覆面ライダーを叩き潰すため、
オーンは大規模な作戦を開始した。
次々と女性に憑依して、覆面ライダーである
道生を罠にはめていく…。
女性に憑依する悪の組織・オーンを
倒すことはできるのか…。
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「--あぁ…もう一度会いたいな…」
昼休み。
クラスメイトの麗香が顔を赤らめながら言っている。
「--ははっ、ヒーローは忙しいんだよ、きっと!」
クラスメイトの男子、良治が麗香に言う。
麗香は、オーンに憑依された際に、自分を助けてくれた
覆面ライダーに恋をしてしまっていた。
「--はは…」
道生は話会うしかなかった。
まさか、”自分があの時のヒーローだ”なんていうわけにはいかない。
第一、麗香も良治も信じないだろうし、
仮に信じてもらっても…二人がオーンに狙われる可能性が
高まってしまう。
「---」
良治は、苦笑いしている道生の方を意味深に見つめていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〇倉本 道生 (覆面ライダー)
覆面ライダーとして戦い続ける高校生。
〇中橋 香奈
道生の彼女だった女子高生。半年前にオーンの幹部に憑依されてしまう。
〇アリサ
道生に覆面ライダーの力を授けた謎の女性。自称・女子大生
〇高杉 麗香
〇小田原 良治
道生のクラスメイト。
〇オーン大首領
謎の組織・オーンを率いる謎の人物。その素性は不明。
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「--大首領…」
オーンのアジトで、妖艶な姿をした香奈が、
大首領からの通信を受けていた。
”覆面ライダーの排除計画は進んでいるのか?”
オーンのシンボルマークから、オーン大首領の声が
響き渡る。
「はいー」
香奈は口元を歪めた。
そして、得意げな表情で語り始める。
「もう、奴に逃げ場はありません」
香奈は、自分の彼氏のことを「ヤツ」と呼んだ。
オーンの幹部に憑依されてしまった彼女に、
もはや、どうすることもできない。
オーンの意のままに、身も心も突き動かされている。
”そうか、期待しているぞー”
大首領からの通信が終了した。
「--あんたはもう終わりよ…
道生…」
モニターに映る道生の姿を見つめながら、
香奈は不気味にほほ笑んだ…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
学校に登校するため、道生は電車に揺られていた。
車窓から見えるのどかな風景を見つめながら
道生は思う。
「香奈…」
あの時、自分とのクリスマスを楽しみにしてくれていた香奈は、
今、どうなってしまっているのだろう。
オーンの幹部に憑依されたまま、香奈は消えてしまうのだろうか。
「くそっ…香奈…必ず、助けるから…」
道生は、一人、拳を握りしめた。
駅に電車が停車する。
女子高生の3人組が電車に乗ってきた。
道生とは違う高校の生徒たちだ。
それに続き、おばあさんや、子連れの若い母親なども
乗り込んできた。
みんな、オーンのことを知らない。
政府は、オーンのことをかたくなに隠そうとしている。
その理由はー、
オーンが政府関係者の家族に憑依して、
政治家たちを脅しているからだ。
電車が走り出す。
再び、電車に揺られながら、道生はオーンとの
戦いについて、色々と考えていた。
「--きゃああああ!」
ふいに、横に居た女子高生が叫び声をあげた。
気の弱さそうなメガネ女子だ。
「--えっ?」
道生がふと、その女子高生の方を向く。
ガシッ!
何者かに手をつかまれた。
さっきの駅で乗ってきた女子高生3人組の一人、
ツインテールの子が、道生の手をつかんでいる。
「この人、痴漢です!」
もう一人が叫んだ。
「えっ…えぇぇ?俺、何にもしてないけど…!」
道生が叫ぶと、
おばあさんが立ち上がった。
「嘘はやめなさい!私も見ましたよ!」
騒然とする周囲。
子連れの母親も立ち上がった。
「痴漢するなんて最低!」
母親の子どもは戸惑っている。
「---」
周囲の女性客たちが立ち上がり、
「痴漢!痴漢!」と
コールし始めた。
道生は、気づいた。
これは、オーンによる罠だ!と。
全員、憑依されている!
道生は、手をつかんだ女子高生をふりほどいて、
ちょうど停車した電車から飛び降りた。
「待ちなさい!」
子連れの母親が叫びながら追ってきた。
道生は他の女性客にも妨害され、
母親につかまれてしまう。
「逃がさないぞ…覆面ライダー!」
子連れの母親が狂気的な笑みを浮かべて言う。
「--やっぱり、貴様ら・・・オーン!」
周囲の女性客は、ほとんどがオーンに憑依されていた。
多数のオーンによって、道生を地獄に落とす計画。
それが、今、はじまったのだ。
「--ごめんなさい!」
道生はそう叫び、母親を突き飛ばした。
手荒だが、今捕まるわけにはいかない。
母親は、一瞬ニヤリとすると、
わざとバランスを崩して、駅のホームに転落した。
そしてーー
発車直前だった電車に、
母親は轢かれてー
「---!!」
周囲の騒ぎが大きくなる。
「--人殺し!」
女子高生3人組が狂ったように叫んでいる。
「くそっ…くそっ…これはオーンの罠だ!」
道生は駆け出した。
捕まればー
”社会から抹消される”
そう思った。
周囲の男性客まで、事情を知らずに、
道生を取り押さえようとする。
だが、道生は、それを振り払い、
なんとか、駅から脱出したのだった。
「おかあさん!」
電車に轢かれてボロボロになった母親のもとに
まだ幼い子供が駆け寄る。
しかし、母親はこれから死ぬというのにー
笑っていた。
「くくく…覆面ライダー!
もう逃げ場はない…
くくく…!」
狂気の笑みを浮かべる母親に、
子供は必死にすがりついた。
「ねぇ!おかあさん!」
だが、そんな子供の言葉は耳には入っていない。
「あははははははは!あはははははははは……ぐふっ!」
母親はそのまま吐血して動かなくなった。
その表情は、とても”嬉しそう”だった。
「--逃げろ逃げろ~でも、逃げ場なんてないぞぉ~」
痴漢被害者を自称する女子高生が笑う。
「あはははは!あはははははははははっ♡」
他の女子高生たちも笑い始める。
駅構内に女性の笑い声が響き始めた。
皆、狂気の笑みを浮かべている。
「お、おい、何だよこれ・・・」
男性客たちは、唖然とした。
ホームに居る女性のほとんどが
狂ったように笑い続けているー。
オーンを知らない彼らは、
ただただ、戸惑うしかなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--どうしたの?」
道生は、アリサの家に駆けこんだ。
「--少し、かくまってくれないか?」
道生はそう言って、事情をアリサに説明すると、
アリサはうなずいた。
アリサがテレビをつけると、
道生は指名手配されていた。
”逃亡中の容疑者”としてー。
「--オーンも大胆な計画に出たものね」
今日もモデルのような綺麗な身なりのアリサが言う。
「--しばらく、ここに隠れるといいわ。
ここなら、そう簡単には見つからない」
道生に、お茶を差し出しながら
アリサが優しく微笑んだ。
「--ありがとう」
道生は、アリサに深々と頭を下げた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
新人の女性警官・吉屋 芙美(よしや ふみ)が、
先輩刑事と共にとある事件の調査を行っていた。
まだあどけなさの残る、可愛らしい容姿が特徴的だ。
とある窃盗犯の追跡調査ー。
その最中に、車のラジオから、
”道生”のニュースが流れた。
「--へぇ、痴漢した挙句に、人を殺したのか」
先輩刑事がつぶやく。
「酷いですね…」
芙美も、そう呟いた。
その時だったー
「あっー!」
芙美の身体が突然ビクンと震える。
「どうした?」
先輩刑事が横にいる芙美を見つめる。
芙美は、笑っていたー。
「痴漢して、人を殺して・・・
本当に最低…
わたしがこの手で殺してあげなきゃ」
芙美の呟きに、先輩刑事は
「おい、殺すなんて軽々と口にするな
それ刑事の仕事じゃない」
と、諭すように言った。
直後、銃声が響き渡る。
「---ふふ、わたし、もう刑事じゃなくなっちゃったんで!
ふふふ♡」
倒れて苦しむ先輩刑事に向かって笑う。
「な…に…」
先輩刑事が苦しみながら芙美の顔を見る。
芙美は、先輩刑事を撃ってなお、わらっていた。
「--今からわたしはオーンの忠実なしもべ うふふ」
芙美は、笑いながら先輩刑事にトドメを刺した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「雨…ね」
アリサのアジト兼自宅にかくまってもらってから
3日間が経過した。
今のところ、警察もオーンの刺客も
姿を現していない。
オーンによって、はめられ、
道生は全国指名手配されてしまった。
逃亡犯として…。
「-くそっ…もう、誰も信じられない」
道生は頭を抱えながら呟いた。
身近な女性や、周囲の女性が、次々とオーンの
餌食になっていく。
味方だと思っていた人もー
友達も、家族でさえも、
オーンに憑依されて、敵になってしまう。
「---」
道生は、アリサの方を見つめる。
窓の外を見ながら、雨音を聞いていたアリサは
その視線に気づき、道生の方を見た。
「-ーなんで、わたしは憑依されないのか、
って顔してるね?」
アリサがほほ笑む。
「……俺、正直、君のことを最近、疑問に
思い始めてる。
君が俺に力を貸していることはオーンも
恐らく知ってるはずだし…
それなのに、君は憑依されない。
そして、君はオーンのことを知り過ぎている」
道生の疑問はもっともだった。
アリサから授かった覆面ライダーの力だって、
疑問だ。
アリサはどこから、そんな力を手に入れたのか。
そして、どうして、人生の全てをオーン打倒に
捧げているのか。
ここ3日間、アリサの家にかくまってもらった道生は
アリサを見ていて気づいた。
”睡眠以外のほぼすべての時間を、オーンの情報収集や
対策に充てていることに”
「--ふふ…そうね。
そろそろお話ししなくちゃね…」
アリサは、部屋の隅に置いてある、アリサと、もう一人の女性が
写っている写真を手に取った。
「--これは、わたしの妹」
アリサが、写真を道生に見せながら言う。
「1年前の、バスジャック事件、知ってる?」
アリサの言葉に、道生はうなずいた。
最終的に、バスは横転し、主犯である人物
もろとも、乗客のほとんどが死亡した、悲惨な事件。
そして、世間を驚かせたのは、
犯人が”女子高生”であったこと。
真面目で、優等生だと評判の子だったことだ。
「--あの犯人、わたしの妹なの…。」
アリサが悲しそうな表情で言う。
「--…まさか」
道生が言うと、アリサはうなずいた。
「そう。妹はオーンに憑依された、
そして…体を好き勝手使われた挙句、処分された…
あのバスにはね、オーンのことを発表しようとした
政治家が乗ってたの。
それを始末するために、妹は利用されて、殺された」
アリサが写真を元の場所に置くと、
道生の方を見た。
「--わたしは、妹のカタキをとる。
だから、大学もバイトもやめて、将来の夢も諦めて、
人間関係も全て絶って、復讐に全てを捧げることにした」
アリサが、部屋中にある通信機のような機械を指さす。
「--オーンの一人を以前、捕まえて拷問して、
オーンの技術と情報を盗み出したの。
それが、あなたに提供した覆面ライダーの力と、
私が手に入れる情報源」
アリサは、妹を奪われた憎しみに突き動かされていた。
「--最初はあなたを”利用”しようと思って近づいたの。
わたしには”力”が無い。
情報と策略だけじゃ、オーンは倒せない。
だから、あなたを武器にしようと思って…
そう、利用しようとして近づいたの…」
アリサが申し訳なさそうに言う。
「わたしは、あなたのように世界を救いたいわけじゃない。
ただ、オーンを叩き潰したいだけ。
周りが犠牲になろうと、知ったことじゃない!」
アリサが感情的になって言うのを見て、
道生は言う。
「--俺も…別に世界を救いたいわけじゃない…
一番の目的は香奈を取り戻すことだし…
でも…やっぱり、周囲のことも放っておけないから…」
道生が、言うと、アリサは微笑んだ。
「--でも…あなたと一緒に居て、
わたしも少し変わった。
今はーあなたの彼女さんも助けてあげたいし、
オーンに苦しむ人達を助けたい。
もちろん、復讐が一番であることには変わりないけど」
そう言うと、アリサは道生の方を見た。
「-あなたを利用する目的で近づいた後ろめたさから、
今までお話しできなくてごめんなさい。
これが、私のオーンと戦う、目的…」
アリサの言葉に、道生は少しだけ笑った。
「--いいよ…
俺、力を与えてくれただけでも感謝してる。
この力が無ければ、オーンと戦うなんて、
夢のまた夢だった」
道生が手を差し出した。
「これからもよろしく」
アリサがその手を握り、握手に応えた
その時だった。
外から銃声が響き渡る。
「--あはははははは!
いるんだろ?そこにぃ?
出てこいよ!覆面ライダー!」
アリサが窓の外を確認すると、
そこには、乱れきった姿の女性警官が居た。
「ーーオーンが来たわよ」
アリサが言うと、道生は、覆面ライダーに変身して、
外に出た。
雨でびしょ濡れになった婦警が笑う。
「--お前が覆面ライダーかぁ!ふふふ…
死ね!」
オーンに憑依されている女性警官・芙美は
容赦なく銃を乱射した。
しかし、覆面ライダーに変身している道生には
その攻撃は当たらない。
アリサも外に出てきて、
その戦いを見守る。
「--くそっ!素早い!」
芙美が舌打ちをして、覆面ライダーの方を見る。
「--おわりだ!」
覆面ライダーは、ベルトから光を放ち、
芙美の身体から、オーンを追い出そうとする。
しかしー
「待て待て待て!」
芙美が笑いながら銃を捨てて、ほほ笑んだ。
「--お前、この女の身体に興味はねぇか?
今、見逃してくれたら、たっぷりエッチなことさせてやるぜ」
芙美が舌をペロペロさせながら言う。
手を止める覆面ライダー。
「--ほら!見ろよ!」
びしょ濡れになったスーツとシャツを脱ぎだす芙美。
その体があらわになる。
「--俺を見逃せば、お前はこの女と、やりたい放題だ!」
芙美はゲラゲラと笑った。
「---が」
覆面ライダーが何かを呟いた。
「ん?」
芙美が聞き返すと、覆面ライダーは大きな声で叫んだ。
「この…クズが!!!」
怒りのまなざしで覆面ライダーはベルトを発光させ、
オーンを芙美の身体から追い出すと、
容赦ないキックを喰らわせて、芙美に憑依していたオーンを消し去った。
「--」
ベストが赤く光り、覆面ライダーは道生の姿に戻った。
「ーー見事だったわ」
アリサが言う。
そして、
「この人の身体は、わたしが安全なところに運んでおくから」と
アリサは、芙美の身体を、持ってきた毛布でくるみ、頷いた。
「--お願いするよ」
道生は、そう言って、アリサの家の中へと戻っていく。
指名手配されている以上、
うかつには動けないー。
道生は、落ちてくる雨粒を、不安そうに見つめていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--そう。協力者の家に隠れているのね」
オーンの本部で、部下から報告を受けた香奈は
不気味に笑った。
「--じゃあ、あぶりだしてあげる…」
香奈は、道生が通う学校の写真を手に笑う。
「--道生は、友達思いだもんね…?
ふふふふふふ♡」
そう言うと、香奈は立ち上がって、
道生の学校へと向かうのだった…。
⑤へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
予告
襲撃された道生の高校。
道生は罠と分かりながら、
クラスメイトたちの救出に向かう。
辿り着いた学校で、待ち受けていたものはーー?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
少し日付が空きましたが、
覆面ライダーの続きです!
今回は、完結まで書いていきますよ!
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