<憑依>増幅する嫉妬心②~嫉妬~

姉の響子は、嫉妬心を爆発させたー。
妹に対して憎悪をむき出しにする姉ー。

しかし、彼女は妹の涙を見て、
我を取り戻すー。

植え付けられた嫉妬と憎悪に、抗うことはできるのかー。

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半年前ー。

晴香の姉、響子は、大学時代からの彼氏だった、
忠の秘密を知ってしまった。

最近、忠は仕事が忙しかった。
ウソをつくような人ではなかったし、
響子も、それを信じていたー。

けれどー
それは、嘘だった。

ある日、たまたま別の用事で、忠の家の近くを通った響子は、
忠の家を訪ねることにした。
その日は、忠は休日だったー。

「---あれ?」
忠の家について、インターホンを押しても、反応が無い。

ドアノブに少し手をかけると、
ドアが開いた。

勝手に入るのはいけないー。
そう思っていたけれど、
忠は合鍵を響子に渡して
”いつでもは行っていいよ”などと言っていたから、
この日もそうしたー。

でもー

「ん・・・♡ あっ♡ ただしぃ♡」

奥から女の声が聞こえた。

響子は、ゾッとして扉を開いたー。
そこにはー
彼氏の忠と、大学時代の同級生、蜜菜の姿があったー。

「--待ってくれ!信じてくれ!
 俺は、蜜菜に誘われて…
 あまりにもしつこいから、1回だけって…!」
忠は、泣きながら叫んだ。

”見苦しい”

そう思った響子は言った。

「--別れましょう」

とー。

全ては、半年前のことー。

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部屋に飾られた響子の写真を見つめて
涙を浮かべるー。

半年前に浮気をして別れた元彼氏・忠は
自分の部屋で、元彼女である、
響子の写真を、見つめていた。

「響子…」

写真を見つめて、涙するー

「俺には、お前しか、いないんだ…」

忠は、写真を握りしめた-。

彼は、蜜菜と付き合い始めてからも、
響子への未練を断ち切れずにいたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

結婚式場ー。

姉の響子は、休憩室で一人、
顔を覆い、座り込んでいた。

「--どうして?」

響子は自問自答する。
妹の晴香の結婚への嫉妬ー。
どうして、自分はあんなことをしてしまったのだろう。

親族にも、相手の親族にも、妹にも
合わせる顔がないー。

「--晴香が幸せなのは嬉しい事なのに」

落ち込んだ表情で、窓際の方に歩いていく
響子ー。

「酷いお姉ちゃんでごめんねー」
一人、呟いて涙をこぼす。

響子は知らないー。
自分が結婚式場の外で、
”よく知る人物”に憑依されて
嫉妬や憎悪を刻み付けられたことをー。

その人物が憑依から抜け出すときに、
響子が違和感を感じないように、
記憶を少し操作したからー、
響子は、駐車場で”その人物”を見かけたことは
覚えていないし、
憑依されたことも、当然、覚えていないー。

「--ーーごめんね」

晴香の顔を浮かべながら
ひたすら謝り続ける響子ー

でも…
晴香にも悪いところはあるー

”わたしを差し置いて結婚するなんてー”

響子の脳裏に再び憎悪が湧きあがるー。

”晴香は、自分の幸せをわたしに自慢している?”

響子は、拳を握りしめた。

晴香の顔が、脳裏に浮かぶー。

「---悪いのは、、、あんたじゃない!」
大声で叫んだ。

怒りを自分で、抑え込むことができない。

響子は、怒りの形相で、窓ガラスを殴り始めた。

「ふざけんなっ!!!ふざけんな!!!
 わたしを…わたしを馬鹿にして!!!!」
ヒステリックを起こしたかのように叫びまくる響子。

その時、扉が開いた。

「--お、、お姉ちゃん!」
妹の晴香だった。

「--ね、、ねぇ!もうやめてよお姉ちゃん!」
晴香が響子を抑える。

窓ガラスは割れ、響子の手からは血が流れている。

「---離して!!あんたなんか妹じゃない!」
響子は晴香を突き飛ばす。

「--お、、お姉ちゃん!ごめんなさい!許して・・・!
 わたし、お姉ちゃんを悲しませるつもりなんてないの!
 お願い!信じて!」
晴香が涙を浮かべて言うー。

しかしー
さらに強まった憎悪は、もう、妹の泣き顔を見ても、
抑えることはできなかった。

「---うざい!!!あんたなんかいなきゃよかった!」
響子が叫ぶ。

そして、晴香の方に近づいて行って、
晴香を容赦なくビンタした。

「--お姉ちゃん!ごめんなさい!!
 ごめんなさい!!許して!!」
泣きわめく晴香。

響子は憎悪に満ちた目で言った。

「--わたしより先に結婚するなんて許さない…!
 なんてクソ生意気な妹なの!!
 今すぐ婚約を解消しなさい…!」

響子が、晴香の髪を引っ張る。

「--や、、やめて…」
晴香は涙を流している。

「--婚約解消しろって言ってるの!
 お姉ちゃんの言うこと、聞けないの?」

さらに手に力を込める。

「---そ、それはできないよ…
 お姉ちゃん…!お願い!いつものお姉ちゃんに戻って!」

嘆願するような表情ー

けれど、
それが、憎かったー。

「---わたしを馬鹿にしないで!!!」

グーで妹を殴りつける響子。

そして倒れた晴香の上に乗り、
さらに怒りを爆発させた。

「はぁ…はぁ…許さない…!
 許さない…滅茶苦茶にしてやる!!」

響子が叫んだ―。

その時だった。

「--もうやめるんだ!」

妹の婚約者・大輔だった。

「----だ、、大輔」
涙を浮かべて晴香が助けを求める。

「--お姉さん、これだけは言わせてもらうー。
 あなたのやってることは間違ってる」

大輔は言った。

「--う、、うるさい!!わたしたち姉妹の問題に
 関わらないで!」

響子が怒鳴り散らす。

「---申し訳ない。それはできない。
 ーー僕たちは夫婦だ。
 あなたが、どう思っていようとも」

大輔の言葉に、響子はさらに怒りを爆発させた。

「--私から!!晴香を奪わないで!!!」
怒り狂った様子で泣き叫ぶ響子ー。

「---やめなさい」
休憩室の入り口から、母の声がした。

「--お母さん」
響子が驚いた様子で言う。

「--もういいわ。
 出ていきなさい。この恥さらし」

世間体を気にする母は、冷たく言った。

母もー

晴香もーー

大輔もーーー

みんなみんな…

「--わかったわよ!出て行ってやるわよ!
 ふざけんな!!」

響子は大声で叫んでそのまま走り去った。

「--お姉ちゃん…」
晴香は悲しそうにつぶやいた。

「----」
大輔も、その様子を神妙な面持ちで見つめていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜―

「はははは!ふざけんじゃねぇよ!
 やってられるかっての!」

礼服姿の響子が、街のバーで
酒におぼれていた。

「--ずるい!許せない!許せない!
 もう1本、頂戴!!」

響子がマスターに叫ぶ。

普段、酒を飲まない響子。
けれど、飲まずには居られなかった。

妹への怒りは、
さらに強くなっていた。

許せないーーー!!

絶対に、許せないーーー!

響子は怒りに満ちた形相で、壁を見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

「---はぁ…」
響子はため息をついた。

自分がどうしてあんな行動をしてしまったのか、
時折、我に返り、思うー。

晴香の幸せは自分の幸せだったんじゃないかと…。

「---…」
響子は自問自答した。

けれどー
憎悪が、それを打ち消した。

「--違う…悪いのは晴香よ!
 あんなクソ家族!わたしから縁を切ってやるわ!!」

響子はグラスを床に叩きつけて叫んだ。
怒りが消えない。

「---あああああぁああああああ~~~!」
髪を狂ったように掻き毟りながら、イライラを爆発させる。

「はぁ…はぁ…」

けど、そろそろ仕事の時間だ。
出社の準備をしなくてはいけない。

「---私だって…わたしだって」
響子は不満を口にしながら、仕事の準備を始めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ーーーついに、堕ちたーー

響子は憎悪に支配されたー
自らの心の強さを失って、
憎悪に、支配された―。

今の響子ならー
”この、憑依薬”で、乗っ取ることができるー。

響子の家に向かう人物は、
不気味に笑うー。

いよいよ、響子が自分のものになるー、
いや、自分が響子になるー。

くくく…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

出社準備を始める響子。

そんな時、
インターホンが鳴ったー。

「はいー」
響子が応答すると、
相手は”よく知る”人物だった。

「--あれ~急にどうしたの?」
響子は笑いながら応答した。

そして、玄関に向かう。

「--久しぶり―。
 急に、どうしたの?」

響子が玄関を開けて微笑むと、
”来訪者”はニヤリと笑ったー

③へ続く

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コメント

次回は、憑依されちゃいます!!
憑依~!!

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