<憑依>不良の華① ~玩具~

とある4人の不良グループが居た。

彼らは、ある日思う。
”俺らには、華が足りない”と。

そして、そのうちの一人が言った。

「華がなければ、奪えばよいじゃない」

とー。

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昼休みの始まりを告げるチャイムを聞きながら、
吉野 香澄(よしの かすみ)は来週のことを考えていた。

来週は、彼氏との初デート。

彼氏とは付き合いだしてから1か月。
けれど、何故、”初”デートなのか。

それはー
彼氏の時雄(ときお)も、香澄自身も、
奥手だったからだ。

生徒会書記を務める香澄は、
可愛らしい赤渕のメガネが特徴的な
美少女。
けれども、男子が苦手だったため、
今まで付き合った経験などはなかった。

そんな中、同じく奥手な男子、時雄と
生徒会活動で一緒になり、
二人して遠慮している間に、何故か互いのことが
好きになり、
二人とも遠慮しながら、付き合い始めたという
面白い間柄だった。

「--頑張りなさいよ、来週のデート!」
友人の紀久恵(きくえ)がニヤニヤしながら言う。

ショートカットの活発な紀久恵は、
何かと香澄のことを冷かしていた。

「わ、、分かってるけど…
 あ、、あの…」

香澄が顔を真っ赤にして言う。

「ど、、どうしよう…
 考えただけで緊張しちゃう…」

香澄が顔を赤らめているのを見て、
紀久恵は首を振る。

「--俺、お前のことが好きだ…

 な~んて言われたらどうするのよ?」

紀久恵に言われて、
奇妙な妄想をしてしまった香澄は、
そのまま頭が真っ白になって固まってしまった。

「あぁ…どうしよう~」
一人で、うわごとのように呟いている。

「これは、重症ね」
紀久恵はヤレヤレと言う様子で首を振った。

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放課後

「わ…わたしも好きです…」

一人で、週末のシミュレーションをしている香澄。

時雄の顔が脳裏に浮かぶ。

「きゃっ…無理…無理無理…」

顔を真っ赤にして、手で顔を覆う香澄。

「----」
そんな香澄の姿を背後から見つめる怪しい二人組が居た。

「---なぁ、あの子、可愛くね?」
いかにも素行の悪そうな男の一人が言う。

「あぁ、俺たちの”華”にぴったりだなー」
もう一人の不良がそう言うと、
不良たちは、裏路地にさしかかったところで、
香澄を襲撃した。

「きゃあ!な、何ですか!」
香澄が驚いたその直後、薬品で、香澄は眠らされてしまった。

「OK、アジトに連れて帰ろうぜ」

そう言うと、男たちはニヤリと笑みを浮かべた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜ー。
月光が輝く廃墟の工場で、
男たち4人が、寝ている香澄のからだを見つめていた。

「くふふ…可愛らしいメガネっ子じゃないか」
4人リーダー格である
赤野 徹(あかの とおる)がニヤリと笑みを浮かべた。

その周囲には、3人の不良が立っていた。
青沼 竜二郎(あおぬま りゅうじろう)
緑川 長治(みどりかわ ちょうじ)
黒瓦 健斗(くろがわら けんと)

3人とも、地元の不良高校出身で、
卒業後、大学に行くこともなく、
そのまま遊びほうけていたものたちだ。

卒業後、4年経っても彼らは好き勝手遊んでいる。

そんな中、4人の一人、健斗が言ったのだ。

「俺たちには”華”が足りない」と。

彼らは女性に縁がなかった。
いつも男臭い4人組でつるんでいるばかりで、
彼女は誰にも居なかった。

そんな健斗の言葉を聞いて、
長治はこう提案した。
「華が無ければ、奪えば良いじゃない」と。

そして、彼らは闇ルートである薬品を手に入れて
4人全員が”人に憑依する力”を手に入れたのだ。

・・・。

香澄のスマホがなっている。

「そろそろまずいな」
リーダー格の徹が言う。

おそらく、電話は親からだろう。
警察沙汰になるのは面倒くさい。

「ーー誰が憑依するー?」

彼らは日替わりで香澄に憑依して、
女を楽しむつもりだった。

捕えた香澄はおもちゃだ。
毎日毎日、不良たちに交代交代でからだを
使われ続ける、玩具ー。

彼らにとって、香澄の意思など、関係なかった。

「--最初はグー」
じゃんけんを始める4人。

そしてー、
メンバーの一人、竜二郎がじゃんけんで勝利し、
憑依する権利を手に入れた。

「--くっそ!最初はお前か!」
他の3人がぼやく中、竜二郎は笑みを浮かべて、
香澄に憑依した。

「---うっ…!」
既に眠らされていた香澄はあっけなく
体も心も奪われてしまった。

ムクりと起き上がる香澄。

そして、3人に向かって笑みをい浮かべた。

「むふふふふふふ~~女子高生~!」
そう言って嬉しそうに香澄は足をじたばたさせて触り始めた。

「--うはぁ♡ 足フェチの俺にたまんねぇぜ!」
大人しそうな香澄が「はぁ♡ はぁ♡」と言いながら
自分の足を顔を真っ赤にしながらこすり続けている。

「---」
他の3人はつばを飲み込むことも忘れて
目の前の狂った美少女を見つめた。

スマホに再び着信が入る。

”おかあさん”と書かれていた。

「あんだよ、うっせ…」
思わず、香澄はいつもの自分で電話に出そうになった。

「あ、コホン、コホン…
 え、えっと、おかあさん?ごめんね…
 うん、あの、学校の行事で遅くなっちゃって。

 うん、わたしは大丈夫、うん、ごめんね」

そう謝って、香澄は電話を閉じた。

そして、口元をゆがめた。

「うひひひひひひひひひひ!
 ばーーーーーーーか!
 娘がこんな目に遭ってるのによ~!
 うひゃはははははは!」

香澄が大声で笑うー。
可愛い声が工場内に響き渡った。

「---明日の朝、またここで集合だ」
リーダーの徹が言うと、
香澄はにっこりとほほ笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ただいま~」
香澄を演じながら、自分の部屋があるであろう、
2階へと上がっていく。

「---ここがわたしの部屋ね… うふふ♡」
不気味な笑みを浮かべると、香澄は、鞄を放り投げて
ベットに飛び込んだ。

ベットのニオイを嗅ぎながら、
足をバタバタさせる香澄。

「うふふふふふふ♡ たまんねぇ…~!」
ベットのニオイを嗅ぐ音が部屋中に響き渡る。

「んっん~♡」
興奮しきった様子で、香澄は鏡を見つめると
笑みを浮かべた。

「--うふふ・・・わたし、
 今日から生まれ変わるの!
 変態で、えっちで、どうしようもない女の子に♡
 うふふふふふふっ♡」

そう言うと、香澄は、制服を脱ぎ捨てた。

胸を少しさわって、軽く声を出したあとに、
香澄は、自分のスカートを見つめて、
そのスカートに手を伸ばす。

そして、スカートを頭からかぶった。

「んっっ♡ ふふ♡ あふふふふふ♡」
スカートを頭からかぶり、
嬉しそうに飛び跳ねている香澄ー。

そこにー

ガチャ…

「お……お、、、姉ちゃん…?」

妹が入ってきたー。

香澄は、凍りついた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそっかー、演劇の練習かー。
 じゃあ仕方ないよねー」

妹の佳鈴(かりん)が棒読みのセリフを
口にしている。

咄嗟に香澄は
「演劇の練習!」と叫んだ。

スカートを頭にかぶり、全裸で飛び跳ねる
演劇がどこにあると言うのか。

「--チッ、妹と部屋共用かよ!」
香澄は悔しそうにつぶやいた。

「ん~?なぁにお姉ちゃん?」
佳鈴が首をかしげる。

「な、なんでもねぇ…、、、な、なんでもないわよ!」
香澄はそう言うと、不機嫌そうに机に向かった。

とりあえず香澄が持っていた唯一のミニスカートを
穿いて、肩を出した服を身に着け、
女の気分を味わった。

本当だったら、この肩をペロペロと舐めてみたい。

けれどー。

香澄はイライラした様子で頭をかきむしる。

「--どうしたの?お姉ちゃん!
 そんなに一人エッチ見られたの恥ずかしかった?」
妹の佳鈴がクスクスと笑う。

「--ち、違うわよ!」
不機嫌そうに言う。

「--お姉ちゃんさぁ?
 その服、恥ずかしくて着れない!って
 言ってなかったけぇ~?」

佳鈴が意地悪そうに尋ねる。

「--わ、私だって女だから」
そっけなく答える香澄。

あぁ、早く肩をペロペロ舐めたい。
うっせぇ妹だ。

そう思いながら香澄は、イライラして
貧乏ゆすりを始めた。

「--でさ、お姉ちゃん!
 スカートあたまから被る演劇、いつ発表するの?
 わたしもみた~い!」

佳鈴が、言う。
香澄と佳鈴はどんな関係だったのだろうか。

「--う、うるさいわね!
 今、わたし、勉強中なの!」

香澄が適当な教科書を開いて言う。

「--あっそ~
 じゃ、おとうさんとおかあさんに言っちゃおっかな~」

佳鈴が言う。

香澄は我慢の限界だった。

「うっせぇんだよ!!!!!このクソ餓鬼が!」
イスを蹴り飛ばして香澄は大声で叫んだ。

「ひっーー!?」
妹の佳鈴がビクっとして、震えあがる。

そのまま壁に追い込んで、香澄は
ありったけの怒りをにじませて、
佳鈴を睨みつけた。

「--わたしが、何してようがわたしの勝手だろうが!
 あ?妹のクセして、お姉ちゃんに逆らうの?
 あんまり偉そうにしてると、
 あんたのその体、わたしがめっちゃくちゃにしてやるわよ」

そう言うと、佳鈴は震えたまま
何も言わなくなってしまった。

「ふんー」
香澄は不機嫌そうにスマホを放り投げて、
再び机に向かうのだった。

(貧乏くじだぜ、妹と同じ部屋じゃ、
 エッチできねぇじゃねぇか!)

他の3人に迷惑はかけられない。

”香澄の日常を壊さない程度に遊ぶ”

それが、4人のルールだった。
理由はーーー

妹の佳鈴は震えていた。

”歓喜”にーーー

「(お姉ちゃん…なんて目が出来るの…!
 あぁ、イイ!わたし、、ゾクゾクしてきた…!)」

妹の佳鈴は、”天性の変態”だったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日。

廃工場にやってきた香澄は
ため息をついた。

眼鏡も曇っている。

「あん?どうした?」
徹が尋ねると、
香澄は言った。

「--この女の妹に絡まれて満足に楽しめなかったぜ。
 はぁ…」

ため息ばかりが出る。

「はん。だらしねぇな!
 中途半端な憑依すっからだぜ!
 俺なら、せめてせめてせめて…!」

健斗が言う。
健斗は憑依したら、無茶苦茶に”攻める”と決めている。

だがー。
2日目の今日は、じゃんけんにより、
長治が憑依する番だった。

「--あたしの番ね」
オネェ系の不良、長治がにたりと笑う。

「---くふふ、可哀想だなこの女も。
 オネェに憑依されるなんてよ」

香澄から、離脱した竜二郎は首を振った。

香澄は、力無く倒れている。

「んっ……」
香澄が意識を取り戻した。

もうろうとした意識で周囲を見渡す香澄。

「え…ここは… きゃあっ!」
からだがビクンと跳ね上がる香澄。

2番手のー長治に憑依された。

「--むふふ・・・
 あたしがこのからだ有意義に使って
 あ・げ・る」

気持ち悪い口調で言うと、香澄は、
竜二郎にキスをして、
そのまま学校へと向かって行った。

徹は、鼻で笑って
その後ろ姿を見つめた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校に到着した香澄は、
彼氏の時雄に一目ぼれしたー。

いや、正しくは香澄に憑依している
オネェ系の長治が、時雄にたまたま一目ぼれしたのだ。

ロッカーをいじっている時雄に、
香澄は声をかけた。

「あら?あなた、可愛いじゃない」

香澄の突然の呼びかけに
彼氏の時雄はビクッとした。

「あ、お、、おはよ…」
時雄が顔を赤らめている。

「うふふ・・・赤くなっちゃって…
 可愛い~~」

男が言うと不気味なセリフも香澄が
言うと可愛らしく見える。

時雄は真っ赤になって、そのまま教室へとかけこんでいった。

「--やるじゃん!」
背後から、香澄の友人、紀久恵がニヤニヤしながら声をかけてきた。

香澄は興味無さそうに紀久恵を見つめた。
「悪いけどアタシ、女に興味はないの。
 ごめんなさいね」

どこか変な言い回しで香澄はそのまま教室に入って行った。

ーー紀久恵の表情から笑みが消えた。

「--何よアイツ、うざい…」

紀久恵はそう呟くと、香澄のロッカーを力強く蹴り飛ばしたー。

紀久恵はー”嫉妬深い女”だったー。

②へ続く

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コメント

3話で書ききれるか心配になってきました(笑)
意外と内容が詰め込まれているものなので!

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憑依<不良の華>

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