<憑依>Preppy①~お嬢様と全てを失った男~

とある会社のご令嬢であるお嬢様と、
会社をクビになったすべてを失った男ー

その二人の運命が交わるときー

※フォロワー様のЯain様(@TohoBlueRain)との合作です!
Яain様から頂いた話の流れをもとに、私が小説化します~!

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サラリーマンの落田 五郎(おちた ごろう)は、
部長に呼び出されていた。

とある商社の企画部に勤務していた五郎は、
冴えないサラリーマンだった。

無難な高校を卒業し、無難な大学を卒業し、
只々漠然と、就職した。
別にやりたい仕事だったわけではない。
ただ、なんとなくこの会社を選んだのだ。

特技もなければ、目立つ趣味もない。
彼女も居ない。
そして、秀でた能力もない。

28になった今も、無難に仕事をしているが、
会社が満足していないのは、火を見るより、明らかだった。

「--落田くん」
会社の部長が言う。

「--」
そして、部長は無言でとある用紙を差し出した。

”希望退職”

最近、リストラを始めているという噂はあった。
だから、五郎は驚かなかった。

”あぁ、来たか”

そんな感じだ。

五郎は何も反論しなかった。
「わかりました」とだけ答えて、
渡された書類にサインをする。

未練はない。
別に、好きな会社でもないし。

成虫になって木に止まって、
鳴きながら最後の瞬間を待つ、
蝉のような顔をして、落田五郎は
会社を後にした。

これからどうするべきか。

ハローワークにでも通うべきか。

ふと、スマホに着信が入った。

「--よぅ、落田!
 来週のイベントだけどさ、
 朝一の電車でいいかな?」

とあるアイドルのイベントに行く約束をしていた
友人・嘉市(よいち)からの電話だった。

「--わりぃ、俺、会社リストラされちまったわ。
 だから、金なくて行けねぇよ…」

五郎がそう言うと、
嘉市は笑った。

「はっは~、へたくそな嘘だなおい!
 会社をクビになった?
 何やらかしたんだ?
 会社でズボンでも脱いだのか?え?」

いつも陽気な嘉市は、
五郎のリストラを冗談だと受け止めて、
適当なことを言い続けた。

「-おい、お前はいつからそんなファック野郎に
 なったんだ?
 俺との約束を破るのか?
 え?何の予定が入ったんだ・
 彼女でもできたのか?
 それともママのおっぱいでもしゃぶるのか?」

嘉市が、まくし立てる。

五郎は、イライラした様子で言い返した。

「あぁ、おっぱいしゃぶるんだよ!
 黙ってろ!」

そう言って電話を切った。

仕事を失った
友達を失ったー。

もう、終わりだ。

五郎は、途方に暮れる。

スマホの連絡先一覧には、
両親と妹、そして嘉市と会社関係者の名前しかない。

そらとぶパンケーキモンスター とかいう
LINEスタンプをついついノリで買ってしまったが、
送る相手が居なかった。

「--俺は、何のために生きているんだ」

深いため息をつきながら、
昼間の街を歩く。

近くのハンバーガー店に入る。

なんだか、店員が笑っている気がする。
「こいつニートじゃね?」とでも思っているのだろうか。

「--ハッピーセットで。」
五郎はハッピーセットを注文すると、
死んだ目でそれを食べた。

「ふうぅ…」
ふかいため息をついて、
昼の街を歩き続ける五郎。

その時だった。

ドカッ

何かにぶつかった。

「--!?」
五郎はふと振り向くと、
高貴な雰囲気のお嬢様が倒れていた。

日傘を持った優雅そうなお嬢様だ。

「--お嬢様、大丈夫でございますか」
執事と思われる男が、そのお嬢様に近づく。

「ちょっと、痛いじゃないの!」
お嬢様と呼ばれた少女が、五郎の方を見た。

年齢は14、5、ぐらいだろうか。

「あ、あ、はい、すいません」
五郎は頭を下げる。

「すいませんじゃないわよ!
 あなた、礼儀というものをご存知?」

14、5ぐらいの”お嬢様”に
昼間の街中で大声で説教される五郎。

周囲の通行人が
怒られる五郎の方を見る。

「--だ、、だから、その、すみません。
 お怪我はありませんか?」
五郎が、お嬢様の手に触れようとすると、
「触らないで!けがわらしい!」と、
その手を振り払った。

「-こんな真昼間から、
 街中を歩いて、あなた、お仕事は?」

お嬢様が尋ねる。

「ーーーーー…くです」
屈辱から、小声で「無職です」と言ったのだが、
小声すぎて、声にすらなっていなかった。

「--聞こえませんわ。もっと大きな声で!」
お嬢様に促されて、
五郎はムキになって叫んだ。

「無職です!」

周囲の通行人たちがクスッと笑う。

「--あら、ごめんなさい。
 そうよね。あなたみたいな礼儀も知らない方が
 お仕事なんてできるわけ、ありませんものね」

お嬢様は笑いながら言う。
五郎は唇を噛みしめて、その屈辱に耐えた。

「不夜(ふや)お嬢様、そろそろお時間でございます」
白いひげを綺麗に整えた、いかにも執事な男が言うと、
不夜と呼ばれたお嬢様は、「あら、そう」と言った。

「じゃあ、これで失礼しますわ・・・
 落ちこぼれさん…クスッ」

そう言うと、不夜は、「行くわよ 黒畝(くろうね)!」と叫び、
リムジンに乗ってその場から立ち去った。

周囲が笑っている。

「くそっ!ふざけやがって!」
五郎は怒りに表情をゆがめた。

一人残された五郎は、怒りの
表情のまま、家へと帰った。

「--ただいま。」
五郎が家に入ると同時にそう呟いた。

勿論、中からおかえりの声は無い。

彼は、独身で一人暮らしだ。

大学に入学する際に、
両親に対して、「俺はBIGになる」などと
大きな発言をし、家で同然のかたちで家を
飛び出した。
だから、五郎に帰るべき場所すらない。

「んーーー?」
ふと、五郎は自分の机の上に置いてあるものに気付いた。

それはー
”憑依薬”

昨日、自宅に届いた代物だ。

ネットで販売されていた”憑依薬”
人に憑依することのできるという薬で、
五郎は、「バカ言うなよ」とあざ笑いながらも、
なんとなく購入していたものだった。

「ヒトの身体を乗っ取ることができるなんて、
 そんなことあるもんか」

五郎は呟いた。
けれどー

「じゃあ、これで失礼しますわ・・・
 落ちこぼれさん…クスッ」

あのお嬢様の言葉を思い出した。

14、5ぐらいだろうか。
ふざけやがって。

俺はお前の2倍近く生きているんだ。

福沢諭吉に愛されている家庭に生まれた
お前には分からないよな、
などと思いながら、
五郎は、決心した。

「そうだ、この薬を使って、アイツの人生を奪ってやる」
五郎は呟く。
俺のような落ちこぼれに、人生を奪われる
苦しさを味わせてやる。

「ま、どうせ、栄養ドリンクかなんかなんだろうけどな」
憑依薬が入った、小さな容器を持ちながら笑う五郎。

もしかしたら、毒液かもしれない。
飲んだら、自分は死ぬかもしれない。

けど、それが何だ。
今の自分は、もう死んでいるようなものではないか。

「--どうにでもなれ!」
五郎はそう叫び、薬を飲みほした。

するとー
急激な激しいめまいに襲われた。

やっぱ毒液か。
五郎はそんな風に想いながら笑う。

自分の人生は最後の最後までゴミだったーと。

そして、五郎の意識は遠のいた。

・・・・。

・・・・・・。

気が付くと、
五郎は空に浮かんでいた。

「ははっ、俺は死んだのかな?」
五郎は自虐的に笑う。

しかしー、ふと思った。

「いや、待て。これは憑依薬の効果なんじゃないか?」

と。

そして、気づけば、
自分は豪華な屋敷の上に浮遊していた。

これは、もしや、あのお嬢様の屋敷なのではないか。

とー。

お嬢様への憎しみを抱きながら
気を失ったことで、
ココに辿り着いたのだと、
五郎は思った。

五郎は、自分の身体を動かした。
慣れない感覚に苦しみながらも
屋敷の壁をすり抜けて、
中へと入る。

たくさんのメイドが居る中、
五郎は、あのお嬢様を探した。

当然、自分は霊体のような
状態になっているから、
メイドたちに気付かれることはなかった。

そしてー

豪華なシャンデリアのある
食堂のような場所に辿り着いた。

「最近はどうだ?」
お嬢様の父親・高砂博昭(たかさごひろあき)が、
豪華な食事を口に運びながら言う。

「学校の方は問題ないけど…
 お父様、わたし、新しい洋服が欲しいの。
 黒畝、頭でっかちだから、
 お父様から言っておいてくれるかしら?」

不夜がそう言うと、
父は、頷いた。

「分かった。お前がそう言うのなら」

そのやり取りを見ながら五郎は
思った。
なんて、傲慢な女なんだ、と。

いかにもお嬢様みたいな恰好しやがって。

「--憑依してやる!」

だが、この場で憑依するのは、まずい。
五郎はそのまま待機することにした。

「--俺の会社にとって、
 今は勝負時だ。
 海外進出も安定してきている。」

父は、会社の経営について語り出した。

五郎は、その話を聞きながら、
このお嬢様は、かなりの大企業の娘であることを知る。

ただし、会社名は聞いたことが無かった

少しして、お嬢様が食事を終えて
部屋へと戻る。

外で見た姿とは違い、
お嬢様は上品なマナーを身に着けているようで、
メイドたちに対しても、お嬢様としての気品
溢れる接し方をしていた。

お嬢様が自分の部屋へと戻る。

五郎もそれについていき、
部屋を見回しながら、
このお嬢様のことを知る。

数々の表彰状が並んでいる。
テニスー
ピアノー
語学ー

何もかもが完璧だ。

しかも、父は、大企業の社長。

「そうか、そうか、何の不自由もなく暮らしてきたんだな」
五郎は言う。

もちろん、不夜にその言葉は聞こえない。

「--奪ってやる」

五郎はそう呟いた。

お嬢様は、通信教育の英語の授業を受けている。

メイドや執事の出入りも多い。
今は、憑依できない。

憑依した瞬間、一瞬で憑依できるのか、
それとも、抵抗されるのかが、分からないからだ。

「夜まで待とう」
五郎はそう呟いた。

そしてーーーー
夜になった。

不夜は、一人、小説を読んでいる。
経営学の本だ。

「--こいつ、会社を継ぐつもりか?」
五郎は呟いた。

しかし、今が憑依時だ。

「--お前の身体は、俺のものになるんだよ!」
五郎は叫んだ。

憑依方法は分からない。
けれども、五郎は王道の方法を試した。

相手に、身体を重ねる。

よくある方法だ。

「--お邪魔します~お嬢様!」
五郎はそう呟いて、身体を重ねた。

「----ひうっ!?」
不夜は、突然身体にゾクっとした違和感を感じたー。

何かが入って来る感覚。

「--あ・・・ぅ…あぁ?」
意識が遠のきそうになる。

何かが入ってくる感触。
何が入ってきている?

不夜は戸惑う。

「あぁ…で、、出ていきなさい!
 何…???私に入ってこないで…!」

不夜はもがき苦しみながら叫ぶ。

”うるさいやつだ”
五郎はそう思った。

”抵抗するな!お前の身体は俺のものだ”
五郎は叫ぶ。

「---誰???誰なの???
 出てって…出てって…!」

もがき苦しみ、机の上の本を
落としてしまう不夜。

「---わ…わたしは……
 …あれ……何だろう……あれ…?」

意識がもうろうとして不夜は
自分が自分で無くなるような感覚を覚える。

”もう少しだ”

五郎は抵抗が弱まってくるのを感じた。
そして、さらに念じた。

俺がお嬢様だ、と。

「あぁああ・・・た、、助けて…!
 助けてぇ!」

不夜は叫ぶ。
深夜だからだろうか、なかなか誰も駆けつけない。

「---あぁ……な、、、何…
 きもちいい……なんだか、、、安心する……」

不夜の表情から恐怖が消えた。
そしてーーー

「---お嬢様!」
執事の黒畝が駆け付けた。

「---ふふ、どうしたの?」
不夜はニタリと笑った。

「あ、いえ、お嬢様の悲鳴が…」
執事はそう言うと、
不夜は元気そうに身体を動かして見せた。

「--わたしは元気よ?
 黒畝、夜だから寝ぼけちゃダメじゃない」

昼間、この執事の名前は聞いた。
その名前で言いながら、不夜として執事をたしなめた。

「--は、、はっ…申し訳ございません」
深々と頭を下げる執事。

「もう、いいわ。下がりなさい」
そう言うと、執事は礼をして部屋から出て行った。

「ふふふ…」
不夜は自分の身体を触りながら笑う。

「ははははははははは!」
憑依に成功したーーー

不夜は邪悪な笑みを浮かべて、ほほ笑んだ。

「今日からわたしが、お嬢様ですわ…」 と。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

フォロワー様のЯain様との合作です。
頂いた流れをもとに、私が小説にする、という
初めてのスタイルですね!

Яain様の持ち味と私の持ち味が上手く混ざればいいな~
なんて思ってます!
(結構アドリブ(?)を放り込んでますけど笑)

明日もお楽しみに!

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憑依<Preppy>

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 06d4345433bb864e39ea7b5d0c72cf32
    お嬢様を打が舌
    打が舌→探した

    王道の方法をアメした
    アメした→試した

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > お嬢様を打が舌
    > 打が舌→探した
    >
    > 王道の方法をアメした
    > アメした→試した

    ありがとうございます~
    こちらも修正しました!!