42歳無職男に奇跡が起きたー。
真面目な女子高生と身体が入れ替わったのだった。
男は決意する。
この子の人生を奪ってやる、と。
一方、無職男の身体になってしまった女子高生も、
そのまま諦めるはずがなかった…。
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生徒手帳から学校を特定し、
事前にネットで調べた愛梨は、
学校登校した。
朝、女子高生の制服を着るときは
とても興奮した。
そのままヤッてしまおうかとも思ったが、
この身体はもう他人のものではない。
入れ替わるー。
すなわち、この身体が自分のものになるということ。
この子の人生をそのまま奪うつもりだったから、
滅多なことは出来ないのだ。
「--おはよ!」
背後から声がした。
友人の理紗だった。
「おう」
ついクセで変な返事をしてしまう愛梨。
「なぁにそれ?変なの!」
理紗が笑いながら、横に並ぶ。
「--あれ?何か今日、髪型変じゃない?」
理紗が言う。
「--あ?…あ、…え?そうかな?」
愛梨が言うと、
理紗は、な~んか雑な感じ!寝坊でもした?と
笑いながら話した。
「----理紗!」
背後から男の声がした。
「---え?」
理紗が振り返ると、そこには太ったみすぼらしい男が居た。
「---」
愛梨も振り返る。
そこにいたのは”元 自分の身体”だ。
「ど、どちらさまですか?」
理紗が不思議そうに尋ねる。
「---怪しい人だよ。関わらないほうがいい。
いこっ」
愛梨が言う。
入れ替わってる、なんて誰も信じることはないだろうが
万が一ということもある。
「---理紗!!!」
男がもう一度叫んだ。
「--ね、、ねぇ、話だけでも聞いたほうが…?」
理紗の言葉を無視して、愛梨はそのまま理紗を引っ張る。
「ねぇ!愛梨!」
理紗が愛梨を振り払った。
「--話だけでも、聞いたほうがいいよ」
理紗が言う。
愛梨は思わず舌打ちをしてしまう。
「愛梨…?」
不思議そうに言う理紗。
そこに、男が近づいてきた。
「ね…ねぇ、理紗!助けて…
わたし…わたしよ!愛梨よ!
信じてもらえないかもしれないけど…
この男と、身体が入れ替わっちゃったの!」
女言葉で話す男を前に、理紗は戸惑っている。
「---あ、、あの…何言ってるんですか?」
愛梨が臆病な様子で尋ねる。
「--な、何って?わたしの身体を返してよ!」
男が叫ぶ。
「---意味わかんないこと言わないで!きもい!」
愛梨が感情的になって叫ぶ。
「--ーーねぇお願い!わたしの身体返して!」
さらに男は叫ぶ。
「--いい加減にして。警察呼ぶわよ」
愛梨は、恐ろしい形相で男を睨んだ。
男は黙り込んでしまう。
そんな男はあざ笑うようにして、愛梨は理紗に
「いこっ!」とだけ告げて、早足で歩き始めた。
理紗は、困った表情をしながら、
愛梨のほうについていくのだった。
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女子高生としての学校生活は全てが新鮮だった。
トイレもそう。
スカートから流れ込む風もそう。
そしてー
体育の前の着替えの時間もそう。
「--だ、大丈夫?愛梨…」
友人の理紗が訪ねる。
愛梨はニヤニヤしながら顔を赤らめて
周囲を凝視していたのだ。
「---え、う、うん 大丈夫!
体育ってわくわくするよね…
ふふふふふ♡」
そう言いながら立ち去って行く愛梨を見ながら
理紗は不安そうに愛梨の後姿を見つめた…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
昼休み。
教室で一人さびしそうにしている
眼鏡男子の庄助(しょうすけ)に、愛梨は声をかけた。
愛梨としての記憶はない。
ただ、LINEの記録などから人間関係をわずかながら
把握していたし、
何より、愛梨に憑依した無職男、太郎は、
眼鏡男子の庄助を見て、
自分と同じ香りを感じていた。
”こいつは、モテない童貞野郎だ” とー。
「クス…」
愛梨はニヤリと笑みを浮かべて、庄助の机に近づいて行った。
「永手くん、勉強お疲れ様」
愛梨が微笑みながら声をかけると、
庄助は目を遭わせることもなく、顔を赤らめて
「う、うん…」とだけ答えた。
愛梨は、顔をわざと真横に近づけて
庄助のノートを見た。
「わぁ…すごい…永手くんって頭いいんだね!」
ノートに書かれた計算式を見て
愛梨が女らしく感心してみせる。
「--あ、、、あり、、、ありがとう」
庄助は極度の緊張状態にある。
「--わたし、頑張る男の子、大好き」
愛梨が、庄助の方を見て、ほほ笑むと、
庄助は「あ、、え、、、あ、、その…」と
言って、顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。
愛梨はさらに顔を近づけて耳打ちする。
「ねぇ、永手くん…
女の子とえっちしたことある?」
「え…え・・・」
庄助は戸惑って、顔を真っ赤にしている。
「--ふふふ、今度、わたしとえっちなことしよ?」
混乱して、汗をかき始めた庄助を見て、
笑いながら愛梨は教室を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後。
彼氏の祐樹と共に下校していた愛梨。
「---愛梨と居る時が一番幸せだよ」
「うん、わたしも!」
愛梨はそう言いながら、
意地悪そうな笑みで、チラリと反対側の通りを見た。
太郎ー
”元の自分の身体”がそこには居た。
「---しつこいやつ」
愛梨はニヤリと笑いながら、
祐樹の腕にしがみついた。
「祐樹のこと、大好き!」
甘えて見せる愛梨。
祐樹は、奥手な愛梨の積極的な行動にたじろぎながらも、
顔を赤らめた。
通りの反対側から様子を見ていた太郎…
つまり、本来の愛梨は、
悲しそうにその光景を見つめた。
「--祐樹!気づいてよ!!
それは私じゃないの!」
けれどー
どうすることもできない。
母も、理紗も信じてくれなかった。
たぶん、祐樹も…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
太郎の身体で自宅に帰るー。
もちろん、本来帰るべき家ではなく、
この体ー太郎の家に、だ。
「--あんた、そろそろ働きなさいよ!
お母さんだって、いつまでも…」
かなり高齢な母親が言う。
その目には、ダメ息子に対する失望だろうか。
涙が浮かんでいる。
「---お母さん…ごめん」
太郎の中に居る愛梨は思わず涙ぐんで
謝ってしまう。
「--そんな言葉聞きたくないよ!
口じゃなくて行動で示しな!」
母親の怒りに、太郎の中に居る愛梨は
ごもっともだと思いながら
”どうしてこんなにお母さんを悲しませるようなことを
すえうんだろう…”と
悲しい気持ちになりながら部屋に行く。
太郎の部屋にはー
フィギュアやアダルトゲーム、女装道具などが
並んでいる。
「---もう嫌…」
太郎はその場にふさぎ込んだ。
そして、ゾッとするーー
こんな趣味の男に、自分の身体が乗っ取られた。
と、なればーーー
「--やめて…私の身体で遊ばないで」
一人、太郎はその部屋で泣き崩れた。
その時だった。
スマホが鳴るー
スマホには”自分の番号”が表示されていた。
「---も、もしもし」
太郎が弱気な様子で電話に出ると、
電話の向こうからは愛梨のー、
そう、自分の声が聞こえた。
「--ふふふ、惨めなおじさん。こんばんは。
流石に可愛そうだから、
明日、お話ししてあげる。
わたし、学校に行くから、放課後、西地区の
廃工場で会いましょ?」
愛梨が笑いながら電話先で言った。
「--ふ、ふざけないでよ!わたしの身体を返し…」
プッーーー
用件だけ伝えると、愛梨は電話を切ってしまった。
太郎になってしまった愛梨は悲しそうに、
その場に蹲った…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
指定された廃工場に、太郎はやってきた。
「--こんばんは…。ふふふ…」
暗闇から愛梨が姿を現す。
肩を出して、
生足を大胆に露出したショートパンツ姿ー。
「--わ、、わたしにそんな格好させないで!」
太郎が叫ぶ。
愛梨は笑う。
「--ふふ、わたしが、自分の身体で
どういう格好しようが、自由…でしょ?」
愛梨は自分の太ももを両手で触った後に
イヤらしい目付きで、太郎を見た。
「---それはわたしの身体よ!」
太郎が叫ぶ。
愛梨は、ヤレヤレと言う様子で首を振りながら、
近くのモノに腰かけて、タバコに火をつけた。
「--ちょっと!やめてよ!
わたし、まだ17歳なのよ!!ねぇ!やめて!」
太郎が容姿に似合わず泣き叫ぶ。
「--ふん…わたしがどうしようと勝手でしょ?
お・じ・さ・ん!」
タバコの煙をふかしながら笑う愛梨。
「---ねぇ…返してよ…わたしの身体…」
太郎がその場に泣き崩れる。
「--今日、あんたをここに呼んだのは、
”もう付きまとわないで”っていう警告のためよ」
愛梨が鋭い目付きで言う。
「---」
太郎は泣いたまま蹲っている。
「--ねぇ、今の状況で通報したらどうなると思う?
”最近、変な男に付きまとわれている”って外に助けを
求めたら、どうなると思う?」
愛梨が太郎の顎をつかんで言う。
「--あんたは捕まるか、注意されるわよ…
うふふ♡
世の中はねぇ、俺…みたいな男に厳しいんだよ
俺は小さいころから奥手で、太ってて、
自分にも自信が無かった。
キモいとか言われたし、大学時代は告白しただけで
指導対象になったよ。
分かるか?このくやしさが。
でも今は違う!
俺…いいえ、わたしが何をしても、みんなは
チヤホヤしてくれる!まさに夢のような
人生じゃない!!!
せっかく手に入れたこの体、
あんたになんか、ゼッタイに返さない!」
愛梨が叫んだ。
「---ねぇ、、、返して!!!!!!!!!」
太郎が大声で泣き叫んだ。
「あんたに、わたしの人生をあげるー。
嬉しいでしょ?フィギュアやアニメグッズに
囲まれた日々を送ることができるのよ!」
愛梨が表情をゆがめて笑う。
「そんなのいらない…返して・・・返して・・・」
太郎が泣き崩れる。
「わたしは、週末に祐樹とデート!
ふふ、ホテルに行っちゃおうかな♡」
愛梨が嬉しそうに言う。
「--やめて!!!それだけはやめて!!」
太郎が叫ぶのを無視して愛梨は続ける。
「ふふ・・・メイドカフェでバイトを始めて~
クラスの童貞くんを誘惑して~~
祐樹をわたしのしもべにして~~
うふふふふふ…♡ 楽しみがいっぱい!」
愛梨は、太郎の方を見て笑う。
「---あんたは、その体で人生楽しみなさい。
周囲から蔑まれて決して、天国のような人生を送ることはできず、
かと言って地獄に行く勇気もないー
天国と地獄の狭間の”煉獄”のような人生をー
あんたにあげるわ」
愛梨はそこまで言うと、あざ笑うようにして廃工場の
出口に向かった。
「----返して!!!!!」
太郎が大声で叫んだ。
「---いやだ」
愛梨はそれだけ言うと、工場から立ち去って行った。
一人残された太郎は、その場で泣きじゃくった…。
彼氏の祐樹にも、午前中に連絡してみたけど、
やっぱり信じてもらえなかったー。
もう、誰にも信じてもらえない。
このまま、あいつの言うとおり”煉獄”のような人生をーー。
「-----」
けれど、太郎の身体になってしまった愛梨は強い子だった。
その瞳の輝きは、まだ、失われていなかったーーー。
泣きながらも、太郎になった愛梨は立ち上がる。
そして、拳を強く握りしめた…。
③へ続く
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コメント
小説とは何も関係のないお話しですが、
飴が歯型に上手く引っかかって、抜いた際に
舌を傷めて口内炎が出来てしまいました(笑)
コメント
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愛梨にとってつらい展開、さてどうなるんでしょう。
大きな口内炎がようやく治りかかってます(笑
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> 愛梨にとってつらい展開、さてどうなるんでしょう。
> 大きな口内炎がようやく治りかかってます(笑
今は辛い展開ですね!
口内炎ですか!
お大事になさってください!!