<憑依>束縛彼女①~束縛~

心優しい彼女ー。

いつも、楽しい日々を過ごしていた。
けれどー
ある日を境に、彼女は変わった。

彼氏を、異常なまでに、束縛するようになったのだ…

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高校に通うごく普通の高校生、
原本 法二(はらもと ほうじ)は、
今日も、彼女の平川 千奈津(ひらかわ ちなつ)と
談笑していた。

千奈津は、ポニーテールがよく似合う、
可愛らしい感じの女子生徒だ。

「--へ~そうなんだ」
千奈津が、法二の何気ない話を聞いて、
相槌を打つ。

「それでさ、僕は遠慮することになっちゃってさ」
法二が、苦笑いしながら言う。

家での出来事ー。
妹の我儘に振り回されてしまった話を
笑いながら、彼女の千奈津に話していた。

「でも羨ましいな」
千奈津が言う。

「わたし、兄弟とか居ないから、
 そういうお兄ちゃんと妹のやりとりみたいなの、
 ちょっとうらやましい!」

千奈津の言葉に、法二は首を振りながら笑う。

「ぜ~んぜん、羨ましく何てないよ!
 3日で鬱陶しくなるって!」

法二が言うと、千奈津は微笑んだ。

千奈津は妹の、陽伊奈(ひいな)と違って、
とても心優しい子だ。
陽伊奈とは正反対だからこそ、
惹かれたのかもしれない。

「あ、ごめん、わたし、先生に実行委員会の
 ことで相談しにいかなくちゃいけないんだった!」

千奈津が笑いながら席から立ち上がる。

「あ~大変だね。文化祭実行委員会も」
法二が言うと、「ま、楽しいからいいんだけどネ!」と
千奈津は笑いながら立ち去って行った。

「--よぅ」
背後から声がして、振り向くと、
そこにはクラスメイトの古井 尚登(ふるい なおと)が居た。

「---あ、尚登じゃん。何か用?」
法二は、尚登と小学生時代からの付き合いだった。

「いいよな、お前の彼女は」
尚登が、教室から出て行った千奈津の方を見ながら言う。

「--はは、でも、尚登にも彼女、居るんじゃんか」
法二が言うと、
尚登は舌打ちした。

「あいつ、束縛が激しいんだよ。
 他の女子と喋っただけで、殴られたこともあるんだぜ」
尚登の言葉に、法二は苦笑いする。

尚登の彼女、
隣のクラスの女子生徒・湯浅 薺(ゆあさ なずな)は
可愛いのだが、嫉妬深く、非常に陰険な性格の持ち主だ。

「尚人がもっとしっかりすればいいんだよ」
法二が何気なく言う。

「--しっかりって、お前ナァ、俺だって十分に…」
尚登が言うと、法二は続けた。

「彼女にはもっと優しくしなきゃ!
 そうすれば、きっと、湯浅さんも分ってくれるはずだよ!」

法二に悪気はないー
けれど、尚登は束縛の苦労を知らない法二に
腹が立った。

「--お前は知らねぇんだよ。束縛の怖さを」
尚登が言うと、法二は笑いながら言った。

「僕は尚人とは違うからね!
 束縛なんて怖くないし、ぜ~んぜん大丈夫だよ!」

軽い気持ちで言う法二。
尚登はイライラしながら言った。

「じゃあなんだよ、千奈津ちゃんに束縛されても
 お前は平気だってのかよ」

尚登の言葉に法二は頷いた。

「束縛に悩むなんて、女の子じゃないんだし、
 尚登ももっと頑張りなって!」

法二が無邪気に笑いながら言った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その放課後、
薺にスマホチェックをされながら、
尚登は思う。

「--俺が何も努力していないみたいに言いやがって」

「え?」
薺が不思議そうに聞き返すと
尚登は「なんでもねぇよ!」とつぶやいた。

帰宅した尚登は、
引出からとあるモノを取り出した。

”憑依薬”

”束縛なんて、怖くない”
法二の言葉を思い出す。

「--なら、味あわせてやるよ。
 お前に、束縛の怖さをー」

尚登は、バイトで貯めたお金で購入した憑依薬を
手にすると、それを握りしめた。

「--千奈津ちゃん、ごめんな。
 あいつが生意気だから、ちょっと脅かしてやるだけだから」

憑依薬で、千奈津の身体を乗っ取り、
法二を束縛してやる。

束縛に、あいつは本当に耐えられるのか、
見極めてやる。

尚登が、憑依薬を飲みほし、
その場で気を失った。

部屋には
”憑依薬のオークションでのご購入、ありがとうございます”
と書かれた紙が転がっていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---明日は何だったかな?」
自宅で千奈津が、翌日の授業道具を
鞄の中に詰めていた。

「--ふぅ…これでおしまい!」
机の前で、満足そうに微笑んだその時、
ふと横の鏡を見つめると、
自分の背後に”モヤ”のようなものが見えた。

「---!!」
千奈津がびっくりして振り向くも、
そこには、何も居なかった。

「---な、何?今の?」
再び鏡を見ようとしたその時、
突然、体に激しい悪寒が走った。

「---!?さ…さむい…!」
今まで経験したことも無いような
寒さに突然襲われた千奈津は半分
パニックになりながらも、
スマホに手を伸ばそうとした。

何かの病気か。
直感的にそう思った。

やっとの思いでスマホに手を伸ばした
千奈津はーーー
笑っていた。

「---ふふふ♡
 ごめんね、千奈津ちゃん」
自分の名前を笑いながら言うと、
スマホのLINEの画面を開いた。

そこにはーー
彼氏である法二からのメッセージが表示されている。

”尚登さ、彼女に束縛されてるんだって。
 あいつ、まだまだだなぁw”

などと書かれていた。

「--くっそ…バカにしやがって…!」
その尚登に憑依されてしまった
千奈津は怒りの形相でスマホを握りしめた。

「---はっ…」
ふと、鏡を見ると、
そこには、怒りに満ちた表情の千奈津が写っていた。

「ーーあ、こ、こんな顔もできるんだ…
 な、なんかすげぇ」
千奈津は自分の顔をベタベタ触りながら言う。

「と、というか、やっぱ可愛いな、
 女の声って…」

ドキドキしながら自分の声を味わう千奈津。

だが、尚登は鬼ではない。
千奈津に罪はない。
あくまでも”彼女に束縛される苦しみ”を
法二に教えてあげたいだけだ。

だから、千奈津の身体で人生を壊す様なマネをしたり、
千奈津の身体でエッチなことをしたりするつもりは、
全くない。

それでも、心臓がドキドキバクバクする。
自分が女の子を支配している、という感覚だけで、
とても、ドキドキする。

「--ご、、ごめん」
謝った後に、どうしてもエッチなことを口にさせたくなった
尚登は、千奈津の身体でエッチな言葉を呟いた。

絶対に本人が言わない様な卑猥なセリフを
言わせてみるー。

千奈津は、顔を真っ赤にしながら、
満足そうに微笑んだ。

恥ずかしがっているのは、
千奈津の身体か、それとも、尚登の意識かー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

制服に着替えながら千奈津は苦戦していた

「あ~スカート面倒くさい!」
女子高生の朝は面倒臭い、そう思った。

「--な、な~んかちょっといつもと違うような」
千奈津は呟く。

何らかのメイクをしていたのだろうか。
なんだか、いつもとイメージが少し違う気がする。

「も、もういいや、適当適当!」
適当にメイクを済ませると、
今度は髪型の問題に直面した。

「いつもポニーテールだったよな…
 か、髪ってどうやって…」

千奈津は少し考えた後に、頷いた。

「うん。ストレートでいいや、面倒くさっ!」

そう言うと、鞄を持って、学校へと向かうのだった。

スカートの中に入り込んでくる空気感が
斬新-、そんな風に思いながらー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよっ!」
背後から法二に声をかけた。

二人は、いつも登校中にとある場所で
合流していることを、尚登は知っていた。

「--あ、おはよう!」
法二が嬉しそうに振り向く。

「---!」
そして、法二が顔を赤らめた。

「--うん?どうしたの?」
いつもの千奈津を演じながら微笑むと、
法二は言った

「あ、いや、ポニーテールじゃない千奈津も
 可愛いな…って」

法二が言う。

「--ふふ、ありがと」
千奈津のフリをしながら、
憑依している尚登は「ふざけやがって」と怒りをさらに
貯めこんでいた。

「--ねぇ、法二」
いよいよ、本題だ。

ここから、束縛の恐怖を味あわせてやる。

「--ん?なに?」
法二が笑いながら言う。

「--法二のスマホ、チェックしてもいい?」
わざと、低い声で言った。

彼女の千奈津から、いきなりこんなことを言われたら、
法二のやつ、驚くだろうな。

そんな風に、思いながら。

「---え…?」
法二の顔から、笑顔が消える。

「---ん?あ、うん、いいよ!」
しかし、予想に反して、法二はすぐに笑顔になった。

「---あ?いいの?へ~うん。ありがと」
戸惑いながらも千奈津はスマホをチェックする。

他の女とのやりとりは無い。

「くそっ!」
小声で千奈津は呟いた。

束縛しようにも、法二は堅物で、
他の女とやり取りするわけがないのだ。

「-----」
しかし、千奈津は不気味な笑みを浮かべた。

”追跡アプリ”と呼ばれるアプリを
密かに法二のスマホにダウンロードした。

「--束縛の怖さ、味あわせてやるよ」
小声でそう呟くと、
千奈津は、いつもの笑顔を浮かべて、法二に
スマホを返した

「ど、どうしたんだよ、いきなりチェックなんて」
スマホを受け取った法二は、少し戸惑っている
様子だった。

「-ーふふ、法二、
 これから、わたし、法二のスマホ、毎日チェックすることにするね!」

無邪気に笑いながら言う千奈津。

「え?どうして?」
法二が驚く。

「--ダメなの?」
わざと、低い声で脅すようにして言った。

「--い、いや、いいけど、うん。いいよ」
法二が明らかに戸惑っている。

「あ、、そ、そうだ、朝、先生に用事があるんだった!」
法二が戸惑い、言い訳をしながら走り去っていく。

そんな法二の姿を見て、
千奈津は微笑んだ。

「---束縛の怖さを、味あわせてやる」
可愛らしい顔に、悪魔のような笑みを浮かべて、
千奈津は微笑んだ。

(……!ちょ……あれ???ど、どういうこと!?)

頭の中に、声が響いた。

「---!?」
千奈津に憑依している尚登は驚く。

(・・・わ、わたしの身体が勝手に…?
 え……な、何これ・・・??
 今のは…??
 何で私が、法二のスマホチェックなんか・・・??)

千奈津の意識か。

これは誤算だ、と尚登は思う。

いや、だがー。
”身体の主導権は自分にある”

そして、
俺が誰だか分からないはずだ。

尚登はそう思った。

「--黙ってろ」
強い口調で呟き、意識を封じ込めるように念じると

(いや…や、め、、て…!)という声を最後に
千奈津の声が聞こえなくなった。

「--ちゃんと身体は返すから…
 でも、その前に、束縛の怖さを教えてやらなきゃな」

千奈津は、悪い表情をしながら、学校に向かって
歩き出したー。

②へ続く

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コメント

明日は”常軌を逸脱した束縛”が始まります!
恐ろしいですね!!

憑依<束縛彼女>
憑依空間NEO

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