オタク男に妹が乗っ取られた。
整った復讐の舞台。
妹や、さくら達を救う為に、店舗に乗り込む木藤。
そこに、待ち受けていたのは地獄だったー。
-------------------------–
早朝ー。
事務所では、足をこする音が響いている。
木藤孝雄の妹、奈菜は、
顔を赤らめて、口元に汚らしく涎を浮かべながら、
ショートパンツ姿の自分の太ももを
何度も何度もこすっていた。
「うふぅ…♡ 女の子の脚って、こするだけで快感…♡」
近くには、さくらと明美が意思無き
”人形”となって立ち尽くしている。
二人は、暗示をかけられたオタク男の忠実なしもべ。
「・・・・」
だが、オタク男は気づいていない。
人形にしたと思い込んでいる二人のうちの一人、
明美は、暗示を受けていない。
たまたま明美がしていたコンタクトレンズにより、
上手く暗示が効かなかったのだ。
明美はそれを逆手に取った。
操られているふりをして、
オタク男の憑依薬を奪い、そして、
滅茶苦茶にされた自分の人生を取り戻す。
「---ん?」
奈菜が足から手を離すと、立ち上がった。
ガチャ
事務所に、白崎風香…
女子高生アルバイトの風香が入ってきた。
風香は今、オタク男の友人、
榊山に憑依されている。
「--ふふ、我妻君の人生、滅茶苦茶にしてきたよ!」
風香が胸を触りながら笑う。
嘘をついたー。
風香は我妻を誘惑することができず、
我妻のことを諦めた
”オタク男にウソの報告をしても気づかれやしない”
確かにそうだ。
我妻に言われた言葉通り、風香はウソの報告をした。
これで、こいつとの縁も終わりだ。
憑依薬を手に入れた今、自分には無限の可能性が広がっている。
風香という女子高生でしばらくエロいコスプレを楽しんだら、
次は…
「ふぅん…ご苦労様」
奈菜が笑った。
そして、事務所の隅にある虫かごの方に近づいて行った。
そこには、バッタやカマキリなどの昆虫が並んでいる。
「冬でもさ、昆虫って室温に気を付けると長生きするんだよ」
昆虫が大の苦手な奈菜。
しかし、今はオタク男に完全に支配されていて、
そんなことお構いなしだった。
奈菜はバッタを手につかむと、
ニヤニヤしながら微笑んだ。
「---な、何のこと?」
風香がオタク男の言いたいことを理解できずに困惑する。
奈菜が近付いてきた。
そしてーーー
「嘘つくのは良くないよなぁ!!」
と奈菜が大声で叫んだ。
「----!!」
風香は頭をわしづかみにされ、もがく。
「僕はさぁ、お前を風香に憑依させる前に
既に、風香に暗示をかけてあるんだよ!
だからさぁ、風香を通してお前の行動なんか
御見通しなんだよなぁ!」
奈菜が怒り狂った表情で叫ぶ。
「--お前、僕を裏切っただろ!?
我妻を誘惑できなかったんだろ!?
僕を馬鹿にしやがって!!」
奈菜は、オタク男本来の口調を隠そうとも
せずに、言い放つ。
そして、風香の口にバッタを押し付けた。
「---!?」
風香がその場に気を失って倒れる。
バッタが床に落ち、
動きを止めている。
「--ーーー」
明美は、その様子を凝視した。
何が、起きたのか。
「---榊山!お前にお似合いの姿だぜ」
奈菜が叫ぶ。
榊山はーー
バッタとキスしてーー
バッタの方に憑依してしまった。
オタク男の使う憑依薬はー
キスをすることで肉体を移動する。
それゆえにーー。
バッタが慌てた様子で逃げはじめる。
「--ー僕に逆らったお前は、こうだ!!!」
奈菜が狂った目つきで、バッタを足で踏みつぶした。
「きひひひひひひっ!
あはははははははははっ!!!!」
奈菜が大笑いしながら何度も何度も、
バッタを踏みつぶしていく。
あまりの異様な光景に、明美は目を細めたが、
逸らすことなく、その様子を見つめた。
「---ふん」
奈菜はつばを潰れたバッタに吐き捨てると、
不機嫌そうに足を組んで事務所のイスに座った。
風香が起き上がる。
その目には、生気が無い。
「---風香ちゃん、あなたにも、
お兄ちゃんへの復讐に付き合ってもらうわ」
奈菜が笑う。
オタク男の意のままに、
奈菜は、”大好きなお兄ちゃん”を傷めつけようとしていたー。
部屋から出て行く奈菜。
明美は、虫かごの方を見つめた。
虫かごには、まだ虫が数匹残っていた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
木藤は、店の前に辿り着く。
店の入口には”本日休業”と書かれている。
店は、オタク男によって、変えられてしまった。
オタク男の意のままに…。
影から一人の女が姿を現した。
ーーメイド服を着せられた風香だった。
「ようこそいらっしゃいました」
生気のない目で、木藤を見つめる風香。
「---白崎さん」
木藤は、心を痛めながら風香を見つめる。
「---ご主人様が中でお待ちです。」
風香が入口を開こうとする。
「白崎さん、なぁ、お父さんやお母さんも
きっと心配してる…!
目を覚ますんだ!」
木藤が叫ぶようにして言う。
けれど、風香は冷たく言った。
「わたしは、生まれたときからご主人様のしもべです」
と。
木藤はくそっ…とつぶやいて、風香に言われるがままに中へと
入った。
中に入ると、店内の棚は全て端によせられていて、
中央にテーブルと、その周辺にいくつかの装置が並んでいた。
中央のテーブルにはトランプが配置されている。
そしてーー
そのテーブルの先には、うつろな目のさくらが
座っていた。
「さくら!!」
お互いに好意を寄せていた木藤とさくら。
けれど、その再会は無情なものだった。
さくらは、オタク男が喜びそうな
フリフリの洋服を着せられたまま、
口を開いて、座っている。
右手は、謎の装置でロックされ、
外すことができない
「さくら!!しっかりしろ!さくら!」
木藤が叫ぶと、奥から笑い声が聞こえてきた
「うふふふふふふ・・・♡
お兄ちゃんったら、その女の人のこと、大好きなのね?」
奥の暗闇から、妹の奈菜が姿を現す。
奈菜は大胆に足を露出して、腰に手を当て
モデル歩きをしながらやってきた。
まるで、自分が主役と言わんばかりに。
胸を強調した服装も、兄の木藤にとっては
腹が立つ。
「どう?わたし?
綺麗でしょ?」
奈菜が挑発じみた口調で言う。
「----ふざけるな!」
木藤は声を大にした叫んだ。
「貴様、俺の妹にまで手を出したな!
必ず地獄に落としてやる!」
木藤が叫ぶと、
奈菜は笑った。
「ふふっ…
でもお兄ちゃん、わたしの姿を見て、
興奮してるんじゃない?」
奈菜が、胸を触りながら笑う。
「あぁ…♡ ふぅ…♡ ふっ♡」
エロい声を漏らす奈菜。
「--興奮なんかしてない!ふざけるな!」
木藤は叫ぶ。
けれど、言葉とは裏腹に、男のアソコが
反応してしまっている。
木藤は屈辱を感じながら唇をかみしめた。
「からだは正直ね…
ふふふ♡」
奈菜がバカにしたようにして笑う。
そして、木藤の方を見て、ほほ笑んだ。
「お兄ちゃん…これから
お兄ちゃんには”電撃神経衰弱”でワタシと
対決してもらうの」
奈菜がさくらの方に歩いていく。
「楽しい、楽しい、神経”衰弱”をねー。
うふふふ、あははははははははっ!」
奈菜はそう言うと、さくらに熱いキスをしたー。
「あはh・・・」
笑いながらキスをしていた奈菜が突然、意識を失って倒れる。
そしてーー
さくらが不気味な笑みを浮かべた。
「さぁ、木藤さん…
わたしと死のゲームをしましょ!」
さくらが笑う。
「さくら…」
木藤は拳を握りしめて呟く。
「---さぁ、そこの席に座りなさい!」
さくらが強気な様子で叫んだ。
木藤は、テーブルの前の机に座り、
さくらと対面する。
さくらは、妖艶にほほ笑んでいる。
「---」
さくらが顎で合図をすると、風香が木藤の傍にやってきて、
木藤の右手を、さくらと同じようにロックした。
奥から、明美も風香と同じようにうつろな目でやってくる。
「-ーー山西さん」
明美は、一瞬、木藤と目を合せたが、無反応のまま
目を逸らした。
「----」
妹の奈菜が立ち上がった。
奈菜もやはり、うつろな状態だった。
「--ルールを説明するわね」
さくらが言う。
「神経衰弱…知ってるわよね?
あれと基本のルールは同じ。
でもね…
今回の神経衰弱は、同じ絵柄を
そろえることができるまで、
ターンが続くの。」
さくらの言葉に木藤は首をかしげる。
本来は、異なる絵柄を出してしまったら
相手の順番になるはずだ。
「--うふふ・・・
この神経衰弱は、
”ハズレ”を引くたびに、電撃が走るの…!
私たちの右手を通してね…」
さくらが、自分の右手をロックしている装置を指さす。
「1回、2回、3回、4回…
間違えるたびに、電撃は強くなっていくの…
うふふ・・・
で、5回間違えたら…
致死量の電撃がわたしたちを襲うの…
うふふ・・・死ぬのはわたしかな?
それとも、木藤さんかな??
うふふ・・・ははははははははっ♡」
さくらが笑う。
木藤はゾッとした。
神経衰弱を間違えずに、引くことなど不可能だー。
5回不正解したら死ぬー?
「--1回でも正解の絵柄を引くことができたら、
相手のターンにうつるのよ」
さくらが笑う。
そして、さくらは言った。
「さぁ、木藤さん!
私たちの愛を憎しみに変えるときよ!
うふふふふふふふ♡
あなたの番から!カードを引きなさい!」
さくらは左手で胸を揉みながら、
木藤の方を見ている。
「----」
神経衰弱の最初のターンに、カードを揃えることなんて
不可能。
木藤はカードを適当に2枚引く。
♡の8とスペードの6。
「ザンネン・・・」
さくらが鼻で笑うと、
木藤の右手から全身に、電撃が走った。
「ぐああああああああああっ!」
「--うはっ♡ ははっ♡
マジウケる!あはっ♡あはははははははっ!」
さくらが大喜びで木藤の苦しむざまを見つめる。
「---はぁっ…はぁっ…」
木藤は再びトランプを引く。
ダイヤのKとクローバーのJ…
「ぐおおぉあああああああああああっ!」
さっきよりも強い電流が木藤を襲った。
「---僕を馬鹿にするからさ!木藤!」
さくらが叫んだ。
「お前が死んだら、この女も、
明美も、風香も、お前の妹も、
僕がしゃぶりつくしてやるよ…
なぁ…お前たち!」
さくらが獣のような目で明美たちの方を見る。
「はい、ご主人様…」
風香と明美と奈菜が、同時にそう呟いた。
「ーーーーーー」
明美は思う。
”憑依薬”を手に入れる目的のためー。
木藤先輩には申し訳ないけれど…
「……ふざけるな…」
木藤が顔を上げた。
「お前の好きになんかさせない!
さくらも、白崎さんも、山西さんも、奈菜も
俺の大切なヒトたちだ!
俺は必ず、みんなを救う!」
木藤がそう叫んで、
♡の2とダイヤの2を引いた。
「---チッ」
さくらが舌打ちをして、木藤を睨む
「ふ~ん、私のターンね…
えいっ!」
さくらが可愛らしく叫びながら2枚のカードを引く。
クローバーのAとダイヤの9
「きゃああああああああああっ!」
さくらが電撃を浴びて、悲鳴を上げる。
「さくら!」
木藤は叫んだー。
そして思う。
このゲーム…
自分がまければ自分は…
そして、さくらが負けたら…さくらは…?
「はぁ…はぁ…」
苦しそうな声をあげるさくら…
オタク男はさくらにこんな声を出させていることに
興奮した。
下着が濡れてきているのが分かる。
「--うふふ♡ 気持ちイイ♡」
さくらが再びカードを引く。
しかしー
またもやハズレだった。
「いっ…いやああああああああああ~~~~」
さくらが少し嬉しそうに悲鳴を上げる。
「・・・・・」
木藤はその姿を睨んでいた。
そして、3回目の挑戦も
さくらは、ミスをした…
「ぎゃああああああああああああっ…
た、、助けて…痛い…痛いよォ!!!!」
さくらが涙をこぼしながら叫ぶ。
木藤はもう我慢の限界だった。
「おいやめろ!俺なら死んでもいい!
だからもうやめてくれ!
さくらが、、さくらが死んでしまう!!やめろ!!」
木藤が叫ぶと、
さくらは涙をこぼしながら笑った。
「うふ…ふふふ…
心配いらないよ 木藤さん」
さくらは、右側に立つ、奈菜を指さした。
奈菜が、謎の装置に、
縛り付けられた状態で立っている。
そして、さくらは笑った。
「残りライフが2以下になったら、
このゲームは、アイテムを使えるの。
アイテムを使うと、自分のターンを
スキップして、相手にターンを回すことができる」
さくらの言葉に木藤は尋ねる。
「どういう意味だ?」
さくらは笑った。
「--テーブルの横にある赤いボタンを押せば
”ターンスキップ”が使えるの!」
さくらはそのスイッチを押す。
すると、
「ああああああああああああああっ!」
奈菜の体を縛りつけているベルトに電撃が
走り、うつろな目の奈菜が悲鳴を上げた。
そして、奈菜は涎を垂らしながら、
苦しそうに息をしている。
「--ターンスキップ…
菜奈ちゃんに電撃は流れちゃうけど、
このアイテムを使えば、何度でもターンを
飛ばすことができるのよ」
さくらは邪悪な笑みを浮かべた。
「---さぁ、あなたの番よ!」
さくらが指をさして笑う。
「お前・・・」
木藤はゾッとした・・・
これで、さくらは、何度でも自分のターンをスキップするだろう。
奈菜の体に電撃が走ることなどお構いなく。
「--くそっ… ぐあああああああああああっ!」
木藤のライフも残り2になった。
さくらが笑う。
「---さぁ、どうするの?木藤さん。
愛しい妹に電撃が流れちゃうけど、
ターンスキップできるわよ」
「----」
木藤はさくらを睨んだ。
「--お前は必ず地獄に落とす!」
木藤はそう叫んでカードを2枚引く。
しかし、ハズレ―
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
今まで以上の電撃が走るー。
ライフはあと1…。
次に電撃を浴びたら、本当に・・・
「---うふふ・・・
大好きな木藤さんを、
わたしが消し去るー。
うふふ・・・ゾクゾクする…
興奮する…
うふ…うふ・・・うふふふふふっ♡」
変わり果てたさくらを見ながら、
木藤は笑った。
「---俺は、さくらを傷つけることなんて
できないよ…」
そう言うと、木藤は、さっき自分が引いた2枚のカードを
見つめた。
木藤は、自らー。
「------!!」
それを見ていた明美は、辛そうな表情を浮かべてー、
ある行動を起こした…。
⑩へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
明日が最終回です!
その結末は…?
コメント