<憑依>くよよんの宮殿

裏世界で生きる便利屋・ジミーは、
とある人物から、ある依頼を受けた。

それは、”くよよん”なる人物の確保だったー。

ツイッターのフォロワー様
神城玖謡(くよよん)様 @kamisirokuyou が
ゲスト出演されるコラボ小説です!
(ご本人様の許可を頂いています!)

くよよん様をご存知ない方は分かりにくい部分が
あると思います!ごめんなさい!

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雨の音が騒々しいー。

人気のない路地。

路地に住みついているネコたちも、
どこかへと移動したようだ。

そこにー
一人の男がやってくる。

人気のない路地は、
裏世界における”取引”によく用いられる。

今回も、そうだ。

反対側から傘をさした人物が歩いてくる。

「ーーーーあんたが依頼人か?」
裏世界の便利屋・ジミーが、
反対側からやってきた人物に声をかける。

ジミーは、今まで裏世界で数々の仕事を
こなしてきた人物だ。
特定の組織には、属さない。

金で、何でもするし、
金で、動く男、それがジミーだった。

「---はい」
傘をさした人物は言う。

「--その人物の確保を、お願いします」
傘の人物はそう言って写真を手渡した。

「--この子を?」
ジミーが聞き返すと、
傘の人物は答える。

「”くよよん”と呼ばれる美幼女で、
 町はずれの宮殿に住んでいます。
 とある事情から、そのくよよんの身柄を
 確保して欲しいのです」

感情の無い声で淡々と言うその人物。

だが、裏世界に生きるジミーは理解している。
”相手の目的”には関与しないことー。
それが、長生きする道である、と。

依頼された仕事をきっちりとこなし、
報酬を受け取る。

それで、十分なのだ。

バサッ…。

傘の人物が、バックを投げた。

「そこに、前金が入っています。
 成功した時には、その3倍、お支払します」

傘の人物がそう言うと、ジミーは鞄の
中身を確認し、頷いた。

「--くよよんの確保、
 生死は?」

ジミーが確認すると、
生死は問いませんが、可能であれば生きたまま連れてくるように、と
傘の人物は答えた。

「---分かった。ところで、アンタ…」

ジミーは名前を尋ねようとした。
だがー、傘の人物が、あからさまに
”イヤなオーラ”を出したのを悟り、
言葉を変えた。

「--仕事完了後の受け渡しの際に
 本人確認の合言葉が必要だ。
 合言葉だけ、決めてくれ」

ジミーが言うと、
傘の人物は言った。

「合言葉ー。

 そうですネー。
 ”純白”でお願いします」

と。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その夜ー。

ジミーは早速、町はずれの
宮殿へとやってきた。

ジミーの調べによれば、
この宮殿は数年前に放棄されていたはず。

現在の所有者はいないはずだがー。

そして、ジミーは、捕獲対象に指定された
”くよよん”なる人物についても調査を行った。

神城玖謡(かみしろ くよう)
それがくよよんなる人物の本名。

TSF界の重鎮の一人と言われている。

TSの物語を書いたり、ピアノを弾いたり、
銃を愛したり、多彩な趣味を持ち、
人脈も広く、美貌の持ち主とされているようだ。

ただし、その詳しい素性は、
ジミーの調査でも分からなかった。

ジミーは、昔、同業者に言われたことを思い出す。
”TSFのやつらには手を出すな”と。

憑依だの入れ替わりだの他者変身だの、
恐ろしいモノが、そこには待ち受けていると。

ジミーにそう警告した同業者は、数年前に
”井澄ミスト”なるTSF界の重鎮が絡む仕事に
手をだし、そしてー、消息を絶った。
恐らくはー。

だがー。

「--俺はまけねぇぜ」
ジミーは笑う。

今までだってどんな任務も成功させてきた。

今回だって…

「くよよんだか、ミニ四駆だか知らねぇが、
 俺の餌食になりな!」

ジミーはそう呟くと、くよよんなる人物が
居ると言う宮殿に足を踏み入れた。

宮殿の中はーー
無人だった。

本当に、こんな場所に、”くよよん”が居るのだろうか。

銀髪赤眼無表情ゴスロリ美幼女を自称しているらしいが、
いったいどんな人物なのだろうか。

「-----」

ベートーベンの月光が聞こえてきた。
綺麗なメロディー。

月明かりに照らされた不気味な宮殿内部で、
綺麗なピアノの音だけが鳴り響いている。

「---どういうことだ?」
ジミーが音のする方に行くと、
そこにはーー

銀髪の幼女が座っていた。

「--お前が、くよよんか?」
ジミーが問いかける。

しかし、返事はない。

「--おい!」
ジミーがくよよんの肩をつかんだ

するとーー

「ケタケタケタケタケタケタ」
不気味な笑い声をあげたーー

それはーー”くよよん”のカタチをした人形だった。

「ひっ…!」
ジミーは人形から手を離す。

人形は、直後に”爆発”したー。

直後ー
機械音声のような声が宮殿内に響いた。

「くよよんのお庭を汚すものはー許さない」

「--!!」

謎の不気味な音が宮殿内に響き渡る。

ふと、自分の歩いてきた廊下を見ると、
そこには銀髪赤眼無表情ゴスロリ美幼女が
大量に居た。

「---こいつらは?」
ジミーは、一瞬さっきの爆発した人形のように
”機械”かと思った。

けれど、違った。

全員人間だ。

うつろな目をした人間たちが
銀髪赤眼無表情ゴスロリ美幼女の姿をしているのだ。

「な…なんだこれは」
ジミーは混乱する。

”その子たちはー”

宮殿のモニターに文字が表示される。

”クラスィーナ様の使徒”

「な、何を言っている?」
ジミーは恐怖の声を出した。

周囲に無表情の銀髪赤眼無表情ゴスロリ美幼女達が
集まってくる。

こいつらは、何をされたんだ?
操られているのか?

ジミーは、そう考えながらも走り出した。

「--ターゲットは、くよよんのみ」

依頼されたのは”くよよん”の確保のみ。
この不気味な宮殿が何かは分からない。

だが、余計なことを詮索する必要はない。
余計なことの詮索は、すなわち、死に繋がる。

それが、裏世界と言うものだ。

走りながらも、廊下に飾られた
月の紋章のようなものを目にする。

“クラッシナ教”

これは、一体何なのだ。

そうこうしているうちに、ジミーはなんとか
最深部にたどり着いた。
そこにー

銀髪赤眼無表情ゴスロリ美幼女 と表現するに
ふさわしい美幼女ー
”くよよん”が居た。

くよよんは振り返り、微笑む。

「--くょょん!」

くよよんは、泣いた。

ジミーが言う。

「-怖くないよ。おじさんについておいで」
ジミーは、くよよんに危害を加えるつもりはない。
依頼人の傘の人物に引き渡した後、
どうなるかは知らない。

だが、それはどうでもいいことだ。

「--!?」
ふと見れば、目の前のくよよんが
AKMと呼ばれる銃を持っていた。

「--なっ」

さらに、気付けば、周囲の
美幼女たちが、ジト目で、
ジミーのことを見つめていた。

周囲の無表情の美幼女たちは、
くよよんに、魂の一部を憑依させられ、
操られていたー。

くよよんを守る、忠実なしもべとして。

「---…」
ジミーは、観念した。
もう、自分に抵抗する手段は無い。

甘かった。

かつて裏世界の同業者に言われたことがある
”TSFには関わるな”

そう、安易に踏み入れてよい世界では無かったのだ。

憑依にー
他者変身ー、記憶書き換え、皮…
非現実的なことが、この世には実際に存在している。

そしてそれは、常識の通用しない世界。

「--かえる?それとも?」
銀髪美幼女の一人がつぶやいた。

生きてここから帰るか、
それともここで死ぬかを
確認しているのだろう。

「--くくく」
ジミーは笑った。

あの傘の人物は
”生死は問わない”と言った。

ならばー
最終手段だ。

ジミーは隠し持っていた銃を
手に取った。

くよよん本体の額に風穴を開けて、
つめたくなったくよよんをお持ち帰りする!

「くょょん…」
くよよん本体が、この世のものとは思えない
悲しげな目で、泣いた。

「---俺の勝ちだ」
ジミーがそう叫んで、銃を放った。

ーーーと思った。

が、その手に銃は無かった。

「なにー?」
ジミーの銃は、いつの間にか姿を現していた、
くよよんの妹、神城侶姫によって奪われていた。

「くよよんお姉ちゃんに、手を出すな!」
そう言うと、
周囲の美幼女たちも一斉にそう叫んだ。

「……もう、手出しはしない…
 約束する」

ジミーはそう告げた。
プライドを捨てて、生きて帰る道を選んだ。

裏世界では、引き際が重要だ。

目の前にいるくよよんが可愛らしく微笑んだ。

「---」
背後の銀髪美幼女たちが道をあけて
一列に並ぶ。

ジミーは、くよよんと銀髪美幼女が見つめる中、
ゆっくりと宮殿の外に向かって歩いて行った。

生きた心地など、しなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雨が降っている。
ジミーは公園のベンチで一人、座っていた。

負けた。
今まで、どんな危険な仕事もこなしてきた
この俺が、負けた。

これ以上ない屈辱だった。

だがーー

「・・・命あってこそだ」
ジミーは、そう呟いて、
ひとまず一服することにした。

「---」
タバコに火をつけようとして、
雨粒がその火を消してしまう。

「--チッ」
ジミーは舌打ちをした。

突然、上空から降り注ぐ雨粒が消えた。

「---?」
ジミーがふと上を見ると、傘があった。

誰かが、傘を差し出してくれたようだ。

「お、悪いな」
ジミーがそう呟いて、タバコに再度火を
つけようとした

その時だった。

「合言葉は、純白・・・」

傘を差し出してきた人物の顔を見て、
ジミーは目を見開いた。

その人物は、笑っていたー。

「---役立たず・・・廃棄」
傘を持っていた人物は、そう呟いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

雨が、公園に降り注ぐ。

そこには、雨傘がひとつー

そしてーーー
蒸発したかのように、真っ白になって、
倒れている物体があったー。

「---くよよんは、
 自分で確保しないと…ダメかな」

傘を持つ人物は、そう呟いた。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

フォロワー様のくよよん様を主役にした
小説を作ってみました!
ゴスロリ宮殿・・・恐ろしいですネ!

くよよん様、ありがとうございました☆

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小説

コメント

  1. より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    自分が確認した範囲では、この続編はまだだったようなのでもしかしてあるか?
    そうなった場合、依頼者もなかなかのようなので、どっちが勝つか楽しみですね
    案外「引き分け」と言うのもあるかもしれないしねえ…