<憑依>裏切りの生徒会長①~表と裏~

「お疲れ様!」
生徒会長の白井 聡美(しらい さとみ)が微笑む。

いかにも真面目そうな雰囲気。
けれども、明るく、誰からも慕われている美少女ー。

先生達からも、生徒たちからも愛される存在の彼女ー。

けれど…
彼女には”闇”があった。

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「お疲れ!」

増谷 尚人(ますたに なおと)君…。
私と同じクラスの男子で、生徒会副会長をしている男子生徒だ。

私のことをよく気遣ってくれているし、
何かと助けてくれるとても、信頼できる子だ。

「---今日もちょっと遅くなっちゃったね…」

私は、白井聡美。
まじめ…と自分で言うのも何だけど、
真面目なほうだと思う。

何でも頼りにされちゃって、ちょっと面倒なことも
あるけれど、
それはそれで、充実しているってことなのかな…。

「--いや、大丈夫だよ」
尚人くんが言う。

尚人くんは、たぶん私のことが好きなんだと思う。
”男の子”が、好きな子に対してアプローチを
かけるときの仕草が良く出ている。

私は、スカートを整えながら立ち上がり、
生徒会の話し合いで使っていた部屋の片づけをする。

「---文化祭も近いと、大変だよね…
 実行委員の夜神くんは、何もしないし…」

私が愚痴を言うと、
尚人くんも、そうだよなぁ~と愚痴を言う。

尚人くんと居ると、心が温まるー。
私も…尚人君のことがすき・・・。

でも…

「---お疲れ様!また明日ね!」
私が手を振ると、尚人くんは手を挙げて
挨拶をして、校門から立ち去って行った。

「ふぅ…」

私は思わずため息をついた。

あなたの想いには気付いているのー。

けれどー。

けれど私はー。

私は満月を見上げながら思う。

ーー私はーーー

いや…”俺はー”

人と付き合う資格なんてないのだから…

この”からだ”は、
自分の体では無いのだからー。

俺はーー白井聡美なんかじゃないから…

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

5年前…

俺は大学を中退して、
高校時代からつるんでいた不良仲間と一緒に
毎日荒れた生活を送っていた。

俺の本当の名前は津川 啓治(つがわ けいじ)

毎日毎日、バイクで爆走したり、
不良と喧嘩をしたり、荒れた日々を送っていたんだ…。

充実しているようで、充実していない日々。
心の奥底の渇きが、悲鳴をあげているー。

そんな時、俺たちはあるものに出会った。

「--すごくね?これ?」
不良仲間で、俺が率いていた不良グループのNo2、
森屋 純太(もりや じゅんた)が言う。

森屋が見せてきたのは、
”憑依薬”と言う人の体を乗っ取れる薬だった。

「--俺さぁ、最近この辺を通学している
 小学生ぐらいの女の子とちょっと遊んでみたいんだよねぇ」

森屋の言葉に俺は言った。

「お前、そりゃ犯罪だぞ?」と。

だが、森屋は言う。

「その薬があれば、遊べるんじゃないかってな」

森屋の言葉に、俺もそう思った。
俺は、森屋と相談した結果、
俺がその女の子に憑依して、森屋と遊ぶことに決定した。

他の仲間二人もニヤニヤ笑っている。

オークションで出品されていたその薬を購入した俺は、
後日、届いたその憑依薬を使い、
その子を待った。

「うん、ばいばい!」
小学生高学年と思われるその子はー
とても可愛かった。

そしてーー

「ひっ……えっ…いやっ…」

俺は、容赦なく、その子に憑依した。

「くくくくくく…」

最初に可愛い声が口から出た時は衝撃的だった。
まだ、からだは未発達だったが、俺はランドセルを背負ったまま
アジトの廃工場に向かった。

そこで、俺は嬉々としてスカートをめくり、
森屋にからだを売り渡した。
女の子のからだに憑依して、勝手に…。

そして、俺たちは気づいた。

”元のからだ”が死んでいることに・・・。

「--ど、どういうことだよ!」
俺は女の声で叫ぶ。

そして、慌てて出品者の愛染という男に連絡した。
けれど、愛染は取り合わなかった。
それどころか「僕には憑依薬がある。これ以上、面倒を起こせば、
分かりますよね?」と脅してきやがった。

俺は、どうにもならず、諦めたのだった。

だが、森屋は冷静だった。

「慌てるなよ、津川!
 そのからだで生きていけば…
 ずっと、俺たちも、お前も遊びたい放題じゃねぇか!」

その言葉を聞いて、俺は笑みを浮かべた。
確かに、そうだ。

その日から俺は、
津川 啓治ではなく、
白井 聡美として生きていくことになったのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから5年ー

私は月明かりの下を歩きながら、
毎日下校後に向かう場所…

そう、俺たちの”アジト”に向かう。

ーー5年も女の子をやっていれば…
心も変わる。

もう、女の体を見ても、特に興奮するようなことは
無くなった。
だって、自分のからだなのだから…。

私の体は成長した・・・
とても女らしくなった。

とても美人になった。

もちろん、嬉しいし、可愛いとも思う。
おしゃれに気を遣ったりもする。

けれどー、それは
男としての下心ではなく、
純粋に女の子として、綺麗で居たいと言う渇望。

聡美が優等生だったと知って、
私は、そのまま優等生を演じる決意をした。

中学生になったばかりの頃は
優等生の顔を利用して、裏でいじめをしたりもしていた。

けど…。
優等生として振る舞ううちに、周囲から慕われ
先生からも褒められて…

高校に上がるころには、
それが心地よくなっていた。

それだけじゃない。
悪いことに対して、嫌悪感を抱くようになっていた。

ーー私は、いつもの倉庫についた。

「--よぉ!啓治…いや、聡美ちゃん」
No2の不良、森屋が言う。
やつはまだ、荒れ果てた生活のままだ。

「--遅かったじゃねぇか」

「--いろいろあるんだよ」

私・・・いや、俺はそう言うと、
倉庫内のイスに腰掛けて、タバコを手に取った。

「---ふぅ…」

俺が男言葉で話すのは、今やこいつらと会うこの時間だけ。
他のタイミングでは女の子を演じている。

いやー、逆か?

この時間に”男であった自分”を演じているのかもしれない。

「--見たいだろ?」
俺はそう言うと、スカートをめくりあげて、ほほ笑んだ。
足を妖艶に交差させ、森屋たちを喜ばせる。

「触らせろよ」
森屋が俺の…私の太ももを触る。

最初は気持ちよかった。
けれど、今は嫌悪さえ覚える。

「んあっ…♡」

森屋が胸を触り始める。
私は思わず、声を出してしまう。

「あっ…♡ あっ…♡ あっ…♡
 森屋…やめ、、♡ やめろよ♡」

私の言葉に耳もかさず、森屋は私にキスをした。

「ーーくふふ、最高だぜ、
 毎日こんなかわいい子でやりたい放題なんてよ」

森屋が落ち着いたのを見て、私は森屋を引きはがした。

「……」

”もう、終わりにしよう”
何度、そう言いたいと思った事か。

けれど、俺はこいつらのリーダーだ。
こいつらを悲しませることは…。

ふと気づくと、森屋が、スカートの中に
手を突っ込んでいた。

「さ、触らないで!」

思わずわたしは叫んでしまった。

「--っ、啓治ィ、つれないなぁ」
がっかりした様子で森屋がつぶやく。

「---悪い。でもよ、今は気分じゃないんだ」

私はそう言い、時計を見て
「そろそろ帰らないと」とつぶやく。

「--最近さぁ」
森屋が背後から声をかけてきた。

「---どんどん、ここにいる時間、短くなってねぇ?
 お前、もしかして…」
森屋が金髪を輝かせながら言う。

私は振り向いた。

「何言ってんだよ。ちょっと忙しいだけだよ。
 俺は、ここにいるときだけが、”自分”を
 さらけだせる唯一の時間だよ。」

そう言って、微笑みかけると、
森屋も「だよな」と言って笑った。

そして、私は倉庫から出て、
自宅へと向かうのだった。

「-----」
私の目からは涙がこぼれていた。

どうしてだろう…。
私は…いや、俺は啓治だ。

優等生なんてバカバカしいと思っていた。
こんな女なんて、おもちゃぐらいにしか
考えていなかった。

でもーー
今は
森屋たちと居る時間が
”苦痛”で仕方がない。

私が、私でいられない唯一の時間ー。

「---5年も女の子やってりゃ…
 そうなるさ…」

そう呟いて、月を私は見つめた…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日の夕方。

学校の屋上で一人、街並みを見つめながら
私は思うー。

また、憂鬱な時間がやってくる。 と。

私は、悪い女だー。
生徒会長としてもてはやされている裏で、
不良たちにからだを売り、
時に、盗みをしたこともある。

森屋たちの頼みだからだ。

けれど、学校も、友達も、
誰もわたしを疑ったりしない。

どんなことをしても…

夕日を見つめながら、私は思う。

”この地獄に、終わりはあるのかー”と。

愛染とかいう出品者の憑依薬は
一方通行だった。

もう、このからだから出ることも、
本来の聡美にからだを返すこともできない。

自分勝手なのはわかっているけれど、
私は、聡美として真面目に生きていきたい。

昔、酷いことをたくさんした。
暴力、脅し、犯罪行為まで。

でも、この子に憑依して5年間を過ごして分かった。

ーー真面目にやるっていうのも、悪くない。

「----白井さん?」

振り返ると、そこには副会長の尚人くんが居た。

「---あ、尚人くん…」
私は風でなびく髪を抑えながら、振り返った。

もう、女の子としての基本は全部マスターしている。

「---大丈夫か?」
尚人くんが言う。

「え?」

「--なんか最近、白井さん、思い詰めてるみたいな
 雰囲気だからさ」

尚人くんには御見通しみたいだ。
ーー私は、中学時代からずっと尚人くんと一緒だった。

そして高2になってから、
私は尚人くんを異性として意識するようになった。

「---ふふ、ありがとう。大丈夫よ」

私が言うと、
尚人くんは呟いた。

「あまり、思い詰めるなよ…。
 中学からの付き合いだし、何か悩みがあったら
 力になるから」

私は、尚人くんの方を見て、
微笑んだ。

尚人くんに、もし助けを求めたらどうなるだろうー。
尚人くんはきっと、私を…。
でも…森屋たちの恐ろしさを私はよく知っている。

そしてー、
私の正体がばれたら、
きっと…尚人くんは…。

「--何で、泣いてるんだよ…」
尚人くんが私に触れた。

森屋とは違って、心地の良い感触。

「---え…ご、、ごめん…」

涙が止まらなかったー。

尚人くんの想いは分かっているけれど…
私には答えることができないー。
いや、その視覚がない。

「---泣くなよ」
尚人くんが私の肩に手を置いた。

「---うん、ごめん…
 ごめんね…」

私が謝ると、尚人くんは笑った。

「---…話したくないなら、今は話さなくても大丈夫だから…。
 俺に言えるようになったら言ってくれよ…
 …相談…いつでも受けるから…。」

尚人くんはそう言うと、ほほ笑んで、屋上から降りて行った。

「ごめんね…」
私はそう呟くと、また森屋たちが待つ倉庫に向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「脱いでくれよ」
森屋が言う。

「--ちょ、、それはいくらなんでも」
私が否定の言葉を口にすると、森屋が言った。

「--啓治…お前、本物の女の子みてぇなこと言って
 俺をシケさせんなよ。なっ。脱げよ」

森屋が私を睨む。

「・・・・・・・わ、分かったよ」
ブレザーを脱ぎ、その下のボタンを外していく。

「---うっほ!早く脱げ!」
森屋が服に手をかけて、
私の服を脱がせて、続けてスカートまで脱がせた。

恥ずかしい…
前は、喜んで森屋たちに見せていたのに…。

私は顔を赤らめる。

「うらぁ!」
森屋が私を押し倒す。

「…や…やめ…やめて!」

「いいねぇ!そそるねぇ!」

森屋は容赦なく、私の体を乱暴した。

「いやっ…もう充分だろ…!やめ…やめてぇ♡」

わたしは森屋の攻めに、快感を感じて
甘い声で叫んでしまう。

もういやだ…

もう、縁を切りたい…

たすけて…

私は、いつの間にか目から涙を流していた。

「--っと…おいおい、泣くなよ」
森屋が私から離れると、そう呟いた。

「い、、、いや…すまない…
 で、、でも、女の子のからだってお前らが思ってる以上に…」

私が息を切らしながら言うと、
森屋は首を振った。

「--なぁ、この際だからはっきりさせておくけどよ」
森屋が私を睨む。

「ーーーお前、生徒会の餓鬼と
 ”いい感じ”みたいじゃねぇか」

森屋の言葉に私は凍りついた。

「そ、そんなわけ…」
私がそこまで言うと、森屋はわたしのアゴをつかんで
呟いた。

「--啓治ィ…
 俺らを裏切らないでくれよぉ。
 俺らの頼もしいリーダーなんだからよ…

 あんまり、俺らをぞんざいに扱うと…
 尚人とか言うあの餓鬼…」

パチン!

私は思わず、森屋をビンタした。

「--てめぇ、誰に向かって口利いてんだ!?あぁ?」

昔の威勢で私・・・いや、俺は叫んだ。

「--誰がNo1で誰がNo2か、忘れたわけじゃないよな?
 俺は俺だ!バカにしやがって!
 生徒会の餓鬼と俺が仲良く?
 どういう目してんだテメェは?あぁ??」

聡美のからだで、俺は叫んだ。

「---す、すまなかったよ」
森屋はそう言うと、大人しくなった。

私はイラついた様子でそのまま倉庫を後にした。
尚人くんに手出しするなんて…絶対に許さない…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

倉庫から聡美が立ち去ったあと、
森屋は一人笑った。

「---ケッ…
 女の子っぽくなりやがって…!
 憑依しているクズ野郎のクセしてよ」

森屋は、他の二人に耳打ちして微笑む。

「尚人とか言う餓鬼に真実を教えてやるぜ…
 なぁ、聡美ちゃんよ…」

森屋は邪悪な笑みを浮かべた…。

②へ続く

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コメント

5年間も、その子として暮らしていると…
こうなっちゃうと思いませんか?

続きは明日です!

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