもある。

 ―-今後とも御贔屓に。」

清十郎はそれだけ言うと、再び新聞を読み始めた。

「---くははははははははは~~~!」
美少女になった男は、そう言って、
店の外へと飛び出した。

こうして、清十郎は常連客を増やしていくー
面倒にならない程度の人数をー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

藍華が今日の洗脳パンを食べ終える―。
そして、清十郎の命令通り、パンを焼き始める。

「---」
清十郎はカウンター横においてある写真に目をやった。

彼の目的ー。
それはーー
”死んだ妹をよみがえらせること”

「---ーー」
いま販売している憑依パンや入れ替わりパンは
そのための資金稼ぎと研究に過ぎない。

お兄ちゃん!お兄ちゃん!といつも自分を慕っていた妹は
高校2年の時に、交通事故で死んだ。

あれから5年ー。
ずっと、彼女をよみがえらせることを考えてきた。

そのために彼が研究最中のパンが
”他者変身パン”
その名の通り、他者の姿にできるパンだ。

そしてー
もう一つ、”洗脳パン”の改良型。
永遠に洗脳することができるパンを、開発中だー。

誰かに他者変身パンを食べさせて、妹の姿にして、
それを永久洗脳パンで、永久に洗脳するー

そう、妹の姿、妹の思考を持った、
妹がよみがえるのだー

「---あ、こんなところにパン屋がある~!」
「マジか」

大学生カップルが店にやってきた。

「------!!!!」
店主の清十郎は目を細めた。

カップルの女のほうー
綺麗なストレートヘアーをなびかせる彼女はー
美人だった。

今、洗脳して住み込みで働かせている藍華も
美人だがー
そろそろ藍華にも飽きて来たー。

「----くく」
清十郎はニヤリと笑みを浮かべて、洗脳パンの用意を
始めるのだった。

②へ続く

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コメント

こんなパン屋があったら、
利用したくなっちゃいますネ??

次回もお楽しみに~

コメント

  1. 匿名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    いつも楽しみに読ませて貰っています。
    今回の話で質問です。
    入れ替わりパンと女体化パンは効果1日と記載していないので、永続的に効果があるということでしょうか?
    また、それぞれの価格差は何で決まっていますか?需要の差か、パンを作る手間の差か、それとも他の何かか…。何となくですが、効力1日の憑依パンより永続的効果の入れ替わりパンの方が高価そうなイメージはあります。
    もし何か設定があるのでしたら宜しくお願いします。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > いつも楽しみに読ませて貰っています。
    > 今回の話で質問です。
    > 入れ替わりパンと女体化パンは効果1日と記載していないので、永続的に効果があるということでしょうか?
    > また、それぞれの価格差は何で決まっていますか?需要の差か、パンを作る手間の差か、それとも他の何かか…。何となくですが、効力1日の憑依パンより永続的効果の入れ替わりパンの方が高価そうなイメージはあります。
    > もし何か設定があるのでしたら宜しくお願いします。

    ありがとうございます~!

    ご質問にお答えしますネ~!

    入れ替わりパンと女体化パンは効果は永続です。
    価格差は、店主が、需要に応じて決めています。
    原材料は彼が特殊調合した薬品なので、対して原価はかかっておらず、
    彼はボロ儲け状態です。
    …が、他にそういうパンを作れる人が居ないので、一部のマニアに
    売れています。

    入れ替わりパンが安いのは、
    ”二人同時に食べなくてはいけない”という制約と、
    入れ替わった後に、相手に騒がれるリスクから、需要が低く、
    価格が安い、という設定です
    (憑依、洗脳は日数制限ありですが、完全に相手を支配できるため、
     入れ替わりに比べて、危険度が少なく、パンとして人気なようです)

    こんな感じです~!