不夜お嬢様に憑依していた五郎は、
お嬢様の身体から追い出されてしまった。
真実を知った彼は、そのまま、メイドの皮を
被せられてしまい、不夜お嬢様のメイドとして
働くことになってしまう…。
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会社のクビにされた男・落田五郎(おちたごろう)は、
その帰り道、とある企業のお嬢様である
高砂不夜(たかさごふや)とぶつかってしまい、
散々に罵倒されてしまう。
腹を立てた、五郎は帰宅後に、憑依薬なる薬を手に
そのお嬢様に憑依した。
お嬢様に憑依した五郎は、自分が、お嬢様に
成り替わって生きていくことを決める。
しかしー
それは、全て御見通しだった。
不夜の父親・高砂博昭(たかさごひろあき)の会社は、
TSF関連の会社。
しかも、五郎が使った憑依薬は、この会社から購入したもの。
お嬢様が憑依されたということは、
執事の黒畝(くろうね)により、とうに御見通しだったのだ。
全てを知られ、地下牢に幽閉される五郎。
お嬢様である不夜は、そんな五郎に
ロリメイドの皮を強引に被せたのだった。
勝手にメイと言う名前を付けられた五郎の
運命は…?
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落田 吾郎(おちた ごろう)
冴えないサラリーマン。会社を解雇され、お嬢様に憑依するも…
高砂 博昭(たかさご ひろあき)
TSF関連の会社を経営する男。不夜の父親。
高砂 不夜(たかさご ふや)
現役高校生のお嬢様。
黒畝(くろうね)
高砂家に仕える執事の長。
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五郎は、メイドの部屋へと配属された。
「--あら?新入りちゃん?
可愛い~!」
他のメイドたちがやってくる。
「わたし、サクラね!よろしく!」
「私は、アカリ!」
同じ部屋のメイドたちが自己紹介をしてくる。
「あなたの名前は?」
メイドたちが言う。
”俺は五郎だ”
そう叫んだ。
しかし、
「わ、わたし…メイと言います」
口から出たのは、別の言葉だった。
「---!?」
焦って口を塞ぐ五郎。
どうして?
今、確かに俺は五郎だ!と叫ぼうとしたはず。
それなのに、何だ?
「--あらぁ、メイちゃんね~!可愛い~!」
メイドたちが言う。
「ご主人様のために、あなたも頑張るのよ」
先輩メイドのサクラが言う。
「”あんなやつーー!”」
五郎はそう叫ぼうとした。
しかしーー
「ご主人様ーーー!」
口からは別の言葉が出てしまう。
「あ・・・れ…
あれ…わたし…」
戸惑う五郎。
身体は自由だ。
言葉も。
だがーー
思考がまとまらない。
これが、ロリメイドの皮の力なのか。
「--ー」
そして、五郎は思う。
サクラだのアカリだの、ここにメイドたちも
もしかしたら、自分と同じように―。
五郎は、不夜の父親・高砂 博昭とお嬢様として
食事したときのことを思い出す。
一見温厚そうだったが、
その目には、底知れぬ迫力があった。
もしかしたら、自分は、
とんでもない世界に、足を、踏み入れてしまったのかもしれないー。
五郎は、そんな風に思い始めていた。
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誰も居なくなったタイミングを見計らって
メイとなってしまった五郎は服を脱いだ。
そこにはー
本物の女の科仇にしか見えない肌があった。
「か、皮を脱がなくちゃ…!」
このままここにいたら、とんでもない目に
遭わされるような気がした。
ここに、このまま居ては、いけない。
そう思った。
「--あぁ…♡ あっ♡」
無理やり手を伸ばそうとすると、
胸が揺れて、その感覚に興奮してしまう。
「---はぁ…♡ に、逃げるの…わたしは・・・」
口調で自然と女の子口調になってしまう。
五郎の意思とは関係なく。
背中に手を伸ばしても、
触れるのはすべすべの肌だけ。
やがて、興奮と快楽に支配されて、
五郎は、その場に蹲った。
逃げられないー。
「---」
五郎は、しばらくメイドとして働き、
逃げ出す隙を伺うことにした。
冗談じゃない!あんな高飛車なお嬢様の
お世話何て真っ平御免だ!
と。
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メイドとしての仕事は思った以上に過酷だった。
お嬢様から突然呼び出されることもあれば、
配膳から掃除、執事である黒畝からの申しつけなどなど、
やることはいくらでもあったのだ。
「--と、、届かない…」
五郎は、メイとなった自分の身体の
思った以上の背の低さに苦戦していた。
そしてー
無理やり背伸びしようとして失敗し、
食器棚の食器を割ってしまった。
「--ちょっと~何やってるの!」
先輩メイドのアカリが言う。
「--す、すみません」
そこにお嬢様の不夜がやってきて
「どきなさい」と言って、
そのまま無言で食器を片づけ始めた。
スカートがスースーして気持ち悪い
何かと胸がモノにあたったりしてやりにくい。
とにかく、何もかもがやりにくかった。
1日目の仕事が終わった。
メイになった五郎は、ミスばかりだった。
何もかもが、上手くいかない。
失敗続きだ。
いや、元からそうか。
五郎の時から、同じだ。
何をやっても、上手くいかない。
失敗ばかりー。
夜ー。
五郎は、不夜に呼び出された。
「--メイちゃん、ちょっと私の部屋に来て下さる?」
”俺はメイじゃない!五郎だ!”と叫ぼうとしたが
「わたしは…めいなの!」
と訳の分からないセリフに勝手に変わってしまった。
「・・・かしこまりました」
五郎は仕方が無く、頭を下げる。
そして、不夜に連れられて、
不夜の部屋を訪れた。
不夜に憑依したあの日、
あのベットで、一晩楽しんだときのことが、忘れられないー。
しばらくの沈黙が流れる。
そして、不夜はため息をついた。
恐らく、怒られるのだろう。
そんな風に思った。
自分の人生はいつだって同じ。
罵倒してくる相手が変わっただけだ。
会社員時代も、
メイドになってしまった今も、
自分hが罵倒され続ける落ちこぼれのようなものなのかもしれない。
「---最初は仕方ないわ」
不夜が言った。
「え?」
五郎は、思わず、可愛らしい間抜けな声で返事をした。
「---何驚いた顔をしているの?
最初は誰だってミスはするものよ。」
不夜が、五郎の方に近づく。
「---そんなに怖がることありませんわ」
不夜は、メイになった五郎に抱き着いた。
そして、優しくその唇にキスをした。
「--期待してますわ・・・メイちゃん」
と囁くようにして、不夜は言った。
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翌日から、五郎はメイとして、
必死に働き始めた。
初めて認められた気がする。
今まで、五郎は、何をしても罵倒されるばかりだった。
小学生時代、一生懸命やった夏休みの自由研究を
担任の先生に鼻で笑われた。
中学時代、精一杯頑張ってテストで100点取った時、
親には「まぐれだな」と笑われた。
高校時代、勇気を振り絞って初恋の相手に
告白した時には「今、昼間だよ?落田クン寝ているの?」と
寝言だと思われた。
そして会社員時代には、
直属の上司に一晩かけて考えた企画を横取りにされた。
自分の人生なんて、そんなものなのだ。
何もない。
何も残らない。
でも、それが自分の人生。
けれど、不夜は自分を認めてくれた。
だからこそ、五郎は一生懸命頑張った。
身体は小さくなってしまったけれど、
スカートや胸の感覚には慣れないけれど、
それでも、頑張った。
本棚の整理をしている際に、背伸びして
脚立から落ちそうになったときは、
通りがかった不夜が助けてくれた。
そして、仕事を上手くやれた日は、
不夜お嬢様が、ご褒美のキスで
自分を癒してくれた。
1か月が経過した日ー、
給料がお嬢様から手渡された。
「・・・こ、、これは・・・!」
五郎は…いや、既に心はメイドに
成り果てていたメイは、驚きの表情を浮かべた。
「何を驚いているの?」
不夜は微笑む。
「あなたの働きに見合った報酬を渡しただけですわ」
五郎は驚く。
会社の給料の2倍以上はあるだろうか。
「--あなたはよく頑張ってる」
不夜はそう呟いて、五郎にキスをした。
「これからもよろしくお願いしますわ」
不夜はそう言って立ち去って行った。
不夜は、どもメイドにもとても優しかった。
最初に出会ったときには高飛車なだけのお嬢様だと
思っていたけれど、そうではなかった。
五郎はもう、五郎であることを捨てた。
メイドのメイとして、生きていくー
いや、既に心はメイとして染まっていた。
皮を脱ぐ気もない。
脱げなくていい。
皮と一体化してしまって構わない。
五郎は五郎であることを忘れて、
メイとして働き続けた。
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「---彼はどうだ?」
父の博昭が娘の不夜に向かって言う。
「--お父様」
呼び止められた不夜が振り返る。
「とても一生懸命。
今まで相当苦労してきたみたいですわ」
不夜が言うと、
博昭は少しだけ笑った。
「---そうか」
それだけ言うと、博昭は、不夜の方を見つめて、
何かを想うような笑みを浮かべると、
そのまま立ち去って行った。
博昭が、自室に戻ると、
机に飾られていた写真を見つめた。
そこには、幸せそうな家族が写っている。
自分とー妻とー、
最愛の子ー。
「---」
博昭が写真を眺めていると、
そこに執事の黒畝が入ってきた。
「---黒畝か」
写真を、机に置くと、博昭は
黒畝に向かって微笑みかけた。
「--もう、この時のようには、戻れないのだな」
博昭は、家族が写った写真をみつめながら、
そう呟いた。
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半年後。
メイドの皮と完全に同調して、
五郎であったことなど、忘れかけていたメイは
呼び出された。
あの時の地下牢。
「--お嬢様…お呼びでございますか?」
今や一人前のメイドになっていたメイは、
そう尋ねると、
不夜は振り返って微笑んだ。
「今までご苦労様…。
この半年間の働き、とっても素晴らしかったわ」
不夜がそう言うと、
メイは、嬉しそうに微笑んで、頭を下げた。
不夜は、そんなメイとなった五郎を見ながら
優しく微笑んだ。
「わたしに憑依した件、許してあげますわ。
あなたはもう自由よ」
不夜がそう言うと、
不夜は黒畝を呼びつけた。
「--皮を脱がせてあげますわ。
あなたはもう大丈夫。
この屋敷から、解放してあげますわ…」
不夜が言った。
それはーー
メイドとしての生活に生きがいを見つけた
落田五郎にとって、
死の宣告とも思える言葉だった。
⑤へ続く
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次回が最終回です!
待ち受ける衝撃の結末とは…!?
明日をお楽しみに!!
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