上司の不当な扱いから、
小さいころから封印してきた力を使ってしまった男ー。
彼は、触れている間に、相手に自分の記憶や思考を送り込み、
最終的に自分そのものにしてしまう力に病みつきになり、
溺れていく…。
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「うへへへへへ…最高だぜ…」
ペロペロと何かを舐める音が部屋に響き渡っている。
”舐められている”のは、
女子大生の佳音。
自分の太ももを舐めまわす男を見ながら
ドヤ顔でほほ笑んでいる。
「ふふふ…気持ちいいか?
興奮するか?」
佳音は男に男言葉で問いかける。
「あぁ…たまんねぇよ…」
彼女の太ももを舐めていた男・正治は笑う。
「だろうな…俺も興奮してきて、この体、
濡れてきちまった…ふふふ」
佳音が言う。
女子大生の佳音は、彼氏とデート中に
正治によって、染め上げられて、正治そのものになってしまった。
正治と記憶を共有し、正治と同じ人格を持つ人間に
なってしまったのだ。
「---なぁ…せっかく可愛い子になったんだから、
女らしくしてほしいな」
正治が言うと、
佳音は微笑んだ。
「うん…そうだね!わたしもその方が興奮する!」
彼女のショートパンツには既にシミが出来上がっていた。
あまりの興奮に、濡れているようだ。
「すげぇよこの力…」
正治は興奮しきった様子で呟く。
「うん!本当にすごい!」
佳音がほほ笑む。
「んはぁ…触られるって気持ちいい…♡」
佳音が興奮しきった様子で言うと、
「あぁ、俺もだぜ・・・触るって気持ちいい!」
と正治が笑った。
そしてー
二人は”同じ笑み”を浮かべて
抱き合い、猛烈な勢いでキスを始めた「
「あぁ…あっ…あぁぁあ最高だぁ」
正治が帰すをしながら言うと、
佳音も「んふぅ…♪ あっ…♪ あっ…♪」と
甘い声を出しながら微笑んでいる。
「そうだ…さっきの彼氏にこの風景を送ってやろうぜ!」
本来の佳音なら、絶対にしたく無いであろう行為。
しかし、今の佳音は、既に片手で、正治と抱き合っている写真と
動画を撮影し始めていた。
「ふふ…あの彼氏が驚くのが楽しみっ!」
笑いながら腰を振り、佳音は彼氏に正治と抱き合って
キスをしている映像を送りつけた。
彼氏から反応はなくー
程なくして、LINEはブロックされた。
「うふふふふ…ブロック頂きました~!」
佳音がゲラゲラと笑う。
佳音と抱き合いながら、正治も
「うへぇ~ブロック~!頂きました~!」
と爆笑している。
彼らはー気付かなかった。
数分前に、家に、誰かが入ってきたことに。
「な…何してるの…?」
信じられないという様子で、
抱き合う正治と佳音を見ているのはーー
同居中の彼女…優だった。
「げぇっ!」
正治は慌てて、佳音を引き剥がす。
「--あ、わ、わたし、正治くんとは親戚で…」
正治と同じ思考の佳音は、すぐにいいわけを始めた。
「嘘よ!わたし、今、見てたもん!」
優が怒って言う。
「--正治。その女の人だれなの?
彼氏に写真送りつけてやるって何なの?」
優が目に涙を貯めながら言う。
「そ…それは…」
正治は、言い訳に困り、佳音のほうをみた。
だがー
同じ思考の佳音は、当然、責任逃れをしようと
目をそらしている。
「ほ、ほら、気にすんなよ。
親戚の女の子が変な彼氏に絡まれていたから
助けてあげようかなって…
はは…」
正治は適当な言い訳をした。
けれどー
優は曲がったことが大嫌いだった。
「--なんで、濡れてるんですか」
優は、佳音の濡れたショートパンツを見て、
睨むようにして言った。
「え…こ、これはその…」
佳音は困り果てた様子で、うろたえている。
”逃げたい”
正治はそう思った。
佳音とかいう女子大生の体は最高だ。
けど、だからと言って、優との関係性を
断ち切るつもりは毛頭ない。
「--じゃ、わたしはこれで…」
佳音が慌てて玄関のほうに早歩きで
向かい、そのまま家から出て行ってしまった。
「あ、おい!待てよ!」
正治が叫ぶ。
ーー当然の行動だ。
正治が逃げたいと思っているのだから、
自分そのものになった佳音が逃げても不思議ではない。
「---くそっ!」
後を追いかけようとする正治を優がつかんだ。
「ねぇ!どういうこと!?説明してよ!」
優が問い詰めるようにして言う。
「いや…ホラ、だからさっき言ったとおりで…」
正治が目を逸らしながら言うと、優は叫んだ。
「嘘よ!正治、嘘つくとき、わたしの目、見ないよね?
正治、わたしに嘘ついてる!」
優が涙をこぼしながら言う。
“浮気された”
優はそう思っているに違いない。
「だから違うって!」
正治は叫んだ。
「違わない!わたし…正治のこと、信じてたのに・・・!」
正治はだんだんと、イライラしてきた。
自分が悪いのは分かっている。
だが、優のしつこい尋問に、理不尽にもイライラ
してきていた。
「・・・お前こそ、俺のこと信じれないのかよ!
信じてくれるって信じてたのに!」
正治が叫ぶ。
優が「バカ!」と言って正治をビンタした。
ぷちん。
正治の中で、何かがキレた。
「--うるせー!」
正治の手がオレンジ色に光り、
その手を正治は、彼女である優にかざした。
「あ…あぁ…く、、苦しい…やめて・・・!」
優が泣きながら助けを求めている。
けれど、怒りに支配された正治にその声は
届かなかった。
優が痙攣し始めるー。
優が泡をふき、やがて…
「---はっ!?」
正治は我を取り戻した。
優が、その場に倒れる。
「ゆ…優!ごめん、俺…」
しかし・・・
優はニヤリと笑った。
「よぉ…”俺”」
優はそういうと、立ち上がった。
「--ちょ、ちょっと待ってくれ…!
ゆ、優、冗談はやめてくれよ!」
正治が焦って言う。
つい、染めてしまった…
でも…優には、そんなことしたくない。
「--それは俺の台詞だぜ。
まさか、優まで染めちゃうなんて・・・
へへ、でも、この体はいいよな」
優がイヤらしい笑みを浮かべながら胸を触る。
「--うっ…うあああああああ!」
正治はパニックを起こした。
大切な優がーー
”自分”になってしまった。
自分勝手で、無駄に自尊心が強い、
自分のような人間に。
慌てて正治は優に手をかざした。
「お、、おい!やめ…」
優が叫ぶ。
「--も、元に戻ってくれ!
俺が悪かった!悪かったよ!!優!!」
自分の手をこれ以上かざせば、
どうなるか分からないー。
けど、
こうするぐらいしか、優を元に戻せる可能性はなかった。
ーー優の体が激しく震えて、やがて…
「--はぁあ…」
優がため息をついた。
「---やっと、優の体を乗っ取れたぜ」
優が笑う。
「--お、、、…おい…や、やめろ…
優、お前は”俺になんか”ならなくていい!」
正治が言うと、優は笑った。
「なんだぁ…”俺の偽物”が目の前にいやがる」
優が不気味に笑う。
「--に、偽物・・・?」
正治がその不気味さに怯えながら言う。
”その力を使えば、
最初は、お前に従順になるー。
そして、さらに、お前の記憶や思考を送り込めばー
相手は染まるー。
お前と同じ思考と記憶を持った、
”もう一人のお前になる”
---さらに、染めると…
そいつは”自分が、本当の正治だ”と
思い込み始めるー
そしたらーーー”
祖父の言葉を正治は思い出した。
「--ま、待て!お、俺が正治だ!
お前は、優!優なんだ!」
正治が叫ぶ。
優は言う。
「--俺は”俺一人でいい”」と。
正治は怯えながら、
祖父の言葉の続きを思い出した。
”相手を染めすぎればー
お前を”偽物”だと思い、
偽物をーーー
全力で”排除”しようとするだろう”
「--正治は俺だぁ!」
優は、台所の包丁で襲い掛かってきた。
「や…やめろぉ~~~!」
正治は叫んだ。
そして…
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外を歩いていた佳音が、
何かを感じた。
「-----」
太ももを大胆に露出しながら、
外を堂々と歩いていた女子大生の
佳音は呟く。
「あ~あ。殺されちゃったのか。”おれ”」
オリジナルの正治はーー
死んだ。
けれど、彼女の中に送り込まれた正治は
生きているー。
正治は2人の女性の中で、
これからも生き続ける…
おわり
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コメント
ようやく「染め男」をかたちにできました!
憑依モノではありませんが、息抜きにこういうジャンルを
書いて見るのも、刺激になります!
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