家族、学校…
そして町をも支配した千華。
憑依されたままの千華は、
最後に、町長の待つところへと向かう。
復讐を終えるためにー。
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千華は不気味な笑みを浮かべていた。
町は既に、千華の言いなり。
可愛い女子一人の言いなりになるとは
情けないヤツらだ。
「--ふふふ、わたしはこの町の支配者!」
千華がご機嫌そうに笑いながら微笑む。
心の中に幽閉された千華の抵抗も
ほとんど無くなっていた。
もう、この体は思いのまま。
両親とのキズナも、
クラスメイトとのキズナも、
全て引き裂いてやった。
並大抵の女の子は、もうーー
正気ではいられないはずだ。
むろん、この子もー。
「--くふふ・・・
わたしが千華として、この町を支配
してあげるから♡」
そう言いながら髪の毛をかきあげ、
町長の待つ場所へと向かうー。
”あいつ”のことだ。
もう異変に気付いているかもしれない。
千華はそう思いながら、
町長が居る場所へと向かったー。
「--お嬢ちゃん、ここは立ち入り禁止だよ」
職員が、千華を止めようとする。
「--お願い!通して♡」
可愛らしくお願いするポーズをする千華。
「ダメだよ!この先は、小山田町長が、
仕事を…」
チッ・・・
千華は舌打ちをした。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!どけ!」
千華が目を赤く光らせると、
職員は奇声をあげたまま、だらしなくその場に
倒れたー。
「--どうした?」
役所の中に居た小山田町長が声をあげる。
「---ふふふ、ようやくこの時が来た!」
千華は狂ったように笑いながら、
町長のもとに近づいていき、
町長の机の上に座り込んだ。
スカートがだらしなくめくれている。
「---き、君は…?」
小山田町長が、困惑した様子で尋ねる。
「お久しぶりですー」
千華がニヤリと笑うと、
小山田町長が呟いた。
「--貴様…野崎(のざき)か!」
千華は笑う。
「うふふ・・・♡ 今は小学生の千華だよ♡」
と。
千華に憑依している男はーー
3年前まで、小山田町長のもとで、
働いていた人物だったー。
しかし、ある日、汚職が明るみに出そうに
なった小山田町長は、
その罪を巧みに手をまわして、部下の野崎に
なすりつけた。
その結果ー、
小山田町長の罪は隠ぺいされ、
野崎は、汚職の町議として、家族に見捨てられ
人生そのものを狂わされた。
この町を支配するのは復讐ー。
「---復讐」
千華がつぶやいた。
憎しみをその目に輝かせて。
「--町のみんなは支配したわ。
後はアンタだけ。」
千華がニヤニヤと笑う。
小山田町長は、背後の壁に後ずさる。
「--ま、待て、野崎くん。
話し合いで解決しよう」
町長が焦った様子で言う。
「--できるわけ、ないでしょ?」
千華が冷たい声で呟いた。
「---俺は、お前のせいで人生すべてを
狂わされたんだ!わかるか?
俺は全てを失った。
-1年前、憑依薬を手に入れた俺は、
計画を練った。
そして、実行した!
この餓鬼の体を乗っ取って、
町を支配する計画を!
こんな女一人に、支配される町なんて
大したことねぇよなぁ!あはははははあっ!」
笑いまくる千華。
「---あんたの人生、ぶっ壊してあげる」
千華が小学生とは思えない様な色っぽい笑みを
浮かべて町長に近づく。
そしてーーキスをした。
「んふっ…♡」
千華が年に似合わない甘い声を出す。
「--や、やめ…」
小山田町長が叫ぶ。
「--小学生のわたしとこんなことしてる写真が
出回ったら、どうなるかしら?」
千華が蔑むような声で、
スマホで写真を撮影しながら笑う。
「や…やめろ!やめろ!」
小山田町長が叫ぶ。
「んふふふふふ♡
わたしを、楽しませなさい!」
千華はそう言うと、小山田町長を押し倒した。
千華の喘ぐ声がー
役所内に響き渡った。
「はぁ…♡ はぁ…♡」
千華が息を切らしながら笑う。
「---わたしはこの町のエンペラー…
支配者になったのよ」
千華が勝ち誇った表情で、
放心状態の小山田町長を見つめた。
「---あはははははははは!
あんたの人生も、これで…!」
千華が笑うー
さぞ、愉快そうにー。
「あははははははは」
「はははははははははは」
ーーー!?
千華は笑うのをやめた。
自分以外に、誰かが笑っている?
「---はははははははは!ご苦労だったな!」
小山田町長が邪悪な笑みを浮かべた。
「----なに?」
千華が表情をゆがめる。
「---全てはわたしの思い通り。
粘着質なお前のことだ。
”復讐できる道具”を与えれば必ず行動を
起こすと思っていたよ」
小山田町長が先ほどまでの怯えた
”演技”をやめて、タバコを吸い始めた。
「--1年前、君に憑依薬を渡したのはーー
誰だったと思う?」
小山田町長が笑う。
「---!?」
千華が1年前のことを思い出す。
憑依薬はーー
途方にくれていた雨の日の夜ー
可愛らしい女子高生が、声をかけてきて、
渡してくれた―。
”あなたに、復讐のチャンスをあげますー”と。
「--まさか!」
千華が顔をあげる。
「あのJKは俺が憑依して操っていたとしたら?」
小山田町長が笑うー。
1年前ー
千華に憑依している野崎に憑依薬を渡したのはー
小山田町長に憑依されて操られていた女子高生だった。
「---な、なぜ」
千華が唖然とする。
「指示を得るためだよ」
小山田町長はここ数年、町民からの支持を
少しずつ失いつつあった。
そのためー
小山田は憑依薬を、かつての部下の野崎に
渡したー。
「---お前が、町を支配しー、
絶望的な状況下で、私がお前を消し去る。
するとどうなると思う?」
小山田がニヤリと笑う。
「まさかー」
千華が唖然とした表情で言った。
「--世間は俺を英雄として
もてはやすだろう!」
小山田町長がそう叫ぶと、
机から何かを取り出した。
「--な…」
小山田が取り出したのは
”憑依した人間を消し去る”特殊な薬。
「--野崎、お前は最初から最後まで
私の掌の上だ。
おまけに、私をそのからだで楽しませてくれた」
千華は逃げようとしたー。
が、すぐに小山田につかまれてしまった。
「や…やめろ!はなせ!」
怒声を上げながら叫ぶ千華。
「--さよならだ…」
小山田は、千華の腕に注射を打ち込んだ。
「--ぎぃあああああああああっ!」
千華の中に居た野崎が消滅していくーー。
そしてーーー
千華は倒れた…。
「---くくっ、
馬鹿な町民どもは、これで私の思うが儘だ!
この私こそが、支配者なのだ!」
小山田町長は、そう叫んだー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1時間後。
「--町民のみなさん」
小山田町長が、高らかに町を凱旋している。
「--支配は終わりました!
もうご安心ください!
私が、千華ちゃんを、救い出すことに成功しました!」
小山田町長が、意識を取り戻した
千華の腕を持ち、高らかに宣言した。
「--千華!」
母親と父親が嬉しそうにその後継を見つめる。
”小山田町長 万歳”
”小山田町長 万歳”
町民たちが嬉しそうにコールする。
憑依された千華による
恐怖の時代は終わった。
「--千華ちゃん、何かみんなに言うことはあるかい?」
小山田町長が優しく、千華にマイクを手渡した。
「---私・・・お父さんやお母さん、
クラスのみんなにいっぱい迷惑をかけちゃった…
本当に、ごめんなさい」
意識を取り戻していた千華は、そう語った。
町長に操られているのではなく、自らの意思でー。
そしてーー
「もう、一つみんなに言いたいことがあるの!」
千華は叫んだ。
「---」
小山田町長がいつわりの笑みを浮かべて、
千華を見ている。
”これで、私の評価は盤石なものとなる”
「---くくっ、
馬鹿な町民どもは、これで私の思うが儘だ!
この私こそが、支配者なのだ!」
ーーー!?
小山田町長の、言葉が流れたー。
町民たちが静まり返る。
そしてーーー
憑依されていた千華と、小山田町長のやりとりが流れるー。
汚職のことー
千華が憑依されているのを知り、体の関係を持ったことー。
元部下の野崎とのことー。
千華は、目に涙を浮かべていたー。
「--ど、どういうことだ!」
小山田町長が叫んだ。
「--わたし、憑依されていた間のこと、
全部わかってたの…
でも、どうすることもできなかった…
私に憑依していた野崎って人…
ボイスレコーダーで町長さんとの会話を録音してたの」
千華が、ボイスレコーダーを掲げる。
「あの人、最後に私に言ったの。
”許してくれとは言わない。恨んでいいー
でも、ポケットに入っているこれだけはー
みんなに聞かせてやってくれー”
って…」
町民たちは、静まりかえっている。
やがてー
小山田町長に対するブーイングが巻き起こった。
「わたし…、わたしの体を好き勝手にした
あの人を許さない…
けれど…町長さんおことも許さないー!」
千華に睨まれた小山田町長は、力無くその場に座り込んだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
千華の家ではいつものような暖かい光景が
広がっていた。
「--おとうさん、おかあさん、迷惑かけちゃってごめんね」
微笑む千華。
「いいさ」
父が笑う。
「--そうよ。気にしないで。
おかえりなさい、千華ーー」
家族は、再び、光を取り戻したー
かけがえのない、光をー。
小山田町長は、ほどなくして、失脚したー。
千華によって、脳を破壊されたものたちも、
憑依していた男、野崎が消えたからだろうかー、
次第に記憶を取り戻し、全員が社会復帰を果たしていたー。
こうして、町には再び、平穏が訪れたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザッ…
裏路地を歩く、みすぼらしい格好の男ー。
町長だった小山田だー。
彼にはまだ”切り札”があったー。
そう、憑依薬がー。
小山田は、
憑依薬を口元へと運び、笑みを浮かべたー。
”あの町は、わたしのものだー”
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
小学生エンペラー完結です!
憑依されていた子が無事なのは
我ながら珍しい(?)ですね!
コメント
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まさかの逆転に次ぐ逆転・・・衰えたせいもあるが自分は結構先読み力はあると自負してるけど、相変わらず今回も全く予想出来ませんでした。
まだ不安要素はありますが・・・意外と何とかなったりして
これ含め諸事情で途中までや読めなかったかのも結構あるので、少しずつでも読みたいです。
毎日更新は作者さんにとっては厳しいけど、読み手にとってはありがたいので
相変わらずまとめられず長文コメ失礼しました。
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無様
コメントありがとうございます~!
全て嬉しく読ませて頂いています~!
まず、”くよよんの宮殿”はフォロワー様のゲスト出演作品なので
続編は難しいかも、ですネ…
憑依の研究…実際に実用化されたら、私のとある小説みたく
なってしまいそうです~汗
最後に、、愛染さんの道のりは、まだまだ長そうです(笑