<憑依>不良の華③ ~散華~(完)

華は散る―。

世の中、全てが思い通りに行くとは限らない。
狂気を弄んだものは、
やがて、狂気に飲み込まれるー。

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香澄は、普通の制服で登校した。

今日は、香澄に、リーダー格の徹が憑依している。
徹は”本人になりきる”のが好きだった。

教室に入ると…
クラスメイトたちの冷たい視線が注がれた。

「み…みんな、おはよう…」
香澄は緊張した様子で声を出した。

チッ…

香澄はみんなに気付かれないように舌打ちをする。

”あいつら、一体何したんだよ”

と。

香澄の体は、明日の朝”儀式”によって、
徹たちの彼女になる。

憑依薬の説明書によれば、
強く念じることで、その乗っ取った体の記憶に
影響を与えることができるとのことだー。

その力で、香澄を、自分たちの彼女にするー。

そうなれば、
香澄は、自らの意思で、
徹たちに尽くすことになるのだ。

散々、遊びつくした上で、元の人格まで
書き換えてしまうー。

非道ー。
けれど、徹たちはそれを何とも思わない
非道さを持っている人間だった。

ー手に入れられるものは手に入れる。

「--ねぇ、香澄」
クラスメイトの一人が尋ねる。

「ん?」
香澄のフリをして、振り向くと、その子は
険しい表情をしていた。

「--紀久恵…怒ってたよ」

確か、香澄の親友の名だ。
昨日憑依していた健斗が、紀久恵がどうこう言っていた。

「--怒ってた?」
香澄が聞くと、その子はうなずいた。

紀久恵は昨日、健斗が憑依している香澄に殴り飛ばされて、
そのまま怪我を隠して下校した。
そして、今日は欠席しているー。

その子によれば紀久恵は自分の
ツイッターアカウントで、香澄に対する呪いの言葉を
呟いていたのだとか

「ふぅん…ありがと。」
香澄はそう言うと、
笑みを浮かべた。

女子高生によくある喧嘩ではないか。
そんなにびびることなんて、ない。

彼氏の時雄と目が合ったが、
時雄はすぐに目を逸らした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

時雄に呼び出された香澄は、
それに応じた。

「ごめん…もう、、、無理だよ…
 僕と、、別れて」
時雄は言った。

おそらく健斗や長治が色々やらかしたのだろう。

「--うん、わかった」
香澄はあっさりと承諾した。

「えーー?」
意外だったのか、健斗が少し驚いたような表情を浮かべた。

「---別れよ。別にわたしは構わないよ」
香澄はそれだけ言うと、立ち去ろうとした。

「--ねぇ!最近変だよ!」
時雄が叫んだ。

「どうしちゃったんだよ…
 僕、君のことが好きだったのに…
 最近、なんだか、毎日毎日、変だよ!

 まるでー、毎日違う香澄を見ているみたいだ!」

思い切って叫んだ時雄。
その時雄を振り返り、香澄は微笑んだ。

「---毎日違うわたし…?
 そうかもね… ふふっ」

そう言うと、香澄はそのまま立ち去ってしまった。

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夜。

自宅で、香澄は自分のからだを弄んでいた。

「んぁあ…♡」
香澄は快感に身をゆだねて
甘い声を出す。

「そういえば…」
香澄は体操着を着て興奮したままの格好で
ふと疑問に思う。

先に憑依した3人は、妹の佳鈴が
うるさくて邪魔だったと言っていたが…

「---」
香澄は机に向かっている佳鈴を見つめた。

佳鈴は、特に何も話しかけてこない。

「--ま、いっか」
香澄は気にする様子もなく、
佳鈴のそばで堂々と喘ぎ始めた。

「------」
机に向かう佳鈴は、姉の喘ぎ声を聞きながら
”ゾクゾク”していたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

倉庫で仲間と合流した徹は、香澄を解放した。

そしてーーー
憑依薬で”半憑依”の状態にし、強く念じた。

「--わたしは、この人たちの彼女」

「この人達がだいすきー」
「何でも言うことを聞くー」
「わたしは…この人たち以外への興味なんてない」

もうろうとした意識で呟く香澄。

脳が急速に、悪意に支配されていく。

そしてーー

「あ、、、あ、、、ががが、、、、ががががががっ!」

半分は香澄の意識、
半分は徹の意識、
お互いの意識の狭間で、香澄の脳は
正しい認識が出来なくなり、
次第に徹の意識を自分の意識だと認識してしまうー

”自分は、この人たちの彼女だ”

とー。

「---う…」

徹から解放された香澄はゆっくりと目を覚ました。

「--わたし…」
香澄が周囲を見渡す。

「あ、、徹…竜二郎…健斗…長治…」
みんなの方を見て、笑みを浮かべる香澄。

「---ふふ、お前は、俺たちの何だ?」
徹が腕を組みながら訪ねる。

「--え、、、な、何って、みんなの彼女じゃない」
香澄がそう言う。
顔を赤らめている。
大したイケメンでもない4人を見ながら
”こんなイケメンに囲まれていられるなんて幸せ”と
心の中で叫んだ。

「---なら、ここで裸になれるかぁ?」
健斗が尋ねた。

すると、香澄は嬉しそうにうなずいた。
「わたしの体を見てくれるなんて、うれしい♡」
躊躇なく服を脱ぎ始める香澄ー。

「--そういうことだったの?」

倉庫の入り口から声がした。

ーー香澄の親友、紀久恵だった。

「--私をバカにして何をしてるのかと思ってたら
 こんな不良たちとつるんでたわけ。」

一昨日、健斗に憑依された香澄に殴られた傷を
抑えながら紀久恵が狂ったように笑う。

「--何だよお前は!」
竜二郎が叫ぶ。

「---うふふふふ、わたしを裏切ったの?香澄!
 許さない!」

紀久恵はナイフを手に香澄の方に向かってきた。
嫉妬が、狂気に変わった瞬間だった。

「--っぶねぇだろ!」
健斗が叫んで、紀久恵を止めようとする。

だがー。

「---っう…」
健斗が低いうめき声を出した。

「---邪魔しないで!」
紀久恵のナイフが、健斗の胸部に突き刺さっていたー。

「--あ…あ・・・」
威勢がよかった健斗が瞳を震わせて、
恐怖を目に浮かべていたー。

「--きゃあああああ!」
オネェ系の長治が、恐怖で尻餅をついている。

「--ふざけやがって この野郎ぉ!」
竜二郎が、紀久恵を羽交い絞めにする。

けれどー。
紀久恵は何本もナイフを持っていた。

健斗と同じように、刺されて
その場に崩れ落ちる竜二郎。

「---お、、おい… おい!」
リーダー格の徹が唖然としてその様子を見ている。

なんだこれは?
俺たちは、香澄という女の体を楽しんだあと、
自分たちの彼女にして
自分たちにとっての”華”を…。

「---いやああああああああ!」
香澄が大声で悲鳴を上げる。

健斗と竜二郎を見て
涙を流す香澄。

書き換えられた記憶により、
二人は命よりも大切な存在ー

その二人が、一気に消えてしまった。

「かーすみ!
 わたしと、かすみはいつまでも親友って
 約束したよねぇ?」

紀久恵が狂った笑みを浮かべて笑う。

「---逃げろ!」
徹が叫ぶー。

せっかく手に入れた彼女を奪われたら
たまったものじゃない。

そして、徹は、紀久恵に強烈な蹴りを入れた。
紀久恵は「きゃあ!」と叫んで激しく吹き飛ばされて、
そのまま気を失った。

「---と、徹…!」
香澄がうろたえている。

「いいから、逃げろ!」
徹がそう言うと、香澄は倉庫の外に飛び出した。

「---くそ餓鬼がぁ…!」
二人の仲間を奪われた怒りで、徹は激昂していた。

”許さない”

倒れている紀久恵の方を見たー。
しかしー
そこに紀久恵は居なかった。

「--!?」

胸に強い痛みが走った。

「---わたしと、香澄ちゃんの邪魔しちゃ
 い~~~や!」

完全に狂ってしまった紀久恵は、徹に容赦ない一撃を
加えると、そのまま徹は倒れた。

「なぜ…だ…」
徹は天井を見上げながら思う。

自分たちはただ…
遊びたかっただけだ。

女が欲しかっただけだ。

それなのに…
どうして…。

体に力が入らないー

”奪おうとした”罰なのかー

徹は、悔しそうに天井を見上げた。

オネェ声の長治の悲鳴も聞こえてきた。

「--あぁ……
 世の中って、うまくいかねぇもんだな…」

そう呟くと、
徹は、力無く、手を床に落とした。

倉庫内には4人の屍。
その中心には紀久恵。

紀久恵は目に涙と笑みを浮かべながら
不気味に笑っていた。

「--香澄は、私だけのもの…!」

倉庫から出ようとする紀久恵ー。

だがーー
通行人の通報を受けた警察官が駆けつけ、
紀久恵はすぐに逮捕されたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

自宅。

不気味な、うめき声が響き渡っているー

「----~~~~!」
香澄が、恐怖を目に浮かべて、
イスに縛られていた。

その近くに、一人の女がやってきた。

香澄の妹の佳鈴だった。

「--おねぇちゃん…
 あっそびましょ?」

刃物を手にした佳鈴が、
ゾクゾクした目で、香澄を見つめて不気味な笑みを浮かべたー

おわり

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コメント

憑依相手の周囲の人間が元々狂っていた…
憑依で刺激したことによって、その狂気が、
決して開けてはならない狂気が、飛び出てしまった、
というお話でした(え?

憑依<不良の華>
憑依空間NEO

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