<憑依>憑依VR②~早すぎた商品化~(完)

時代を先取りするー。

時に、それは悲劇を産み出すこともある。

TSF VRの商品化は、
まだ早すぎたのかもしれない…。

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「芽野社長!」
社員の男が叫んだ。

先日発売された TSF VRの開発会社の
社長、芽野は振り返った。

そして、社員から報告を聞く。

「--やはり…早すぎたか」

彼は幼いころから、TSF系統の作品が大好きだった。

憑依や乗っ取り、皮、女体化。

そこに、ロマンを感じた。

けれど、物語の中では存在するTSFも、
現実ではむずかしい。

女体化ぐらいは、無理をすればできないこともないが、
やはり、ファンタジー世界のように、
手軽に楽しめるTSFを彼は実現したかった。

だから彼は、
自分で絵を描き、作品を書くことでお金を稼ぎ、
会社を設立した。

そして、彼は考えた。
どうすればTSFを現実にすることができるか。

霊体化などというスピリチュアル要素が含まれることは
現実的ではないー。

かと言って、憑依薬などというものを作るのも難しいだろう。
第1、作れたとしても、認可が下りない。

だとすれば、脳移植的な手術。
これは将来、長い目で見れば実現するかもしれない。
けれど…。
相手との同意が無ければ無理だし、
これも時間がかかる。

そこで彼が行きついたのが
「VR」

現実で無理なのであれば、
せめて仮想現実でTSFを実体験として楽しみたい。

それならば、実際には被害者が出ることなく、
みんなでTSFを楽しむことができる。

倫理的にも、18歳以上対象商品とすれば
問題はないはず。

そうして、開発されたのが「TSF VR」

開発は順調だった。

しかし、彼はーー
病魔に蝕まれていた。

芽野社長は、もう、時間が無かった。

だからーー
”見切り発車”した。

本当は、まだ数年かかるであろうソフトを
無理やり世に放ったのだ。

それを補うのが、同封した薬。
かろうじて医療用として認可されていたある薬を
服用してからゴーグルをつけてプレイする仕様。

本来であれば、特殊な装置を開発し、
それで感覚をも、バーチャルで味わえるようにしたかったのだが
そこまでの時間が、芽野社長にはなかった。

”幻覚作用”を引き起こす薬と、
VRの併用という不完全なカタチでの商品化。

けれど、そこにはデメリットもあった。
”長期間 VRと薬による幻覚”が重なると、
脳が、現実と仮想を区別できなくなりー
”VR廃人”になってしまう というデメリットが。

だから、説明書にこう書いた。

”長時間のプレイは避けて1時間ごとに休憩をお取りください
 長時間続けてプレイした場合には”

ーー精神に重大な後遺症を残す可能性があります。 とーー

「----各地で、被害報告が相次いでおり…!」

社員の報告を聞きながら芽野社長は立ち上がった。

人は、
書かれているルールを守らない。

いや、説明書なんて読まない。

そんなこと分っていた。

けれど、自分が死ぬ前に、
TSF VRを世の中に出してみたかった。

「---責任はすべて、私がとる」

芽野社長はそう言うと、会社の外で待つマスコミたちの
元へと向かった。

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”ミッションコンプリート”

芹香のからだで5人以上の
男子生徒を誘惑して、ミッションを達成した。

「イェイ!」

”芹香のミッションをクリアしました!
 新たに兄に溺愛される妹と、女剣士の体が
 憑依対象に追加されました”

画面にそう表示された

「えへへ…
 憑依できる対象がどんどん増えていくのは
 面白いなぁ」

芹香の体でそう呟くと、
ベットに寝転んで天井を見た。

「もう、この子の体も飽きたしなー…
 17回ぐらいエッチしちゃったし…」

芹香が恥ずかしげもなく言うと、
彼は考えた。

待てよー?
この世界で3日も過ごしちゃってるけど
大丈夫だよな?現実世界…

「---そろそろ一旦ゲームやめるか。
 時間間隔が狂うわ」

感覚的には2、3時間と言ったところだろうか。

途中セーブもできるだが、
ついつい熱中してしまった。

ゲーム内の1日の時間は、ゲームによって異なることが多い。

だから、うっかりしていた。

「あぁ…名残惜しいけど…」
芹香は鏡の前に立って微笑んだ。

「---また来るね!ばいば~~い!」
可愛らしいポーズを決めて、満足気にほほ笑み、
最後に芹香の左手のニオイを嗅いで
ペロペロ手を舐めて、満足した彼は
ゴーグルを外して、ゲームを終了しようとした。

「-----!?」

彼は気づいた。

おかしいー と。

ゴーグルをつけているだけのはずなのに、
そう言えば、何故、手や足を動かすと、
芹香の感触がするのか…と。

確かゲーム開始前に薬を飲んだ。
あれの効能なのだろうか。

「---って…ゴーグル、どうやって外せばいいんだ?」

芹香は目のあたりを手で引っ張ってみる。

が…

「あいたたたたたた!」
芹香は悲鳴を上げた。

「--っておい!ゴーグルハズせねぇ?どうすりゃいいんだ!?」

彼は焦った。
まさかVR空間に取り残されたなんて、そんなことは
無いはずだ。

どうやってゴーグルを外せば?

彼は気づいていなかったー。

最初は、芹香の感触を感じながらも、
ちゃんと、現実の手触りもおぼろげに識別できていた。

が、プレイ時間が伸びるにつれて、
彼はVRにのめり込んだ。

もう少し早ければ、ゴーグルを取り出せたかもしれない。

けれどー。

同封の薬は、
夢と現実の狭間に意識を飛ばす…というような感じの効力を持った薬。
それと、VRが組み合わさることにより、
実際に憑依しているかのような仮想体験が可能になることに
開発者の芽野社長は気づいた。

けれど、
ずっとVRの映像を見ているうちに”重要な副作用”を起こすことに
芽野社長は気づいた。

だから、注意書きを同封した。

「やっ…やべぇ…」
芹香の声で焦り出す。

彼は”緊急停止の赤いボタン”を押せという
説明書きを思い出した。

「あ、赤いボタン!」

モードメニューを開こうとした。

だがーー
出てこない。

「ど、どうして…!どうしてなの!」
彼は叫んだ。

「--メニューが出てこない!!出てこないよ!」

緊急停止のための赤いボタンは、
メニュー画面を呼び出さないと視界に表示されない。

表示されないものを、押すことはできない。

つまりーー
”緊急停止することができない”

「---う、、うそ…嘘よ!
 嘘よ!私を!わたしをここから出して!」

突然、周囲が「0」と「1」の乱数に変わっていき、
映像が乱れ始めた。

「--ひっ…きゃああああああ!」
芹香は大声で叫んだ。

ーーー彼は気づいていない。
途中から”自分”と”芹香”の境目も無くなってきていることに。

彼の脳は、
既に”自分が何者なのか”理解できなくなってきていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「きゃああああああああああああ!」

兄の部屋から悲鳴が聞こえた。
まるで女のような声だ。

「あんだよ、うっせーな!」
弟がウンザリしながら兄の部屋を開ける。

「おい、兄貴!いい加減に… !?」

弟は兄を見つめて目を見開いた。

兄の体が激しく痙攣し、口からは泡を吹いている。
ゴーグルをつけたまま、兄の体は激しくビクビクと
している。

「お、おい…」

兄は目のあたりで手を泳がせていた。

「--何やってんだよ!バカが!」
弟は、VR世界から出られなくなった兄の
ゴーグルを引きはがした…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

穏やかな仮想世界だったはずのそこには、
赤い文字で「エラー」と表示されていた。

そこら中に…

「やめて!助けて!」
芹香は頭を抱え込んで、その場に蹲った。

警報音が鳴る。

”警告、ただちにゲームを強制終了してください”

”警告、ただちにゲームを強制終了してください”

「ゲーム…?
 ゲームって何よ!」
芹香は叫んだ。

「どうなってるの…」
目に涙を浮かべて怯える。

わたしはー、
どうしてしまったの?
どうなってるの??

芹香はパニックを起こす。

ゲーム?エラー?なんなの?

と…。

その直後、激しい衝撃に襲われた。
顔を引っこ抜かれるような感触。

「ひっ…やめ…」

そして、直後、”何か”がもの凄い勢いで外された…

「きゃあああああああああああああ!」
芹香は大声で叫び、そして意識を失った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後。

とある病院。

Dr淫咲(いんざき)は、
うつろな目をした男子学生の診察をしていた。

「お名前はー?」

毎日、聞いている。

「---せりか…
 みなもと せりかです」

男子学生はそう答えた。

「--そうか。芹香ちゃん。
 君は、今、自分がどこにいるか分かる?」

Dr淫咲が尋ねると、芹香は答えた。

「え?えへへ…どこって、教室にきまってるじゃない」

うつろな目で、感情なく答える彼は…

数日前、TSF VRをプレイした際に、
VRと薬の組み合わせにより、精神が崩壊してしまい、
現実とVRを区別できないー
”VR廃人”になってしまった。

「えへへへへ」

時より急に笑い出す彼。

彼は今、どんな光景を見ているのだろうか。

彼の体は、確かにここにある。

けれどー
魂は、ここにはない。

彼は今、他人とは違う光景を見ているのだからー。

後日、
TSF VRは全商品が回収された。
芽野社長は、その数日後、息を引き取った。

世に、TSFのVRゲームが広まるのは、
まだまだ、遠い先のことー。

遠い遠い、未来のことー。

けれど、被害者を出してはいたものの、
芽野社長の最後は、どことなく安らかだった。

自分勝手な技術者ー。
世間はそうバッシングした。

それは事実。

ただ、彼があと10年生きていたならば、
TSFのVRは、人々に、夢を与えていたかもしれないー。

おわり

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コメント

TSFを実際に体験するなら、
やっぱりVRしかないですよね!

憑依<憑依VR>
憑依空間NEO

コメント

  1. より:

    SECRET: 1
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    やっぱ説明書はきちんと読まないと
    自分は馬鹿正直に読んじゃう人なので、こう言う事は大丈夫そうだけど
    でも某アニメでの恐怖知ってるから、VRはやらないなー
    せめて俺が女だったらキリト君に助けてもらえるのに、残念

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