オーンの陰謀により、身を潜めるしかなくなってしまった道生。
しかし、オーンは黙っていなかった。
潜伏している道生をあぶりだそうと、
オーンの幹部自らが、道生の母校を襲撃した。
そして、絆は引き裂かれる…。
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「--4時間目の学活は、
予定を変更して体育館で行います」
担任の糸井先生が言う。
糸井先生は、20代後半の社会科教師で
誰にでも優しい女性教師だ。
容姿も可愛らしいことから、男子生徒からの人気は特に高い。
先生に言われて、体育館に移動する生徒たち。
「--そういえば、倉本くん、大丈夫かなぁ」
道生のクラスメイト、麗香が、
指名手配された道生のことを案ずる。
「--わからねぇ」
同じくクラスメイトで、道生の友人の良治はそう答えながらも、
目を細めた。
”もしかしたら、あいつがー”
以前、麗香が急におかしくなったとき、
覆面を被ったヒーローが現れて、麗香を救出した。
その時、”オーンがどうこう”と、あいつらは言っていた。
そしてー
”道生こそが、あの時の覆面の戦士なのではないか”と
良治は思い始めていた。
体育館に到着した、生徒たちの方を振り向いて、
先生が言った。
「今日は、みんなに人質になってもらう授業をするの♡」
先生が狂気的な笑みを浮かべている。
「は?」生徒たちがどよめくと同時に、
体育館の入り口に、不気味な赤い光が現れて体育館は
封鎖された
糸井先生は、オーンに憑依されていた。
そしてー
「--みんな、久しぶり」
体育館の中に、オーンの幹部に憑依されて、
半年前に失踪した香奈が姿を現した。
表向きには”家庭の事情で海外に引っ越し”
したことになっていた。
「ーー中橋さん?」
良治が、香奈の名前を呼ぶ。
香奈と道生が付き合っていたことは知っていた。
香奈が突然引越ししたと告げられた際に、良治は
道生に「何かあったのか?」と問いただしたが、最後まで
道生は答えようとしなかった。
「--ふふふ♡ みんなには死んでもらうわ。
アイツをあぶりだすために…ネ」
香奈は笑うと、フェンシングのサーベルの様なものを
取り出して、生徒たちの方に向かって、歩き出した。
悪魔のようなヒールの音が、体育館に響き渡る―。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〇倉本 道生 (覆面ライダー)
覆面ライダーとして戦い続ける高校生。
〇中橋 香奈
道生の彼女だった女子高生。半年前にオーンの幹部に憑依されてしまう。
〇アリサ
道生に覆面ライダーの力を授けた謎の女性。自称・女子大生
〇高杉 麗香
〇小田原 良治
道生のクラスメイト。
〇オーン大首領
謎の組織・オーンを率いる謎の人物。その素性は不明。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--反撃のチャンスは必ず作るから」
アリサが言う。
道生は、アリサの家での潜伏を余儀なくされていた。
オーンの罠により、全国的に指名手配されてしまった道生は
今現在、身動きが取れない。
外に出れば、警察が、道生を追う。
そして、警察はオーンの手先ではないから、
攻撃するわけにはいかない。
彼らは、一般人なのだから。
「--そういえばさ、アリサが憑依されない理由って…」
道生が訪ねる。
この前、聞き忘れた。
オーンたちが、道生の抹殺を目論むなら、真っ先に
アリサに憑依してもおかしくないのだ。
アリサは、腕をまくって微笑んだ。
腕には光るリングがつけられている。
「--知ってる?
オーンに一度憑依された人間は”抵抗”がつくの。
一度オーンに憑依された人間は、もう二度と憑依されることはない。
別のオーンであっても…ね。」
アリサは、妹の写真を手に取りながら言う。
「わたしは、死んだ妹の身体を解剖して、
オーンへの抵抗力の部分を、採取、研究したの。
その研究の結晶がコレ。
これを身に着けている限り、わたしはアイツらには憑依されない」
アリサが腕のリングを見せながら言った。
「ーー妹さんを…解剖」
道生が言うと、アリサは首を振った。
「--わたしは、オーンへの復讐のためなら
何でもするの。そう…何でも…」
悲しそうに言うアリサ。
重ぐるしい空気になってしまったことを詫びると、
アリサは言った。
「だからね、あなたの妹さんだとか、
ユーチューバーのマドカちゃんだとか、
ああいう人たちは、もう憑依される心配はないの」
アリサの言葉に、道生は窓の外を見つめた。
”ならー、香奈をオーンの幹部から解放
することができれば”
その時だった。
突然、テレビの映像が切り替わる。
「--あははははは!お久しぶり!」
テレビには、邪悪に笑う香奈の姿が映し出された。
「か…香奈!」
道生は叫んで、テレビの方を見る。
香奈は、「見ろよ」と乱暴に言いながら、
道生のクラスメイトの一人、麗香の髪の毛を
引っ張って、モニターの前に、連れてくる。
麗香の顔はあざだらけだ。
「あんたのクラスメイト、
今からわたしが皆殺しにするわ!
うふふふふふ♡
クラスの人気者だったわたしがこの手で
みんなを地獄に送ってあげる!」
香奈は、ナイフを舌でペロリと舐めると
挑発的な笑みを浮かべた。
「貴様ぁぁ!」
道生が叫ぶ。
香奈は笑った。
「今から来れば、間に合うかもよ…
み・ち・お! ふふ!」
そう言うと、テレビは砂嵐になってしまった。
「くそっ!」
道生が家から飛び出そうとする。
「待って!」
アリサは叫んだ。
「--待てないよ!罠でも俺は、
奴等をぶっ潰す!」
道生は憎しみに支配されていた。
アリサの制止も聞かず、道生は
家を飛び出したのだった。
道生が持っている覆面ライダーへの変身端末を見るアリサ。
その色は”オレンジ”に光っていた。
「---”オレンジー”」
アリサはそう呟くと、道生の制止を諦めて、
サポートに回る決意をした。
学校に走る道生。
アリサが警察の居場所を通信で教えてくれたため、
道生はスムーズに学校に辿り着くことが出来た。
慌てて校舎に飛び込む道生ー。
体育館に向かって、全力疾走で走り続けた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「中橋さん…目を覚ますんだ」
血まみれになった良治が、香奈の足をつかむ。
「邪魔だ!どけ!」
香奈が容赦なく、良治の顔面を蹴り飛ばす。
「--くくく…わたしはね、
オーンに選ばれたの!オーンの大幹部に!
あんたたちみたいな下等生物とは違うの!」
香奈が挑発的に笑いながら、
体育館に居るクラスメイトたちに言う。
「-オーンに憑依されることは幸せな事よ?
わたしのように、体も心も、死ぬまで
こき使われるんだから!
あっははははははは!」
その表情に既に、優しかった香奈の
面影はない。
狂気に歪み、
悪意に満ちた香奈の表情に
クラスメイトたちは唖然とする。
既に、道生のクラスメイトたちは、
皆、ボロボロだった。
まだ、誰一人として死んではいない。
でも、いつ、誰が死んでもおかしくない。
そんな、状況ー。
「--時間切れ。」
香奈がウンザリした様子で言う。
「-かつての友達を一人ひとり殺していく
うふふ・・・ぞくぞくする…血が騒ぐ!
興奮しちゃぅぅぅ!」
香奈が叫ぶと、
クラスメイトの麗香が言った。
「--お願い!目を覚まして!」
麗香は、以前、オーンに憑依された。
だからこそ、分かる。
憑依されることの悲しみが。
香奈は、そんな麗香の方を見た。
「ーーーあなたはもう、一度憑依されてたわよね?」
香奈が笑う。
「だったら、あなたはもういらない」
香奈が、サーベルを振ると、
麗香の方に歩き始めた。
「--麗香ちゃん…」
床に這いつくばっていた良治がその様子を見つめる。
彼はー、
麗香の事が好きだった。
けれど、麗香が憑依された時、彼には何もできなかった。
そこに、あのヒーロー…覆面ライダーが現れた。
麗香は、自分をたすけてくれた覆面ライダーに恋をした。
そして、良治は、あの覆面ライダーが、道生なのではないかと感づいていた。
「--ーー俺は…お前みたく、ヒーローにはなれねぇよ」
良治は呟いた。
「--さぁ、死になさい!」
香奈がサーベルを麗香に向けて振りかざした。
「----!!」
血が吹き飛ぶ。
しかしー
麗香の身体には痛みが走らない。
麗香が、目を開けると、
そこには、麗香を庇うようにして立っている
良治の姿があった。
「---え…」
麗香が驚いて目を見開く。
「俺さ…麗香ちゃんのこと…
ずっと……」
良治はそこまで言って自虐的に笑う。
”死ぬ直前のやつに、告白されても嬉しくねぇか”と。
「---いや、なんでも・・・ねぇ」
良治は力無くその場に倒れた。
「あはははははは!ばっかじゃないの!
ゴミがゴミ同士庇いあってる!
あぁ~~あ!本当にゾクゾクする!
こういうゴミをぶっ壊すのって、本当に楽しい!」
香奈がさらにサーベルを振ろうとしたその時だった。
「やめろ!」
背後から声がした。
そこには、覆面ライダーの姿。
「--あなたは、あの時の!」
麗香は叫んだ。
クラスメイトたちにも、安堵の表情が浮かぶ。
「--あははっ!来たの!?おバカさん!」
香奈が狂気的な笑みを浮かべながら、
サーベルを手に、道生の方に向かって走り出した。
香奈の横では、オーンに憑依された
糸井先生が、ワイヤーのようなものを持って微笑んでいる。
”あなたも、アレを使って対抗するのよ”
アリサが通信越しに言う。
「--わかった」
道生は、覆面ライダーの武器のひとつ、
ライダーサーベルを取り出して、
香奈のサーベルを迎え撃った。
「あはは!あなたにわたしは斬れない!」
香奈が言う。
「--あぁ、斬れないよ」
道生は香奈の目をまっすぐ見ながら答えた。
「---ふふふ♡
なら、ここで死になさい!
最愛の彼女である、わたしに斬られて!」
香奈は躊躇なく道生を殺そうとしている。
「---くっ」
道生は、どうするべきか迷っていた。
次第に、香奈に押されていく。
香奈は、道生を殺そうとしている
道生は、香奈を救おうとしている。
その差が、戦いに現れた。
香奈にライダーサーベルは吹き飛ばされ、
香奈は笑いながら道生を見た。
「終わりよ…
ふふふ 大好きなあなたを殺すこの瞬間!
ほんと~~~に、ゾクゾクする!」
香奈がサーベルを構えた。
香奈は、ふと、腕にある腕時計を見つめた。
覆面ライダーに変身しても、その腕には
香奈から道生が貰った、大切な腕時計が
巻きついている。
「忌々しい時計ね…」
香奈が嫌悪感を丸出しにして言う。
「それも、あんたも!
全部粉々にぶっ壊してあげるわ」
サーベルを振り出す香奈。
「----」
道生は、この瞬間を狙っていた。
ベルトから放つ光は、オーンと人間を分離させる。
幹部となった香奈には隙がない。
だが、トドメを刺そうとする一瞬の瞬間なら。
「--しねぇ!」
香奈が叫ぶ。
「今だ!」
覆面ライダーはベルトを発光させる。
既に射程に入ってしまっていた香奈は
驚きで目を見開く。
しかしー
「ぎぃあああああああ!」
別の女性の声が響いた。
「--糸井先生!?」
覆面ライダーが声をあげる。
「--か、、香奈さま…」
そう言うと、糸井先生は倒れて、
中から気体のような物体、
オーンの本体が姿を現した。
「---ご苦労様」
香奈は微笑む。
オーンに憑依されていた担任の女性教師、
糸井先生が、香奈の盾となったのだった。
「くそっ!」
道生が叫ぶ。
「てこずらせやがって!」
香奈が凶暴性を露わにして、道生の腕を踏みつける。
「--うふふふふ・・・そっかそっか。
その時計、わたしとの思い出なんだもんね」
腕時計を踏みにじって笑う。
「やめろ・・・やめろ香奈!」
覆面ライダーの姿のまま、道生は叫ぶ。
「---ーーーーー!」
香奈はその時計を見つめながら、
一瞬、動揺のようなものを感じた。
「---くそっ!」
香奈は吐き捨てるように言うと、
気を取り直して叫んだ。
「今度こそ、終わりよ!」
香奈が笑いながら、サーベルを構える。
「うおらあああああ!」
横から声がして、香奈は強い衝撃と共に吹き飛ばされた。
「---!!」
道生が驚いてそちらを見ると、
そこには、クラスメイトの良治の姿があった。
麗香をかばった際に、既に深手を追っている良治は、
それでもなお立ち上がり、香奈に突進した。
「--中橋さん!お前にとって
アイツは大切な人だろうが!」
香奈を抑えながら良治が言う。
しかし、香奈は不気味に笑うだけだった。
「おい!今だ!俺もろとも、お前の光を当ててやれ!」
血を口からこぼしながら良治は叫ぶ。
「----」
覆面ライダーは立ち上がった。
しかしー
「ーーーひぃはぁっ!そうはさせねぇ!」
糸井先生に憑依していたオーンが、別の女子生徒に
憑依して、ハサミを振り回しながら襲い掛かってきた。
覆面ライダーは攻撃を回避すると、
そのツインテール女子に、光を照射して、オーンをその子から
追い出す。
「--邪魔だ!失せろ!」
覆面ライダーは飛び跳ねると、そのオーンに強烈なキックを
喰らわせた。
「ぎいいあああああ!」
オーンが消滅する。
「ぐあっ…」
うめき声が聞こえて振り返ると、香奈が良治の腹部を
サーベルで貫いていた。
「--あ・・・」
その場に崩れ落ちる良治。
「くそっ!」
道生が駆け寄ろうとする。
クラスメイトたちが、香奈の方を睨んでいる。
香奈は思う―。
もしも、こいつらが自分に突進してきて、
その隙に覆面ライダーの攻撃を受ければ…
「チッ・・・分が悪いわね…
覚えてなさい!」
そう言うと、香奈は、サーベルから闇を放ち、
そのまま姿を消した。
「--良治!」
覆面ライダーの姿のまま、クラスメイトの
良治のところに駆け寄る。
「---はは…わりぃな役立たずでよ…」
良治は青白い顔で笑った。
「--くそっ!しっかりしろよ!」
覆面ライダーがそう叫ぶと、良治は笑った。
「彼女、取り戻せよー、
応援してるぜー ”道生”」
そう言って、良治はそのまま息を引き取った。
良治は、気づいていた。
覆面ライダーが道生だと言うことに。
クラスメイトたちは、騒然としている。
「くっそぉぉお!」
道生が怒りに身を任せて、体育館の床を叩く。
「--動くな!」
そこに警察官たちがなだれ込んできた。
「--君が、先日、駅で痴漢行為と殺人を行った
倉橋道生だな」
警官が警察手帳を示し、道生はそのまま連行される。
道生は「違う!違うんだ!」と叫びながら、
どうすることもできず、そのまま警察官たちに連行されていく。
クラスメイトの麗香は、
そんな様子を見ながら、覆面ライダー=道生だと知り、
ただただ唖然としていた。
連行される道生の持つ、覆面ライダーへの変身端末は
”赤く”輝いていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---はぁ…はぁ…」
香奈が、オーンのアジトで苛立ちを隠せず、
動き回っていた。
「あの男…うざい!うざい!うざいうざいうざいうざい!」
一人、アジトで暴れまわる香奈。
どうして、あの男に、こんなにムキになるのか。
自分でも分からないまま。
”--舞台は整った”
大首領の声が響いた。
「--大首領」
香奈が振り向く。
”まもなく、我らの最終計画を始めるー。
お前にも、力を貸してもらうぞ”
大首領は、いつも通り
機械音声でそう告げたー。
男かも、女かも判別できない、
無機質な機械音声。
感情すらも、伝わってこない。
だが、今、その声は、心なしか、弾んでいるように聞こえた…。
⑥へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
★予告★
12月24日ー。
アリサの手助けにより、警察から抜け出した道生は、
イルミネーション輝く中、香奈と対峙する。
自分の想いをぶつけ、香奈を救うことはできるのかー。
そして、オーンの大首領が、姿を現すー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
あと2話です!
オーンを倒すことはできるのでしょうか!
コメント
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
今日も、見させていただきました!
非常にゾクゾクとさせていただきました!
この流れは、アリサの腕輪が奪われて、
憑依・・・おっと誰かきたようだ。
SECRET: 0
PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
> 今日も、見させていただきました!
> 非常にゾクゾクとさせていただきました!
> この流れは、アリサの腕輪が奪われて、
> 憑依・・・おっと誰かきたようだ。
ありがとうございます!
アリサの腕輪が奪われて…
う~~ん・・・ヒミツです笑