明るく、真面目で誰からも愛される女子高生ー。
自分勝手で、破滅の人生を歩んできた42歳無職男。
2人の身体が入れ替わってしまったそのときー、
人生は”逆転”するー。
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学校のチャイムが鳴る。
放課後。
女子高生の江崎 愛梨(えざき あいり)は、
図書室で、彼氏の友野 祐樹(ともの ゆうき)と
談笑していた。
2人は、読書好きだった。
「---この前、愛梨から教えてもらった本、
面白かったよ」
祐樹が言うと、愛梨が「よかった」と微笑む。
2人とも、クラスでは上位の成績を誇る
俗に言う優等生だ。
「--あ、そうそう、来週の日曜日だけど…」
祐樹が言うと、
愛梨は嬉しそうに微笑んだ。
「うん。大丈夫。ちゃんと予定、空けてあるよ」
その言葉に、祐樹も嬉しそうに微笑んだ。
二人は来週の日曜日にデートをする。
仲良しな二人は、お互いにその日を楽しみにしていたー。
「ふふふ、また、ラブラブムード?」
女子の声が聞こえた。
愛梨が振り返ると、
そこにはクラスメイトの女子生徒、
理紗(りさ)が居た。
「ーーーり、理紗…き、聞いてたの?今の?」
愛梨が顔を赤らめながら言うと、
「聞いてたよ~、ご馳走様って感じだね」
と、理紗が茶化す。
「--か、亀山さん、どうしてここに?」
祐樹が尋ねると、理沙は答えた。
「--どうしてって?ほら、本を返しにきたのよ」
理紗が微笑みながら、借りていたと思われる本を
見せびらかした。
愛梨、祐樹のカップルの2人にとって、
”共通の友人”に当たるのがこの理紗だった。
理紗は、二人の関係を心から祝福し、
祝ってくれた。
お調子者の理紗は、よく二人の関係を
こうしてからかっている。
けれども、
それはそれで、楽しいいつもの穏やかな日常だった。
そう、今日、この日まではー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「くそっ!」
道端の石ころを蹴り飛ばしながら、歩く、
汚らしい風貌の男が居た。
その手には自転車を引きずっている。
42歳にして無職。
親と同居しながら、親の貯金を食いつぶしながら
部屋に引きこもる日々を送っている男。
彼女いない暦42歳。
彼は、魔法使いになれると信じていた。
彼女が居ない理由ー。
それは、挙げればきりがない。
何事からも逃げる性格。
好きなだけ食べることによって生じた肥満。
身だしなみに全く気を使わない。
その上、自己中心的ときた。
そんな男に、彼女が出来るはずなどなかったのだ。
「--ふざけやがって」
イライラした様子で呟く彼は、
家で、母親と喧嘩して苛立っている。
「--あぁぁぁ…ムカつく!」
怒りに身を任せて、彼は自転車に乗り、爆走を始めた。
通行人たちをベルを鳴らしてどかしていく。
やがて、彼は公園に入った。
曲がり角を物凄いスピードでカーブする。
彼はーー
何か気にいらないことがあると、
こうして自転車で爆走するのだー。
「---!!!」
曲がり角を曲がったそのときーー
彼は、目を見開いた。
仲良く歩くー
高校生カップルが目の前に居たー
「---しまっ…」
「----ひっ!?」
カップルのうちの女子高生が振り向くのとー、
男が声をあげるタイミングが重なった。
そしてーーー
自転車は、女子高生と衝突して、
女子高生と自転車に乗る男は激しく吹き飛ばされた。
「---愛梨!」
彼氏の祐樹は叫んだ。
図書室でデートの約束を再確認した二人は
いつものように、穏やかな下校を楽しんでいたはずだった。
しかしーー
今、目の前には、自転車に乗っていた男と、
跳ね飛ばされた愛梨が横たわっている。
「---あ、、、愛梨… 愛梨!」
祐樹は必死に彼女の名前を呼んだ。
「---うっ…」
呼びかけに、愛梨が反応を示した。
「---愛梨!大丈夫か?愛梨!」
祐樹がそう叫ぶと、
愛梨は不思議そうに「あいり…?」と声を出した。
そして、愛梨は周囲を見渡す。
「-----!!」
愛梨は気付いた。
目の前に”自分”が横たわっていることに。
「--あれ、、お、、おれ…」
愛梨は一瞬そう呟いた。
「…?」
祐樹が不思議そうな顔をする。
けれどー、
愛梨は、”気付いた”。
「---あ、、、…あ、、お…わ、、わたし…」
愛梨が言うと、
祐樹は「怪我はないか?」と尋ねる。
「あぁ…ねぇ…、、ううん、ない…ないよ!だいじょうぶ!」
愛梨が可愛らしく微笑む。
「--そっか。良かったー」
安心して頷く祐樹。
愛梨は、祐樹に見えないように”笑った”
目の前に横たわる自分ー
そしてーーー
この感触…
もしかしてこれはーー。
「---入れ替わった…のか?」
愛梨が小声で呟いた。
見たところ、自分の身体はまだ横たわっている。
他人の身体から見る自分はー
とんでもなく”ブザマ”だった。
まるでゴミのようだ。
汚物のようにすら見えた。
「----ぷっ…」
愛梨は、口を半開きで倒れている
元自分の身体を見て、思わず吹き出してしまった。
「--愛梨?とりあえず救急車を呼ぼうか」
祐樹が言う。
まぁ、当然の反応だろう。
しかしー。
「--呼ぶ必要ねぇ…、、な、ないよ」
愛梨が笑みを浮かべて言う。
「--え?でもこの人、やばいって!」
祐樹が言うと、
愛梨は「放っておけば誰かが救急車呼ぶでしょ。早くいこっ!」
と、言って、祐樹の腕にしがみついた。
「---あ、愛梨…でも…」
祐樹は戸惑っている。
愛梨は「いいから早く!」と少し語気を強めて
祐樹を引っ張るようにしてその場から離れた。
スカートの履き心地・・・
こんなにもスースーして、なんだか
何かを穿き忘れているような、そんな感覚すらする。
これがー。
ヒラヒラして、頼りなさすら受けるこんなものを、
女子たちは毎日、身に着けているのか。
「---」
そして、胸・・・
目線を下にやると、膨らんでいるものが目に入る。
しかも、ちょっと胸のあたりに違和感を感じる。
男とは、体の構造が違う。
だから、感覚も違うのだ。
「----」
愛梨は無意識のうちにニヤニヤしていた。
「--あの…愛梨、怪我はないか?」
一人でニヤニヤしている愛梨を心配して、
祐樹が声をかけた。
「--あ、うん。大丈夫。
あ、、あのさ…」
今の愛梨は、”おそらく彼氏”であろう
この男の名前を知らないー。
入れ替わったのか、それとも自分だけがこの体に
飛ばされたのかは分からないー。
だが、この子の記憶を引き出すことは出来ないようだ。
「---ちょ、ちょっと用事思い出しちゃったから、
も、もう帰るね」
そう言うと、戸惑う祐樹を残して、
愛梨は一人走り去ってしまった。
近くの公園の隅っこに隠れるようにしてやってきた愛梨。
鞄をガサガサといじる。
鏡ーーー。
「---うわっ!可愛い!!」
可愛らしい顔が、鏡に映る。
「---はぁぁ…こ、、これが俺かよ…」
愛梨は喜びに体を震わせた。
今まで蔑まれ続けてきた自分がー
こんな可愛い子になっている。
自分のガサガサな手とは違い、
つるつるで綺麗な手。
思わず愛梨は自分の手の甲をペロリと舐めてしまう。
「うぅん…♡」
愛梨は一つの決意をした。
もう、自分の体なんて、どうでもいい。
これは一つのチャンスだ。
「---」
愛梨は鞄から生徒手帳を取り出し、
自分の名前を知った。
「ふぅん…江崎 愛梨ちゃんね…」
そう呟くと、不気味に笑みを浮かべた。
「今日から、わたしが、江崎愛梨…
くくくく…ふふふふふふふふふふ♡」
笑いながら愛梨は住所欄を確認して、
自分の家へと向かうのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいまー」
愛梨が家の中に入ると、
母親が「おかえりー」と返事をした。
自分の部屋はどこだろうか。
なんとなく2階にある気がして、
愛梨は、2階へと向かった。
案の定、2階に自分の部屋があったー。
部屋を開けると、
綺麗に整理された、明るい雰囲気の部屋があった。
「----ふふふふふふ・・・
やった…!わたし、、今日から女子高生だよ!!」
一人、置いてあった鏡にピースをしながら
ウインクすると、
そのままベットに飛び込んで、
ベットの上で、甘い息を吐きながら、嬉しそうに笑い始めた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
事故現場ではーー、
自転車ごと吹っ飛んだ42歳の無職男が目を覚ましていた。
「---ゆ…祐樹…?」
男は、異変に気付いた。
自分から出る声がーー
低く、男のものになっていることに。
そしてーー
太った体に、異臭ー。
「---え・・・な、、何・・・これ」
男には、愛梨が入れ替わっていたー。
近くのトイレに駆け込み、
男は鏡を見る。
そして、悲鳴をあげた。
「きゃあああああああああ!」
パニックを起こした男は、男の鞄のスマホを手にした。
アニメキャラの絵が待ち受けになっているスマホを
使って、男はーー、
男の中に居る愛梨は、自分の電話番号を入力した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--い、、、いいよな・・・」
愛梨が部屋で呟いている。
「--い、今は、わたしの身体なんだし・・・」
制服を脱ごうと、ボタンをはずしていく愛梨。
その時だった。
スマホの着信音が鳴り、
愛梨は舌打ちをして、スマホを手に取る。
表示されている番号はーー
見覚えのある番号だった。
愛梨は、それを見て、不気味な笑みを浮かべた。
その番号はーー
自分のスマホの番号だったからだー。
「---もしもし・・・」
愛梨が気弱そうな雰囲気で電話に出る。
「---な、、、なんでわたしが・・・?」
男の声が電話先でする。
愛梨は確信した。
自転車でぶつかった女子高生と自分の身体が
入れ替わったのだと。
「---ね、、ねぇ、あなた誰なの??
わ、、わたしの身体・・・返してよ!」
自分の声がー
女言葉で話している。
愛梨は思わず失笑した。
「--誰って?
私は江崎愛梨ですけど?
あなたこそ、誰なの?」
愛梨は冷徹な声で言った。
「--う、嘘・・・!
嘘つかないでっ!私の身体を返して!!!」
電話先の男が叫ぶ。
中身は、この女子高生なのだろう。
「--ごめんなさい、
よく分からないので、失礼します」
愛梨は電話を切った。
そのあとも、何度も何度もスマホがなっている。
愛梨は、上着をはだけさせて、
自分の胸をわしづかみにしながら呟いた。
「これまで俺の人生は悲惨なものだった。
けど…
今日からは違う…」
愛梨は汚らしい笑みを浮かべる。
「今日からは、、、俺は…女子高生になったんだ…!
ひひひひひっ!あはははははははははっ!!!」
ピンポーン
数分後。
インターホンが鳴った。
愛梨は気にせず、自分の髪型を色々な髪型に
して遊んでいた。
髪の毛一つで、女は大きく変わる。
色々な愛梨を見て、自分自身で、彼女は興奮していた。
「--ねぇ!!!お母さん!お願い、助けて!!!」
”自分”の声がしたー。
愛梨は、ニヤリと笑う。
”俺の身体と入れ替わったこの子が、
家に来たのか”と。
愛梨は玄関の方に歩いていく。
「どうしたの?”お母さん”」
愛梨は、怯えた様子でそう言った。
この子が、母親のことを”お母さん”と呼んでいることは
分かった。
元々の自分の身体が「お母さん」と泣き叫んでいるからだ。
こうして、徐々に周囲の情報を得ていけば、
自分は、江崎 愛梨になりきることができるー。
「--あ、、…お母さん!そこのわたしは偽物なの!!
ねぇ、信じて、わたしが愛梨よ!」
太った汚らしい男が、叫ぶ。
「---ちょっと、困ります。
警察呼びますよ」
母が言う。
「---お母さん!!!信じて!!!」
男がボタボタと涙を流している。
「---お母さん、何なのその人…?」
愛梨は、わざと怯えた様子で、母親に尋ねる。
「大丈夫よ。愛梨。下がっていて」
母親がほほ笑みながら言う。
「---血液型は!!!」
男が叫んだ。
「---あんたが本物だって言うなら、
血液型、分かるでしょ!?
答えてみなさいよ!」
男が叫ぶ。
母親は戸惑った様子で、愛梨を見た。
「----…」
愛梨に中に居る男は思う。
”まずい”と。
今、質問攻めされたら何も答えられない。
ちょうど、これから部屋でLINEの履歴などを
見ながら、この子のデータを探ろうとしているところだった。
だから、まだ”何も知らない”
「----あの…そうやってわたしのこと
聞き出そうとしているんですよね…?」
愛梨は振り返ってそう言った。
血液型を答えることはできない。
勘で答えるのもリスクが高い。
ならば、こうするしかない。
「---ほら、お母さん!
そこに居る私は偽物よ!
血液型も答えられないじゃない!」
男が叫ぶ。
「---そういうあなたは答えられるの?」
愛梨は尋ねた。
「---A型よ!A型のRH+!」
男が叫んだ。
母親が一瞬、男の方を見る。
だが、愛梨はうろたえなかった。
体を怯えた様子で震わせながら
”こう言った”
「ど、どうしてわたしの血液型を知ってるの?
…こ、、怖い…」
と。
涙を目に浮かべながら言う愛梨。
その姿を見た母親も意を決したようだ。
「-ーあなた娘のストーカーですか?
警察呼びますよ!」
「--お母さん、警察呼ぼう!」
愛梨もそう言うと、母は電話の方に向かう。
愛梨は、自分の身体だった男の方を見て
邪悪な笑みを浮かべた。
「---”俺”の身体、やるよ。
名前は、宮国 太郎(みやぐに たろう)だ。
俺は、愛梨として生きていく。
お前は太郎として生きるんだな…!」
愛梨とは思えない様な、
怖い顔で、笑う愛梨ー。
「--やめて…わたしの身体…返して・・・」
男が涙を流して、その場に蹲る。
「---お前は太郎だ…
ほら、早くしないと警察が来るぞ」
愛梨が脅すようにして言うと、
太郎は目に涙を浮かべて走り去って行った…。
愛梨は笑みを浮かべる。
「---天国と地獄ーーー。
ふふっ…これからわたしっ、女子高生ライフを
楽しんじゃおっと★」
嬉しそうに言うと、愛梨は部屋の方に駆け上がって行った…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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憑依空間、数少ない入れ替わりモノです!
たまには息抜きにお楽しみください!!
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