神に憑依された亜優子は、
人類への警告を行う。
次第に変異していく彼女を前に、
彼氏の恭太はー?
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学校中がパニックに陥っていた。
真面目な女子生徒・亜優子が突如豹変、
神の代行者などと名乗り、生徒たちを襲い始めたのだ。
「---はぁ…はぁ…はぁ…
な、何なんだよ」
亜優子の彼氏、恭太は逃げながら呟く。
後ろからたくさんの悲鳴が聞こえる。
亜優子はいったい、どうしてしまったのか?
「見たか?恭太?」
一緒に逃げていた友人の助六(すけろく)が言う。
「---水原さん、背中に羽みたいの生やしてたぜ」
助六の言葉に、恭太はその光景を思い出す。
先生を干からびさせたとき、
亜優子の背中から、羽根のようなものが生えたー。
あれは、一体、何だったのか?
「--神の代行者とか言ってたよな?
本当に、どうしちまったんだ?」
助六が言う。
「--わ、わかんねぇよ…昨日まで、普通だったし…」
亜優子の笑顔を思い出す。
そうー、
昨日まで何も変わりなかったのにー。
どうして、こんなー?
どうしてー?
廊下の反対側で悲鳴が聞こえた。
「--!?」
恭太が物陰から悲鳴のした方を覗くと、
そこには四つん這いの状態で、
押し倒した女子生徒とキスをしている亜優子の姿があった。
キスされている女子生徒は、干からびていく。
「---ふふふふふ・・・神罰だ」
亜優子がつぶやく。
亜優子の顔の文様が、さっきよりも濃くなり、
耳が鋭利にとがり始めている。
眼鏡は落ち、亜優子は躊躇なくそれを踏みつぶし、
歩いている。
「-くっ、、助六、お前は先に行け」
恭太が言う。
「--は?やめとけよ!お前も…!」
助六は、恭太を抑えようとした。
何が起きているのかさっぱりわからない。
だが、実際に何人かの生徒が蒸発したりー、
先生が干からびたりしたのを目の当たりにしている。
普通じゃないー
今の亜優子は普通じゃないー
そんなことは、ここにいる二人にも、
痛いほどよくわかっていた。
「--でも、、俺の彼女だから」
恭太はそう言うと、
やめとけよ!と叫ぶ助六に”大丈夫だから”と
呟いて、亜優子の方に向かった。
「亜優子!」
恭太が叫ぶと、
異形の存在になりかけていた亜優子が
恭太の方を見る。
「---」
亜優子は無言で恭太を睨みながら近づいてきた。
「--あ、亜優子!何してるんだよ!
教えてくれ!
なぁ、俺たち、恋人同士だろ!?」
必死に叫ぶ恭太。
亜優子は、口を開いた
「--神罰だ」
「神罰?」
意味の分からない返事に、恭太は困惑する。
神罰とは、いったい何なのか?
「--あ、、亜優子…
何言ってるんだよ…?なぁ…」
恭太が言うと、
亜優子は不気味にほほ笑んだ。
「我は、かつてこの世界に存在した神の一人だ。
人間よ…
貴様らは我々が地上から去った後に、
地上を好き放題荒らし過ぎた。
好き勝手に、この星を使い、
あげく、環境を破壊している。
我々は、我慢してきたー
しかしどうだ?環境汚染は進み、
人間たちは、争い、破壊を続けている」
亜優子は、低い声でそうしゃべった。
いつもは遠慮がちな雰囲気の亜優子が
堂々としゃべっている。
それだけでも、かなりの威圧感がある。
「---……あ、、、亜優子じゃないのか?」
恭太がそう言うと、
亜優子は笑ったー。
笑ったときに見えた歯はー、
一部が牙に変形していたー
「---我は神の一人ー
すべての神の意思を代行者として
貴様ら人間に伝えに来たのだ。
このおなごの身体を借りてな」
亜優子は自分の身体を見つめながらそう言った。
「--ふ、、ふざけるな!
あ、、亜優子を返せ!」
恭太は叫んだ。
借りる?
ふざけるな。
亜優子の身体は、変異している。
髪は逆立ち、
顔には文様が浮かび、
牙が生え、羽根が生え、
爪もとがっている。
「--人間は、元々、我らがたわむれに作り出した存在」
亜優子が言う。
「--作ったものを、どう使おうが、
自分の勝手だろう?」
恭太は拳を震わせる。
「--お前たちも、そうだろう?
自分で作ったものを使い、壊れたら捨てる。
我らも同じだ。
我らが作った人間を、どう使おうが
返そうが返さまいが、勝手だろうが」
亜優子が怒りに満ちた声で言う。
「---ーーーふざけるなふざけるなふざけるな」
恭太は叫んだ。
「---…ふん…」
亜優子に憑依している神は、
鼻で笑って、恭太の方を見た
「---この身体は、我のものだ。
ちゃんと返そうが、捨てようが勝手なんだよ」
そこまで言うと、目を赤く光らせたー
亜優子は、白い貴族のような服を、
はだけさせながら、鋭い目付きで、恭太を睨んでいる。
「や…やめろ・・・!亜優子を元に戻してくれ!
頼む!」
亜優子は異形の存在へと変化しつつあった。
このままでは取り返しのつかないことになるー。
恭太はそう思った。
いや、もう手遅れかもしれないー
けれどー。
「---くく…人間とは愚かなモノだ」
亜優子の身体からボタボタと謎の体液が落ちてきている。
四つん這いになった亜優子はその液体を見つめながら笑う
「---この女子の身体、
興奮してるもいたいだな…」
「なんだって…」
恭太が唖然としながら亜優子を見る。
「これから貴様の生命力を吸収する…
つまり、お前と一つになれることに、この身体の本能が
興奮しているようだ…クク」
亜優子は、そう語るー。
「---黙れ…!お前が亜優子の身体を勝手に
興奮させてるだけだろうが…!」
恭太は怒りに身体を震わせながら言う。
「---なんとでも言え…
さぁ、そろそろ終わりだ。
お前ひとりに構っている時間は無い。
人間どもの生命力を吸収して、
もっとこの身体を強めて、この世界の神として
今一度、愚かな人間たちに、身の程というものを
知らせてやる!」
亜優子はいつもの可愛らしい声で、
残酷にそう告げた
「--亜優子…目を覚ましてくれ…頼む…!」
恭太はそう言って目をつぶった。
漫画やー
ドラマやー
ファンタジーの世界なら、
ここで奇跡が起きる。
亜優子は、ギリギリのところで意識を取り戻し、
亜優子に憑依している神とやらに打ち勝ち、
正気を取り戻すー。
きっとー奇跡は起きる。
「--シャあああああ!」
亜優子が獣のような声をあげて、
恭太にとびかかり、
恭太を押し倒した。
そしてー
ボタボタと涎を垂らしながら、
恭太を見つめる。
「---ばいばい…恭太くん~
な~んてな…!」
そう言うと、口から不気味な触手のようなものを
チラつかせながら、
恭太にキスをした。
「ああああああ…あ・・・あ」
恭太は、恐怖した。
自分も、先生たちのように、
干からびてー
死んでしまうのだろうかー。
感覚が抜けていく
頭が、すーっと楽になっていくー。
もうーー終わりなのか。
しかしー
終わらなかった
「---恭太…」
亜優子の目から涙がこぼれた。
「---亜優子…?」
自分の身体を見る恭太。
もう、干からびたと思っていた。
けれどー
干からびていなかった。
「--…わたしの身体から…出て行って…!」
亜優子が異形の姿のまま叫ぶ。
「---出て行って!!!!!」
亜優子は苦しみながら大声で叫んだ。
そしてー
獣のようなうめき声と共に、謎の光が
亜優子の身体から吹き出してー
光に包まれたー
しばらくして、
光が消えると、
ボロボロになった姿で
亜優子は倒れていた。
「あ・・・亜優子!」
駆け寄る恭太。
亜優子は無事だった。
騒然とする周囲をよそに、
恭太は亜優子を抱きかかえたのだったー。
それから1週間ー。
干からびていた先生や生徒はもとに戻り、
蒸発したと思われた生徒たちはもとに戻った。
「--ーーよく飲むね~!」
すっかり元通りになった亜優子がほほ笑む。
「--はは、喉が渇いたときはコーラが一番だよ」
恭太が笑いながら言う。
神は、亜優子の身体から追い出されて消滅した。
何だったのかは分からない。
だが、人類への警告と言っていた。
もしかしたらまた姿を現すかもしれない。
でもー
それでも、何故だか不安に思うことは無かった。
学校は、あの日の騒動に困惑しながらも、
あまりの未知の事態、そして被害者が居なかったこともあり、
結局、亜優子が処分されることはなかった。
クラスメイトたちも、亜優子を不気味がりながらも、
次第にそのことを忘れて行った。
「に、しても飲みすぎ~!
コーラ2本なんて身体に悪いよ~」
亜優子が笑いながら言う。
「--大丈夫、大丈夫!暑い日は炭酸に限るぜ!」
恭太はコーラを飲み終えると、言った。
「あ、そうだ、明日、発表見に行くよ」
前に亜優子から誘われた演劇の発表ー
それがいよいよ明日に迫っていた。
「そっかー。
ありがとう!
私、一生懸命頑張るね!」
亜優子の微笑みに、
恭太も、ほほ笑みを返したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
恭太は、大好きな炭酸飲料を飲みながら電車で
亜優子の発表がある場所へと向かっていた。
「~~ふぃ~暑いと喉が渇くな~」
コーラのペットボトルを駅のごみ箱に捨てて、
恭太は、演劇発表がある会場へと辿り着いた。
ーーー今日から12月ー
だいぶ”寒くなった”
「---あ、恭太!」
亜優子が嬉しそうに手を振る
「亜優子!」
恭太も手を振りかえす。
恭太は、この会場、暑いなぁ、と思いながら、
お茶を手に、亜優子とこれから始まる劇について、
話を始めるのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12月24日ー
夜の遊園地に二人は居たー
観覧車の中で、
亜優子は微笑む。
「--綺麗…」
観覧車の窓から見える光景ー
それは、とても綺麗だった。
夢のようなデートの時間ー
永遠にも思える時間ー
「--大丈夫?」
亜優子が心配そうに、恭太の方を見たー
「あ?う、うん、大丈夫さ」
恭太は、今日、7本目のペットボトル飲料を
飲み終えようとしていた。
「--熱でもあるの?」
亜優子が心配そうに聞く。
だが、熱はないー
ただ、ただ、喉が渇く。
ただ、
まるで
自分が
干からびているかのようにー
夢のように
幸せな時間なのにー
ただ
喉が
乾くー
あぁ、暑い
ーー
熱?
ないよ
熱?
熱は”なかった”
ーーそう、なかったー
彼はー
もうーーーー
干からびているのだからー
「---終わったか」
異形の姿ー
神に憑依された亜優子は笑う。
目の前には、干物のようになって
干からびた恭太が居る。
恭太は「暑い…喉が渇いた…暑い…」と
うわごとのように呟いている。
けれどー
恭太は何故かとても幸せそうだった。
死の間際にー
何か夢でも見たのだろうー。
人間は、死ぬ間際に夢を見ると言うー。
「--愚かだな」
亜優子はさらに羽根を伸ばし、
身体を巨大化させると、
他の逃げ惑う生徒たちの方に向かって歩き出したー
・・・・・・・・・・・・・・・・
雪が降ってきたー
「--ねぇ、キスしよ?」
遊園地の帰りー、
亜優子が笑うー
「---キス…いいのかー?」
ずっとー
ずっと、してみたかったー
亜優子とのキスー
二人ともどこか奥手で、
これまで一度もしたことがなかったキスー
「--恭太君…大好きー」
「俺もだよー亜優子ー」
恭太はーー
”あつい”
そう思いながら、亜優子の唇に、自分の唇を近づけたー
そしてーー
彼の意識は、そこで途絶えたー
最高の幸せを感じながらー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
神様憑依のリクエスト作hんでした!
神が憑依する系統は今までにも何回かリクエスト頂いているので
今回は違う雰囲気にしてみました!
いかがでしたか?
お読み下さりありがとうございました~
コメント
SECRET: 1
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いやあ神罰とは怖いものです。と言いながら内心それを望んでたりする。
作者も今回は誤字が多かったようなので大丈夫ですか?まさかあなたも神罰喰らってる事は無いと思うが
自分もまだネームを定めてなかったときにコメした甲子園の含め色々リクエストしたけどどれも急ぐ必要は無いんで気長に待ってる。
SECRET: 0
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無様>
ありがとうございます~
甲子園リクエストは来月のスケジュールに
組み込まれていますよ~
誤字は…神罰かもしれませんね~笑