<憑依>観覧車

その観覧車には、都市伝説があったー。

寂れたテーマパークの観覧車…
夜に、”赤い観覧車”に女性が乗ると、
その女性は、とても女らしくなるのだという。

この噂は、
本当なのか、それとも都市伝説なのか。

--------------------—

「お前って本当、女らしくないからなぁ~」
大学生の木島 盛輔(きじま もりすけ)が言う。

「うっせぇよ!」
その彼女で同じく大学生の増野 霧子(ますの きりこ)が言う。

彼女は綺麗なロングヘアーの持ち主で、
可愛らしいのだが…
性格が完全に男だった。

「---いいじゃん別に
 女っぽさとかいらないっての」

ため息をつきながら霧子が言う。

「いやぁ、俺もさ、たまには、
 彼女とイチャイチャしたいわけよ」
盛輔がそういうと、

「うるせー!そーいうのは二次元でやってろ!」
と霧子が言い放った。

「--お前、、色気もそっけもないんだもんなぁ…」
盛輔がそういうと、霧子は
「色気なんか豚に食わせた!」と
わけの分からない返しをした。

そんな二人は、今日、人気のないテーマパーク、
間もなく閉園になるという噂まである
テーマパークにやってきていた。

「--ここの観覧車の噂、知ってる?」
盛輔が、観覧車の3,4人しか並んでいない列を
指差して言う。

「--噂?」
霧子が腕を組みながら返事をすると、盛輔が言った。

「そう。夜にさ、赤い観覧車に女性が乗ると、
 その女性はとても女らしくなるって噂だよ」

盛輔がそういうと、
霧子が突然大笑いし出した。

「あははははははははっ!
 ガキかよ!
 そんなことあるわけないし!」
霧子の言葉に
盛輔が言う。

「--じゃあ乗ってみろよ!
 もしかしたら霧子も、女らしくなれるかも
 しれないぞ」

盛輔が言うー。

ただの都市伝説に決まっている。
この霧子が女らしくなるなんて、
地球がひっくり返るぐらい、ありえないことなのだ。

「…ふん、いいわよ」
霧子が言う。

「--そんなくだらない都市伝説なんてないって
 わたしが証明してあげる」

その言葉に盛輔は笑った。

「--いやぁ、これでやっと俺も 女の子とデートが
 できるぜ!
 今まで本と、男とデートしてるみたいだったからなぁ」

盛輔の言葉に、霧子は怒る

「誰が男だよ!ふざけんな!」

バシッと肩を叩く霧子

「はっ、そういうとこだよ」
盛輔が言うと、霧子は顔を赤らめて、
「乗っていいんでしょ!」と言って
そのまま観覧車のほうに向かっていった。

観覧車に乗る直前、霧子は振り向いて
「べーっ」として、そのまま観覧車に乗り込んだ。

「まぁ、可愛いところもあるんだけどな」
盛輔は、観覧車の伝説を深く考えずに
そのまま笑みを浮かべた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

観覧車も頂上にたどり着いた頃。

霧子はため息をついた。

「はぁ、わたし、大学生になってまで
 観覧車に一人で乗るなんて」

景色をぼんやりと見つめる。

「お前って本当、女らしくないからなぁ~」

盛輔の言葉を思い出す。

「うっせぇよ!分かってるよ そんなこと」
霧子は観覧車の中出怒りの言葉を吐き出す。

けれどー。

「分かってるけど…
 どうしていいか分かんないんだよ…」

少し気弱な様子で呟く霧子。

その時だったー。

”良いからだ み~つけた!”

「--!?」

声がした。
霧子が声のした方向、
観覧車の天井を見つめると、
そこにはーー

「ひっ・・・・!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

観覧車が1周した。

そしてー
霧子が降りてきた。

霧子は笑みを浮かべている。

「--ふふ」
盛輔が霧子を迎えに行く。

何を言われるのだろうか。

どうせまた小言を…

「はぁ~楽しかった!」
霧子が嬉しそうに言う。

「-どうだった?少しは女らしくなれたか?」
盛輔がからかうようにして言うと、
霧子は微笑んだ。

「うん!いこっ!」
そういうと、盛輔の手を握り、
手をつなぎ始めた。

「--お、おい、無理すんなよ」
盛輔が苦笑いする。

都市伝説に霧子が乗るとは思わなかった。

「いいの!うふふ!」
嬉しそうに、盛輔のほうに体を密着させる霧子。

「---はは、何企んでるんだか」
盛輔は”後が怖いなぁ”と思いながら
とりあえずそのまま歩き出した。

「うふふ♡ うふっ♡ はぁぁん♡」

ーーー!?

盛輔は違和感を覚えて、
霧子の方を見た。

霧子は、自分の胸を嬉しそうに揉んでいた。

「--な、何やってんだよ?」
盛輔が言うと、
霧子は微笑む。

「--わたしに”女”になってほしかったんでしょ?
 うふ♡ 嬉しいでしょ?」

甘い声で微笑む霧子。

いつも、冗談で”男っぽい”だとか、からかっていたが…
いざ、女らしくされると、何だか気持ち悪い。

「---き、霧子。何か…こう、すまなかった」
盛輔は頭を下げる。

霧子は、無理をしている。

盛輔は純粋に、そう思った。
そして、無理をさせているのは、
自分の責任だ、とも。

「霧子、お前はお前のままでいいんだよ」
盛輔が言うと、霧子は笑みを浮かべた。

「うふふ♡もう遅いわよ。
 あなたのおかげで、わたし、女らしくなったんだもの」

そういうと、盛輔の腕を握り、
そのままコーヒーカップへと盛輔をつれていく。

「お、おい…」

「-今のわたしの方が、可愛いでしょ?」
上目遣いで盛輔を見つめる霧子。

「--も、もういいって…」

そのままコーヒーカップに乗る霧子と盛輔。

コーヒーカップが動き出した。

「--なぁ、霧子」
ふと、盛輔は気になった。

そして、尋ねた。

「---俺の名前、呼んでみてくれよ」 とー。

盛輔は思う。
まさかとは、思うが、この霧子は
別人なのではないかと。

そんなこと、現実的にありえないことも分かっている。

けれどーそう疑わざるを得ないぐらいに、
霧子は豹変していた。

「名前…、ふふ、いっつも呼んでるじゃない
 何を今更」

霧子が少し動揺した様子で言う。

「--いいから呼べって」
名前を呼んでくれない霧子に対して
不安になった盛輔が今一度、お願いをする。

「ふふふ、あなたはあなたでしょ!」
霧子が言う。

「---」
盛輔は霧子の動揺を見逃さなかった。

まさかーー

「お前…本当に霧子なのか?」
盛輔が霧子を強い視線で見つめて言う。

「何言ってるのよ!どこからどうみても、
 わたしはわたしでしょ!」

「----お前、霧子じゃないな?」

盛輔が言った。

コーヒーカップが緩やかに回転しながら
2人は沈黙に包まれた。

そしてーーー

「---うふふ♡」

霧子は、否定も肯定もしなかった。

そしてーー。

「堕ちるところまで、堕ちちゃいましょ?」
霧子はそう言いながら、コーヒーカップを回しながら
寄ってきて、突然抱きついてきた。

「--お、おいっ!霧子!」
盛輔が叫ぶ。

ーーー数十年前、あの観覧車では、
結婚を直前に控えていた女性が乗っていた。

その女性はーー
不運にも突然の心不全で亡くなった。
幸せの絶頂からの転落ー。

だが、その無念は、彼女を成仏させず、
その場へととどまらせたー。

観覧車には、愛に飢えた彼女の残留思念が
残されているー

それが、時として、自分と同じぐらいの
年の女性に憑依するー。

それが、都市伝説の真相ー。

「--ほら、脱ぎなよ」
周囲の目もお構いなしに
甘い声を出しながら服を脱ぎ出す霧子。

「--おい!やめろ!お前は誰だ!っむぐっ!」

霧子がキスをした。

「ふふふふふぅ~♡
 もう我慢できないの!
 わたしを、わたしを抱いて!」

霧子が飢えきった雌のような表情で叫んだ。

「--や、やめ・・・」

霧子は、服をコーヒーカップ上で全て脱ぎ捨て、
その体を、盛輔に重ねた。

周囲が、恐ろしいモノを見る目で二人を見ている。

「--あははははは!
 わたしを壊して!壊してぇぇ!」

霧子は大声で叫びながら
コーヒーカップを限界まで回したーー

「ふふふふっふ!狂っちゃいましょ!
 わたしと一緒に!
 あふふ…うふふふふふふふっ♡」

盛輔は恐怖で目を見開いたーー

霧子の表情はーーー
盛輔の知る霧子の表情では、既になかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コーヒーカップが止まるー

楽しい時間が、終りを告げたー

2人の愛も、終りを告げたー。

「いひひひひひっ!あははははははっ♡」
濡れまくった霧子が大笑いしている。

「ふふふふ、わたしは愛が欲しいの!
 うふふふふふ!あはははははあ♡」

警備員が霧子を取り押さえる。

そしてーー盛輔のことも。

もう、終りだ。

「--ごめんねぇ!うふふふふ!
 わたしたちの人生、ボロボロになっちゃったけど、
 楽しかった!
 うふふふふふふふ!」

霧子は興奮を隠しきれない様子で笑うと、
ガクッとなり、意識を失った。

そのまま力ない状態で、連行されていく霧子。

そして、盛輔も。

盛輔は何も抵抗しなかった。

これはーー
罰なのだろうか。

霧子という彼女がいながら、欲を出した、自分へのー。

あまりの事態に、盛輔は
もう、何も考えられなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数ヵ月後。

”美少女”と呼ぶにふさわしい少女が
観覧車を指さす。

女子高生のようだ。

「--あれに乗ってくるね!」

「え~観覧車、わたしは苦手だなぁ」

2人組の女子高生が笑う。

一人が、観覧車に乗ると言い出した。

「ーなんかさ、あれに乗ると女子力がUPするんだって!」
そういうと、一人の女子高生は嬉しそうに観覧車に
駆け寄っていった。

そして、またーーーー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

何だか急に思いついた作品を書いてみました!
都市伝説には隠された色々な裏があるかもしれないですよ!

PR
小説

コメント