男には
“人”と”人”を融合させる力があった。
男に狙われたものたちは、
たちまち”融合”させられてしまうー。
※”融合モノ”リクエストにお応えしました!
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彼はーー
小さな頃から、不思議な力を持っていた。
その力に気付いたのは、小学2年生の頃だった。
自分をいじめてくるいじめっ子の男子と、
自分をかばってくれる幼馴染の女子が居た。
ある日。
いじめっ子に、公園で追い詰められた際に、
たまたま居合わせた幼馴染のの女子が自分を
かばってくれた。
けれど、いじめっ子の暴走は止まらなかった。
自分を叩いてくるいじめっ子。
そのとき、彼は、両手をいじめっ子の男子と、
かばってくれる女子に片方ずつ伸ばした。
なぜ、そうしたのかは自分でも分からない。
すると、不思議なことに、二人が自分の右手と左手に
吸い込まれて行ったー。
唖然としながらも、両手をあわせると…
突然、両手が光りーー
気付くと、そこには、きつそうな表情の女子が一人居た。
見たこともないその少女。
少女はーー、
”いじめっ子”と”かばってくれる幼馴染”が
融合して生まれた新たな存在だったー。
彼はーー
その日、自覚した。
自分に”人と人を融合させる力”があるということをー。
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高校2年生の、野上 哲哉(のがみ てつや)は、
クラスメイトの優等生である女子・眞由美(まゆみ)を
見つめていた。
「いつも真面目だよなぁ…」
そう呟きながら思う。
授業も一生懸命だし、何もかも一生懸命な彼女。
対して…
素行不良で問題になっている女子生徒・恭子(きょうこ)の方を見る。
「---正反対だよな、あの2人…」
彼はーーー
最近、2人のことを見るたびに思う。
”あの2人を融合させたらどうなるのか”
と。
自分には、2人の人間を”融合”させる力がある。
この力は、長年封印してきた。
小学生のころ、クラスメイト2人を融合させてしまい、
大変な騒ぎとなったからだ。
結局、自分の仕業だとはばれなかったものの、
祖父にこっそり打ち明けたところ、
「その力だけは絶対に使うな」と注意された。
だからー、
哲哉はあの時以外、力を実際に人に対して使ったことはなかった。
けれどー。
2ヶ月前、その祖父が病死した。
さらにー、
哲哉は最近、失恋もしていた。
祖父の死と失恋。
この2つが重なり、哲哉はすっかり自暴自棄になっていた…
そしてーー。
哲哉は、禁忌に手を染めた。
翌日の昼休み。
空き教室に優等生の眞由美と、素行不良の恭子を呼び出したのだった。
「何よ…昼休みにあたしを呼び出して?」
「…野上くん…大事な話って?」
二人の女子生徒が不思議そうに、
哲哉に尋ねている。
哲哉は言った。
「二人って正反対だよな」
その言葉に、眞由美と恭子は顔を見合わせて、
それから気持ち悪そうに、哲哉の方を見た。
昼休みにいきなり呼び出されて
「正反対だよな」なんていわれたら無理もない
反応かもしれない。
「--そんな二人が”融合”したらどうなるかな?」
哲哉は笑みを浮かべながら、
右手を恭子に、左手を眞由美にかざした。
「---ひっ!?」
「な…か…体が動かない・・・?」
両手から光る何かが放たれて、優等生の眞由美と
素行不良の恭子の体の自由を奪った。
「--ちょ、ちょっと離しなさいよ!」
「な…なんなのこれ!?」
女子生徒2人が恐怖に満ちた目で哲哉を見る。
「---ふふふ、怖がらなくていいよ!
二人は一つになるんだ!」
そう言うと、哲哉は、両手をパンと叩き、
お祈りするようなポーズを作った。
「いっ…いやあああああ!」
二人の女子生徒の体が吸い寄せられるようにして、
近づいていき、
悲鳴を上げながら”混ざり合って”いく。
「ああああああああ…」
2つの体が、ミンチのようにぐちゃぐちゃになり、
やがて、新たなひとつの体として生まれ変わる。
「---あ…あ」
やがてーーー
変異は止まりー。
そこには、優等生の眞由美だけが残っていた。
「あ…あれ…わたし…」
眞由美が怯えた表情で言う。
「--へぇ…」
哲哉は眞由美を見ながら思う。
2人を融合させたはずなのに、
外見上の変化はなく、
眞由美だけが残った。
何を意味するのだろうー?
小学生の頃、いじめっ子と幼馴染の子を
融合させたときはー、
そのどちらでもない、きつそうな顔つきの女子が生まれたー
なのに、今回は?
「---も…もういいかな?」
眞由美の声に、哲哉はハッとして、
「あ、、あぁ・・・いいよ」と答えた。
眞由美は、そのまま空き教室の外に出て行くのだった。
「--恭子の方が消えたってことでいいのかな」
哲哉はそう呟くと、
”また別の融合”を試したくて、うずうずし始めた…。
しかし…。
後日…。
先生に小言を言われた、眞由美の様子を見ていた
哲哉は異変を感じた。
誰にでも小言を言う先生で、元々眞由美も小言を
何度か言われていたが、眞由美は一度もいやそうな
顔をしなかった。
しかし、今日は…。
先生が立ち去ったあとに、眞由美は邪悪な笑みを浮かべて
呟いた。
「---クソババア」と。
「---」
たまたま近くに居た哲哉にだけは聞こえた。
いつものように優しく微笑む眞由美ー。
そんな眞由美を見ながら哲哉は恐怖に震えた。
そして翌日…
小言を言った先生の、これ以上にないスキャンダルが
大量に学校中に貼りだされてーー
先生は、謹慎処分になった。
「--思い知ったか。クソババア」
眞由美は一人でそう呟いていた。
「---…」
哲哉はその姿を見ながら思った。
融合により、眞由美は、
表では優等生ぶって、裏では悪いことをする生徒に
なってしまったのだと…。
「---融合、すげぇじゃん」
哲哉は罪悪感を感じながらも、更なる融合を
試したくなった。
ーー哲哉は、その日から、融合狂になった。
近所のおばさんと、
大人しいクラスメイトを融合させたー。
その結果ー
シワだらけの醜い女子高生が誕生した。
クラスのイケメン男子と、美少女と称するに
ふさわしい女子生徒を融合させた。
その結果ー。
女装したら女子にしか見えない女装男子が生まれた。
道端のホームレスと
下校中の幼馴染を融合させたー。
結果ー。
下品な女子高生が生まれた。
融合させる組み合わせによって、結果は様々だった。
融合素材の2人のうちの一人の姿になり、
性格だけ変わる人も居れば、
全く別人になる人も居る。
その法則は分からない。
けれども、混ぜられて、自分の意思に反して
別の人間にさせられてしまうー
いや、自分がそうさせていることに
哲哉は興奮した。
そして、ついに、哲哉は禁断の考えに
たどり着いてしまった。
もしもーー
もしも自分が、
自分がーーー
女の子と融合したらどうなるのか?
クラスで哲哉が密かに恋心を抱いている
女子生徒、麗香(れいか)と、自分が融合
したらどうなるのか?
「いや…待て、リスクが高すぎる」
哲哉は、自分を抑えようとした。
“融合”したあと、
自分は自分で居られるのだろうか。
それとも、融合の際に自分という存在は消えてしまうのだろうか。
わからないー。
「--なぁ…」
哲哉は、幼馴染の女子生徒と、ホームレスの男性が融合して
生まれた下品な女子生徒に尋ねた。
「--お前は…誰なんだ?」
哲哉が問いかけると、
彼女は笑った。
「くひひっ、何言ってるのよ?
わたしは、わたしでしょ?」
ぼさぼさの髪。
歯磨きすらしてないことによる口臭。
はっきり言って、最悪だ。
見た目は幼馴染のあの子のままなのに、
ホームレスと融合したことによって…。
「---そっか。
じゃあ…昔の記憶はあるのか?
俺と小学生の頃に遊んだ記憶とか」
哲哉は少し後悔していた。
この、幼馴染の子とは、小学生からの付き合いなのだ。
それを、こんなにしてしまったことを。
「覚えてるヨォ~!
へへっ」
人前で鼻をほじるような女子になってしまった
この幼馴染を見ながら、哲哉は思った。
“リスクは高い”
けれどー
”融合にはロマンがある”
哲哉はーー
片思いの相手、麗香と融合する決意を固めた。
たとえ、それがどのような結果を迎えようともー。
「---あのさ」
翌日の昼休み、麗香を呼び出した哲哉は、
ついに、麗香と融合する決意を固めた。
”意思の強さ”があれば、
自分が麗香になることができる。
「---野上くん…
お話って…?」
麗香が、なかなか話をし始めない
哲哉を不審に思い、本題を促した。
「---君と、ひとつになりたい!」
哲哉はそう言うと、自分自身に手をかざして、
さらには麗香にも手をかざした。
「きゃあっ…か、体が動かな・・・」
突然の出来事に、怯える麗香。
しかし、哲哉は止まらなかった。
「ふふふふふ、ひとつになるんだ!
俺は、君と、ひとつに、なるんだ!」
そう叫んで、
いつものように、
2つの体を一つにーーーー
哲哉は麗香と一体化しながら思う。
あぁ…麗香ちゃんの全てが流れてくる…
そして、俺の全てが流れていく。
俺は哲哉でもあり、
私は、麗香でもある。
あぁ…
そしてーーー
2人が融合して生まれた新たな人間は、
目を覚ました。
「---あ…れ…俺は」
哲哉は口を開いた。
女の声ーーー?
やった…
”わたしは”哲哉のまま、
麗香ちゃんの体にーーー
・・・・・・・!!!
胸がある…
あれ…男のアレもある…
「---」
鏡で”彼女”は自分の顔を見たー。
髪は女のように長くー
髭が男のように生えー
「ーーーい…いやああああああっ!」
彼女はその場で悲鳴をあげた。
「--そういえば、ここはどこ…?
わたし…どうして、ここに…
そもそも、わたしは…???」
融合は、色々な結果を及ぼす。
その全てが上手く行くとは限らないー。
哲哉と麗香の融合は”不安定”だった。
「---わ、、わたし…
な、、何も…わからない」
心の中から、突き動かされるような不安が
彼女を支配した。
「ひっ…ひいいいいいい!!!!」
彼女はわけも分からず、
廊下を走った。
混ざり合ったすべては、
すべてを飲み込みー
彼女は、彼はー
もう、何も分からなかったーーー
おわり
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コメント
人を混ぜるまでにとどめておけば哲哉君の
運命も違ったかもしれませんね…!
コメント
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融合もいいですねえ
自分もそんな能力あったら女子高生と融合試してみたくなっちゃいます
SECRET: 0
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> 融合もいいですねえ
> 自分もそんな能力あったら女子高生と融合試してみたくなっちゃいます
コメントありがとうございますー!
試したあとにどうなるか分からないのが怖いところですネ!