1週間ほど前に、体調不良で執筆を延期した
「ホームレスの憎悪」の最終回です。
ようやく完成しました。
お待たせしてすみません!
それでは、どうぞ!
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周囲の人間は悉く憑依されてしまった。
桃花も、クラスメイトたちも、姉も、母も…。
麻江は走った。
あいつらは、男に興味は無いはずー。
ならーーー。
彼氏の海保であれば…
きっと助けてくれる。
まだ、間に合う。
なんとかしてあいつらを。
「---あ!居た!待ちなさい!」
姉の柚奈が下着姿で、街中を徘徊していた。
「お、、お姉ちゃん!やめて!
そんな格好で街を走ったら…!」
麻江は叫ぶー。
けれど、その言葉はもう柚奈には届かないー。
「---もうっ!」
麻江は涙目で叫ぶと、
なんとか柚奈から逃げおおせて、
海保の家の前にたどり着いた。
インターホンを鳴らす。
「う、、海保くん!助けて!」
麻江が息を切らしながら言うと、
海保はすぐに麻江を招きいれてくれた。
「どうしたんだよ…?」
爽やかな男子という感じの海保は
困惑した表情で言う。
海保は大の妹好きで、
時々それが異常に見えることもあるが、
それ以外はごく普通の爽やかイケメン、という感じだ
「--とりあえず、話は上で」
海保が自分の部屋のある2階に案内しようとする。
しかしー
「お兄ちゃん・・・」
背後から、女子中学生の妹が姿を現した。
「--そんな女の言うこと、聞かないで」
不気味な声で言う妹。
「え、、、ど、どうしたんだよ?」
海保が戸惑っている。
「---わたし、その女嫌い!」
妹は敵意むき出しで、麻江を指差した。
そしてー
「すぐに追い出して!でないとお兄ちゃんとは
絶交よ!」
妹が叫ぶ。
海保は考え込んでいる。
「まさかー」
麻江ははっとして妹の表情を見た。
その表情はー邪悪に歪んでた。
「--ひっ!?」
麻江は思わず声をあげた。
そしてー
「ご、ごめんな。妹が嫌がってるから、
また今度にしてもらえるか」
そういうと、海保は有無を言わさず、
麻江を玄関から外に追い出した。
「--おにいちゃん!だいすき♪」
そういうと、妹は、兄にキスをして、そのまま押し倒した。
ーー海保は、もう妹の言いなりだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その日は、野宿したー。
翌日…
麻江は最後の賭けで、学校に向かった。
「わたしは…どうすればいいの…?
でも…このままにしておくことはできない!」
麻江が教室に入ると、
女子達が、色々な姿で、互いを抱きしめ、
互いに体を弄びまくっていた。
「--あら?」
メイド服姿の桃花が笑う。
他の生徒達も、麻江に気付き、
あざ笑うようにしている。
男子生徒たちは、女子達にすっかり
たぶらかされたのか、ニヤニヤしているだけだ。
「---酷い!なんとも思わないの!」
麻江は叫んだ。
メイド姿の桃花。
スクール水着姿の生徒会長、双海。
コルセット姿の芙由子。
アイドル衣装の女子ー。
キャミソール姿の女子ー。
男みたいな格好の女子ー。
髪の毛ぼさぼさでホームレスみたいになってしまった女子。
麻江は怒りに身を震わせた。
「人の人生を狂わせて!なんとも思わないの!?」
麻江の叫びに、桃花は笑った。
「--偉そうに…」
近づいてきた桃花は、麻江の顔に向かって、
唾を吐きかけた。
麻江は目を背ける。
「---あんた、自分の立場、分かってる?」
桃花はそういうと、
自分の胸をもみ始めた。
「んあっ…♪」
麻江が声を出そうとすると、
桃花はニヤッと笑った。
「もう、この女たちは
何もかも、思うが侭。
この意味、わかる?
わたしたちの機嫌を損ねたら、
大変なことになるよ?」
桃花の言葉に反論できず、
うつむいてしまう麻江。
確かにその通りなのは分かっている。
何かしようとすれば桃花は、
さらに酷いことをするー。
そんなことは分かりきっている。
「でもー!」
麻江が涙を流しながら叫ぶと
桃花は突然、麻江を抱きしめた。
「わたし、親友だもんね?
親友同士のえっちっているのも、
おいしそう…うふふふふふっ」
桃花が笑う。
麻江は必死に桃花を引き剥がそうとした。
でも、
できなかったー。
桃花はそのまま麻江を押し倒し、
麻江の服を脱がせ始めた。
「いや…やめて!
桃花とわたし、、そんな関係じゃ…!」
麻江が叫ぶと、
桃花は微笑んだ。
「じゃ、これからそういう関係になろっか♪」
と。
「うふふ…綺麗な唇…♡」
桃花が感じきった表情で笑う。
完全に支配されているー
ホームレスに身も、心も
「はぁ♡ はぁ♡
その怯えた目…
わたし、興奮しちゃう♡」
桃花ははぁ、はぁ、と言いながら
唇を近づけて、
麻江にキスをした。
「んんぅ…♡ 早く、わたしを受け入れなさい」
口を必死に閉じている麻江。
桃花と、こんなことをするわけにはいかない。
「--早く開きなさい」
桃花が言う。
「--んんん」
麻江は必死に耐える。
桃花を、受け入れてしまうわけにはー。
「--早く、開けよ!クソ女!」
桃花が怒鳴り声を上げる。
強烈なビンタをお見舞いされた麻江は
驚いて口を開いてしまう。
その瞬間に桃花は、麻江の舌に、自分の舌を
絡ませた。
「んんんっ♡ あさえぇ~~~」
いやらしさ全開で声を出す桃花。
麻江は涙を流した。
お願い…桃花、目を覚まして…!
と、心の中で叫んだ。
けれどー
その言葉は桃花には届かなかった。
桃花は、その手で、麻江の胸を
イヤと言うほどもみまくった。
「んんんんんん~~~~♡」
キスに満足したのか、桃花は、
自分の体を抱きしめて、そのまま、麻江の上で
悶え始めた。
あまりの快感で、どうしていいかわからないようだ。
「---はあぁああああああ~♡」
体を喜びに震わしながら、息を吐く桃花。
「---酷い…酷すぎる…」
変わり果てたクラスメイトたちを見て、
ただ、涙を流すことしかできない、麻江。
自分が情けなかった。
けれど、
どうすることもできない
悔しいー
「---そうだ、麻江ちゃん」
桃花が笑う。
「”もとの生活”に戻りたい?」
桃花の予期せぬ提案に、麻江は目を開いた。
「--どういうこと?」
麻江の問いかけに、桃花はにやりと笑った…。
嫌な予感がするー
でも、麻江は、それを受け入れるしかなかった。
この状況ー。
この惨状ー。
もう…耐えられない。
「---お願い…”元”に戻してー」
そう言うと、桃花は優しく微笑んだ。
「いいよ、”元に”戻してあげるー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
朝ー、
いつもと変わりのない朝。
麻江は、ビクビクしながら起きた。
何が、起きたのか。
昨日、教室でホームレスに憑依されたクラスメイトたちに
囲まれて、
それからー。
最後に睡眠薬を飲まされてー。
「おはよう」
声がした。
慌てて振り向くと、そこには姉の柚奈の姿があった。
いつものように優しく微笑む柚奈。
「お姉ちゃん!良かった!」
麻江が言うと、
柚奈は優しく妹を包み込んだ。
「そうよ、もう、何も心配しなくていいの。
何も…」
麻江は、朝食を済ませる。
母もいつも通り。
ーやっと”元”の世界に戻ってこれた。
麻江は、学校へと向かう。
「おはよー!」
クラスメイトの友里と芙由子がいつも通り話しかけてくる。
いつものように雑談をする麻江。
生徒会長の双海は、本をいつものように読んでいる。
そしてーー
「おはよう!」
桃花が優しく微笑んだ。
「桃花!良かった・・・!」
麻江は、桃花に思わず抱きついた。
「ど、どうしたの!麻江!そんなに喜んで…」
「ううん!何でもない!」
麻江は、笑みを浮かべて桃花を優しく見つめた。
放課後。
いつもの1日。
”元”に戻った。
麻江は、夕日を見つめた。
そう、いつものーーーー。
目から涙がこぼれ落ちる。
ーーわかっている。
わかっているのにー
わたしは、臆病だから…。
自分だけが助かりたいからー。
「---ごめん…みんな」
麻江はぼたぼたと涙をたらしたーー。
ーー分かっていた。
彼女たちはー
解放されてなんか居ない。
記憶まで読み取ったホームレス達が
本人を演じているだけだ。
いや、
ホームレスたちはみんな、
女子高生としてこれから生きていくつもりなのだろう。
それは、
もう”みんなを助け出せない”ことを意味しているー。
最初に姉と話したときに分かった。
”お姉ちゃんじゃない”と。
どんなに本人を繕っても分かるー。
でも、どうすることもできない。
麻江はー
”偽りの楽園”で、生き続ける道を選んだのだった。
「--あれ?どうしたの?泣いてるの?」
背後から桃花が声をかけてきた。
「---ううん」
麻江は涙を拭いた。
「なんでもない!」
ーー麻江にはもう、この道しか残されていないー。
だからーーーー
それを、受け入れた。
桃花は一瞬にやりと笑うと、
「今日も一緒に帰ろ!」と微笑んだ…。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
先週の体調不良で、少し間が空いてしまいましたが
無事に完結できました!
ご心配おかけしました!!
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