<憑依>リングの呪怨②~違和感~

彼女にプレゼントしたネックレスには
古の大悪党の魂が封印されていた。

ネックレスを身に付けた彼女は、
大悪党に憑依されてしまい、支配されてしまう。

やがて、彼女の異変に気付き始めるものの…

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「お断りしますー」

授業中。
社会科の先生に、ネックレスを指摘された
静香は、穏やかに、けれども相手を威圧する口調で答えた。

「滝口!お前、先生の言うことが聞けないのか!」
社会科の先生は、怒りで顔を赤らめて言う。

「ーーーこれはわたしの大切なものなんです。
 先生の指示でも、聞くことはできません」
静香は苛立ちをこめてそう言った。

優等生で通っている静香の突然の反抗的な態度に、
周囲の生徒も、社会科の先生も戸惑いを隠せなかった。

「---滝口!何だその態度は!」
社会科の先生はさらに苛立つ。

「---ふん」
静香が鼻で先生を笑った。

今の静香はー、
古の大悪党の意思に従って行動している。
リングの中に宿る、古の大悪党によって、
“静香本人の意思”でリングを外すことを
拒んでいる。

”このリングは何よりも大切なもの”と
記憶を書き換えられてしまっているからー。

「---お前!」
先生は強引にネックレスに触れようとした。

しかしー
静香が勢いよく先生の手をつかみ、
先生を睨んだ。

「---触るな!ゴキブリが!」
静香が荒い口調で言った。

静香に任せておいては、ネックレスを
引き剥がされる可能性があると考えた
古の大悪党が、静香の身体を完全に支配して、
先生の腕をつかんだのだ。

「---き、貴様!」
先生がさらに顔を赤らめる。

静香が先生の腕をへし折ってやろうと考えて
不気味な笑みを浮かべたそのときだったー。

「---やめてくれよ…」
彼氏の幸人が机から立ち上がって言った。

「俺のプレゼント…
 そんなに大事にしてくれるのは嬉しいけどさ・・・
 でも、先生の言うことは聞かないとさ・・・」

幸人の言葉に、静香は先生の腕をつかみながら、
少しだけ笑った。

「ふぅん…、ま、いいさ。」
静香はそういうと、先生から手を離して、
苛立った様子で座席についた。

「--彼氏に免じて、許してやるよ」
偉そうな態度で先生にそう言うと、
社会科の先生は何も言わなくなってしまった。

“今、あのまま力を入れられていたら
 自分の腕は・・・”

そう思った先生は、恐怖すら感じていた。

一方、幸人も、静香の態度に違和感を感じるのだった…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。

「そろそろ帰るか」
社会科の先生が帰ろうとしたそのとき、
人の気配を感じた。

「くくく…」
背後を振り返ると、そこには静香が居た。

制服の上着をはだけさせ、胸に突き刺さった
ネックレスを露にさせている。

「--た、滝口!お前何を…!」
社会科の先生が驚いた表情で言う。

「ひゃはははははは!」
静香が、汚らしい笑い声をあげた。

「昼間はよくも侮辱してくれたなぁ。
 この”俺様”を」

静香とは思えない口調。
静香とは思えない表情。

社会科の先生は後ずさりながら、
怯えた様子で声をあげた。

「お…お前は、、、誰だ!」
社会科の先生の問いかけに
静香は笑う。

「俺か?くくく…
 お前が知る必要はないぜ!」

可愛らしい声でそういうと、
静香は、リングを光らせたー。
そしてーー
そこには”人形”になった社会科の先生が
残されていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

社会科の宗田先生が無断欠勤をしたらしい。

そのお知らせを聞いている間、
静香は不気味に笑みを浮かべていた。

「---」
幸人は、そんな静香の様子を見ながら、
さらに不安を募らせた。

昼休み。
幸人は居ても立ってもいられず、静香に声をかけた。

「あのさ…静香。
 最近何かあったのか?
 なんだか…ちょっとイライラしてるように見えるけど?」

幸人の質問に、静香は笑いながら答えた。

「---別に、何もないよ」

いつもの笑顔。
けれど、何かがおかしい。

いくら彼氏からのプレゼントとは言え、
ネックレスを学校でも肌身離さずに身に着けていて、
先生に指摘されても、それを外すことなく、
先生にはむかうなんて、どう考えてもおかしい。

まるで、静香が静香でないような。、そんな嫌な感じさえする。

それにーー
ネックレスを何故、服の下に隠すようにして
身に着けているのか。

それもよく分からない。
学校だからか?
いや、それなら最初から外して来ればいい…。

「---静香。俺がプレゼントしたネックレス…
 ずっとつけてくれてるのは嬉しいんだけどさ…
 学校ではやっぱりさ、外したほうがいいよ」

幸人が言うと、静香の表情から笑みが消えた。

「外さない」
と愛想のない声で静香は言った。

「--な、何でだよ!
 昨日みたいなことがあると、俺も悲しいからさ!
 静香、頼むから、学校では…」

「--外さないって言ってるでしょ」
静香が怒りっぽい口調で言った。

「--静香」

幸人はますます不安になった。

どうして、静香はそんなに…

「--静香!頼むから!」
幸人が静香の首の部分に手を伸ばし、
ネックレスを無理やり外させようとした。

「---触るな!ゴキブリが!」
静香が乱暴な口調で幸人の手をはねのけた。

「----!!」
幸人は驚いて手を引いた。

「---あ、ごめん…」
静香がハッとしたような表情でつぶやく。

「---お、、、俺のほうこそ…ごめん」
幸人はそれ以上何も言えなかった。

静香のことを怖いとすら思ってしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

部活動に熱心だった静香は、
最近部活に出ていないらしい。

今日も足早に静香は帰って行ってしまった。

幸人とも、一緒に帰ることは少なくなった。

何故なのか。
静香にどんな心境の変化があったというのか。

「---浮かない顔してるね?」

クラスメイトの暁美(さとみ)が言う。

「--え?あ、あぁ…」

背後から突然声をかけられた幸人は戸惑って返事をした。

暁美は、変装が趣味の少し変わった女子生徒だ。
昨年のハロウィンの日も、暁美の友人たちは
振り回されっぱなしで大変だったのだとか。

1年生のバレンタインデーのとき、幸人は暁美から
義理チョコを貰ったことがあるものの、
とても奇抜なチョコで、血のような赤いエキスがかけられているチョコ
だった。あまりの不気味さに、幸人は食べずに捨てたぐらいだった。

「ーーー静香ちゃん、浮気してるんじゃない?」
暁美が言う。

「--浮気?」
幸人が問い返すと、暁美は続けた。

「そう、浮気。
 考えてごらん。
 3つ、怪しい点があるよ」

暁美はそう言って指を立てながら得意げに
説明し始めた。

「--最近早く帰るのはどうして?
 静香が大好きだった部活までサボって。
 理由はひとつ、男よ。
 それも、幸人くん以外のね。」

暁美の言葉に、幸人は少しだけ疑心暗鬼になる。

「二つ目の理由ー。
 最近イライラしているように見えるのは?
 それは、あなたと新しい彼氏の間で葛藤しているから。」

「そして3つめ。
 ネックレスを隠しているのは?
 それは、幸人くんがあげたネックレスをしているんじゃなくて、
 浮気相手からもらったネックレスをしているから」

暁美の説明を聞き終えて
幸人は不安を募らせた。

「一度、確かめた方がいいんじゃない?」

そう言われた幸人は、
不安になって、静香の家を訪ねてみることにした。

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静香は自宅で不気味にほほ笑んでいた。

”人形”が8体ならんでいる。

母親ー
父親ー
社会科の宗田先生ー
異変に気付いた近所のおばさんー

静香によって、
いや、古の大悪党にとって邪魔な人間が
次々と人形にされていた。

制服姿のまま、静香はソファーに偉そうに
腰かけ、ほほ笑んだ。

「ーーまだ力が完全に戻っていない」
静香は右手を見つめながら言う。

制服のボタンを開けて、
ネックレスの部分を外にさらけだす。

皮膚に食い込んだネックレスは
もう、簡単に取り外すことはできない。

「----ゴキブリどもが」
静香は呟く。

リングに封印された彼は、3000年の昔、
古代の王国で、大悪党と呼ばれる盗賊だった。

彼は、生まれつき魔力を持っており、
禁忌の子として弾圧されたー

だが、彼は生き延びた。
いくら、弾圧されても、折れることなく、
強く、生き延びた。

そしてー
彼はいつしか、魔力を持たない人を
”ゴキブリ”だと、見下すようになった。

悪事の限りを尽した。

だがー
当時の英雄と呼ばれる人物に、彼は追い詰められた。
彼の強大な魔力に、英雄も完全に消し去ることはできず、
やむを得ず、神器とされていたリングに大悪党である彼を
封印したー。

「---忌々しいリングだぜ」
静香は微笑む。

自分はこの中で3000年も眠っていた。

だが、こうして目覚めることができた。

自分を弾圧した人間たちへの復讐ー。
自分の魔力がこの女の身体に完全に
順応したとき、彼は、人間たちを始末するつもりで居た。

「ククク…楽しみだぜ」
静香はおもむろに用意してあった
ステーキを乱暴に食べ始めた。

大悪党の魂は、一旦リングの中で休むことにした。

大悪党に操られている静香は、
そのままうつろな目でステーキを食べ続けている

「ーーーーー静香!」
リビングの入り口から声がした。

「---あれ…」
うつろな目のまま、
ステーキを食べながら
幸人の方を見る静香。

「--幸人…どうしてここに?」
静香がうつろな目のまま言う。

「--な、なんだよこれ・・・」

悪趣味な人形たちを見つけて、幸人が戸惑う。
しかもー
その人形の中には、社会科の宗田先生とよく似た人形もあった

「--し、、静香…な、何だよこれ・・・」
幸人が言うと、
静香は「えっ…えっと…」と考え込む。

そしてーー

静香は突然不気味に笑い始めた。

「--そ、、そのネックレス…」

幸人は静香の皮膚にネックレスが食い込んでいることに
気づいた。

「ひゃはははははははははは!」
静香が突然狂ったように笑い出した。

「ーーちょろちょろしやがって!
 学校でも、プライベートでも…

 ウゼェ ゴキブリだな!」

静香が机を蹴り飛ばして立ち上がった。

「---な、、、」
幸人は人形のうちの2体を見つめて、恐怖したー。

これはーー
静香の母親と父親…!

以前、家に遊びに来たときに会ったことがある。

「---し、静香…ご両親は?」
幸人が聞くと、静香は笑った。

「あ?そこにいるよ」
静香が人形の方を指さす。

「--な、、何だって?
 ど、どうして…こんなことを?」

そう聞かれた静香は笑った。

「ーー俺が、俺の身体で何しようが、
 俺の勝手だろうが!」

静香の可愛らしくー
けれども鋭い声が響き渡ったー

③へ続く

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リングの魂に憑依された静香を前にした
幸人はどうするのでしょうか!

続きは明日デス。

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