<憑依>覆面ライダー⑤~引き裂かれた絆~

オーンの陰謀により、身を潜めるしかなくなってしまった道生。

しかし、オーンは黙っていなかった。
潜伏している道生をあぶりだそうと、
オーンの幹部自らが、道生の母校を襲撃した。

そして、絆は引き裂かれる…。

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「--4時間目の学活は、
 予定を変更して体育館で行います」

担任の糸井先生が言う。
糸井先生は、20代後半の社会科教師で
誰にでも優しい女性教師だ。

容姿も可愛らしいことから、男子生徒からの人気は特に高い。

先生に言われて、体育館に移動する生徒たち。

「--そういえば、倉本くん、大丈夫かなぁ」
道生のクラスメイト、麗香が、
指名手配された道生のことを案ずる。

「--わからねぇ」
同じくクラスメイトで、道生の友人の良治はそう答えながらも、
目を細めた。

”もしかしたら、あいつがー”

以前、麗香が急におかしくなったとき、
覆面を被ったヒーローが現れて、麗香を救出した。

その時、”オーンがどうこう”と、あいつらは言っていた。

そしてー

”道生こそが、あの時の覆面の戦士なのではないか”と
良治は思い始めていた。

体育館に到着した、生徒たちの方を振り向いて、
先生が言った。

「今日は、みんなに人質になってもらう授業をするの♡」

先生が狂気的な笑みを浮かべている。

「は?」生徒たちがどよめくと同時に、
体育館の入り口に、不気味な赤い光が現れて体育館は
封鎖された

糸井先生は、オーンに憑依されていた。

そしてー

「--みんな、久しぶり」
体育館の中に、オーンの幹部に憑依されて、
半年前に失踪した香奈が姿を現した。

表向きには”家庭の事情で海外に引っ越し”
したことになっていた。

「ーー中橋さん?」
良治が、香奈の名前を呼ぶ。

香奈と道生が付き合っていたことは知っていた。
香奈が突然引越ししたと告げられた際に、良治は
道生に「何かあったのか?」と問いただしたが、最後まで
道生は答えようとしなかった。

「--ふふふ♡ みんなには死んでもらうわ。
 アイツをあぶりだすために…ネ」

香奈は笑うと、フェンシングのサーベルの様なものを
取り出して、生徒たちの方に向かって、歩き出した。

悪魔のようなヒールの音が、体育館に響き渡る―。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〇倉本 道生 (覆面ライダー)
覆面ライダーとして戦い続ける高校生。

〇中橋 香奈
道生の彼女だった女子高生。半年前にオーンの幹部に憑依されてしまう。

〇アリサ
道生に覆面ライダーの力を授けた謎の女性。自称・女子大生

〇高杉 麗香
〇小田原 良治
道生のクラスメイト。

〇オーン大首領
謎の組織・オーンを率いる謎の人物。その素性は不明。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--反撃のチャンスは必ず作るから」

アリサが言う。

道生は、アリサの家での潜伏を余儀なくされていた。
オーンの罠により、全国的に指名手配されてしまった道生は
今現在、身動きが取れない。
外に出れば、警察が、道生を追う。
そして、警察はオーンの手先ではないから、
攻撃するわけにはいかない。
彼らは、一般人なのだから。

「--そういえばさ、アリサが憑依されない理由って…」
道生が訪ねる。

この前、聞き忘れた。
オーンたちが、道生の抹殺を目論むなら、真っ先に
アリサに憑依してもおかしくないのだ。

アリサは、腕をまくって微笑んだ。
腕には光るリングがつけられている。

「--知ってる?
 オーンに一度憑依された人間は”抵抗”がつくの。

 一度オーンに憑依された人間は、もう二度と憑依されることはない。
 別のオーンであっても…ね。」

アリサは、妹の写真を手に取りながら言う。

「わたしは、死んだ妹の身体を解剖して、
 オーンへの抵抗力の部分を、採取、研究したの。
 その研究の結晶がコレ。

 これを身に着けている限り、わたしはアイツらには憑依されない」

アリサが腕のリングを見せながら言った。

「ーー妹さんを…解剖」
道生が言うと、アリサは首を振った。

「--わたしは、オーンへの復讐のためなら
 何でもするの。そう…何でも…」

悲しそうに言うアリサ。

重ぐるしい空気になってしまったことを詫びると、
アリサは言った。

「だからね、あなたの妹さんだとか、
 ユーチューバーのマドカちゃんだとか、
 ああいう人たちは、もう憑依される心配はないの」

アリサの言葉に、道生は窓の外を見つめた。

”ならー、香奈をオーンの幹部から解放
 することができれば”

その時だった。

突然、テレビの映像が切り替わる。

「--あははははは!お久しぶり!」
テレビには、邪悪に笑う香奈の姿が映し出された。

「か…香奈!」
道生は叫んで、テレビの方を見る。

香奈は、「見ろよ」と乱暴に言いながら、
道生のクラスメイトの一人、麗香の髪の毛を
引っ張って、モニターの前に、連れてくる。

麗香の顔はあざだらけだ。

「あんたのクラスメイト、
 今からわたしが皆殺しにするわ!
 うふふふふふ♡

 クラスの人気者だったわたしがこの手で
 みんなを地獄に送ってあげる!」

香奈は、ナイフを舌でペロリと舐めると
挑発的な笑みを浮かべた。

「貴様ぁぁ!」
道生が叫ぶ。

香奈は笑った。

「今から来れば、間に合うかもよ… 
 み・ち・お! ふふ!」

そう言うと、テレビは砂嵐になってしまった。

「くそっ!」
道生が家から飛び出そうとする。

「待って!」
アリサは叫んだ。

「--待てないよ!罠でも俺は、
 奴等をぶっ潰す!」

道生は憎しみに支配されていた。
アリサの制止も聞かず、道生は
家を飛び出したのだった。

道生が持っている覆面ライダーへの変身端末を見るアリサ。

その色は”オレンジ”に光っていた。

「---”オレンジー”」
アリサはそう呟くと、道生の制止を諦めて、
サポートに回る決意をした。

学校に走る道生。
アリサが警察の居場所を通信で教えてくれたため、
道生はスムーズに学校に辿り着くことが出来た。

慌てて校舎に飛び込む道生ー。

体育館に向かって、全力疾走で走り続けた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「中橋さん…目を覚ますんだ」

血まみれになった良治が、香奈の足をつかむ。

「邪魔だ!どけ!」
香奈が容赦なく、良治の顔面を蹴り飛ばす。

「--くくく…わたしはね、
 オーンに選ばれたの!オーンの大幹部に!
 あんたたちみたいな下等生物とは違うの!」

香奈が挑発的に笑いながら、
体育館に居るクラスメイトたちに言う。

「-オーンに憑依されることは幸せな事よ?
 わたしのように、体も心も、死ぬまで
 こき使われるんだから!
 あっははははははは!」

その表情に既に、優しかった香奈の
面影はない。

狂気に歪み、
悪意に満ちた香奈の表情に
クラスメイトたちは唖然とする。

既に、道生のクラスメイトたちは、
皆、ボロボロだった。

まだ、誰一人として死んではいない。
でも、いつ、誰が死んでもおかしくない。

そんな、状況ー。

「--時間切れ。」
香奈がウンザリした様子で言う。

「-かつての友達を一人ひとり殺していく
 うふふ・・・ぞくぞくする…血が騒ぐ!
 興奮しちゃぅぅぅ!」

香奈が叫ぶと、
クラスメイトの麗香が言った。

「--お願い!目を覚まして!」
麗香は、以前、オーンに憑依された。
だからこそ、分かる。
憑依されることの悲しみが。

香奈は、そんな麗香の方を見た。

「ーーーあなたはもう、一度憑依されてたわよね?」
香奈が笑う。

「だったら、あなたはもういらない」
香奈が、サーベルを振ると、
麗香の方に歩き始めた。

「--麗香ちゃん…」
床に這いつくばっていた良治がその様子を見つめる。

彼はー、
麗香の事が好きだった。

けれど、麗香が憑依された時、彼には何もできなかった。
そこに、あのヒーロー…覆面ライダーが現れた。

麗香は、自分をたすけてくれた覆面ライダーに恋をした。

そして、良治は、あの覆面ライダーが、道生なのではないかと感づいていた。

「--ーー俺は…お前みたく、ヒーローにはなれねぇよ」
良治は呟いた。

「--さぁ、死になさい!」
香奈がサーベルを麗香に向けて振りかざした。

「----!!」
血が吹き飛ぶ。

しかしー
麗香の身体には痛みが走らない。

麗香が、目を開けると、
そこには、麗香を庇うようにして立っている
良治の姿があった。

「---え…」
麗香が驚いて目を見開く。

「俺さ…麗香ちゃんのこと…
 ずっと……」

良治はそこまで言って自虐的に笑う。

”死ぬ直前のやつに、告白されても嬉しくねぇか”と。

「---いや、なんでも・・・ねぇ」

良治は力無くその場に倒れた。

「あはははははは!ばっかじゃないの!
 ゴミがゴミ同士庇いあってる!
 あぁ~~あ!本当にゾクゾクする!

 こういうゴミをぶっ壊すのって、本当に楽しい!」

香奈がさらにサーベルを振ろうとしたその時だった。

「やめろ!」
背後から声がした。

そこには、覆面ライダーの姿。

「--あなたは、あの時の!」
麗香は叫んだ。

クラスメイトたちにも、安堵の表情が浮かぶ。

「--あははっ!来たの!?おバカさん!」
香奈が狂気的な笑みを浮かべながら、
サーベルを手に、道生の方に向かって走り出した。

香奈の横では、オーンに憑依された
糸井先生が、ワイヤーのようなものを持って微笑んでいる。

”あなたも、アレを使って対抗するのよ”
アリサが通信越しに言う。

「--わかった」
道生は、覆面ライダーの武器のひとつ、
ライダーサーベルを取り出して、
香奈のサーベルを迎え撃った。

「あはは!あなたにわたしは斬れない!」
香奈が言う。

「--あぁ、斬れないよ」
道生は香奈の目をまっすぐ見ながら答えた。

「---ふふふ♡
 なら、ここで死になさい!
 最愛の彼女である、わたしに斬られて!」

香奈は躊躇なく道生を殺そうとしている。

「---くっ」
道生は、どうするべきか迷っていた。

次第に、香奈に押されていく。

香奈は、道生を殺そうとしている
道生は、香奈を救おうとしている。

その差が、戦いに現れた。

香奈にライダーサーベルは吹き飛ばされ、
香奈は笑いながら道生を見た。

「終わりよ…
 ふふふ 大好きなあなたを殺すこの瞬間!
 ほんと~~~に、ゾクゾクする!」

香奈がサーベルを構えた。

香奈は、ふと、腕にある腕時計を見つめた。
覆面ライダーに変身しても、その腕には
香奈から道生が貰った、大切な腕時計が
巻きついている。

「忌々しい時計ね…」
香奈が嫌悪感を丸出しにして言う。

「それも、あんたも!
 全部粉々にぶっ壊してあげるわ」

サーベルを振り出す香奈。

「----」
道生は、この瞬間を狙っていた。

ベルトから放つ光は、オーンと人間を分離させる。
幹部となった香奈には隙がない。
だが、トドメを刺そうとする一瞬の瞬間なら。

「--しねぇ!」
香奈が叫ぶ。

「今だ!」
覆面ライダーはベルトを発光させる。

既に射程に入ってしまっていた香奈は
驚きで目を見開く。

しかしー

「ぎぃあああああああ!」
別の女性の声が響いた。

「--糸井先生!?」
覆面ライダーが声をあげる。

「--か、、香奈さま…」
そう言うと、糸井先生は倒れて、
中から気体のような物体、
オーンの本体が姿を現した。

「---ご苦労様」
香奈は微笑む。

オーンに憑依されていた担任の女性教師、
糸井先生が、香奈の盾となったのだった。

「くそっ!」
道生が叫ぶ。

「てこずらせやがって!」
香奈が凶暴性を露わにして、道生の腕を踏みつける。

「--うふふふふ・・・そっかそっか。
 その時計、わたしとの思い出なんだもんね」
腕時計を踏みにじって笑う。

「やめろ・・・やめろ香奈!」
覆面ライダーの姿のまま、道生は叫ぶ。

「---ーーーーー!」
香奈はその時計を見つめながら、
一瞬、動揺のようなものを感じた。

「---くそっ!」
香奈は吐き捨てるように言うと、
気を取り直して叫んだ。

「今度こそ、終わりよ!」
香奈が笑いながら、サーベルを構える。

「うおらあああああ!」
横から声がして、香奈は強い衝撃と共に吹き飛ばされた。

「---!!」
道生が驚いてそちらを見ると、
そこには、クラスメイトの良治の姿があった。

麗香をかばった際に、既に深手を追っている良治は、
それでもなお立ち上がり、香奈に突進した。

「--中橋さん!お前にとって
 アイツは大切な人だろうが!」

香奈を抑えながら良治が言う。
しかし、香奈は不気味に笑うだけだった。

「おい!今だ!俺もろとも、お前の光を当ててやれ!」
血を口からこぼしながら良治は叫ぶ。

「----」
覆面ライダーは立ち上がった。

しかしー

「ーーーひぃはぁっ!そうはさせねぇ!」
糸井先生に憑依していたオーンが、別の女子生徒に
憑依して、ハサミを振り回しながら襲い掛かってきた。

覆面ライダーは攻撃を回避すると、
そのツインテール女子に、光を照射して、オーンをその子から
追い出す。

「--邪魔だ!失せろ!」
覆面ライダーは飛び跳ねると、そのオーンに強烈なキックを
喰らわせた。

「ぎいいあああああ!」
オーンが消滅する。

「ぐあっ…」

うめき声が聞こえて振り返ると、香奈が良治の腹部を
サーベルで貫いていた。

「--あ・・・」
その場に崩れ落ちる良治。

「くそっ!」
道生が駆け寄ろうとする。

クラスメイトたちが、香奈の方を睨んでいる。

香奈は思う―。
もしも、こいつらが自分に突進してきて、
その隙に覆面ライダーの攻撃を受ければ…

「チッ・・・分が悪いわね…
 覚えてなさい!」

そう言うと、香奈は、サーベルから闇を放ち、
そのまま姿を消した。

「--良治!」
覆面ライダーの姿のまま、クラスメイトの
良治のところに駆け寄る。

「---はは…わりぃな役立たずでよ…」
良治は青白い顔で笑った。

「--くそっ!しっかりしろよ!」
覆面ライダーがそう叫ぶと、良治は笑った。

「彼女、取り戻せよー、
 応援してるぜー ”道生”」

そう言って、良治はそのまま息を引き取った。

良治は、気づいていた。
覆面ライダーが道生だと言うことに。

クラスメイトたちは、騒然としている。

「くっそぉぉお!」
道生が怒りに身を任せて、体育館の床を叩く。

「--動くな!」
そこに警察官たちがなだれ込んできた。

「--君が、先日、駅で痴漢行為と殺人を行った
 倉橋道生だな」

警官が警察手帳を示し、道生はそのまま連行される。

道生は「違う!違うんだ!」と叫びながら、
どうすることもできず、そのまま警察官たちに連行されていく。

クラスメイトの麗香は、
そんな様子を見ながら、覆面ライダー=道生だと知り、
ただただ唖然としていた。

連行される道生の持つ、覆面ライダーへの変身端末は
”赤く”輝いていたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---はぁ…はぁ…」
香奈が、オーンのアジトで苛立ちを隠せず、
動き回っていた。

「あの男…うざい!うざい!うざいうざいうざいうざい!」
一人、アジトで暴れまわる香奈。

どうして、あの男に、こんなにムキになるのか。
自分でも分からないまま。

”--舞台は整った”

大首領の声が響いた。

「--大首領」
香奈が振り向く。

”まもなく、我らの最終計画を始めるー。
 お前にも、力を貸してもらうぞ”

大首領は、いつも通り
機械音声でそう告げたー。
男かも、女かも判別できない、
無機質な機械音声。
感情すらも、伝わってこない。

だが、今、その声は、心なしか、弾んでいるように聞こえた…。

⑥へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★予告★

12月24日ー。
アリサの手助けにより、警察から抜け出した道生は、
イルミネーション輝く中、香奈と対峙する。

自分の想いをぶつけ、香奈を救うことはできるのかー。

そして、オーンの大首領が、姿を現すー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

あと2話です!
オーンを倒すことはできるのでしょうか!

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憑依<覆面ライダー>
憑依空間NEO

コメント

  1. ゲスト より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    今日も、見させていただきました!
    非常にゾクゾクとさせていただきました!
    この流れは、アリサの腕輪が奪われて、
    憑依・・・おっと誰かきたようだ。

  2. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 今日も、見させていただきました!
    > 非常にゾクゾクとさせていただきました!
    > この流れは、アリサの腕輪が奪われて、
    > 憑依・・・おっと誰かきたようだ。

    ありがとうございます!
    アリサの腕輪が奪われて…
    う~~ん・・・ヒミツです笑

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