<憑依>裏切りの生徒会長②~過去と現在~

過去の不良だった自分と、
現在の真面目な女子高生である自分。

彼女はその狭間で苦しみ続ける。

そして、過去と現在(いま)が交錯するー。

-------------------------

夜…。

私は、ベットに横たわりながら、
ピンク色の財布を見つめながら思う。

この財布は、私が買ったものだ…。

5年も、女の子として暮らしていれば…
心も変わる・・・。

別に、元々の聡美の意識に影響されただとか
そんなことは無い。

聡美自身の、憑依するまでの記憶は全くないし、
今でも自分の、俺自身の記憶はしっかりと残っている。

でもー。

「もう…私は女だから…」

私は胸の膨らみを見つめる。

最初は、この膨らみは
”欲望”の対象でしかなかった。
スカートをめくって、太ももを見せつけて
仲間たちと、
森屋たちと笑う。

そんな日々を過ごしていた。

中学に進学したばかりの頃は
裏で悪いことばかりしていた。

気弱な男子を裏でいじめたりもした。

けれど、
表では優等生を演じていた。

毎日放課後に森屋たちのところに行き、
何度も何度も、聡美として、
あいつらを楽しませてやった。

俺自身も楽しかった。

けど…
だんだんと心境に変化が生じた。

いつも一緒だった尚人くん。
最初は「あんなやつ」と思ってた。

けれど…
今は、尚人くんと居るとドキドキする…。

私はもうーーー、
津川 啓治としての過去を捨てたい。

白井 聡美として生きていきたい。

・・・でも、そんなの甘えだってことは分かってる。
真実を知れば、尚人くんは、私を軽蔑するだろう。

「---ふつうに…」

私の目からは涙がこぼれていた。

「--ふつうに、白井 聡美として、生まれたかったな…」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「おはよう!尚人くん!」
私が挨拶すると尚人くんも
「あ、おはよう」と笑いかけてくれた。

尚人くんと居るときが、今の私にとって
一番素の自分でいられる時間。

5年間ー。
小学生…女子中学生、そして女子高生と過ごしてきた私は、
もう女として、心も変わり果ててしまったのかもしれない。

「---また、何か悩んでるのか?」
尚人くんが訪ねてくる。

「---え、ううん、大丈夫。
 心配ばっかりかけてごめんね!
 
 今日も放課後、文化祭の話し合いあったよね?」

私が尋ねると尚人くんはうなずいた。

私も、
たぶん尚人くんもー
最近は話し合いの時間が楽しみだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。

尚人が、正門付近で自動販売機のお茶を購入していると、
金髪男と、茶髪の男二人が近付いてきた。

「---お前が増谷 尚人か?」
金髪男ー、
聡美に憑依している啓治の昔の仲間、森屋が言う。

「---は、はい」
尚人が、いかにも柄の悪そうな3人組を前に委縮する。

「--お前は聡美に騙されている」

森屋が言う。

「--え?」
尚人が警戒心をあらわにして森屋を見つめた。

「---数分付き合ってくれよ。
 聡美の秘密、教えてやるぜ」

そう言うと、尚人の肩を掴み、
3人が尚人を拉致して、どこかへと連れ去って行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後。

私は文化祭の話し合いのために、
生徒会室へ向かう。

「あ、会長、お疲れ様です」
後輩の生徒が言う。

「うん、今日もよろしくね」
私は微笑みながら返事をした。

ーーーー?

尚人くんが、居ない。

そう言えば…5,6時間目は
選択授業で別れて授業してたから気づかなかったけど、
放課後の学活にも、尚人くんはいなかったような…。

「---あれ?尚人くんは?」

私が尋ねると、後輩の子は言った。

「来てませんよ」

・・・・。

わたしはふと、昨日の森屋の言葉を頭に思い浮かべた。

「--啓治ィ…
 俺らを裏切らないでくれよぉ。
 俺らの頼もしいリーダーなんだからよ…
 あんまり、俺らをぞんざいに扱うと…
 尚人とか言うあの餓鬼…」

「あいつ…まさか」

わたしはつい、険しい表情でそう呟いた

「え…?」
後輩の子がおびえた表情を浮かべている。

「あ、ごめん、何でもないの…
 あの、ちょっと…今日、任せてもいいかな?」

戸惑う後輩の子に私は手を合わせて
ごめんね!とつぶやくと、そのまま走り出した。

そんな…尚人くん…
私のせいで…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

森屋たちがアジトにしている倉庫。

「--嘘だ!」
尚人が叫ぶ。

「嘘じゃねぇよ。聡美は、5年前に憑依されて
 心も体も乗っ取られている。
 あいつの中身は男だ。

 ホラ、見てみろよ」

森屋がボロイテレビにビデオテープを入れて、
映像を再生する。

去年の映像ー。

聡美が嬉しそうに森屋と抱き合って、
大声で喘いでいる。

「---し、白井さん…」
尚人が悲しそうに言う。

”あぁん♡ きもちいい♡ きもちいいよぉ♡”

聡美の喘ぎ声がテレビから聞こえてくる。

尚人は悲しそうな目でそれを見つめた。

けどー
尚人は見逃さなかった。

嬉しそうに、甘い言葉を叫ぶ聡美。
でも、その目は、涙ぐんでいた。

「---白井さん…」
尚人は思う。

こいつらが無理やり聡美を…。

「--お前ら…お前らが白井さんに
 無理やり迫っているんだろ!」

尚人が叫ぶ。

「はぁ?バカじゃねぇの?
 ほら、見てみろよ!憑依薬の購入履歴」

5年前、オークションで愛染という男から
憑依薬を購入した履歴を見せて笑う森屋。

「--お前が仲良くしていた女は、
 中身は不良男だったんだよ!
 あはははははははっ!」

森屋が笑うと、
尚人は叫んだ。

「嘘だーーーーー!」

「---ふん。現実を直視できないバカが。
 俺たちが目を覚まさせてやるぜ。
 おぅ、和泉田、馬堀!やるぞ!」

周囲の不良仲間二人に言うと、
三人は尚人を囲んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夕日が眩しい道を私は必死に走った。

私のせいで、尚人くんがー。

私なんかが、夢を見たからー。

そう…
私は優等生なんかじゃない…

私・・・いや、俺はどうしようもない不良だったんだ。

そんな俺が、
夢を見たからー

女として、まっとうな人生を生きたいなんて
希望を抱いたから。

―倉庫についた俺は、
扉をこじ開けた。

「---おぅ、聡美!ようやくお出ましか」
森屋が笑う。

「---」
俺は無言で、森屋を睨んだ。

「懐かしいぜその目…
 俺たちが最初に出会ったとき…。
 どっちが強いか、殴り合いになったよな?

 あの時の目だ!
 俺はお前のその目にほれ込んだんだよ!
 なぁ、啓治ィ!」

森屋が嬉しそうに言う。

「------」
俺は、森屋を睨む。

「---し、白井さん!ダメだ!逃げて!」
尚人君がボロボロになりながら叫ぶ。

「----ごめんなさい」
”私”は尚人くんに頭を下げて
心から謝罪した。

色々な思いをこめた”ごめんなさい”-。

「--かかってこいよ!聡美…
 俺にもう一度、お前の力を見せてみろ」

森屋が叫んだ。

けどーー。
俺は…いや、私はもう決めた。

暴力なんかしない、と。

私の命と引き換えに、尚人くんを守る、と。

「---森屋…!
 私は、私はどうなってもいい!
 だから…尚人くんは尚人くんだけは助けてあげて!」

私は泣きながら叫んで土下座をした。

啓治としての自分。
聡美としての自分。

もはや、どう振る舞っていいかも、よく、分からなかった。

「--はぁ?おい、興ざめさせんなよ。
 殴りかかってこいよ!」

森屋が叫ぶ。

「---お願いします」

私は必死に頭を下げた。

「私の体なら、どうなってもいいから」

私の目からは涙がこぼれた。

「---し、、白井さん…
 白井さん…まさか本当に…
 本当に…憑依・・・」

尚人くんが悲しそうに言う。

もう…おわり…

夢はおわり。
短い夢。
けれど、楽しかった。

わたしは、尚人くんの方を見て
微笑んだ。

「ずっと騙してて、ごめんね…」

そう言うと、森屋が私の髪を引っ張った。

「--中身なんて関係ねぇ、
 可愛いもんは可愛いんだよ」

森屋がそう言うと、私を無理やり掴んで
抱き着いてきた。

もう、いい…

どんなことだってすればいい。
私は精一杯喘いでお前たちを楽しませてやる。

それで、尚人くんが、助かるのなら、
どうなったって構わない。

「おら、脱げよ!」
森屋が言う。

「自分の意思で、脱げよ!
 俺たちを誘惑しながら脱いで見せろよ!」

森屋の言葉に、私はため息をついた。

そして…
わたしは、自分の制服を脱ぎ始めた。

ボタンをひとつ、ひとつ外して・・・。

「---うふふ♡」
偽りの甘い声を出して。

「---わたしと、遊ぼ♡」
嫌で嫌で仕方がないけどーー

「わたしの全部を、見せてあげる♡」
これも、全部、尚人くんのためだから。

「----やめろぉぉぉぉぉぉぉ!」

逃げたと思ってた尚人くんが叫んだ。

背後から私は優しく肩をつかまれた。

「やめろ・・・やめろよ、白井さん…
 やめろって」

尚人くんの涙声が聞こえてきた。

「---ごめんね…尚人くん」

私は尚人くんの方を見ずに答えた。

「--聞いたでしょ…
 わたしの正体…
 私、ずっと尚人くんたちを…
 ううん、みんなを騙してた…

 だから、最後にできるのはこれだけ。
 早く、逃げて」

そう言うと、尚人くんは沈黙した。

けれどー。

グイっと手に力が入り、
尚人くんは、わたしを振り向かせた。

「---」

尚人くんは笑っていた。

「---5年まえ…だろ?
 でもさ…俺と白井さんが出会ったのって
 中学の時じゃんか。

 だったらさ…
 元々どうだったかは知らないし、
 良い事じゃないけどさ…

 でも、俺にとっては、白井さんは白井さんなんだよ」

尚人くんの言葉を私は身を震わせながら聞いた。

「--中身なんて知らないよ。
 俺さ…ずっと、白井さんのこと好きだった…。
 憑依とかさ、そんなこと知らない。
 俺は、今の白井さんが好きなんだ。

 だから…あんな奴らの前で脱いだりするなよ。
 体、安売りしたりするなよ。
 俺が大事にするから。
 俺がーー」

「ありがとうーーーー」

私は涙をこらえきれなくなって
泣きながら答えた。

そんな私を、尚人くんは優しく肩を叩き、
慰めてくれた。

「約束したろ?
 悩みがあるなら、手伝うって…。
 な?

 …それに、顔のキズ痛くてさ、
 さっきアイツらから聞いたこと、忘れちまった。
 憑依とか何だとか、ぜ~んぶ忘れちまった」

尚人くんがほほ笑む。

私は、思わず笑いながら呟いた

「どこまでお人よしなのよー」 と。

もう、決めた。
それがいいことかは分からない。
本当の聡美には、心から申し訳ないと思う。

けれどー。
私はーー”現在(いま)”選ぶ。

「--おい、C級の恋愛ドラマなんざ
 興味ないぜ!」

森屋が私に襲い掛かってくるー。

シュッ…!

私は、”昔”の軽い身のこなしで、バック転しながら、
森屋の攻撃を避けた。

「--テメェ!やればできるじゃねぇか」
森屋が言う。

仕方がない。
ここはー。

私が構えをすると、
尚人くんが言った。

「---ダメだよ!
 力仕事は俺に任せとけよ!」

信じられないことに尚人くんが、
森屋たちに向かっていき、
森屋たちに柔道の技を決めていく。

あっという間に、森屋も、馬堀も、和泉田も倒されていく。

「ふぅ、終わり!」
尚人くんがほほ笑む。

「---俺、柔道習ってたから」
笑う尚人くん。

「---す、すごい…」
私は思わずつぶやいた。

「さ、帰ろう。
 アイツらも、白井さんを拉致したことがあるし、
 あのぐらいのけがじゃ、問題にしたりしないよ」

そう言う尚人くんと私は倉庫の外に向かって歩き始めた。

バチ…

私は”異音”に気付いた。

ふと、後ろを振り向くと、
スタンガンを持った森屋が、尚人くんに向かって突進してきていた。

「危ない!!!!!!」

私は叫ぶと同時に、尚人くんの前に立ちーーーー

強烈な電撃が・・・
私の全てを貫いた・・・

③へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

次回が最終回です!
ホワイトな結末?それともブラックな結末??

憑依<裏切りの生徒会長>
憑依空間NEO

コメント

タイトルとURLをコピーしました