憑依された彼女と、彼氏は対峙した。
自分のプレゼントによって、彼女が支配されてしまった。
その事実を知り、苦しむ彼氏をあざ笑うかのように、古の大悪党は
運命を弄ぶー。
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「し、、静香…どうしちゃったんだよ!」
幸人が叫ぶと、
静香はリングを指差しながら言った。
「くくく…俺はお前の知るこの女じゃねぇ!」
静香の乱暴な口調を聞くのは初めてだ。
幸人は、そこにも戸惑っていた。
「--なんだって…?」
幸人が、困り果てた様子で言うと、
静香は続けた。
「俺はな・・・3000年前、このリングに封印された
悪党さ…。
お前がこの女に、このリングをプレゼントしてくれたおかげで、
俺はこいつを宿主に、現世に蘇えることができたってわけさ!」
静香が得意気に、堂々とした様子で話す。
「-う、、嘘だ・・・!嘘だ!」
幸人が現実を受け入れられずに言うと、
静香はバカにしたように笑う。
「---よく見たらこの女、可愛いよな。
俺の時代にもここまで可愛い女は居なかった。
どうだ?この女の胸は。見たことあるか?」
服をはだけさせたまま、
下着の上から胸を触る静香。
「--や、やめろ!静香に触れるな!」
幸人が怒りを露にする。
「--ふふ、興奮でゾクゾクしてきたー!
おい、お前。この女の喘ぎ声、聞きたいか?
今の俺ならこいつを死ぬほど喘がすことだって
できるんだぜ?
彼女のえっちな声、聞きたいだろぉ?」
静香が舌を出して挑発するように、唇を舐めた。
「--やめろって言ってるんだ!」
幸人が言うと、静香はしらけた顔で幸人を見つめる。
「静香を返せ!」
幸人が、怒りに拳を震わせながら言うと、
静香が微笑んだ。
「-ーーー」
静香のリングが光り、静香の表情がいつものように
おだやかになる。
「--あ、、幸人」
静香がボーっとした様子で言う。
「し、静香なのか?」
幸人が問いかけると、
静香は不思議そうに頷いた。
だが、何かがおかしい。
服をはだけさせていることを、全く気にしていない。
「--し、静香!そのネックレスを今すぐ外せ!」
幸人が叫ぶ。
「ど、どうして?これは幸人がくれた
わたしの大切なもの!
絶対に外さない!」
皮膚に食い込んでいることも、気にも留めない。
「--静香!外せ!頼む!」
幸人が叫ぶ。
「--外さないって言ってるでしょ!」
静香が大声で反論した。
古の大悪党に静香は、半分洗脳されている。
だからー、
リングを何があっても外さない。
「--静香!!!!」
幸人が大声で叫ぶ。
この思いが届いて欲しい。
その一心で。
けれどー
思いは届かなかった。
リングが再び光り、
静香が邪悪な笑みを浮かべた。
「--くくくくく…静香は俺のものだ!」
静香が両手を広げて大笑いする。
「貴様ぁ!」
幸人は怒り狂って静香に突進した。
しかし、静香はその場でバック転をして、突進をかわすと、
幸人を壁に叩きつけて、押さえ込んだ。
「---俺にはむかうなんて、笑わせてくれる」
静香が、鼻で笑う。
「し…静香…、こんなやつに負けるんじゃねぇ・・・」
幸人は静香に呼びかけた。
「ふふふ・・・♡ 無駄無駄」
静香がほほ笑む。
リングがさらに静香に深く突き刺さり、
静香の体から出血している。
「--おい!貴様!」
「--もう、この女は、俺のものだって言っただろ。
あぁ…それとも幸人、
わたし風に喋った方が興奮するかな?
ふふふ♡」
静香の口調で話し始める古の大悪党。
「---うふふふ♡
聴きたいでしょ?
わたしの喘ぐ声」
そう言うと、静香は胸をわしづかみにして、
色っぽい声を出し始めた。
「うふぅ♡ この女・・・すげぇや♡
ちょっと刺激しただけで…
あぁん♡ すっごい…♡」
静香が顔を真っ赤にして、
飢えた表情で声をあげている。
「やめろやめろやめろ!
俺はそんな静香、見たくない!」
幸人が叫ぶと、
静香はさらに声をあげた。
「あぁ…♡ 幸人だっけ?
あなたのこと、わたし、大好きだったみたい うふぅ♡
あぁん♡ あなたのこと、想像すると、
すっごい興奮する♡
からだが、あなたのこと♡ だいすきみたい♡
うふふふふふふ♡ ふふふふふふっ♡」
静香の淫らな行為に、幸人は耐え切れず、
静香を取り押さえようとした。
「---邪魔しないで!」
静香はそう言うと、幸人を押し倒した。
そして、そのまま、幸人の顔を太ももで
押しつぶした。
「ぐあっ!」
静香の太ももが顔の上に乗っかっている。
「---ふふふふ♡
どう、彼女であるこのわたしの
太ももの下敷きにされた気分は?
え??」
静香が笑いながら言う。
「くっ・・・くそっ…目を覚ませ…」
幸人が言うと、
静香は脚に力を込めて、幸人の顔を
太ももで力強く押し込んだ。
「ぐあああああああっ!」
こんな状況でもーー
太ももに押しつぶされているという状態に
興奮してしまうことを、幸人は悔しく思いながら
歯を食いしばった。
「ほらぁ!」
静香が足をどけて、今度は、胸で幸人の顔を押しつぶした。
「ぐがぁ…!」
興奮と屈辱。
幸人は怒りに震えていた。
胸で幸人の顔を押しつぶしていく静香
「あははははははっ♡
幸人~!わたしの胸に押しつぶされる気分はどう?
嬉しい?興奮しちゃうでしょ?
うふふふふふふふ、あはははははははっ♡」
静香の言うとおり、
幸人は興奮していた。
こんなやつ、静香じゃないと、分かっているのに。
それでも興奮してしまう、自分を憎いと思いながらー
「--ふざけるなっ!」
幸人は力を振り絞って、静香を押し返した。
押されて幸人から離れる静香。
「---そのリングだな!
そのリングを外せば静香は!」
幸人が、静香の胸元のrングを引きはがそうと、静香に近づいて
リングをつかむ。
皮膚に食い込んでいる部分からは血が流れている。
「----触るんじゃねぇ!ゴキブリが!」
静香はそう叫ぶと、
幸人に強烈な蹴りを喰らわせた。
「調子に乗るなよ!
俺にとってお前ら人間はゴキブリだ!」
静香がそう言うと、見下すようにして幸人を見た。
「--くそっ…静香を返せ…!
静香が何をしたってんだ…!」
幸人がそう言うと、
静香は、服を整えながら笑う。
「--お前ら、
自分の食糧にするために動物を平気で
料理するよな?
家に入ったゴキブリを平気で始末するよな?
あいつらが何をした?
何もしてねぇだろ。
それと同じさ」
静香は髪を結びながら不気味にほほ笑む。
「--虫を始末するときに、罪悪感を感じるのか?
豚肉喰ってるときに豚さんごめんなさいと思ってるのか?
思ってねぇだろ!
俺も同じさ。
この女の体を道具として使うことに
罪悪感なんてねぇんだよ!
じゃあな!幸人!ひゃはははははは!」
静香はそのまま笑いながらどこかへ出かけで行った。
「待てー!」
幸人も静香の家から飛び出す。
”なぜ、自分は人形にされずに見逃されたのか”
少しだけ疑問に思いながらも、幸人は走った。
そこにーー
”ネックレスを販売した”老婆が居た。
「---おやおや…可愛そうに…」
ローブをかぶった、シワの目立つ顔立ちの老婆。
「--貴様!あのリングを俺に売ったのは…」
こいつは、古の大悪党が封印されていることを知りながら俺に
リングを売ったんだ!幸人はそう思った。
「--そう。どう?生き地獄に落とされた気分は?」
老婆の声に聞き覚えがある。
幸人はハッとして顔をあげた。
「-----ふふふ」
クラスメイトの変装好きの女子―暁美の顔がそこにはあった。
ローブと、メイクで、老婆だと思い込んでいた。
「あ、藍本さん…」
静香の浮気疑惑を語ってくれた暁美ー。
その暁美がどうして?
「---幸人くんさぁ?
わたしが去年あげたバレンタインチョコ、捨てたんだってね?」
幸人は思い出す
去年、暁美からもらったバレンタインチョコを捨てたことを。
あまりにも不気味なチョコだったので、捨てたのだ。
「クラスの男子と、”藍本さんのチョコ捨てちゃったよ”って
笑い話にしてたよね?」
老婆メイクの暁美が言う。
「---そ、それは…」
確かにそんな話をした。
暁美の義理チョコをー
「一生懸命つくったのに…!
幸人くんへの愛をこめて作ったのに…!」
幸人はハッとする。
あれは義理チョコなどではなくーー
「ーーー許さない」
暁美の目に憎しみが宿っている。
「--わたしの家にはね、
先祖代々伝わるリングがあったの。
それが、幸人くんにあげたあのリング。
わたしの遠いご先祖様が、古の大悪党を
封印したリング。
ゼッタイに触るなって言われてたんだけど…
幸人くんへの復讐のために使うことにしたの」
暁美が笑う。
「ふ…ふざけるな!静香は何も悪くない!
チョコのことで恨むなら俺を…!」
そう言うと、暁美が呪文のように呟き始めた。
「静香静香静香静香静香静香静香…!
どんだけあの女のこと好きなのよ!
わたしをバカにして…!」
怒り狂った様子で言う暁美は
そのまま立ち去ろうとした。
「--待て!」
幸人が叫ぶ。
「ーーー」
暁美は振り返って冷たい声で言った。
「--ー地獄に堕ちろ」
そう言うと、老婆メイクの暁美はそのまま立ち去って行った。
「---そ、、そんな…」
静香を救うことは…
できない…
そう直感した。
幸人はその場に泣き崩れた。
もう、どうすることもできないー。
自分は、無力だー。
生き地獄に落とされた幸人は
リングを静香にプレゼントしたことを”後悔”したー。
けれども、もう、遅い…。
おわり
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コメント
昨日書いた②で、
幸人の名前を間違えて表記していました(汗)
既に修正済みです!
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