そのタクシーに乗ると、
人格が豹変してしまう。
そんな都市伝説があった。
山根兄弟の個人タクシー。彼らのタクシーに乗り込むと、
降りるころには、人間が変わってしまうと言う…。
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とある地区。
真面目そうな女子高生が、タクシーに乗り込んだ。
乗り込んだタクシーは、
とある兄弟が走らせているタクシーだった。
山根 道義(やまね みちよし)と
山根 正和(やまね まさかず)。
兄弟で運転している個人タクシーだ。
口コミは最高レベルであり、
タクシーを利用した人々からは、感謝の声が絶えない。
それが、山根兄弟のタクシーだった。
そんなタクシーの後ろを、一台の乗用車が尾行
している。
その車は、あからさまに
山根兄弟の運転するタクシーを尾行していた。
やがて、タクシーが目的地に停車した。
乗り込むときに真面目そうだった女子高生は
不敵な笑みを浮かべて、
乗り込む時よりもスカート丈を短くし、
高飛車な様子でタクシーから降りて行った。
「---・・・」
尾行していた男は、そのまま女子高生の方の
後をつけていく。
女子高生は、そのまま近くのゲームセンターに入ると、
バカ騒ぎを始めたのだった。
真面目な外見に見えたが、
気のせいだったのだろうか。
それとも…
尾行していた男は、その女子高生の写真を
スマホで撮影すると、そのまま車で走り去った。
男の名はー
福園 正二(ふくぞの しょうじ)。
自宅の鍵を開けると、
ソファーに腰を下ろした。
「--だぁ…!だぁ!」
別の部屋から声がする。
正二は、悲しそうに微笑むと、
その部屋へと向かった。
まるで、赤ちゃんのような声。
しかし、その部屋にいたのは、赤ちゃんなどではなく、
大人の女性だったー。
福園 摩子(ふくぞの まこ)。
正二の妻だー。
小さいころからの知り合いだった二人は、
去年、二人が22歳の頃に結婚した。
しかしー
2か月前、事件は起きた。
摩子が、突然体調を崩し、
ちょうど、車を車検に出していたため、
地域で評判の個人タクシーに
摩子を病院までつれて行ってもらうことにした。
正二は、仕事の時間が迫っていたし、
摩子が、一人でも大丈夫だと言ったため、
正二は、摩子についていくことはしなかった。
しかしー
それが、悲劇の始まりだった。
仕事中に、正二のスマホに連絡が入る。
それは、近くに住む、義理の母、
つまり、妻である摩子の母親からの電話だった。
「摩子が大変なの」
義理の母はそう言った。
何が大変なのか。
最初、正二には、何が起きたのか理解できなかった。
しかしー
病院に駆け付けた正二の目に
飛び込んできたのはー
変わり果てた摩子の姿だった。
「だぁ…!ばぁっ!」
まるで赤ん坊のようになってしまった摩子。
何を呼びかけても、摩子は赤ん坊のように
無邪気な笑みを浮かべるだけ。
いったい摩子に何が起きたのか。
摩子は、何かとてつもない病気だったのだろうか。
そんな風に困惑する正二。
病院の先生も、原因が分からず困惑するばかり。
摩子は、経過観察のため入院することになったが、
結局、どこにも異常がなく、退院することになり、
自宅療養をすることになってしまったのだった。
「きゃはははは!」
スプーンを口に持って行き
ご飯を食べさせてあげる正二。
まさか、自分たちに子供ができる前に、
赤ん坊の世話みたいなことをすることになるなんて、
正二は夢にも思わなかった。
「--摩子、お前に何があったんだ…」
正二がつぶやく。
しかし、摩子は無邪気に笑って
はしゃぐだけだった。
本当に、赤ん坊のようになってしまった。
正二は、考えた。
あれから2か月。
摩子が回復する兆しはない。
恐らく、このままにしていても、
状況が変わることはないだろう。
正二は考えた。
あの日、
摩子は体調を崩していた。
腹痛と発熱。
恐らくは風邪だろうと思っていた。
ただし、熱が低かったものの、ちょうどインフルエンザが流行している
シーズンだったので、
インフルエンザの可能性も視野に入れて、
摩子を病院に送ることにした。
可能性としては、いくつか考えれる。
一つー、
摩子が、何らかの病気、もしくはウイルスの影響により
おかしくなってしまったこと。
二つー、
病院到着後に何らかの医療ミスがあった、
あるいは、誰かに何かをされた可能性。
そして3つ。
病院に向かう途中のタクシーの中で、
何かをされた可能性。
正二は、それぞれの可能性を視野に入れて、
調査を進めた。
だが、3つの候補のうち、
一つの理由は、すぐに消えた。
摩子は、病院で診察を受ける前には、
既に赤ん坊のようになってしまっていたのだからー。
目撃者も多く存在し、そのことは間違えない。
次に、病気である可能性。
これも、少ない。
病院で精密検査を行ったモノの異常はなく、
摩子が体調を崩していたのも、風邪が原因で
あることが診察で分かっている。
と、なればー。
怪しいのはーーー
”山根兄弟のタクシー”
なのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一台のタクシーが駅の近くに止まっていた。
ネットの口コミで話題の山根兄弟のタクシーだ。
そのタクシーに、一人の女子大生が乗り込む。
スタイルの良い、美人だ。
「--どちらまで?」
山根兄弟の兄・道義が、女子大生に尋ねると
女子大生は大学までお願いします、と告げた。
出発するタクシー。
ごくごく普通の光景だ。
女子大生は、スマホをいじりながら、
時折、窓の外を見つめている。
ふと、山根道義が口を開いた。
「--お客さん、可愛いですねぇ」
道義の言葉に、
女子大生は、愛想笑いを浮かべて「ありがとうございます」と答えた。
「お名前は?」
道義の質問に、
女子大生は少し首をかしげつつも、
”優しそうなおじさん”風の道義の風貌に、
”ただの気さくなおじさんなのだろう”と判断して、答えた。
「幾久恵(いくえ)と言います」
「--そうかそうか、幾久恵ちゃんか。
…いやぁ、実に可愛いなぁ」
道義が言う。
流石に幾久恵も少し不気味に思い始めた。
「--ちょっとさ…
エッチなことしたらさ、すっごく可愛いと
思うんだけど、どうかな?」
道義が笑った。
「--な、何ですかさっきから!」
幾久恵がたまらず叫んだ。
このタクシードライバーは何を言ってるんだろう…?
「--私を満足させるためにエッチなこと
してみる気はないかい?」
道義のその言葉に、
幾久恵は怒った。
完全にセクハラだ。
「--もう、降ります!」
幾久恵が叫んだ。
その時だった。
道義がほほ笑む。
「正和、出番だよ」
ーと。
山根兄弟の弟・正和の事を呼んだ
道義。
するとー
「ひぅっ…!?」
幾久恵が身体の動きを止めた。
そして、不気味な笑みを浮かべた。
「ひひ…兄貴、
またまたエッチな身体じゃないか」
幾久恵が不気味に笑みを浮かべて、
タクシーから出ようとするのをやめ、
ゆっくりと座席についた。
「え…か、、身体が、、勝手に…?」
幾久恵は戸惑う。
口と身体が勝手に動く。
言葉は発することができるけれど、
それ以上のことが、何もできない。
「--これから、君は、私のおもちゃになるんだよ」
道義がほほ笑んだ。
「--そ、、そんな…わたしは…」
「はい…おもちゃになります」
口から、自分の言葉と、
別の誰かが発した言葉が発される。
「---!!」
幾久恵は恐怖に表情をゆがめた。
道義は優しく微笑んで言った。
「君にはね、わたしの弟、正和が憑依しているんだ。
これから、君は、わたしの理想の女に…
いや、雌に作り替えさせてもらうよ」
不気味にほほ笑む道義。
幾久恵は「やめて!」と叫ぶ。
道義はその叫びを無視して、ほほ笑んだ。
「君は、エッチな女だ。
そうだろう?」
道義が質問すると、
幾久恵に憑依した正和が幾久恵の
身体を使って答えた。
「はい…わたしはエッチのことしか
考えられない、エッチな女です」
幾久恵の口を使い、言葉を発し、
幾久恵の脳に「わたしはえっち」と刻み付ける。
「あ・・・あ・・・」
幾久恵が恐怖の表情を浮かべる
「や…やめて!助けて!」
道義は、恐怖に歪んだ幾久恵の表情を見て笑う。
一気に意識まで乗っ取らせて
作り変えてしまうこともできる。
だが、本人の意識をあえて残したまま、
本人に”変えられていく絶望”を味あわせるのがー
たまらなく興奮するー
「--君は、わたしのおもちゃだ。
そうだろう?」
道義が言うと、
幾久恵が叫んだ
「わ、わたしはあなたのおもちゃなんかじゃ…!」
「-----おもちゃです…
わたしの全ては、あなたのものです」
憑依している正和が、強引に身体を支配して
言葉を口にする。
”あなたのもの”
”あなたのもの”
”あなたのもの”
脳に、自分は山根兄弟のおもちゃだと
刻み付けていく。
幾久恵の目がとろーんとして、
虚ろな目になる
「---あ、、、あ、、、たすけ…」
次第に、幾久恵本人の意識が、
塗りつぶされていく。
「--これから君は、わたしのためだけの
エッチな操り人形だ。いいね。」
道義が言うと、
幾久恵は微笑んだ。
「はい…わたしは、あなたの操り人形です
あなたのことだけを考えて
あなたのためだけに生きます」
そう言うと、幾久恵は、まるで
人形のように、うつろな目になってしまった。
「--くふふふ…
まずは、わたしを満足させてもらおうか」
道義がタクシーを停車させると、
幾久恵の太ももを、イヤらしく触り始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「--兄貴は、どうしようもないな。
さて、俺はこの身体から抜けるぞ。
もう、すっかり兄貴の操り人形だ」
そう言って幾久恵は笑うと、
憑依していた正和が幾久恵から抜け出した。
「--じゃあ、約束通り、
帰ったら一人エッチの映像を自分で撮影して
私に送ってくれるね?」
道義がそう言うと、幾久恵は
「はい…」とつぶやき、
そして、タクシーから出て行った。
タクシーから出た幾久恵は
幸せな気持ちでいっぱいだった。
これから毎日、道義のために、
エッチなことをして、その動画を
道義に見てもらえるのだから…。
「--くくく」
大学に歩いて行く幾久恵の後姿を見ながら、
道義は微笑んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・」
今日も山根兄弟のタクシーを尾行していた
正二は違和感を感じる。
タクシーに乗り込む前と、降りた後で、
やはり女子大生の雰囲気が違う気がする。
「----」
正二は、今日の夜、
幼馴染の女性と会う約束をしていた。
浮気などでは無く、
妻の摩子も交えた友人関係だ。
摩子の現在の状態についての
情報交換する予定だー。
夜ー。
ファミレスで正二と、幼馴染の伶香(れいか)は
食事をしていた。
「俺はさ…摩子があの日、乗ったタクシーが
怪しいと思うんだ」
正二は、伶香にそう告げた。
もちろん、正二は、怪しいと思った
山根兄弟のタクシーに自分も載ってみたことがある。
ただし、何も起きなかった。
そして、正二は気づいたのだ。
女性が乗った時だけ、何かがおかしい、と。
正二の言葉を聞いて
幼馴染の伶香は口を開いた。
「--わたしが、そのタクシーに乗って
確かめてみようか?」
とー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
タクシーに乗っている間に女性が
憑依されて、書き換えられてしまう、というお話です!
果たして、どうなるのでしょうか。
コメント
SECRET: 0
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投稿お疲れ様です!
やっぱ書き換えものは最高ですね!
明日の投稿も楽しみに待ってます!
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明日も頑張ります!!