<憑依>覆面ライダー④~女たちの罠~

覆面ライダーを叩き潰すため、
オーンは大規模な作戦を開始した。

次々と女性に憑依して、覆面ライダーである
道生を罠にはめていく…。

女性に憑依する悪の組織・オーンを
倒すことはできるのか…。

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「--あぁ…もう一度会いたいな…」

昼休み。
クラスメイトの麗香が顔を赤らめながら言っている。

「--ははっ、ヒーローは忙しいんだよ、きっと!」
クラスメイトの男子、良治が麗香に言う。

麗香は、オーンに憑依された際に、自分を助けてくれた
覆面ライダーに恋をしてしまっていた。

「--はは…」
道生は話会うしかなかった。
まさか、”自分があの時のヒーローだ”なんていうわけにはいかない。

第一、麗香も良治も信じないだろうし、
仮に信じてもらっても…二人がオーンに狙われる可能性が
高まってしまう。

「---」
良治は、苦笑いしている道生の方を意味深に見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〇倉本 道生 (覆面ライダー)
覆面ライダーとして戦い続ける高校生。

〇中橋 香奈
道生の彼女だった女子高生。半年前にオーンの幹部に憑依されてしまう。

〇アリサ
道生に覆面ライダーの力を授けた謎の女性。自称・女子大生

〇高杉 麗香
〇小田原 良治
道生のクラスメイト。

〇オーン大首領
謎の組織・オーンを率いる謎の人物。その素性は不明。

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「--大首領…」
オーンのアジトで、妖艶な姿をした香奈が、
大首領からの通信を受けていた。

”覆面ライダーの排除計画は進んでいるのか?”
オーンのシンボルマークから、オーン大首領の声が
響き渡る。

「はいー」
香奈は口元を歪めた。

そして、得意げな表情で語り始める。

「もう、奴に逃げ場はありません」
香奈は、自分の彼氏のことを「ヤツ」と呼んだ。
オーンの幹部に憑依されてしまった彼女に、
もはや、どうすることもできない。
オーンの意のままに、身も心も突き動かされている。

”そうか、期待しているぞー”

大首領からの通信が終了した。

「--あんたはもう終わりよ…
 道生…」

モニターに映る道生の姿を見つめながら、
香奈は不気味にほほ笑んだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

学校に登校するため、道生は電車に揺られていた。

車窓から見えるのどかな風景を見つめながら
道生は思う。

「香奈…」

あの時、自分とのクリスマスを楽しみにしてくれていた香奈は、
今、どうなってしまっているのだろう。

オーンの幹部に憑依されたまま、香奈は消えてしまうのだろうか。

「くそっ…香奈…必ず、助けるから…」
道生は、一人、拳を握りしめた。

駅に電車が停車する。
女子高生の3人組が電車に乗ってきた。

道生とは違う高校の生徒たちだ。

それに続き、おばあさんや、子連れの若い母親なども
乗り込んできた。

みんな、オーンのことを知らない。
政府は、オーンのことをかたくなに隠そうとしている。

その理由はー、
オーンが政府関係者の家族に憑依して、
政治家たちを脅しているからだ。

電車が走り出す。
再び、電車に揺られながら、道生はオーンとの
戦いについて、色々と考えていた。

「--きゃああああ!」
ふいに、横に居た女子高生が叫び声をあげた。
気の弱さそうなメガネ女子だ。

「--えっ?」
道生がふと、その女子高生の方を向く。

ガシッ!
何者かに手をつかまれた。

さっきの駅で乗ってきた女子高生3人組の一人、
ツインテールの子が、道生の手をつかんでいる。

「この人、痴漢です!」
もう一人が叫んだ。

「えっ…えぇぇ?俺、何にもしてないけど…!」
道生が叫ぶと、
おばあさんが立ち上がった。

「嘘はやめなさい!私も見ましたよ!」

騒然とする周囲。

子連れの母親も立ち上がった。
「痴漢するなんて最低!」

母親の子どもは戸惑っている。

「---」

周囲の女性客たちが立ち上がり、
「痴漢!痴漢!」と
コールし始めた。

道生は、気づいた。

これは、オーンによる罠だ!と。
全員、憑依されている!

道生は、手をつかんだ女子高生をふりほどいて、
ちょうど停車した電車から飛び降りた。

「待ちなさい!」
子連れの母親が叫びながら追ってきた。

道生は他の女性客にも妨害され、
母親につかまれてしまう。

「逃がさないぞ…覆面ライダー!」
子連れの母親が狂気的な笑みを浮かべて言う。

「--やっぱり、貴様ら・・・オーン!」

周囲の女性客は、ほとんどがオーンに憑依されていた。
多数のオーンによって、道生を地獄に落とす計画。
それが、今、はじまったのだ。

「--ごめんなさい!」
道生はそう叫び、母親を突き飛ばした。

手荒だが、今捕まるわけにはいかない。

母親は、一瞬ニヤリとすると、
わざとバランスを崩して、駅のホームに転落した。

そしてーー
発車直前だった電車に、
母親は轢かれてー

「---!!」

周囲の騒ぎが大きくなる。

「--人殺し!」
女子高生3人組が狂ったように叫んでいる。

「くそっ…くそっ…これはオーンの罠だ!」
道生は駆け出した。

捕まればー
”社会から抹消される”
そう思った。

周囲の男性客まで、事情を知らずに、
道生を取り押さえようとする。

だが、道生は、それを振り払い、
なんとか、駅から脱出したのだった。

「おかあさん!」
電車に轢かれてボロボロになった母親のもとに
まだ幼い子供が駆け寄る。

しかし、母親はこれから死ぬというのにー
笑っていた。

「くくく…覆面ライダー!
 もう逃げ場はない…
 くくく…!」

狂気の笑みを浮かべる母親に、
子供は必死にすがりついた。

「ねぇ!おかあさん!」

だが、そんな子供の言葉は耳には入っていない。

「あははははははは!あはははははははは……ぐふっ!」
母親はそのまま吐血して動かなくなった。

その表情は、とても”嬉しそう”だった。

「--逃げろ逃げろ~でも、逃げ場なんてないぞぉ~」
痴漢被害者を自称する女子高生が笑う。

「あはははは!あはははははははははっ♡」
他の女子高生たちも笑い始める。

駅構内に女性の笑い声が響き始めた。
皆、狂気の笑みを浮かべている。

「お、おい、何だよこれ・・・」
男性客たちは、唖然とした。

ホームに居る女性のほとんどが
狂ったように笑い続けているー。

オーンを知らない彼らは、
ただただ、戸惑うしかなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--どうしたの?」

道生は、アリサの家に駆けこんだ。

「--少し、かくまってくれないか?」
道生はそう言って、事情をアリサに説明すると、
アリサはうなずいた。

アリサがテレビをつけると、
道生は指名手配されていた。
”逃亡中の容疑者”としてー。

「--オーンも大胆な計画に出たものね」

今日もモデルのような綺麗な身なりのアリサが言う。

「--しばらく、ここに隠れるといいわ。
 ここなら、そう簡単には見つからない」

道生に、お茶を差し出しながら
アリサが優しく微笑んだ。

「--ありがとう」
道生は、アリサに深々と頭を下げた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

新人の女性警官・吉屋 芙美(よしや ふみ)が、
先輩刑事と共にとある事件の調査を行っていた。

まだあどけなさの残る、可愛らしい容姿が特徴的だ。

とある窃盗犯の追跡調査ー。
その最中に、車のラジオから、
”道生”のニュースが流れた。

「--へぇ、痴漢した挙句に、人を殺したのか」
先輩刑事がつぶやく。

「酷いですね…」
芙美も、そう呟いた。

その時だったー

「あっー!」
芙美の身体が突然ビクンと震える。

「どうした?」
先輩刑事が横にいる芙美を見つめる。

芙美は、笑っていたー。

「痴漢して、人を殺して・・・
 本当に最低…
 わたしがこの手で殺してあげなきゃ」

芙美の呟きに、先輩刑事は
「おい、殺すなんて軽々と口にするな
 それ刑事の仕事じゃない」
と、諭すように言った。

直後、銃声が響き渡る。

「---ふふ、わたし、もう刑事じゃなくなっちゃったんで!
 ふふふ♡」

倒れて苦しむ先輩刑事に向かって笑う。

「な…に…」
先輩刑事が苦しみながら芙美の顔を見る。
芙美は、先輩刑事を撃ってなお、わらっていた。

「--今からわたしはオーンの忠実なしもべ うふふ」
芙美は、笑いながら先輩刑事にトドメを刺した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「雨…ね」

アリサのアジト兼自宅にかくまってもらってから
3日間が経過した。
今のところ、警察もオーンの刺客も
姿を現していない。

オーンによって、はめられ、
道生は全国指名手配されてしまった。
逃亡犯として…。

「-くそっ…もう、誰も信じられない」
道生は頭を抱えながら呟いた。

身近な女性や、周囲の女性が、次々とオーンの
餌食になっていく。

味方だと思っていた人もー
友達も、家族でさえも、
オーンに憑依されて、敵になってしまう。

「---」
道生は、アリサの方を見つめる。

窓の外を見ながら、雨音を聞いていたアリサは
その視線に気づき、道生の方を見た。

「-ーなんで、わたしは憑依されないのか、
 って顔してるね?」

アリサがほほ笑む。

「……俺、正直、君のことを最近、疑問に
 思い始めてる。
 君が俺に力を貸していることはオーンも
 恐らく知ってるはずだし…
 それなのに、君は憑依されない。

 そして、君はオーンのことを知り過ぎている」

道生の疑問はもっともだった。
アリサから授かった覆面ライダーの力だって、
疑問だ。
アリサはどこから、そんな力を手に入れたのか。
そして、どうして、人生の全てをオーン打倒に
捧げているのか。

ここ3日間、アリサの家にかくまってもらった道生は
アリサを見ていて気づいた。

”睡眠以外のほぼすべての時間を、オーンの情報収集や
 対策に充てていることに”

「--ふふ…そうね。
 そろそろお話ししなくちゃね…」

アリサは、部屋の隅に置いてある、アリサと、もう一人の女性が
写っている写真を手に取った。

「--これは、わたしの妹」
アリサが、写真を道生に見せながら言う。

「1年前の、バスジャック事件、知ってる?」
アリサの言葉に、道生はうなずいた。
最終的に、バスは横転し、主犯である人物
もろとも、乗客のほとんどが死亡した、悲惨な事件。

そして、世間を驚かせたのは、
犯人が”女子高生”であったこと。
真面目で、優等生だと評判の子だったことだ。

「--あの犯人、わたしの妹なの…。」
アリサが悲しそうな表情で言う。

「--…まさか」
道生が言うと、アリサはうなずいた。

「そう。妹はオーンに憑依された、
 そして…体を好き勝手使われた挙句、処分された…

 あのバスにはね、オーンのことを発表しようとした
 政治家が乗ってたの。
 それを始末するために、妹は利用されて、殺された」

アリサが写真を元の場所に置くと、
道生の方を見た。

「--わたしは、妹のカタキをとる。
 だから、大学もバイトもやめて、将来の夢も諦めて、
 人間関係も全て絶って、復讐に全てを捧げることにした」

アリサが、部屋中にある通信機のような機械を指さす。

「--オーンの一人を以前、捕まえて拷問して、
 オーンの技術と情報を盗み出したの。
 それが、あなたに提供した覆面ライダーの力と、
 私が手に入れる情報源」

アリサは、妹を奪われた憎しみに突き動かされていた。

「--最初はあなたを”利用”しようと思って近づいたの。
 わたしには”力”が無い。
 情報と策略だけじゃ、オーンは倒せない。
 だから、あなたを武器にしようと思って…
 そう、利用しようとして近づいたの…」

アリサが申し訳なさそうに言う。

「わたしは、あなたのように世界を救いたいわけじゃない。
 ただ、オーンを叩き潰したいだけ。
 周りが犠牲になろうと、知ったことじゃない!」

アリサが感情的になって言うのを見て、
道生は言う。

「--俺も…別に世界を救いたいわけじゃない…
 一番の目的は香奈を取り戻すことだし…
 でも…やっぱり、周囲のことも放っておけないから…」

道生が、言うと、アリサは微笑んだ。

「--でも…あなたと一緒に居て、
 わたしも少し変わった。
 今はーあなたの彼女さんも助けてあげたいし、
 オーンに苦しむ人達を助けたい。

 もちろん、復讐が一番であることには変わりないけど」

そう言うと、アリサは道生の方を見た。

「-あなたを利用する目的で近づいた後ろめたさから、
 今までお話しできなくてごめんなさい。

 これが、私のオーンと戦う、目的…」

アリサの言葉に、道生は少しだけ笑った。

「--いいよ…
 俺、力を与えてくれただけでも感謝してる。
 この力が無ければ、オーンと戦うなんて、
 夢のまた夢だった」

道生が手を差し出した。

「これからもよろしく」

アリサがその手を握り、握手に応えた
その時だった。

外から銃声が響き渡る。

「--あはははははは!
 いるんだろ?そこにぃ?
 出てこいよ!覆面ライダー!」

アリサが窓の外を確認すると、
そこには、乱れきった姿の女性警官が居た。

「ーーオーンが来たわよ」
アリサが言うと、道生は、覆面ライダーに変身して、
外に出た。

雨でびしょ濡れになった婦警が笑う。

「--お前が覆面ライダーかぁ!ふふふ…
 死ね!」

オーンに憑依されている女性警官・芙美は
容赦なく銃を乱射した。

しかし、覆面ライダーに変身している道生には
その攻撃は当たらない。

アリサも外に出てきて、
その戦いを見守る。

「--くそっ!素早い!」
芙美が舌打ちをして、覆面ライダーの方を見る。

「--おわりだ!」
覆面ライダーは、ベルトから光を放ち、
芙美の身体から、オーンを追い出そうとする。

しかしー

「待て待て待て!」
芙美が笑いながら銃を捨てて、ほほ笑んだ。

「--お前、この女の身体に興味はねぇか?
 今、見逃してくれたら、たっぷりエッチなことさせてやるぜ」
芙美が舌をペロペロさせながら言う。

手を止める覆面ライダー。

「--ほら!見ろよ!」
びしょ濡れになったスーツとシャツを脱ぎだす芙美。

その体があらわになる。

「--俺を見逃せば、お前はこの女と、やりたい放題だ!」
芙美はゲラゲラと笑った。

「---が」
覆面ライダーが何かを呟いた。

「ん?」
芙美が聞き返すと、覆面ライダーは大きな声で叫んだ。

「この…クズが!!!」
怒りのまなざしで覆面ライダーはベルトを発光させ、
オーンを芙美の身体から追い出すと、
容赦ないキックを喰らわせて、芙美に憑依していたオーンを消し去った。

「--」
ベストが赤く光り、覆面ライダーは道生の姿に戻った。

「ーー見事だったわ」
アリサが言う。

そして、
「この人の身体は、わたしが安全なところに運んでおくから」と
アリサは、芙美の身体を、持ってきた毛布でくるみ、頷いた。

「--お願いするよ」
道生は、そう言って、アリサの家の中へと戻っていく。

指名手配されている以上、
うかつには動けないー。

道生は、落ちてくる雨粒を、不安そうに見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--そう。協力者の家に隠れているのね」

オーンの本部で、部下から報告を受けた香奈は
不気味に笑った。

「--じゃあ、あぶりだしてあげる…」

香奈は、道生が通う学校の写真を手に笑う。

「--道生は、友達思いだもんね…?
 ふふふふふふ♡」

そう言うと、香奈は立ち上がって、
道生の学校へと向かうのだった…。

⑤へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

予告

襲撃された道生の高校。

道生は罠と分かりながら、
クラスメイトたちの救出に向かう。

辿り着いた学校で、待ち受けていたものはーー?

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コメント

少し日付が空きましたが、
覆面ライダーの続きです!

今回は、完結まで書いていきますよ!

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憑依<覆面ライダー>

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