<憑依>覆面ライダー③~美少女配信者の囁き~

苛烈さを増すオーンの計画。

あらゆる女性に憑依し、道生を抹殺しようと
目論むオーン。

オーンの野望を打ち砕き、憑依された彼女を
取り戻すことはできるのか?

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「ーーーあ、お兄ちゃん、おはよう!」
妹の姫里が、いつものように、ほほ笑みながら
朝の挨拶をしてきた。

「あぁ、おはよう」
道生は、そんな姫里の笑顔を見ながら思う。

先日、オーンに憑依された姫里は、道生の手により
救い出された。

こんなにやさしくて可愛らしい姫里が
あんな悪魔のような表情を浮かべさせられてしまうー。

オーンの憑依は、女性たちの尊厳を
ズタズタに引き裂いている。

道生の彼女・香奈も憑依されたままだ。

「---どうしたの?ボーっとして」
姫里が不思議そうに尋ねる。

「--え?あぁ、いや」

とにかく、姫里が無事で良かった。
オーンにこれ以上、好き勝手はさせない。

「---そういえばさ」
姫里が、問い詰める様な口調で声を出した。

「ん?」
道生が、姫里の方を見ると、
姫里が何かを持っていた。

「----!」

姫里の手には大人のおもちゃー、
憑依された姫里が使わされていたバイブが握られていた。

「これ、お兄ちゃんの机の中にあったんだけど、何?」
姫里が怒っている。

「え・・・そ・・・それは…!」
姫里をオーンから救い出したあと、
オーンの手がかりになるかもしれないと、回収しておいたバイブを
机の中にしまったことをすっかり忘れていた。

「--お兄ちゃんのエッチ!」
バイブを投げつけて姫里はそのまま部屋の外に
出ていってしまった。

「--えぇぇぇっ!?っーか、俺の机の引き出し、
 勝手に開けたのかよ!」

道生は、突っ込みを入れずには居られなかった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

〇倉本 道生 (覆面ライダー)
覆面ライダーとして戦い続ける高校生。

〇中橋 香奈
道生の彼女だった女子高生。半年前にオーンの幹部に憑依されてしまう。

〇アリサ
道生に覆面ライダーの力を授けた謎の女性。自称・女子大生

〇高杉 麗香
〇小田原 良治
道生のクラスメイト。

〇オーン大首領
謎の組織・オーンを率いる謎の人物。その素性は不明。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---どんな手を使ってでもいいわ。
 あいつを抹殺しなさい」

香奈が、霧状の生命体・オーンに
近づきながら言う。

「--はっ」
オーンは、曇ったような声で返事をした。
オーン本体のままでは、上手く発声することも
できないのだ。

香奈は一人になると険しい表情を浮かべた。

先日ー、
道生と対峙した際に、突然、身体の自由が
一瞬利かなくなった。

「---この女」
香奈は自分の身体を見つめて呟く。

憑依による支配は完全なはず。
なのに、何故?
香奈の道生を想う心は、それほどまでに強いのか。

「--ふふ、まぁいい」
香奈は呟いて笑みを浮かべる。

「この手で、大事な彼氏の命、奪ってあげる・・・
 ふふふふふふふ♡」

邪悪な笑みを浮かべて、香奈は、道生の映るモニターを見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---いやぁ、昨日も夜更かししちゃってさ~」

今日は、高校に登校していた。
クラスメイトの良治の他愛ない話をを聞きながらも、
道生はオーンのことを考えていた。

何故、香奈は自分を殺さなかったのだろう。
完全にオーンに乗っ取られているはずの香奈が、
なぜ、あのとき自分を見逃したのだろう。

「なぁ・・・」
上の空の道生を見て、良治は呟いた。

「え?」
道生が咄嗟に返事をすると、
良治が言う。

「--お前”何と戦ってるんだ?”」
良治の目は真剣だった。

「---は、、え?な、何のことだよ・・・」
道生が言うと、いつもお調子者でふざけた感じの
良治は真剣なまなざしで道生を見つめた。

「”オーン”って言ってただろ?
 麗香ちゃんを乗っ取ったやつら・・・!」
良治の言葉に道生は慌てた。

オーンとの戦いに、みんなを巻き込むわけにはいかない。

「--し、知らないよ。俺はその日、休んでたんだし」
道生はそう言って、良治を置いて、足早に教室へと向かった。

一人残された良治は呟く。
「--道生・・・お前は・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

とある女子大生が、
帰宅して、何かの準備を始めていた。

「--さっ、今日も配信がんばろっ!」

彼女は現役女子大生で実況動画や、日常的な動画を
配信し、その可愛らしい容姿などから人気者となった
ユーチューバー・マドカ。

バーチャルユーチューバーが流行する中、
彼女は素顔で、人気者となったのだった。

衣装を着替えて、
配信の準備をする彼女。

その背後にーー
オーンが居た。

”オマエノカラダ・・・カリルゾ”

「---えっ!?」
彼女が振り返ると同時に、
彼女の身体はビクンと激しく痙攣した。

「あ・・・あぁあ・・・」
床で苦しむマドカ。

そしてーー
ゆっくりとマドカは立ち上がった。

「ふふふ・・・ファンの皆に”お願い”しなくちゃ♡」
その笑みは、歪んでいたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後、
アリサから呼び出しを受けて、
アリサがアジトにしている山奥の小屋へと道生はやってきた。

「--あ、いらっしゃい」
アリサが微笑む。

モデルのような綺麗な足を曝け出した
ショートパンツ姿だった。
冬だけど、部屋の中は暖かい。

「--どうぞ」
アリサが飲み物を出してくれる。

道生が、アリサの家に来るのは数回目だ。
重要なやり取りの時だけ、アリサは道生を家に呼ぶ。

「・・・・・」
道生はこの家に来るたびに思う。

通信機や謎の機械が置かれている家。
綺麗に整理はされているけれど、
”女子大生としての生活”がまるで見えてこない。

まるで、”オーンへの復讐”
それだけに囚われているかのような、
そんな家だ。

「あなたに調べて欲しいって言われたこと・・・
 調べたわ」

アリサが書類を出しながら言う。

道生が依頼していたのは、
”政府がオーンを隠そうとする理由”

アリサからもらった書類に、道生は目を通した。

「---そっか」
道生は呟く。

アリサが口を開いた。

「今の総理大臣や、政府の偉い人たちは、
 娘さんや、妻、身近な女性をオーンに憑依されて
 奪われているの。

 言いなりにならないと、こいつの命はない、って。
 だからね・・・
 政府がオーンを隠ぺいしようとするのは」

アリサの言葉に道生は、頭を抱えた。

人は誰だって、身近な女性が奪われれば
抵抗できないだろうー。

政府のお偉いさんたちも、
身近な人間を人質に、しかも、憑依されて奪われていてはー

道生は、彼女の香奈の顔を思い浮かべるー。
歪みきった香奈の笑みー。
また、元の優しい香奈を取り戻すことが、できるのだろうかー。

「--それと・・・」
アリサが険しい表情で、スマホを差し出した。

そこには、
”現役女子大生ユーチューバー”である”マドカ”の
動画が映し出されていた。

「これは?」
道生も、この子の事は知っている。
顔だしでゲーム実況や、日常的な動画をUPしている人気の子で
その可愛らしい容姿と、面白おかしいトークが人気の子だ。

「いいから、動画を見て」
アリサに促されて、道生は動画を再生した。

アイドル風衣装のマドカが姿を現して、
可愛らしく手を振るー。

「--みんな、元気?マドカだよ!
 今日はマドカからお願いがあるの。

 実はね、マドカに嫌がらせをしてくる人がいるの。
 お願い!みんな、わたしを助けて!」

マドカが泣きそうな目をしながら、
とある人物の顔写真を出した。

それはーー
道生の写真だった。

「お願いみんな!
 マドカを助けて!
 お願い、こいつを、殺してー」

マドカが言う。

「こいつを殺してくれたら、 
 マドカ、サービスしちゃう!うふっ♡」
スカートを少しだけめくって微笑むマドカ。

動画はそこで終了した。

「・・・・・オーンか」
道生が言うと、アリサはうなずいた。

「その子は、そんな過激な発言をしたりする子じゃないわ。
 オーンに憑依されたのね。
 とにかく気を付けて」

アリサの言葉に道生はうなずく。

そして、飲み物を飲み終えると、
道生は「じゃあ、そろそろ行くよ」と言って
玄関先に足を運んだ。

そして・・・

「あのさ・・・」
アリサの方を振り向く。

「いつも助けてくれて感謝してるんだけど・・・
 けどさ・・・
 この覆面ライダーの力とか、
 オーンの情報とか・・・
 いったいどこから・・・?」

道生は思う。
アリサは半年間、ずっと協力してくれた

敵意は無い。

けれどー
アリサの技術や情報は、どこからー。

「・・・・・・それは」
アリサは口を閉ざす。

「--俺さ・・・君が無理してないか心配なんだ。
 君はどうしてこんなに・・・

 この部屋だってそうだよ!
 君はオーンを倒すことしか考えていない。
 人生の全てをそれに捧げているようなー」

そこまで言うと、アリサが言葉を遮った。

「--ごめん。今は言えない。
 でも・・・時が来たら、ちゃんと話をするから」

アリサは悲しそうな表情で道生を見た。

”なんて悲しい目をしているんだろう”

道生はそう思った。

ふと、アリサの机の上に、アリサと一緒に
笑顔で映る少女の写真を見つけたー。

「・・・・わかった。変なこと聞いてごめん」

これ以上、詮索するべきではない。
道生はそう思って、そのままアリサの家を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

外に出ると、
男たちに尾行されているのに気付いた。

「おい!あいつがマドカちゃんの言っていた・・・」
「でも殺すって・・・?マジかな?」

男たちのひそひそ声が聞こえている。

「・・・・」
道生は思う。

憑依された美少女ユーチューバーにたきつけられて
やってきた者たちだろう、と。

ファンの中には過激な人間もいる。
そういった人間を焚き付けて、
道生を抹殺するー

それが、憑依されたマドカの狙いなのだろう。

だが、一般人を傷つけるわけにはいかない。

「---逃げるか」
道生は走った。

相手は一般人。
覆面ライダーの力を得て、身体能力の強化された
道生の敵ではない。

すぐに、ファンたちから姿を隠すことに成功した。

「---・・・
 一般人を攻撃するわけにはいかないからな・・・。

 アリサ、マドカの居場所を突き止められるか?」

道生が端末に向かって話しかけると、
アリサは”うん、わかった”とだけ返事をした。

少し時間がかかるらしい。

道生は、その日、
家に帰らず、過激なファンたちから逃げ続けた。

夜―。
マドカは苛立っていた。

「--まだアイツは逃げてるの!」
マドカが髪の毛をイラついた様子で掻き毟っている。

マドカに憑依しているオーンは
人間のことをあまり深く知らなかった。

だからー
焚き付ければすぐに道生を始末できると思っていたのだ。

「くそっ!使えないやつらめ!」
マドカが壁を思い切り蹴り飛ばして、
再び動画の撮影を始めた。

ライブ配信が開始されるー

マドカは微笑んだ。

「-ねぇ、みんな。
 まだ、あの男を殺せてないの?
 殺せないなら、わたしのところに連れて来るだけでもいいから、
 早くしてくれるかな?」

顔は笑っている。
けれども、マドカは露骨にイラついていた。

「--あぁ、もう!
 マドカ、急いでるの。
 みんな、分かる?

 ファンなら、わたしの言うこと、すぐに聞きなさいよ!
 ほら、わたしの胸でもなんでも見せてあげるから!
 いい?これ以上わたしを待たせないで!」

それだけ言うと、マドカは配信を停止した。

ファンたちの間で動揺が広がる。
ごく一部の過激なファンを除いて、
マドカの言動についていけずに、ネット上では
様々な憶測が広がった。

マドカのツイッターや動画へのコメントは
次第に炎上し始めていた。

「----・・・」
道生も、その配信を隠れながら見ていた。

オーンの中には、人間社会に上手く溶け込めずに
自滅するものもいる。

今回の、マドカに憑依したオーンはそれだろう。

奴等が異次元から現れて1年ー。
人間の社会をよく知っているものもいれば、
そうでないものもいる。

そしてー
道生は過激なファンから逃げ切った。

朝が訪れるー。

マドカが再び配信を開始した。

「--ねぇ、いつまで待たせるのよ!
 使えねーやつらだな!
 早く、アイツを捕まえて来いって言ってるの!」

マドカが、乱れきった風貌で、
怒鳴り声をあげる。

動画に対するコメントは完全に炎上していた。

「--マドカちゃんどうしたのって・・・?
 うっせぇんだよ!
 いいからテメェら早くアイツを捕まえてこいよ!」

マドカが動画に対してぶち切れている。

彼女がこれまで積み上げてきたものは、
オーンによって壊されてしまった。

今や動画には低評価が噴出し、
ツイッターは凍結されてしまった。

「--くっそ・・・
 ホラ、みたいんだろ?わたしの身体!」

マドカが配信中に服を脱いで、
身体を曝け出した。

「--見せてやるよ!ホラ!見ろよ!」

そして、マドカは言う。

「--ほら、わたしの身体を見たら
 早くあの男を見つけてこいよ!」

マドカは、カメラにグラスを投げつけて、
そこで動画は終了した。

動画を見終えた道生に、アリサから連絡が入った。

”マドカの居場所、分かったわ”

アリサから、住所が送信されてきた。

道生はうなずいて、そこに向かった。

「--くそっ!ふざけやがって」
マドカは自宅で、昨夜購入してきた酒を飲みまくっていた。

飲み終えた酒ビンを壁に叩きつける。

「はぁ・・・はぁ・・・
 このままじゃ、香奈様に・・・」

オーンは、憑依した人間の身体で呼び合うのが
通例になっていた。

元々、オーンたちに個体ごとの名前は存在しない。

「---見つけたぞ!」

「--!?」

マドカが振り返ると、そこには
覆面ライダーが居た。

「--貴様!」
マドカが憎しみを露わにして叫ぶ。

「--純粋な子を弄びやがって!」
覆面ライダーがベルトを発光させると、マドカはそれを
バック転して回避した。

包丁を手に襲い掛かってくるマドカ。

「死ね!」
叫ぶマドカを抑えながら、覆面ライダーは
「ごめん!」と言いながら、マドカを投げ飛ばす。

「ぐあぁっ!」
マドカが痛そうに悲痛な叫びをあげる。

その隙にベルトから光を放ち、
マドカの身体からオーンをあぶり出した。

「ぎぃぃぃぃぃぃっ!」
奇声をあげながら逃げようとするオーンに、
覆面ライダーは、強烈なパンチをお見舞いした。

オーンの本体は脆弱だ。
断末魔をあげながら、マドカに憑依していたオーンは消滅した。

「-----」

倒れているマドカを見つめる覆面ライダー。
可愛らしい寝顔で、気絶しているマドカ。

「---何て事を・・・」
覆面ライダーは道生の姿に戻り、
マドカの部屋のパソコンを見つめた。

動画は完全に炎上していたー。

もう、マドカはユーチューバーとして活動できないだろう。

恐らく、政府はこの件を隠ぺいするから、
マドカが殺人予告などで逮捕されることはない。
けれども、彼女の人生は壊されてしまった。

「---オーンめ・・・俺が必ず・・・」

そう呟いて、道生は、マドカの部屋を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

駅ビルの壁に設置されたモニターでは
クリスマスのCMが流れている。

それを見つめる道生は
切なそうな表情を浮かべた。

「--香奈・・・
 俺、今でも、クリスマス、楽しみにしてるから・・・」

あと2週間ー。
クリスマスの日までに、香奈を取り戻せるのだろうかー。

そんな風に思いながら、道生は寂しそうに歩き始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「くそっ!」

オーンのアジトでは香奈が不機嫌に叫んでいた。

また、道生の始末に失敗した。

香奈は、オーンのシンボルマークを見つめる。
大首領からの通信はない。

「--私の邪魔ばっかりして・・・」
香奈がイライラした様子で、唇を噛みしめた。

「---許さない・・・」
道生に対する憎しみは、さらに、膨れ上がっていた。

そんな香奈の様子を”大首領”は、
別の場所から監視していた。

大首領は笑うー

モニターには
幹部の香奈や、覆面ライダーの道生が
映し出されている。

「--憎め・・・」
大首領はそう呟くと、不気味にほほ笑んだ・・・。

④へ続く

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予告

電車で通学中の道生は、
電車に乗っていた女子高生に”痴漢”扱いされてしまうー

身に覚えのない濡れ衣。

しかし、周囲の女性たちは、一斉に声をあげた。

彼女たちは全員、オーンに憑依されていた。
指名手配される道生。

真面目な新人婦警に憑依したオーンの執拗な追跡が始まるー。

そして、道生をサポートする謎の女性・アリサの
真意が明らかに・・・?

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コメント

覆面ライダーは③で一旦終了します!
④~⑥は来週か、再来週から開始します!

内容は頭の中で完成しているのですが、
他の作品を読みたい方もいらっしゃると思うので
一旦間を開けますー!

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憑依<覆面ライダー>

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