社長はやりたい放題だった。
超・ブラック企業と呼ぶのがふさわしい会社ー。
しかし、社員の一人が、会社を訴えようと準備していた。
彼は、訴えを起こす前日、社長から呼び出される。
そこで、目にしたのは、高校生の娘が、社長の傍らで、
社長に尽くす姿だった。
--------------------------
株式会社 金ヶ崎コーポレーション。
3代目の社長、金ヶ崎 慶四郎(かねがさき けいしろう)は
先代が急死したため、若くして社長の座を継いだ。
しかし、慶四郎は社長になるには若かったのかもしれない。
30代半ばの慶四郎はビジネスを知らなかった。
会社の経営は悪化し、
そのしわ寄せは、社員たちに向かった。
社員の一人、坂城 隆吾(さかき りゅうご)は、
会社を訴える準備をしていた。
超・ブラック企業状態。
中間管理職でもあった坂城は、部下たちからも
懇願され、訴えるのを決意するのだった…。
・・・・・・・・・・・・・
夜。自宅で、
娘の絵梨奈(えりな)と話しながら食事をしていた。
絵梨奈は高校1年生の女子高生。
親の隆吾から見ても、とても可愛らしく、
クラスの男子からも人気が高いらしい。
けれど、絵梨奈は男が得意ではなく、
まだ彼氏とかは居なかった。
「---お父さん…本当にあれ、やるの?」
絵梨奈が心配そうにつぶやく。
「ーーあぁ…」
隆吾はそう答えた。
”あれ”とは、会社を訴える件のことだ。
「--すまんな。心配をかけて。
もしかしたら父さん、会社にはもういれない
かもしれない。
もしもそうなったら…」
「---ううん、いいよ」
絵梨奈が優しく微笑んだ。
「--わたし、お父さんを応援するー。
会社の悪い人たちになんて、負けないで。」
絵梨奈の言葉に父はうなずいた。
隆吾は妻の方を見た。
妻も、絵梨奈と同じ気持ちだと言わんばかりに
優しく微笑んだ。
「--もしお父さんが会社クビにされちゃったら、
わたしもアルバイト、もっと頑張るから!」
絵梨奈の言葉に、隆吾は、
「ありがとう。父さん、頑張るよ」と力強く答えるのだった。
・・・・・・・・・・・。
隆吾は、告訴の準備を終えた。
しかし、誰が漏らしたのか、社長が遠まわしに警告してきた。
「---坂城くん」
金ヶ崎社長は、隆吾より、少し年下だ。
だが、立場の違いから隆吾は敬語、
金ヶ崎社長は高圧的に話すことが多い。
「何でしょう?」
隆吾は振り返り、金ヶ崎社長を見た。
「--最近さぁ、会社に対して訴えを起こそうとしている社員が
いるって噂があるんだけどさ、きみ、誰だか知らないか?」
金ヶ崎社長が言う。
その目はー
隆吾を睨んでいた。
”気づかれている”
そう思った。
けれど・・・
「いえ、知りませんね」
と答えた。
「ふん」
金ヶ崎社長が笑う。
「賢い君のことだからそんなことは無いとは思うが、
そういうバカなことは考えないことだ。
”大切なもの”を失いたくなければね」
金ヶ崎社長が言うと、隆吾は答えた。
逃げも隠れもしない。
俺は、正面から正々堂々と戦う。
「--訴えを起こそうとしているのは俺です。
あなたのやり方は間違っている。
明日、労働基準監督所にかけこむつもりです。」
隆吾はそう言うと、
金ヶ崎社長は「へぇ…」とだけ答えて、薄ら笑いを浮かべ、
立ち去って行った。
「---」
隆吾は思う。
御坊ちゃま育ちのあの社長のことだ。
内心、焦っているに違いない、と。
会社を自分の王国か何かと間違えているのだろうが、
もう、好きにはさせない。
明日でお前は終わりだ!と
内心で隆吾は、呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌朝。
「いってきます!」
絵梨奈が元気よく言う。
高校生アイドルのような
正統派美少女で、純粋な性格の
絵梨奈は、父にとっても心の癒しだった。
もちろん、父として、だ。
変な感情はそこにはない。
「あぁ、頑張れよ」
隆吾はそう言うと立ち上がった。
そろそろ自分も、会社に向かうときだ。
金ヶ崎社長のやりたい放題を
止めなくてはならない。
出社したら、いよいよ行動を開始する。
この日のために、3か月間、準備をしてきたのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---」
絵梨奈は学校に向かっていた。
その時だった。
突然、黒いリムジンが、横にやってきて、
絵梨奈を無理やり中へと引きこんだ。
その間、わずか5秒ー。
早業だった。
「君が、坂城くんの娘さんかぁ!
可愛いねぇ!ひひひ!」
父の勤務先、
金ヶ崎コーポレーションの社長が、
笑う。
運転席の社員、原崎もニヤニヤとしている。
「な、、何なんですか…
わ、わたし、これから学校なんです!
降ろしてください!」
絵梨奈が叫ぶ。
「--イヤだね」
金ヶ崎社長がそう言いながら
絵梨奈の方を見て、
興奮が抑えきれなくなり、その胸を触ろうとした。
パチン!
音が車の中に響き渡る。
「触らないで!」
絵梨奈は叫んだ。
金ヶ崎社長をビンタしたのだ。
優しく、可愛らしい絵梨奈。
けれど、父親に似たのか、
曲がったことは大嫌いだった。
「この小娘がぁ!」
金ヶ崎社長は、謎のビンから煙をだし、
それを絵梨奈に吸わせると、
絵梨奈のからだは力無く、車の中に倒れ込んだ。
完全に無防備になった絵梨奈。
金ヶ崎社長はその胸を触り始めた。
「ん・・・♡」
意識を失っている絵梨奈が声を出す。
「くくく…」
金ヶ崎社長は、さらに興奮して、
ぐったりしたままの絵梨奈の唇にキスをした…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うっ…」
絵梨奈が目を覚ますと、
絵梨奈は、謎の部屋の中に閉じ込められていた。
「こ、ここは…どこ…?」
絵梨奈がおびえた様子で周囲を見る。
「やぁ…」
ふと声がした。
振り返ると、そこには金ヶ崎社長が居た。
「……わ、、わたしをどうするつもりなの!?」
絵梨奈が敵意をむき出しにして
金ヶ崎社長を見る。
「知っているかい?君のお父さん、
私の会社を訴えるつもりなんだ。」
金ヶ崎の言葉を聞いて、絵梨奈は社長を見る。
「--ふん、その顔、どうやら知っているようだね。
でも、そんなことさせれるわけにはいかないんだよ。
そこで、君に手伝って欲しいんだ」
金ヶ崎社長の言葉に、絵梨奈は表情を
曇らせた。
「--わたしが手伝う…?
そんなこと絶対にしない!お父さんは間違ってない!」
絵梨奈が言うと、
金ヶ崎社長は笑った。
「--お父さんを追いつめるために、
君にはわたしの秘書になってもらいたい」
社長が不気味に笑う。
「ふざけないで!わたしはー」
そこまで言うと、金ヶ崎社長が突然近づいてきた。
そしてーー
絵梨奈の目の前で突然倒れ、意識を失った。
「え…な、、、何…?」
直後、
絵梨奈の体がビクンと跳ね上がった。
「---ひっ…?」
絵梨奈は自分の体に違和感を感じる。
得体の知れない感触。
パニックになりかけた絵梨奈の脳裏に声が響いた。
「---君のからだ、今から1時間だけ借りるよ。
でも、安心しなよ。
すぐに返すから…」
(…たすけて…おとうさん!)
その思いを最後に、絵梨奈の意識は途切れた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---」
父、隆吾が出かけようとしたその時、
スマホに電話がかかってきた。
絵梨奈からだ。
「もしもし。どうした?」
隆吾が電話に出る。
絵梨奈は高校に行った筈だ。
事故にでもあったのだろうか。
「--お父さん…
やっぱわたし、お父さんのしてることおかしいと思う」
低い声ー
絵梨奈の声が怒りに満ちていた。
「--な、何のことだ?」
隆吾は突然のことに、何を言われているか分からず
混乱する。
「--お父さん、わたし、今、
会社に居るの」
絵梨奈が、低いトーンの声で続けた。
「会社!?どうして?」
叫ぶ隆吾。
「--知りたければとっとと、会社に来ることね。
クソ親父!」
絵梨奈が吐き捨てるように言うと、
「バキッ!」と音が聞こえて電話が切れた。
「絵梨奈…?」
隆吾は思う。
一昨日の夜、”応援してくれる”と言っていた絵梨奈が
どうして?
そう思いながらも、隆吾は会社に急いだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
絵梨奈は、スマホを踏みつぶしていた。
たった今、自分が使っていたピンクのスマホを。
何度も何度も踏みにじっていく。
「----お前に地獄を見せてやる」
絵梨奈は、金ヶ崎社長に憑依されていた。
「--むふふ・・・♡」
スカートを触りながら笑みを浮かべる絵梨奈。
「お前には、わたしの秘書になってもらうぞ」
そう呟くと、絵梨奈は笑みを浮かべて、囁き始めた。
「わたしは、金ヶ崎慶四郎の秘書…
金ヶ崎社長のために仕えて、
金ヶ崎社長のために生きる。
これからの人生、金ヶ崎社長に全てを捧げる」
”刻み込む”ように、一言一言、はっきりと
呟く絵梨奈。
「---わたしはえっちな女。
金ヶ崎社長のためなら、なんでもするー。
わたしの敵は、お父さん。
あんなやつ、この世にいらないー。
わたしは、金ヶ崎社長に全てを捧げるのが
何よりの幸せー」
絵梨奈は、笑いながら
呟き続けた。
その目からは、金ヶ崎社長も気づかないうちに、
涙がこぼれていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「--金ヶ崎!」
隆吾は出社すると、社長室に向かって歩いていた。
「ーーおや、坂城じゃないか」
社員の原崎、社長の身辺の世話をしている男が姿を現した。
「---原崎…」
原崎は、同期の男だった。
だが、上司にゴマをするような奴で、社長からも可愛がられている。
「---社長は居るのか?」
隆吾が尋ねると、原崎は「いるよ」と答えた。
「---そうか」
隆吾はそれだけ言って立ち去ろうとした。
すると、背後から原崎の声が聞こえた。
「--社長、可愛い子と、エッチしてたなぁ…
部屋から喘ぎ声が聞こえてきてた」
原崎の言葉に反応もせず、
隆吾は怒りを露わにして、社長室の扉を開けた。
声が聞こえるー。
「あぁっ♡ 社長♡ もっと♡ もっとぉ♡
わたしを、、わたしをこのままイカせてぇ♡」
少女の声がする。
完全に欲情している雰囲気だ。
「--ふふふ、可愛い奴だ。
だがまだだ。もっと俺にも楽しませろ」
「あぁん♡ 意地悪♡」
社長室の脇から声がする。
隆吾はそこに近づいていく。
”女の声”が絵梨奈のものではないと信じて。
「そうすねるな。お前の欲しがってる
ネックレスを買ってやるから」
社長の声が聞こえた。
それに、女は答えた。
「あぁん…絵梨奈、嬉しい…!」
と。
「--え、、絵梨奈…?」
隆吾は、恐ろしい言葉を聞いた気がした。
そして、物陰になっている部分に
駆け込んだ。
「絵梨奈!」
隆吾が叫ぶと、抱き合っていた金ヶ崎社長と…
スーツ姿で、ミニスカートを穿いた、
秘書スタイルの…絵梨奈が居た。
「--え…絵梨奈…な、、何をしてるんだ?」
隆吾が唖然として言うと、
金ヶ崎社長と絵梨奈は顔を見合わせて微笑んだ。
「-ーあら、お父さん」
絵梨奈がほほ笑んだ。
そして、椅子に座るように促した。
「--おい!どういうことだ!」
隆吾が叫ぶと、絵梨奈が不快そうに声を出した。
「社長の前で、失礼よ」
と。
その迫力に気圧され、隆吾は席につく。
金ヶ崎社長と絵梨奈は向き合うと、
二人で、突然抱き合い、強烈なキスをし合い始めた。
「んっ♡ ん・・・♡ まぁ♡ 社長ったら…♡」
男とそういうことをした経験もない絵梨奈が
興奮を隠さずに嬉しそうにしている。
「---ふふ、良い唇だ…」
金ヶ崎社長が言う。
そして、挑発的に隆吾の方を見ると、
ようやく隆吾に向かって話し始めた。
「---娘さんには、秘書になってもらったよ」
社長が言う。
「秘書…?ふざけるな!娘は高校生だぞ!」
隆吾がそう言うと、
社長は、絵梨奈の方を見て笑う。
「---どうする?絵梨奈…
お父さんはそう言ってるぞ。
私は強制しない。
絵梨奈の意思に任せるよ」
金ヶ崎社長がそう言うと、
絵梨奈はうっとりとした表情で答えた。
「わたしの全ては、社長のものです」
とー。
「おい絵梨奈!」
隆吾が叫ぶと、
絵梨奈が「うるさい!」と叫んだ。
「いつもいつもいつも、
父親ヅラして!
アンタはわたしのこと何もわかってない!
あんたのことなんて、父親だと思ったこと
一度もないから!」
絵梨奈の敵意むき出しの言葉に
隆吾は深くショックを受けた。
ーー絵梨奈は、
憑依されて、記憶を”塗りつぶされて”しまった。
金ヶ崎社長の悪意に。
今では、”自分の意思”で金ヶ崎社長のことを
本気で愛していた。
「---まだ、私を訴えるつもりか?」
社長が言う。
「--お前・・・お前が何かしたのか!」
娘の豹変に、隆吾は、金ヶ崎の仕業であると考えた。
金ヶ崎は否定しなかった。
「---訴えてやる…!
お前を地獄に落としてやる!」
隆吾がそう叫ぶと、
金ヶ崎はため息をついて、
こう言った。
「よく考えろよ」
と。
そして、絵梨奈の方を見ると、
絵梨奈に言った。
「服を脱げー」
と。
絵梨奈は嬉しそうに
「はい、承知いたしました」と答え、
服のボタンをはずし始めた。
「--娘がどうなってもいいのか?
坂城。よく考えろ?
ない頭を使ってよく考えろ???
ホラ、ホラ、ホラ!」
絵梨奈がスーツの上を脱ぎ捨てて、
さらにスカートも脱ごうとしている。
「ーー私に服従して、この女を助けるか、
それとも、娘を見捨てて、私を追い詰めるか、
どっちがいい?坂城ぃ…」
金ヶ崎社長は、下着を外そうとしている絵梨奈を
見ながら、ほほ笑んだ…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今回は、憑依そのもの、というより、
憑依で、”変えられちゃった”が中心ですね!
コメント