<憑依>暴走憑依男X⑨~人形~

オタク男に妹が乗っ取られた。

整った復讐の舞台。
妹や、さくら達を救う為に、店舗に乗り込む木藤。

そこに、待ち受けていたのは地獄だったー。

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早朝ー。

事務所では、足をこする音が響いている。

木藤孝雄の妹、奈菜は、
顔を赤らめて、口元に汚らしく涎を浮かべながら、
ショートパンツ姿の自分の太ももを
何度も何度もこすっていた。

「うふぅ…♡ 女の子の脚って、こするだけで快感…♡」

近くには、さくらと明美が意思無き
”人形”となって立ち尽くしている。

二人は、暗示をかけられたオタク男の忠実なしもべ。

「・・・・」

だが、オタク男は気づいていない。
人形にしたと思い込んでいる二人のうちの一人、
明美は、暗示を受けていない。

たまたま明美がしていたコンタクトレンズにより、
上手く暗示が効かなかったのだ。

明美はそれを逆手に取った。
操られているふりをして、
オタク男の憑依薬を奪い、そして、
滅茶苦茶にされた自分の人生を取り戻す。

「---ん?」
奈菜が足から手を離すと、立ち上がった。

ガチャ

事務所に、白崎風香…
女子高生アルバイトの風香が入ってきた。

風香は今、オタク男の友人、
榊山に憑依されている。

「--ふふ、我妻君の人生、滅茶苦茶にしてきたよ!」
風香が胸を触りながら笑う。

嘘をついたー。
風香は我妻を誘惑することができず、
我妻のことを諦めた
”オタク男にウソの報告をしても気づかれやしない”

確かにそうだ。
我妻に言われた言葉通り、風香はウソの報告をした。

これで、こいつとの縁も終わりだ。
憑依薬を手に入れた今、自分には無限の可能性が広がっている。
風香という女子高生でしばらくエロいコスプレを楽しんだら、
次は…

「ふぅん…ご苦労様」
奈菜が笑った。

そして、事務所の隅にある虫かごの方に近づいて行った。

そこには、バッタやカマキリなどの昆虫が並んでいる。

「冬でもさ、昆虫って室温に気を付けると長生きするんだよ」

昆虫が大の苦手な奈菜。
しかし、今はオタク男に完全に支配されていて、
そんなことお構いなしだった。

奈菜はバッタを手につかむと、
ニヤニヤしながら微笑んだ。

「---な、何のこと?」
風香がオタク男の言いたいことを理解できずに困惑する。

奈菜が近付いてきた。

そしてーーー

「嘘つくのは良くないよなぁ!!」
と奈菜が大声で叫んだ。

「----!!」
風香は頭をわしづかみにされ、もがく。

「僕はさぁ、お前を風香に憑依させる前に
 既に、風香に暗示をかけてあるんだよ!
 だからさぁ、風香を通してお前の行動なんか
 御見通しなんだよなぁ!」

奈菜が怒り狂った表情で叫ぶ。

「--お前、僕を裏切っただろ!?
 我妻を誘惑できなかったんだろ!?
 僕を馬鹿にしやがって!!」

奈菜は、オタク男本来の口調を隠そうとも
せずに、言い放つ。

そして、風香の口にバッタを押し付けた。

「---!?」

風香がその場に気を失って倒れる。

バッタが床に落ち、
動きを止めている。

「--ーーー」
明美は、その様子を凝視した。

何が、起きたのか。

「---榊山!お前にお似合いの姿だぜ」
奈菜が叫ぶ。

榊山はーー
バッタとキスしてーー
バッタの方に憑依してしまった。

オタク男の使う憑依薬はー
キスをすることで肉体を移動する。
それゆえにーー。

バッタが慌てた様子で逃げはじめる。

「--ー僕に逆らったお前は、こうだ!!!」
奈菜が狂った目つきで、バッタを足で踏みつぶした。

「きひひひひひひっ!
 あはははははははははっ!!!!」
奈菜が大笑いしながら何度も何度も、
バッタを踏みつぶしていく。

あまりの異様な光景に、明美は目を細めたが、
逸らすことなく、その様子を見つめた。

「---ふん」
奈菜はつばを潰れたバッタに吐き捨てると、
不機嫌そうに足を組んで事務所のイスに座った。

風香が起き上がる。

その目には、生気が無い。

「---風香ちゃん、あなたにも、
 お兄ちゃんへの復讐に付き合ってもらうわ」

奈菜が笑う。
オタク男の意のままに、
奈菜は、”大好きなお兄ちゃん”を傷めつけようとしていたー。

部屋から出て行く奈菜。

明美は、虫かごの方を見つめた。
虫かごには、まだ虫が数匹残っていた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

木藤は、店の前に辿り着く。
店の入口には”本日休業”と書かれている。

店は、オタク男によって、変えられてしまった。
オタク男の意のままに…。

影から一人の女が姿を現した。

ーーメイド服を着せられた風香だった。

「ようこそいらっしゃいました」
生気のない目で、木藤を見つめる風香。

「---白崎さん」
木藤は、心を痛めながら風香を見つめる。

「---ご主人様が中でお待ちです。」
風香が入口を開こうとする。

「白崎さん、なぁ、お父さんやお母さんも
 きっと心配してる…!
 目を覚ますんだ!」

木藤が叫ぶようにして言う。

けれど、風香は冷たく言った。
「わたしは、生まれたときからご主人様のしもべです」
と。

木藤はくそっ…とつぶやいて、風香に言われるがままに中へと
入った。

中に入ると、店内の棚は全て端によせられていて、
中央にテーブルと、その周辺にいくつかの装置が並んでいた。

中央のテーブルにはトランプが配置されている。

そしてーー
そのテーブルの先には、うつろな目のさくらが
座っていた。

「さくら!!」
お互いに好意を寄せていた木藤とさくら。
けれど、その再会は無情なものだった。

さくらは、オタク男が喜びそうな
フリフリの洋服を着せられたまま、
口を開いて、座っている。

右手は、謎の装置でロックされ、
外すことができない

「さくら!!しっかりしろ!さくら!」
木藤が叫ぶと、奥から笑い声が聞こえてきた

「うふふふふふふ・・・♡
 お兄ちゃんったら、その女の人のこと、大好きなのね?」

奥の暗闇から、妹の奈菜が姿を現す。

奈菜は大胆に足を露出して、腰に手を当て
モデル歩きをしながらやってきた。

まるで、自分が主役と言わんばかりに。

胸を強調した服装も、兄の木藤にとっては
腹が立つ。

「どう?わたし?
 綺麗でしょ?」

奈菜が挑発じみた口調で言う。

「----ふざけるな!」
木藤は声を大にした叫んだ。

「貴様、俺の妹にまで手を出したな!
 必ず地獄に落としてやる!」

木藤が叫ぶと、
奈菜は笑った。

「ふふっ…
 でもお兄ちゃん、わたしの姿を見て、
 興奮してるんじゃない?」

奈菜が、胸を触りながら笑う。

「あぁ…♡ ふぅ…♡ ふっ♡」
エロい声を漏らす奈菜。

「--興奮なんかしてない!ふざけるな!」
木藤は叫ぶ。
けれど、言葉とは裏腹に、男のアソコが
反応してしまっている。

木藤は屈辱を感じながら唇をかみしめた。

「からだは正直ね…
 ふふふ♡」

奈菜がバカにしたようにして笑う。

そして、木藤の方を見て、ほほ笑んだ。

「お兄ちゃん…これから
 お兄ちゃんには”電撃神経衰弱”でワタシと
 対決してもらうの」

奈菜がさくらの方に歩いていく。

「楽しい、楽しい、神経”衰弱”をねー。
 うふふふ、あははははははははっ!」

奈菜はそう言うと、さくらに熱いキスをしたー。

「あはh・・・」
笑いながらキスをしていた奈菜が突然、意識を失って倒れる。

そしてーー
さくらが不気味な笑みを浮かべた。

「さぁ、木藤さん…
 わたしと死のゲームをしましょ!」

さくらが笑う。

「さくら…」
木藤は拳を握りしめて呟く。

「---さぁ、そこの席に座りなさい!」
さくらが強気な様子で叫んだ。

木藤は、テーブルの前の机に座り、
さくらと対面する。

さくらは、妖艶にほほ笑んでいる。

「---」
さくらが顎で合図をすると、風香が木藤の傍にやってきて、
木藤の右手を、さくらと同じようにロックした。

奥から、明美も風香と同じようにうつろな目でやってくる。

「-ーー山西さん」
明美は、一瞬、木藤と目を合せたが、無反応のまま
目を逸らした。

「----」
妹の奈菜が立ち上がった。

奈菜もやはり、うつろな状態だった。

「--ルールを説明するわね」
さくらが言う。

「神経衰弱…知ってるわよね?
 あれと基本のルールは同じ。

 でもね…
 今回の神経衰弱は、同じ絵柄を
 そろえることができるまで、
 ターンが続くの。」

さくらの言葉に木藤は首をかしげる。
本来は、異なる絵柄を出してしまったら
相手の順番になるはずだ。

「--うふふ・・・
 この神経衰弱は、
 ”ハズレ”を引くたびに、電撃が走るの…!
 私たちの右手を通してね…」

さくらが、自分の右手をロックしている装置を指さす。

「1回、2回、3回、4回…
 間違えるたびに、電撃は強くなっていくの…

 うふふ・・・
 で、5回間違えたら…
 致死量の電撃がわたしたちを襲うの…

 うふふ・・・死ぬのはわたしかな?
 それとも、木藤さんかな??

 うふふ・・・ははははははははっ♡」

さくらが笑う。

木藤はゾッとした。
神経衰弱を間違えずに、引くことなど不可能だー。

5回不正解したら死ぬー?

「--1回でも正解の絵柄を引くことができたら、
 相手のターンにうつるのよ」

さくらが笑う。

そして、さくらは言った。

「さぁ、木藤さん!
 私たちの愛を憎しみに変えるときよ!
 うふふふふふふふ♡

 あなたの番から!カードを引きなさい!」

さくらは左手で胸を揉みながら、
木藤の方を見ている。

「----」
神経衰弱の最初のターンに、カードを揃えることなんて
不可能。

木藤はカードを適当に2枚引く。

♡の8とスペードの6。

「ザンネン・・・」
さくらが鼻で笑うと、
木藤の右手から全身に、電撃が走った。

「ぐああああああああああっ!」

「--うはっ♡ ははっ♡
 マジウケる!あはっ♡あはははははははっ!」

さくらが大喜びで木藤の苦しむざまを見つめる。

「---はぁっ…はぁっ…」

木藤は再びトランプを引く。

ダイヤのKとクローバーのJ…

「ぐおおぉあああああああああああっ!」
さっきよりも強い電流が木藤を襲った。

「---僕を馬鹿にするからさ!木藤!」
さくらが叫んだ。

「お前が死んだら、この女も、
 明美も、風香も、お前の妹も、
 僕がしゃぶりつくしてやるよ…

 なぁ…お前たち!」
さくらが獣のような目で明美たちの方を見る。

「はい、ご主人様…」
風香と明美と奈菜が、同時にそう呟いた。

「ーーーーーー」
明美は思う。
”憑依薬”を手に入れる目的のためー。
木藤先輩には申し訳ないけれど…

「……ふざけるな…」
木藤が顔を上げた。

「お前の好きになんかさせない!
 さくらも、白崎さんも、山西さんも、奈菜も
 俺の大切なヒトたちだ!

 俺は必ず、みんなを救う!」

木藤がそう叫んで、
♡の2とダイヤの2を引いた。

「---チッ」
さくらが舌打ちをして、木藤を睨む

「ふ~ん、私のターンね…
 えいっ!」

さくらが可愛らしく叫びながら2枚のカードを引く。

クローバーのAとダイヤの9

「きゃああああああああああっ!」
さくらが電撃を浴びて、悲鳴を上げる。

「さくら!」
木藤は叫んだー。

そして思う。

このゲーム…
自分がまければ自分は…
そして、さくらが負けたら…さくらは…?

「はぁ…はぁ…」
苦しそうな声をあげるさくら…
オタク男はさくらにこんな声を出させていることに
興奮した。

下着が濡れてきているのが分かる。

「--うふふ♡ 気持ちイイ♡」
さくらが再びカードを引く。

しかしー
またもやハズレだった。

「いっ…いやああああああああああ~~~~」
さくらが少し嬉しそうに悲鳴を上げる。

「・・・・・」
木藤はその姿を睨んでいた。

そして、3回目の挑戦も
さくらは、ミスをした…

「ぎゃああああああああああああっ…
 た、、助けて…痛い…痛いよォ!!!!」

さくらが涙をこぼしながら叫ぶ。

木藤はもう我慢の限界だった。

「おいやめろ!俺なら死んでもいい!
 だからもうやめてくれ!
 さくらが、、さくらが死んでしまう!!やめろ!!」

木藤が叫ぶと、
さくらは涙をこぼしながら笑った。

「うふ…ふふふ…
 心配いらないよ 木藤さん」

さくらは、右側に立つ、奈菜を指さした。

奈菜が、謎の装置に、
縛り付けられた状態で立っている。

そして、さくらは笑った。

「残りライフが2以下になったら、
 このゲームは、アイテムを使えるの。

 アイテムを使うと、自分のターンを
 スキップして、相手にターンを回すことができる」

さくらの言葉に木藤は尋ねる。

「どういう意味だ?」

さくらは笑った。

「--テーブルの横にある赤いボタンを押せば
 ”ターンスキップ”が使えるの!」

さくらはそのスイッチを押す。

すると、

「ああああああああああああああっ!」
奈菜の体を縛りつけているベルトに電撃が
走り、うつろな目の奈菜が悲鳴を上げた。

そして、奈菜は涎を垂らしながら、
苦しそうに息をしている。

「--ターンスキップ…
 菜奈ちゃんに電撃は流れちゃうけど、
 このアイテムを使えば、何度でもターンを
 飛ばすことができるのよ」

さくらは邪悪な笑みを浮かべた。

「---さぁ、あなたの番よ!」

さくらが指をさして笑う。

「お前・・・」
木藤はゾッとした・・・
これで、さくらは、何度でも自分のターンをスキップするだろう。

奈菜の体に電撃が走ることなどお構いなく。

「--くそっ… ぐあああああああああああっ!」

木藤のライフも残り2になった。

さくらが笑う。

「---さぁ、どうするの?木藤さん。
 愛しい妹に電撃が流れちゃうけど、
 ターンスキップできるわよ」

「----」
木藤はさくらを睨んだ。

「--お前は必ず地獄に落とす!」
木藤はそう叫んでカードを2枚引く。

しかし、ハズレ―

「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

今まで以上の電撃が走るー。
ライフはあと1…。

次に電撃を浴びたら、本当に・・・

「---うふふ・・・
 大好きな木藤さんを、
 わたしが消し去るー。

 うふふ・・・ゾクゾクする…
 興奮する…
 うふ…うふ・・・うふふふふふっ♡」

変わり果てたさくらを見ながら、
木藤は笑った。

「---俺は、さくらを傷つけることなんて
 できないよ…」

そう言うと、木藤は、さっき自分が引いた2枚のカードを
見つめた。

木藤は、自らー。

「------!!」
それを見ていた明美は、辛そうな表情を浮かべてー、
ある行動を起こした…。

⑩へ続く

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明日が最終回です!
その結末は…?

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憑依<暴走憑依男>

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