野球の試合が行われる球場。
試合がピークに達する中、
球団のオーナーを憎む男が、
憑依騒動を引き起こすー。
野球TSF小説…!?
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大歓声の中、
ドームでは、野球の試合が行われていた。
今年のトップを独走するミスト・デビルズと、
それを追撃するリスキー・フィクションズ。
両チームによる試合だ。
試合はミスト・デビルズの4番・皆月が放った
3ランホームランにより、3-0での試合が進んでいた。
ミスト・デビルズの先発ピッチャーである
八橋は、7回裏も無失点で投げ終えようとしていた。
しかしながら、満塁の大ピンチ。
キャッチャーがボールをつかむ音が響き渡る。
2ストライク、2アウト。
八橋は自信に満ちた表情で、
最後の一球を投げようとした。
球団の監督は、成績の悪い選手を容赦なく
2軍へと降格させる。
そのため、八橋も必死だった。
八橋がボールを投げるー。
しかし、リスキー・フィクションズの
3番・黒谷のバットが、八橋のボールをとらえた。
打球は、場外まで飛んで行った。
満塁ホームラン。
3-4。
ミスト・デビルズは逆転を許してしまう。
青ざめる八橋。
そこに、監督の井澄がやってきて
ピッチャーの交代を告げた。
八橋は、降板となり、奥へと下がっていく。
下がり際に、監督は告げた。
「お前は2軍行きだー」と。
容赦ない、井澄監督の采配。
選手たちは震え上がっていた。
降板した八橋に変わり、
2番手のピッチャー・神城がマウンド上に上がった。
神城がボールを投げる。
リスキー・フィクションズの4番・杏梨が空振りをして
バットが宙を舞った。
「--あぁ~ん、杏梨様~」
観客性のファンがつぶやく。
女性二人組のファンは、
リスキー・フィクションズを応援しているようだ。
そして、そんな様子を見ている男が居た。
男はーー
ミスト・デビルズの元ピッチャーだった男だ。
しかし、監督やオーナーによる”粛清”で、
戦力外通告を受け、全てを奪われた。
彼は、野球そのものを憎んだ。
試合を無茶苦茶にしてやるー。
そう思って、今日ここにやってきたのだ。
「ホームラン!」
ミスト・デビルズの7番打者 大野が
ホームランを放ち、ミスト・デビルズが
再び逆転を果たした。
「----壊してやる」
男は、光の玉のようなものを周囲に
展開した。
これはー
彼の魂の一部ー。
その数、500。
彼は、ミストデビルズを憎むあまりに
異様な能力を手に入れた。
それが、自らの魂の一部を体外に放出し、
それを他人に憑依させる能力。
自分の魂の一部を憑依させられた人間は、
男の意思のままに動かされる。
「ーーーさぁ、ショーの始まりだ!」
男は叫ぶ。
そしてー
自らの魂の分身数百個を、
会場中の女性に飛ばした。
なぜ女性に限定したのか。
それは、恐らく彼の趣味だろう。
「うっ・・・!?」
杏梨様~と叫んでいた女性ファンが
声をあげる。
それと同時に、周囲の女性たちも同じような
うめき声をあげた。
一斉に、男の魂に憑依されていく女性たち。
そしてー
突然、観客席から女性が立ち上がり、
球場の中へと駆け込んでいく。
「--くくく・・・壊せ壊せ!」
男は笑うー。
ミスト・デビルズへの復讐だ。
試合を滅茶苦茶にしてやる。
「--壊してやる・・・壊してやる・・・!」
カップルで試合を見に来ていた男は、
突然彼女が豹変したことに驚いていた。
「---華(はな)!どうしたんだよ?」
彼氏が戸惑いながら言う。
しかし、華は憎しみの表情を浮かべて、
マウンドに向かおうとしている。
彼氏は必死に彼女を抑えた。
そうこうしているうちに、他の女性客たちが、
いや、売り子がビールを放り投げて、
マウンド上へと向かっている。
「な、何なんだコレは・・・」
戸惑う彼氏。
「どけっ!」
華が乱暴に彼氏を突き飛ばすと、
他の女たちと同じように、
マウンドのほうに向かって走り出した。
ミスト・デビルズの2番・静宮が
バットを構えていたところで、
異変に気付いた。
「---!?」
観客席の女性達が一斉にマウンド上に
なだれ込んできたのだ。
次々とミスト・デビルズの選手達に襲い掛かる女性たち。
女性達はキスをしたり、
苛烈な攻めを始めていて、
ミスト・デビルズたちの選手は、
戸惑いと興奮に悲鳴を上げた。
「な・・・なんだこれは?」
降板させられていたピッチャー、八橋が
マウンド上を見つめながら言う。
そんな彼にも、一人の女性が襲い掛かった。
ビールを売っていた女性が、
ビールまみれになりながら八橋を押し倒して
キスをする。
「--こ・・・これは?」
監督の井澄は戸惑いの声をあげた。
その時だったー
マイクを持った女が、高らかに宣言した。
「--皆さん。突然のことで驚きでしょうけど、
落ち着いてください」
女子高生だろうか。
しかし、女子高生らしからぬ自信に満ちた表情で笑っている。
どよめく観客。
リスキー・フィクションズの選手たちも
困惑している。
女子高生は、男に憑依されていた。
「--私の目的はただ、一つ。
ミスト・デビルズへの復讐。
そのために、今日、この試合を滅茶苦茶にします」
女子高生はニヤリと笑みを浮かべた。
「---井澄監督!」
女子高生は憎しみに満ちた目で指をさす。
「---」
井澄監督は、女子高生を睨む。
「ーー俺はあんたを許さない」
女子高生は低い声で高らかに宣言した。
「--全て、壊してやる」
女性客や売り子は、全員、彼に操られている。
しかし、操られていない男性の観客たちは
一斉にブーイングを口にした。
復讐がどうとか、
そんなことは彼らには関係ない。
彼らは、ただ試合を楽しみに来ただけなのだから。
「---志津恵(しずえ)!何やってるんだよ!」
マイクを持って、高らかに復讐を宣言している女子高生の
彼氏と思われる男が叫んだ。
志津恵と呼ばれた女子高生がそっちを見る。
「--これは復讐なんだよ。
外野は黙ってろ」
可愛い声で、恐ろしい言葉を口にする志津恵。
「おい、志津恵!訳がわかんねーよ!
急にどうしたんだよ!」
彼氏が叫ぶ。
志津恵に憑依している男は思う。
分からなくて当然だ。
憑依のことも。
自分が、ミスト・デビルズに抱いている憎しみのこともー
他人になど、わかりっこないー。
「---さぁ、復讐の時間よ!」
志津恵は手を大げさに広げて、
復讐の始まりを告げた。
ミスト・デビルズの選手たちに襲い掛かっていた
女性たちが、一斉に動き始める。
「--はははっ!胸で押しつぶしてあげなさい!」
一人の選手ごとに、3、4人の女性が覆いかぶさり、
胸で選手たちの顔面を押しつぶしている。
「うふふふふふ♡」
「あふふっ♡ ふふふ♡」
「うふぅぅうぅっ♡」
「あ…はっ…はぅっ!」
ミスト・デビルズの選手たちが
喘ぐ女性たちの胸に押しつぶされて
苦しそうにしている。
複数人の女性の胸に顔面を
押しつぶされて、苦しそうにする選手たち。
やがて、何人かの選手は動かなくなった。
死んでしまったのだろうかー?
「---ひっ…」
井澄監督が、恐怖の表情を浮かべる。
女性に押しつぶされた選手たちが
次々と意識を失っていく。
「か、、監督…!」
2番手ピッチャーとしてマウンドに上がっていた
神城も、女性たちに押しつぶされて悲鳴をあげている。
「---ひぃっ…!」
監督は、ピッチャーの神城を見捨てて逃げた。
ただ、ひたすらに走った。
会場の男性客たちもパニックを起こして
逃げまどっている。
それだけではないー。
ミスト・デビルズの対戦相手だった
リスキー・フィクションズの選手や監督も、
球場の外へと逃げていた。
やがてー
ミスト・デビルズの選手たちが全滅すると、
女性たちは操り人形のように、その場で
棒立ちになり、うつろな目で、虚空を見つめた。
「---監督」
志津恵が微笑みながら、井澄監督の前に
姿を現した。
「--ひっ…お…お前は!」
井澄監督が叫ぶと、志津恵は微笑んだ。
「この女は、復讐のための道具です。
あんたに復讐するためのね」
志津恵が髪をかきあげながら笑うと、
井澄監督は叫んだ。
「お…お前は誰だ!」
その言葉に志津恵は微笑む。
「ーーあんたに戦力外通告を出された
元ピッチャーだよ」
その志津恵の笑みに、
井澄監督は凍りついた。
「な、何のつもりだ…復讐か?」
井澄監督の言葉を無視して、
志津恵は笑った。
「--どう?この女の意識は
完全に封じ込められて
今やこの身体も心も、完全に俺のもの!
憑依薬って凄いでしょう?」
志津恵は笑う。
「今なら、この場で服を脱ぎ捨てて全裸に
なることもできるし、
この女の人生を奪うことだってできる!
それに、笑いながら死ぬことだってできるんだよ!
あははははははっ♡」
志津恵の話を聞きながら
井澄監督は青ざめた表情で言った。
「--ゆ、許してくれ。
何でもするから…!」
土下座する井澄監督。
その監督をあざ笑うように見下し、
志津恵は靴でその手を踏みにじった。
「--無様ね…」
意地悪そうに笑う志津恵。
井澄監督は恐怖しながらも、悔しそうに志津恵の顔を見る。
「---プッ!」
志津恵はつばを井澄監督の顔面に吐きかけた。
そして…
今度は頭を踏みつけた。
「--俺はお前を許さない!」
完全に乗っ取られている志津恵は怒りを
あらわにして井澄監督の頭を何度も何度も踏みつけた。
「おらぁ!おら!俺に!!謝れ!」
今まで一度も暴力など振るったことがないであろう
志津恵は、怒りの形相で、井澄監督の
頭を踏みつけている。
やがてーー
「--っ!」
志津恵は、井澄監督が失神しているのを見て
足を止めた。
「ケッ!くたばったのか?」
そう言うと志津恵は鼻で笑った。
ふと、自分の姿が、近くにあった、金属の板に反射した。
「--可愛いじゃネェか」
そういうと志津恵は笑った。
「決めた。この体は貰っていくぜ」
虚ろな目をして立ち尽くす女性たちを
放置して、志津恵は
物凄く嬉しそうに大笑いしながら
球場から立ち去ろうとする。
「おい!志津恵!どうしたんだよ!おい!」
彼氏が叫ぶ。
志津恵は笑いながら言った。
「---この体貰ってくわ・・・!」
そう言って、笑いながら唖然とする
彼氏に背を向け、
志津恵は奇妙な笑い声をあげながら
立ち去っていった。
球場には、
倒れたミスト・デビルズの関係者たちと、
男の魂の一部に憑依され、
自分では何も考えることができなくなった
女性たちが立ち尽くしていた。
数十分後ー
警官隊が突入し、ミスト・デビルズの選手達は
緊急搬送された。
そしてー
女性達も。
しかし、女性達は、人形のように、
ボーっとしたままで、
そのままその症状が回復することはなかったという。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
化粧をしながら志津恵は笑う。
身も、心も、ミスト・デビルズの
ピッチャーだった男に完全に乗っ取られてしまった。
「ふふ・・・♡ 今日も、たっぷりお金
巻き上げてやろっと♪」
今の志津恵は中年男たちをターゲットに
お金を巻き上げるようになってしまっていた。
「---」
ミスト・デビルズの
井澄監督は、確かに容赦ない采配で
反感を買う人物ではあった。
ただし、この志津恵に憑依している男は違う。
彼はーー
女性への暴行事件を起こし、
戦力外通告を受けたのち、逮捕された人物だ。
つまりは、逆恨みー。
「--くくく…
俺は欲しいモノは何でも手に入れるんだよ…!」
志津恵が身体を震わせながら笑う。
「ははは、女の身体でさえもな!
はははははははははっ!」
家族を脅し、完全に従わせた志津恵は、
今や家庭を完全に支配していた。
「さぁて…今日も楽しむか・・うふふ♡」
不気味にほほ笑む彼女は
夜の街へと繰り出して行った。
今日の真夜中の試合は、
延長戦にまでもつれ込みそうだー
おわり
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球団の選手名に聞き覚えのある名前が
いた方もいるかもですが、ご本人様とは
何の関係もありません!
たまたま同姓なだけです!
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