不良男子の輝明に身体を奪われてしまった純奈。
純奈になった輝明は、その立場を利用して、
自分に反抗的だった生徒会副会長の花美を
追い詰めていく。
そして、その先に待つ、結末とは…?
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「はぁ…はぁ… 凄いよ…北原さんは…」
放課後の空き教室。
男女が抱き合いながら、その幸せを噛みしめていた。
「でしょ…?
わたしなら、毎日、幸二郎(こうじろう)くんを
気持ちよくさせてあげられる…」
イヤらしく服をはだけさせた純奈が
不気味にほほ笑みながら言う。
「さ…最高だよ…」
幸二郎は、純奈から、気持ちよくさせられて、
満足そうに顔を赤らめていた。
「ねぇ、幸二郎くん…」
純奈は甘い声で呟いた。
「--花美なんて捨てて、
わたしと付き合おうよ…」
純奈が抱き合っている男は、
花美の彼氏・幸二郎だった。
「--で、、、でも…」
幸二郎は理性でその申し出を断ろうとした。
だがー
花美は堅物で、なかなか自分に心を
開いてくれない。
それにー
学年一の美少女とも言われる純奈が、
目の前で自分を誘惑している。
しかも、これから毎日、楽しませてくれると言う…
「--お願い…♡」
純奈が甘い声と可愛らしい表情を武器に、
幸二郎に迫る。
幸二郎は、落ちたー。
「---お、、俺と付き合ってくれ!」
叫ぶ幸二郎を見て、
純奈は微笑んだ。
幸二郎と別れて、廊下に出た
純奈は、極悪人のような表情でほほ笑んだ。
「中身が俺(輝明)だと知らずに、
馬鹿なヤツ…
所詮、外見しか見てねぇってことだ。
お?幸二郎よ。
お前は俺だったら付き合うのか?
付き合わねぇよな。
くくく…人間、外見が全てだぜ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方、純奈がそんなことをしている間に、
輝明の身体になってしまった純奈は、
自分の家を再び訪れていた。
この前は門前払いにされた。
しかも、学校は退学にされてしまった。
でも、このままではいけない。
自分の身体を取り戻さなくちゃ…。
輝明の姿のまま、
彼女は、自分の家へと向かう。
インターホンを押す。
母親は言った。
「またあなたですか?
本当に通報しますよ!
娘に付きまとわないでください!」と。
輝明は涙ながらに訴えた。
自分しか知らないであろう小さい時の
思い出を口にした。
けれどー
それでも母親は信じてくれなかった。
切られるインターホン。
輝明は、その場で泣き崩れた。
人間は、所詮外見でしか判断されないのか。
中身になんて、何の意味もないのか。
純奈はわたしなのに…
輝明はそう思う…
それとも、
身体を奪った輝明こそが、
今は純奈なのか。
人間が、その人であるという基準や境界線は
いったいどこにあるのか。
外見か。
中身か。
それともー。
「---君は?」
泣き崩れていた輝明が、顔を上げると、
そこには、純奈の父の姿があった。
たまたま会社の仕事が早く終わったようだ。
「--お、、お父さん!」
輝明は叫んだ。
見知らぬ男子高校生にお父さんと呼ばれて
父親は戸惑った。
が、輝明はすぐに自分が純奈だと主張し、
今まであったことを、手短に、
父親に伝えた。
いつも、無口で、厳格な性格の父。
しかし、父はその話を聞くと、
深くうなずいた。
「--中に入りなさい」
信じてもらえるとは思わなかった。
輝明は、目に涙を浮かべて、自宅の中へと
入って行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
幸二郎を手ごまにした。
幸二郎は今夜、花美にお別れを告げる。
「--くくく」
純奈は笑みを浮かべた。
信じていた彼氏に裏切られるなんて、
アイツも思わなかっただろう、と。
「--明日は第2ステップ」
純奈は微笑む。
花美の名声を地に落としてやるー。
この身体があれば、それも、たやすいことだ。
花美に、地獄を見せてやる。
そう思いながら玄関を開けて
家に入ると、
母と父が真剣な表情で純奈を
見つめていた。
「--座りなさい」
父親が言う。
「----」
母親が無言で純奈を見ている。
純奈は戸惑いながらも、
とりあえずの笑みを浮かべて、
イスに座った。
「---純奈、自分の誕生日を覚えているか?」
父親が言った。
純奈は一瞬焦った。
だが、生徒手帳で住所を確認した時、
幸い、誕生日は把握していた。
覚えやすい数字だったからだー。
「--な、何言ってるの~
覚えてるに決まってるじゃない!
11月11日よ」
純奈が言うと、
父は笑った。
「--そうか。
そうだな」
母親が神妙な表情で、純奈を見つめている。
父親はため息をついて
続けた。
「--さて、ここからが本題だ」
父は、鋭い目付きで、純奈を睨んだ。
「---きみは、誰だ?」
と。
純奈は戸惑いながら答える。
「き、君はだれっ?て、
お父さんとお母さんの娘だよ!
何言ってるの?」
動揺した様子で言うと、
部屋の隅から輝明が出てきた。
「--わたしの誕生日は1月11日」
輝明の言葉に、
純奈は生徒手帳を慌ててみる。
たしかに、11月11日と書かれている。
「--印字ミス。
ずっと先生に言うのを忘れてたの」
輝明の言葉に、
純奈は唖然とした。
父に、輝明は自分が純奈であることを伝えた。
そして、”誕生日で確かめてほしい”ともー。
きっと、間違えるはずだから、とー。
「---君は、輝明くん…かな?
うちの娘と身体を入れ替えて、
娘の身体で好き勝手やってるそうじゃないか」
父親が言うと、
純奈は笑い出した。
「くくく…あはははははははは!
あはははははははははははは~~!」
豹変した娘を前に、母親は戸惑いの表情を浮かべる。
「そうさ!俺は輝明だ!
でもどうするよ?
お前たちにもとに戻せるのか?」
純奈が机を蹴り飛ばして立ち上がる。
「--け、警察に…!」
母親が言いかけると
純奈は叫んだ。
「ババア!余計なことしてみろよ!
今ここで、この身体、ボロボロにしてやるぞ~!」
包丁を手に、純奈が自分の首筋に包丁を突きつける。
「---や、、やめて!」
母親が手を止めて叫ぶ。
「--おら、オヤジさんもどうだよ?
何なら、服を全部脱ぎ捨てて外を走ってやっても
いいんだぜ?
娘さんの名誉はそれで、台無しだ!」
純奈が狂気的な笑みを浮かべている。
「--そ、、、そんな、、酷い」
輝明がつぶやくと、
純奈は笑った。
「--くく、どうすることもできねぇだろ!
ほら、早く出てけよ!ここはわたしの家だ!」
純奈が叫ぶ。
輝明は母と父を見つめて、
悲しそうにうなずいた。
「ひひひひひひひ!
さぁ、おとうさん、おかあさん!
仲良くやろうね~」
二人を睨みつけながら
純奈は脅すように、甘い声で囁いた。
両親は、娘の身体を人質にとられて、
何もなすすべがなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
学校に登校した純奈は
花美を呼び出した。
そして、彼氏の幸二郎も。
「--あ、花美ちゃん、おはよう」
やってきた花美は、
純奈と幸二郎が一緒に居るのを見て、
不思議に思う。
「--ほら」
純奈が促すと、幸二郎はうなずいた。
”これから毎日エッチさせてあげる”と
誘惑されて、
花美の彼氏・幸二郎はすっかり純奈の
言いなりになってしまった。
「--なぁ、花美、俺と別れてくれ」
幸二郎の突然の言葉に、花美は
訳が分からず、首をかしげた。
「え?どういうこと?」
花美が言うと、
純奈が笑った。
「こういうことよ」
純奈はその場で、幸二郎に抱き着いてキスをした。
堅物な花美は、なかなかキスもしてくれないし、
手も繋いでくれない。
幸二郎はそんな状況に、内心では不満を抱いていた。
だからー
幸二郎は純奈のことを
すぐに受け入れてしまった。
「んっ…♡ ふふっ♡ ふふふふ」
純奈が甘い声で笑う。
「--ちょっと!純奈!何してるの!」
花美が怒りをあらわにしている。
幸二郎は気持ちよさそうに顔を
真っ赤にしていて、花美のことなど
目にも留めていない。
「---純奈!あんたもしかして、
幸二郎を誘惑したの?」
花美が叫ぶ。
純奈は微笑みながら花美の方に寄った。
「--あんたより、わたしの方が魅力的なの」
敵意をむき出しにして純奈が言う。
「--ひ…酷い…
純奈…、ずっと友達だって信じてたのに!」
花美が叫ぶ。
純奈はこれ以上ないほど冷たい声で言った。
「友達?笑わせないで。
あんたみたいな女、わたしとは釣り合わないのよ」
そう言われた花美はその場に泣き崩れてしまう。
幸二郎は少し戸惑った様子だったが、
純奈が幸二郎に寄っていき、抱き着くと、
すぐに花美のことを忘れて、快感に身を委ねた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
花美のB組は体育の授業で教室を空けていた。
純奈は授業中に上手い口実を作って抜け出し、
B組の教室に入り込んだ。
そして、B組のお嬢様生徒の財布を抜きだし、
それを花美の鞄の中に突っ込んだ。
「--くくく…地獄に堕ちろ」
純奈が、表情を歪めて笑う。
そして、花美の机の上に飛び乗り
足を色っぽく組んで微笑んだ。
「--お前の事、踏みつぶしてやる…
くくくくく」
純奈は低い声で不気味に笑った。
ーー放課後、
B組では財布が盗難されたと騒動が起きていた。
純奈は自分のクラス・D組の放課後の学活が終わると、
B組の教室に向かった。
そしてーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方、輝明は学校へとやってきていた。
「--お父さんとお母さんは信じてくれた。
だったらー」
そう、先生たちにも信じてもらえれば
まだ手はあるかもしない。
みんな、外見ばかりで人を判断する。
けれども、父は信じてくれた。
だったらまだ、希望はあるかもしれないし、
希望を捨てたら、そこで終わりなのだ。
「---私は、負けない」
輝明はそうつぶやいて、退学になった
学校へ足を踏み入れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--どういうこと?」
B組の教室はざわついていた。
純奈が「花美が財布を盗んでいるのを見た」と
B組の教室で騒ぎ、
花美の鞄の中から、盗まれた財布が見つかったのだ。
花美は涙ながらに叫ぶ
「違う!わたしじゃない!」
純奈は笑った。
「でも、花美ちゃんの鞄に財布が
入ってたんでしょ?」
その言葉に、周囲のクラスメイトが、花美に冷たい
視線を浴びせる。
「違う!違うよ!」
花美が叫ぶ。
純奈の学校での信頼度は、
相当高かった。
同級生からも、先生からも信頼される。
その純奈が嘘をついているなど、
誰も、思わないのだ。
「---花美ちゃんにはガッカリ」
表情をゆがめて笑う純奈。
「---放課後、生徒指導室に来なさい」
B組の担任が言う。
純奈は花美に近づき、
耳打ちした。
「地獄に堕ちろ!」と。
純奈が生まれてから一度もしたことがないような
邪悪な表情を浮かべている。
「--純奈…」
花美は泣き出してしまった。
「---あ、みんなごめんね!
わたしはこれで…」
花美を地獄に落とす…
計画は着実に進んでいる。
純奈はB組の教室から出た。
「---!?」
純奈は突然激しいめまいに襲われた。
そしてーー
そのまま、倒れてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うっ…」
意識が戻ってくる。
純奈は、保健室で目を覚ました
「…!?」
純奈は時計を見る。
経過している時間は20分。
「--くそっ!いいところだったのに」
純奈は叫ぶ。
それにしても、
可愛い声で、乱暴な言葉を口にするのは
興奮する。
今夜は、純奈に卑猥な言葉や
乱暴な言葉をたくさん口にさせてみよう。
ふと、鏡を見る。
そこには、可愛らしい純奈の姿。
「--そうだ…!」
純奈は保健室のベットから立ち上がり、
廊下に飛び出した。
生徒指導室の前に向かうと、
そこには、花美と先生の姿があった。
「--ごめんね。疑って」
先生が言う。
「--いいえ…」
花美がお辞儀をしている。
「花美ちゃん、迷惑かけてごめんね」
元の自分ー輝明が、花美に謝っている。
どういうことだ?と純奈は思う。
何でアイツが居る?と。
「--ねぇ!退学になったあなたが何でそこにいるの?」
純奈はたまらず叫んだ。
振り返るB組の担任と花美と輝明。
「--それに、財布を盗んだのは、花美!
あんたでしょ?」
B組の担任は何故、花美を不問にしているのか。
自分が倒れている間に何があったのか。
「先生!私はみたの!
花美ちゃんが、財布を盗んでいるのを!」
純奈が叫ぶと、
周囲に人だかりができ始めた。
ざわめく周囲。
輝明が、冷たい目線で純奈の方を見る。
「--何で!なんであんたがここにいるのよ!
退学になったでしょ!」
純奈が叫ぶ。
さらにざわめく周囲。
「ちょっと!何よ!」
純奈が周囲に向かって叫ぶ。
「おい、あいつ、頭おかしくなったんじゃね?」
「きもいんだけど…」
「うわっ…」
周囲の同級生たちが純奈への侮蔑のまなざしを向ける。
「--はぁ?ふざけないでよ!
誰に向かって言ってるの!
わたしは純奈よ!」
純奈が叫んだ。
周囲は、憐みの目で純奈をーー
いやーーーー輝明を見つめた。
彼はー
”自分がまだ純奈の身体”だと思っている。
いや、そう見えている。
彼は、自分の身体が純奈で、
目の前に立っているのが輝明に見えている。
しかしー。
彼が倒れた時に、
輝明の身体になっていた純奈もまた、
意識を失った。
”入れ替わり薬”の効果が切れたのだ。
二人の身体はもとに戻り、
輝明は輝明に、
純奈は純奈に戻った。
ちょうど学校にやってきていた輝明の身体は、
保健室に運ばれて、
そして目を覚ました。
しかしー
入れ替わり薬には副作用があった。
それはー
脳が”誤認識”を起こすことー。
自分の身体に戻った輝明。
しかし脳はその状況を正常に判断することができず、
自分はまだ、純奈の身体にいると思い込んでしまっている。
もう、とっくに身体はもとに戻っているのに。
「--わたしは純奈よ!ねぇ、みんな!
どうしてそんな目でわたしを見るの!」
自分がまだ純奈の身体だと思い込んでいる
輝明は、女言葉でそう叫んだ
「きもすぎ…」
「退学になって頭おかしくなったのかよ」
周囲が輝明に言葉を浴びせる。
「--ごめんね、花美ちゃん」
自分の身体に戻った純奈は、
すぐに事情をB組の担任、純奈、そして幸二郎に
説明し、なんとか納得してもらえた。
「---ううん、大丈夫。
純奈がそんなことするはずないもんね」
花美と純奈は絆を取り戻した。
そしてーー
「-ーおい!辻林!なんでお前がここにいる!」
先生たちが駆け付けた。
「辻林?違う!わたしは純奈よ!
先生、何言ってるの?
おい!離せ!離せよ!」
輝明はそのまま連行されて、
追放された。
彼はーー、
これから先も永遠に、
自分の姿が純奈に見えるまま、
生活を送ることになる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
帰宅した純奈は、家族との本当の意味での
再会を喜んだ。
「--本当によかった」
泣きじゃくる母親。
家族との再会を喜んだ純奈は
笑顔のまま部屋に戻った。
ふと、純奈は鏡を見た。
純奈は思う。
”なんだか今日は、とってもエッチな気分…”と。
入れ替わり薬―
その影響は、輝明とは違うカタチで、純奈にも現れはじめていた。
純奈は、自分の胸を触って、微笑んだ…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
王道の入れ替わり物でした!
リクエスト下さりありがとうございました~
入れ替わり物は今度も定期的に書いていきたいと思います~
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