誰からも慕われる生徒会長が居たー。
けれどー、
その生徒会長は、変わってしまった。
彼女に、何があったのか…。
花を踏みにじり、歪んだ笑みを浮かべる
かつての優等生―。その真相は…。
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物凄い勢いで振る雨が、轟音を立てているー。
放課後の生徒会室ー。
割られた花瓶と、引き裂かれた花を前に、
一人の女子生徒が笑っているー。
そして、もう一人の女子生徒は信じられないという
様子で、それを見ている。
「--先輩!ど、、どうしてですか!」
1年生の生徒会書記、城咲 恵里(じょうさき えり)が叫ぶ。
「---どうしてって…?」
粉々にされた花を前に笑うのはー。
誰からも慕われているはずだった
心優しい生徒会長のー
宮田 奈緒美(みやた なおみ)-
不気味に笑う彼女に、その優しさは無い。
「--真面目に生きるなんて、
バカらしいじゃない…?」
奈緒美が吐き捨てるようにして言う。
「--そ、、そんな…先輩!
嘘だって言ってください!
先輩は…」
恵里がそう言うと、
奈緒美は机を蹴り飛ばした。
「--この学校がウゼェんだよ!」
奈緒美の怒鳴り声に、恵里は、悲しそうに
目に涙を浮かべたーーー。
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1ヶ月前ー。
「--先輩!」
生徒会書記の、恵里は、
2年生の生徒会会長、奈緒美を
尊敬していた。
部活動に、勉強、生徒会の活動全てをこなし、
同級生からも後輩からも、先生からも好かれる
理想の優等生ー。
それが、奈緒美だった。
「--あ、恵里ちゃん!
どうしたの?」
奈緒美が優しく微笑む。
「-あ、あの、この前はありがとうございました」
恵里が、奈緒美に会釈をする。
「--おかげで、テストで高得点取れましたよ~!」
嬉しそうに言う恵里。
恵里は、苦手な英語の勉強を、
先輩である奈緒美に教えてもらい、
テストで良い成績を残せたようだ。
「--ふふ、おめでとう。
困ったことがあったら、また何でも言ってね」
微笑む奈緒美。
「--はい!」
恵里はうれしそうに返事をした。
恵里にとって、奈緒美は憧れでもあり、
尊敬すべき先輩だった。
奈緒美が立ち去った後も、嬉しそうに
笑顔を浮かべていると、
「本当に大好きねぇ、会長のこと」と背後から声をかけられた。
生徒会副会長の阿部 則子(あべ のりこ)。
奈緒美と同じ、2年生の生徒だ
「あ、先輩!」
恵里が笑顔で則子に声をかける。
「--ま、尊敬する気持ちは分かるけどね」
則子は、生徒会会長に立候補していたものの、
奈緒美との票数争いに敗れ、副会長に甘んじている。
そのせいか、何かと奈緒美に突っかかることも
あるものの、心の奥底では、奈緒美のことを認めているようだ。
「--先輩、今度の文化祭、成功するといいですね!」
恵里が言うと、
則子も頷いた。
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翌日の生徒会の話し合いでとある事件が
話題となった。
最近、学校内の花が荒らされている件についてー。
「--どうして、そんな酷いことするんだろう…」
書記の恵里が悲しそうに言う。
「---既に今月に入ってから6件…」
生徒会長の奈緒美も悲しそうにつぶやく。
「---誰かが、花を荒らしてるってことね」
副会長の則子が言う。
今月のはじめ、花壇の花が滅茶苦茶に踏み荒らされていたのを
皮きりに、
花壇に除草剤がまかれたり、
教室の花瓶の花が引き裂かれていたりー
そういうことが立て続けに起きている。
「--軽い気持ちでやってるんだろうな…」
2年の書記、男子生徒の伸樹が言う。
「---・・・・・・--」
生徒会長の奈緒美がとても悲しそうな表情を
浮かべているのを見て、恵里は心を痛めた。
”許せないー”と。
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それから数日間。
恵里は放課後、他の生徒会メンバーにも
内緒で、校内の花壇の見回りをしていた。
1か月の間に6件。
必ず、誰かが尻尾を現すはずだ、と。
そしてー
見回りを始めてから5日…
”そいつ”は現れた。
「--へへへっ!花はさぁ、
俺たちに踏みつぶされるためにあるんだぜ!」
1年の男子生徒、
正文(まさふみ)と猛(たける)。
恵里と同じくクラスの生徒たちによる仕業だった。
「--ちょ…何やってんのよ!」
恵里が飛び出して叫ぶ。
「---!!」
正文と猛は驚いた表情で振り返った。
そして…。
「--どうして、そんなことするの?」
恵里から連絡を受けて駆け付けた生徒会会長の
奈緒美が悲しそうな声で言う。
「--そ、それは…」
正文と猛は、2年生の先輩である奈緒美から
注意されてしゅんとしていた。
「--先輩、すっごく悲しんでたのよ!
ちゃんと反省してるの?」
恵里が言う。
「----」
正文は恵里を無言で睨んだ。
「---何よその目!」
恵里がカッとなって叫ぶ。
「---いいの。やめて」
奈緒美が恵里を止めた。
「--ねぇ、二人とも…
こんなことしても、何になるの?
花を傷つけて…」
奈緒美が悲しそうに尋ねると、
正文が答えた。
「---楽しいからですよ…」
「え?」
奈緒美が思わず聞き返す。
「--先生とか、先輩とか、勉強とか…
そういうのばっかりで、毎日疲れるんですよ!
だから少しぐらい、発散したいんですよ俺たちも!」
正文が叫んだ。
あまりにも自分勝手な言い分に、恵里が叫ぶ
「あんたたち最低!
花をいじめてなんとも思わないの!」
恵里の言葉に
猛も正文もふてくされたような態度をとっている。
「----そう」
奈緒美がとても悲しそうにそう呟いた。
「先輩ーーー」
恵里が悲しそうに奈緒美を見る。
こんな顔を憧れの先輩にさせる二人を許せない。
恵里はそう思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
恵里は、花の件を生徒会の担当の先生に報告した。
正文と猛は呼び出されて、
停学処分を受けることになった。
その帰路…
「あ~~あ、ウゼェなアイツ!」
猛が、恵里の顔を思い浮かべながら叫ぶ
「あの先輩の前で言い顔しちゃってよ~!」
猛が言うと、正文がニヤリと笑みを浮かべた。
「---あいつ…
その”憧れの先輩”が花を荒らしてたら
どういう顔するんだろうな?」
正文の言葉に、猛が「は?」とつぶやく。
「--あのお人よしそうな先輩が、
んなことするわけねぇだろ?」
健の言葉に、正文は不気味にほほ笑んだ。
「いや…見てろよ…
するさ…」
正文の意図が分からず、
猛は首をかしげた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日の夜ー。
奈緒美は、机に向かって
勉強していた。
真面目な奈緒美は、
私生活においても、まじめな生活を送っている。
「---?」
ふと、違和感を感じた。
奈緒美は振り返るも、そこには何もない。
(よぉ…)
突然、声が聞こえた。
「えっ…?」
奈緒美が机から立ち上がって振り返る。
(…先輩…俺ですよ、俺…
停学になった1年の…)
「---え…、浜野谷くん・・・?」
浜野谷 正文…停学になった1年の生徒の声がする。
(…先輩…俺、ムカつきましたよ)
どこからか聞こえてくる正文の声に
奈緒美は怯えた表情をして言う。
「--は、、浜野谷くん…?どこにいるの?」
奈緒美の言葉を無視して正文は言った。
(恵里…先輩のことを、
とても尊敬しているようですね。
でも…その憧れの先輩が
花を荒らしてたら、あいつ、どんな顔しますかね?)
正文の言葉に、奈緒美は言う。
「--そ、、そんなこと私がするわけないでしょ!
それよりどこにいるの?」
奈緒美の言葉に、正文は笑った。
(いやぁ…先輩、これから先輩は、
悪い女になるんですよ。
毎日毎日、影で花を荒らす女にね)
正文の言葉に奈緒美が寒気を感じて震える。
「--な、、何言ってるの…?」
(…これから俺は、先輩、あなたの身体を貰います。
今、俺がどこにいるか分かります?)
「----」
奈緒美が恐怖に顔をゆがめる…。
(先輩の…中に居るんですよ!)
「---えっ…ど、、どういうこと!?」
奈緒美がおびえながら叫ぶ。
(--憑依・・・
俺は憑依して人を好きに操る力を持ってるんですよ先輩!
ふふふ・・・俺が先輩になって、
学校を滅茶苦茶にしてやりますよ)
「や…やめっ…!」
次の瞬間、奈緒美の身体がビクンと震え上がった。
「---い…いやぁ…入ってこないで…
で、、出て行って」
あまりの苦しみに奈緒美はその場で
もがき苦しんで、
床に倒れ込んだ。
「あぁ…あ・・・あ・・・」
奈緒美がスマホの方に手を伸ばす。
誰かに…
誰かにこのことを知らせないと…
奈緒美の目から涙がこぼれるー。
そしてー
動きを止める奈緒美
「ふ…ふふ・・・ふふふふ」
奈緒美が笑いながらゆっくりと立ち上がった。
「あはははははははははははは~~~!」
目に涙を浮かべたまま、大笑いする奈緒美。
ペロリと、髪の毛を舐めると、
奈緒美は「ふぅ…♡」と甘い息を吐いて笑った。
「--ーーふふふ・・・
わたし、”元”優等生になっちゃった♡」
そう言うと、奈緒美は鏡を見つめて、
自分の服をゆっくりと脱ぎ始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の朝。
奈緒美はいつもより早めに登校した。
「----花をいじめて何とも思わないの?か…」
奈緒美が歪んだ表情でつぶやく。
そしてーーー
「思わねーよ!」
汚い口調で叫ぶと、奈緒美は、靴で、花壇の花を
憎しみを込めて踏みつぶした。
「ひひひひひひっ!うふふふふふふふふっ♡」
狂気に満ちた笑い声をあげながら、
花を踏みにじる奈緒美。
「生徒会長のわたしが、
こ~んなことしてるなんて!」
邪魔な長い髪を払いながら、
何度も、何度も花を潰していく奈緒美。
数分後ーーー
花壇は滅茶苦茶に荒らされたーー。
「くくくくく…」
奈緒美は自分の胸を触りながら笑う。
「---恵里ちゃん…
どんな反応するかなぁ~~~!
わたし、たのしみっ♡」
踏みつぶした花に唾を吐き捨てると、
奈緒美は低い声で笑いながら、
そのまま校舎の中へと向かって行った…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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歪められた生徒会長…
果たして、この後どんな運命が待ち構えているのでしょうか!
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