とある男子生徒に”狂気”とも言うべき愛情を抱く
女子生徒が居た。
ストーカー行為を繰り返し、歪んだ愛をぶつける女子生徒。
しかし、その男子生徒には既に、彼女が居た。
ストーカー女は決意する。
その彼女の身体を乗っ取り、自分が彼女にとって代わる、と。
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「またか・・・」
放課後。
昇降口の下駄箱で、自分の靴の上に
置かれていたハートマーク付きの手紙を見つけた
男子生徒・津田 道治(つだ みちはる)はため息をついた。
”あなたのことが大好きで大好きで狂っちゃいそう!
どうして振り向いてくれないの”
手紙には、そう書かれていた。
手紙の送り主は、
クラスの女子生徒・二階堂 梨子(にかいどう りこ)。
クラス一の巨体の持ち主で、さらには暗くて根暗、陰険な
性格をしているため、嫌われている。
彼女が嫌われているのは、太っているから、とか
そういう理由ではなく、もっと別の理由ー
そう、性格的な部分が災いしていた。
「ーーまいったな、ほんと。」
道治は呟く。
道治は、とある行事で、たまたま梨子と同じ実行委員を
担当することになり、その際に、梨子に”勘違い”されてしまい、
それから熱烈なアプローチを受けている。
道治としては、特別な事をしたつもりはない。
ただ、クラスのほとんどに無視されている梨子からすれば、
”普通に”接してくれる道治に対して、
”勘違い”してしまうのも、無理はなかったのかもしれない。
「--ごめん!お待たせ!」
背後から、可愛らしい声がして、道治は笑顔で振り向いた。
そこにはー、長い黒髪の女子生徒・
長谷川 愛莉(はせがわ あいり)の姿があった。
「どうしたの?」
愛莉が心配そうに尋ねる。
愛莉は、気遣いもできて、
誰にでも優しい子で、周囲からも
愛されるような、そんな子だった。
ストーカーまがいの行為を繰り返している梨子とは正反対。
「あ、いや…」
愛莉に心配をかけまいと、道治はそう答えた。
「---・・・二階堂さんね」
道治が隠しても、愛莉には御見通しだった。
「--あ、え・・・あぁ、うん。最近付きまといが酷くてさ」
道治が言うと、愛莉は
「わたしも1回、二階堂さんとお話ししてみようか?」
と言った。
道治は、梨子による付きまといが始まってから、
一度、しっかりと話をしなくてはならない、と考えて、
自分には彼女が居ること、
そして、梨子とは付き合えないということを
はっきりと伝えた。
しかしながら、その時、梨子はこう言った。
「そんなこと関係ない。
津田君が、わたしの王子様なの」
と。
そして、
「--わたしと津田君の邪魔をするなら、
あの女、許さないー」
と。
「…・・・いや、大丈夫。俺が、なんとかするから」
道治が言うと、愛莉は「そっか…でも、無理しないでね」と
心配そうにつぶやくのだった。
愛莉の心配はもっともだ。
けれどー、愛莉が梨子と直接話をすることで、
梨子が逆上することを、恐れていた。
梨子のあの時の顔―、
あれは”本気”だ。
愛莉が介入すれば、愛莉に対して
何かするかもしれない…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
道治が登校すると、梨子が
昇降口で道治を待ち構えていた。
膨らんだ身体。
陰険そうな顔つき。
そしてー、性格が”ブス”と来たら、
嫌われるのも仕方のないことかもしれない。
「--津田くん、おはよう」
梨子が嬉しそうに言う。
「あぁ、おはよう」
道治も挨拶を返す。
他のクラスメイトはどうだかしらないが、
ストーカー行為さえなければ、別に道治は
梨子のことを避けるつもりもなかったし、
危害を加えるつもりもなかった。
「--ねぇ、津田君、
今日はね、わたし、津田君のために
徹夜してお守り作ったの」
梨子が、ハートマークのお守りを
道治に差し出す。
「…ごめん。気持ちは嬉しいけどさ、
前にも言った通り、俺には彼女がいるから
受け取れないよ」
道治がそう言うと、
梨子は「長谷川さんなんかより、わたしの方が津田君のこと知ってるもん!」と叫ぶ。
「--そういう問題じゃないんだよ」
道治が呆れた様子で言うと、
梨子は叫んだ。
「わたし、津田君のために、一生懸命作ったんだよ!
ねぇ、”あんな女”より、わたしを見てよ!」
梨子の言葉に、道治は言った。
「おい!あんな女ってなんだよ!
二階堂さんこそ何なんだよ!
俺の家の前で待ち伏せしたり、勝手にLINEの
アドレス調べたり…!
言っちゃ悪いけど、普通じゃないよ!!」
道治が言うと、梨子は表情を曇らせた。
そしてー
「ねぇ!受け取って!」
なおも、梨子は無理やり、道治の腕をつかんで、
お守りを渡そうとした。
「--ちょっと!何してるの!」
道治の彼女、愛莉がたまたま登校してきて叫んだ。
「---!」
梨子が道治から離れる。
「--ねぇ、二階堂さん!
道治も困ってるでしょ!やめてよ!」
愛莉が言う。
梨子は、愛莉の方を黙って睨むようにして見つめていた。
「--あんた、、自分が可愛いからって
調子に乗ってんじゃないわよ!」
梨子が怒りの形相で言う。
「…な、何言ってるの!そんなんじゃないでしょ!
それに二階堂さん、自分がしてることわかってるの?
ストーカーみたいなことしないでよ!」
愛莉が必死になって言うと、
梨子は「許さない…」と言って、そのまま走り去ってしまった。
「---ご、、ごめん、巻き込んで」
道治が言うと、愛莉はほっとした様子で言った。
「ううん…大丈夫。
でも、気を付けてね」
愛莉の言葉に、道治はうなずいた。
梨子は、まだ何かを仕掛けてくる。
そして、何かを仕掛けて来たとしても、
愛莉を危険に晒すわけにはいかないー。
その夜。
梨子は、盗撮した道治の写真だらけの部屋で
一人笑っていた。
「津田君…津田君…津田君…!」
道治の名前を呟きながら、
愛莉の写真に釘を立てる梨子。
「奪ってやる…!奪ってやる…!」
梨子はそう呟くと、
古臭い木箱をゆっくりと開いた。
木箱の中にはー
”入レ替リ”と書かれた謎の液体が
入っていた。
ひいおじいちゃんがくれたこれを使うときが来た。
梨子は、愛莉の写真を見ながら
その歪んだ表情に、不気味な笑みを浮かべた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の昼休み。
愛莉が、昇降口付近の自動販売機で
お茶を購入していると、
背後から声をかけられた。
「長谷川さん」
愛莉が振り返ると、そこには、巨体のー梨子が居た。
かなり太っている梨子は、
遠目からでも目立つ存在だった。
「---二階堂さん」
愛莉は警戒しながら、返事をする。
「ちょっと、いいかしら」
梨子が高圧的に愛莉に言うと、
愛莉はしぶしぶうなずいた。
また、道治に関することだろう。
これ以上、酷くなるのであれば、
愛莉としても考えがある。
梨子はクラスでいじめられている。
しかし、愛莉も道治もそのいじめにかかわったことは無く、
寧ろ、以前は道治も愛莉も、いじめを窘めたり、
先生に相談したこともあった。
それなのに、ストーカー行為やイヤがらせをするなんて、
人としての常識を疑ってしまう。
裏庭にやってくると、梨子は口を開いた。
「--津田くん、私にちょうだい」
ダイレクトな物言いだった。
愛莉は、呆れた様子でため息をつくと言った。
「--ごめん、二階堂さん、それはできないの。
私と道治は、付き合ってるの。
本人が二階堂さんと一緒になりたいなら
仕方ないけど、道治もわたしも困ってるの!」
愛莉が言うと、
梨子は言った。
「あんたより、わたしは津田君を愛してるの!
朝も、昼も、夜も、ずっとずっと津田君のこと
愛してるの!」
梨子の表情は、歪んでいる。
「--ねぇ、いい加減にしてよ!」
いつも優しく、声を荒げない愛莉が声を荒げた。
「---どうしてわかってくれないの?
わたしも道治も、怖いの!
なんでストーカーみたいなことするの?」
愛莉が言うと、梨子は怒りの形相で言った。
「---津田君も、本当はわたしを愛している!」
ー妄想もここまで来ると病気だ。
愛莉はそう思った。
「ごめん。先生に相談する。
もう、我慢できないよ」
愛莉がそう言って立ち去ろうとすると、
突然、背後から掴まれ…
そして、キスをされた。
「-------!?!?!?」
愛莉は、驚いて目を見開く。
そしてーー
そのまま意識は遠のいた。
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
「---う…ん」
気が付くと、裏庭で一人、倒れていた。
愛莉は、もうろうとする意識の中、
起きたことの状況を整理する。
そうだー
昼休みの最中に、二階堂さんに呼び出されて…!
突然、キスをされて…
愛莉は、体が重いな…と思いながら
立ち上がる。
何か毒でも盛られたのだろうか。
そう、思いながらも校舎の時計を見ると、
昼休み終了間近の時間になっていた。
「---!」
遅刻しちゃう!と慌てて教室に向かう愛莉。
途中ー
廊下にある鏡にふと、梨子の姿が写った。
「---!?」
びっくりして背後を振り向く愛莉。
しかし、そこには梨子は居ない。
でも、鏡には、醜い梨子の姿が写っている。
「---え」
愛莉は驚いた。
鏡には”自分が写る”はずだ。
なのに何故、梨子が写っている?
「-----え…嘘…」
愛莉は、自分の頬を触った。
鏡の中の梨子も、驚いた表情をして、
自分の頬をさわっている。
「--そ、、、そんな…」
梨子になってしまった愛梨は絶望の表情を浮かべる。
「え、、ど、どうして、、え、、なんで…!」
パニックになりながら、慌てて自分の身体を見る。
そこにはー
大根のように太い足や、
太い手があった。
そういえば、なんだか、臭い。
梨子は、汗っかきで、何のケアもしていないため
汗臭いのだった。
「---う、、嘘…や、、やめてよ…
どうしてこんな…!」
梨子(愛莉)は慌てて教室へと走った。
教室に入ると、そこにはーー
自分の姿があった。
愛莉になった梨子は、嬉しそうに道治と話していた。
「ーーーねぇねぇ、それでさ」
愛莉は、いつも以上に道治にべったりとくっついていた。
「--ちょ、ちょっと!」
梨子が叫ぶ。
「---あら?何かしら?”二階堂さん”」
愛莉が意地悪そうな笑みを浮かべて言う。
「--ねぇ!ふざけないでよ!
わたしの身体、返して!」
梨子は叫んだ。
クラスメイトたちが、梨子と愛莉を見る。
「--はぁ?何言ってるの?」
愛莉がバカにするかのように笑った。
「--なぁ、もうやめてくれよ。頼むよ」
道治が懇願するようにして言う。
「---騙されないで!道治!わたしが愛莉よ!
わ、わたし、二階堂さんに体を…!」
梨子が叫ぶと、
クラスメイトたちの何人かが失笑した。
道治も呆れてポカーンと口を開いている。
「うふふふふ・・・あはははははははっ!」
愛莉が笑う。
「ねぇみんな聞いた?」
愛莉が周囲のクラスメイトたちに呼びかける。
「--わたしが愛莉よ! ですって!
ねぇ、妄想もいい加減にしてくれる?」
愛莉は笑いながら、髪の毛をいじって、
梨子の方を見た。
「---あんた、頭おかしいんじゃないの?」
愛莉が言うと、梨子は目に涙を浮かべた。
「お、おい、愛莉。もうやめとけよ」
道治がたしなめるように言うと、
愛莉は「あ、うん、ごめんね!道治」
と言って、道治の腕に抱き着いた。
「---頼むから、もう俺たちに関わらないでくれ」
道治はそう言った。
「-------!」
梨子は強いショックを受けた。
愛莉は、梨子の方を見て、邪悪な笑みを浮かべている。
(これで、わたしが愛莉よー)
愛莉になった梨子は勝ち誇った表情でそう呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
梨子の前に、愛莉が姿を現した。
「--これで、津田くん…いいえ、道治はわたしのもの」
愛莉になった梨子は、
高飛車な様子でそう呟いた。
自分の身体なのにー、
その表情は別人のようにも思えた。
「---負けない」
梨子になった愛梨は呟いた。
「は?」
愛莉が不愉快そうに腕を組みながら言う。
「---わたしは、アンタになんか負けない!」
梨子は愛莉ー、自分の身体を睨みつけた。
「は…笑わせないで。
ブスになったアンタになんか誰も振り向かない」
愛莉はそう言って、梨子を睨みつけて、呟いた。
「--全力であんたをぶっ潰してあげる」
そう言うと、愛莉は、笑いながら梨子に背を向けて
立ち去って行った。
「---許さない」
梨子になってしまった愛梨は決意する。
この地獄のような状況を、なんとかしてみせる、と。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
女同士の入れ替わりですね。
ストーカーで性格も容姿も悪い子と
容姿端麗で優しい子の入れ替わり。
待ち受ける結末を楽しみにしていてくださいネ
コメント
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PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
美人とブスの女同士入れ替わりは「優劣逆転」でも楽しく読ませて貰いました。今回もとても楽しみです。
元ブスが一方的に得をして、元美人が一方的に損をする。容姿の違いで世界が一変してしまう様は理不尽でとても興奮します。
彼氏の方は仮に入れ替わりの事実を知ったら、どちらを好きになるのかも非常に気になるところ…。自分が彼氏の立場だったら、愛梨の心を好きになりたいけど、身体がブスの梨子では下半身の方が反応できなそうですね(汗。結局美人の愛梨の身体の誘惑に負けてしまいそうですw
個人的には「優劣逆転」のように救いのない展開を希望したいですw
頑張って下さい。
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PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> 美人とブスの女同士入れ替わりは「優劣逆転」でも楽しく読ませて貰いました。今回もとても楽しみです。
> 元ブスが一方的に得をして、元美人が一方的に損をする。容姿の違いで世界が一変してしまう様は理不尽でとても興奮します。
> 彼氏の方は仮に入れ替わりの事実を知ったら、どちらを好きになるのかも非常に気になるところ…。自分が彼氏の立場だったら、愛梨の心を好きになりたいけど、身体がブスの梨子では下半身の方が反応できなそうですね(汗。結局美人の愛梨の身体の誘惑に負けてしまいそうですw
> 個人的には「優劣逆転」のように救いのない展開を希望したいですw
> 頑張って下さい。
ありがとうございます!
頑張ります!!