次第に支配されていく少女たちー。
オタク男の復讐心は、とどまるところを知らない。
店は支配され、残されたスタッフたちにも
魔の手が迫るー。
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「お疲れ様でした」
明美が、ウェイトレスのような服から
自分の服に着替えてため息をつく。
「--明美ちゃん…似合ってたわ…
ふふふ♡」
今やすっかり店長気取りのさくらが言う。
さくらは、オタク男に憑依され、
さらに、身に着けた暗示能力で風香を手中に収めて
好き放題やっていた。
ゲーム屋だったはずが、
まるで風俗店のような、怪しげな接客をするように
なってしまっている。
そしてー、
それで一部のコアな客層の人気を呼び、
店の売上も上がっていた。
「---ねぇ…明美ちゃん…」
さくらが微笑みながら近づいてくる。
だが、明美は自分の荷物を取りにいく”フリ”をして、
さくらとの距離をとった。
SM嬢のような格好をしているさくらは
舌打ちをした。
「---今日は予定があるので、これで失礼します
市川先輩」
明美が言う。
今日の明美は眼鏡をかけていて、
それがまたよく似合う。
オタク男は明美のからだを支配して
滅茶苦茶にしてやりたいと思ったが、
明美に避けられたので興ざめしてしまった。
「ーーーー」
明美はさくらの方を見て、会釈して、事務所から立ち去った。
明美には分っているー。
さくらは再びオタク男に憑依されている、と。
そしてー
今までの話を総合すれば、
オタク男は、”キス”をすることで憑依相手を移動している。
「…だったら、近づかせなければいいだけのことよ…」
店から出た明美は呟いた。
さくらは華奢なからだつきだ。
もちろん、明美も同じようなものだけれども、
1対1ならなんとかなる。
明美は、自分でできることはなんでも自分でやってきた。
”人を頼る”ことが怖かったからー。
だから、自分の身は自分で守れるように、明美は
カンタンな護身術の心得もある。
さくらの体に入っているオタク男なんて怖くない。
「---見てなさい。
アンタを地獄に落としてやるからー」
明美は、さくらの事を心から尊敬していた。
表裏の激しい自分とは違う。
心から優しい花のような存在であるさくらを。
だから、そのさくらを弄んだオタク男を許せなかった。
必ず、地獄に突き落としてやるー。
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翌日の夕方ー。
木藤がやってくると、
風香が挨拶をした。
ここのところの風香は、なんだかぼーっしている
気がする。
「--白崎さん、大丈夫か?」
木藤が尋ねると
「はい・・・」
とだけ答えて、まるで意思のない人形のように、
中古買取した商品の掃除をしている。
しかも、メイドの格好をしながら。
「---くそっ」
木藤にも分っていた。
さくらが再び憑依されて、
オタク男の好き勝手にされていることを。
けれどー
木藤はそれでも普通にバイトに来ていた。
さくらを救うタイミングを探るために。
先ほど、午前中シフトだった我妻が、さくらに
呼ばれて事務所に入って行った。
話が長いー。
木藤は気になって、事務所を見に行こうとした。
「---木藤さん」
風香が言う。
木藤が振り向くと、風香が首を振った。
「今は、誰も入れるなって、
市川さんが言ってました」
風香の言葉に、
木藤は苦笑いしながら頭をかいた。
そして、言う。
「ちょっと話をするだけだよ」
木藤が事務所に入ろうとすると、
手をつかまれた。
木藤がビクッとして風香の方を見る。
「---駄目だと、言ってるじゃないですか」
風香が低い声で言う。
その声は怒りに満ちている。
「---な、、なんだよ…白崎さん…」
木藤は驚く。
そして、オタク男が憑依しているのは
風香なのか?と一瞬戸惑う。
「・・・わ、わかったよ」
ともかく、これ以上、今は動けない。
そう考えた木藤は、風香に謝罪の言葉を述べた。
風香はまた生気のない表情に戻って、
ボーっとした様子で掃除を再開した。
事務所の中。
「我妻くんなら、話を分かってくれると思って…
どう、わたし、我妻君の彼女になってもいいよ」
さくらが色っぽく足を組んで微笑む。
我妻はニヤニヤしていた。
「わたし、実は前から、このお店のこと、大っ嫌いだったの。
メッチャクチャにしてあげたい気分…
店長が居なくなった今、絶好のチャンスじゃない?」
さくらが甘い笑みを浮かべて言う。
オタク男には分かっていた。
さくらのからだで誘惑すれば、我妻はすぐに落ちると。
暗示をかけた風香ではできないこともある。
”正気”の協力者が一人、欲しい。
「ーーうふふ♡」
さくらは立ち上がって、我妻の近くに歩んでいく。
そして、我妻にわざと胸をくっつけながら、
囁いた。
「我妻君♡ わたしを手伝って?
そしたらわたし、我妻君のためになんでもしちゃう…!
えっちなことでもなんでも… ふふふふふ♡」
さくらがエロさ全開の声で我妻を誘惑した。
「いいっすネ」
我妻が言った。
さくらは邪悪な笑みを浮かべる。
しかしーーー
「でも、いいっす」
我妻の言葉にさくらはぽかんとなる。
「---俺、三次元の彼女なんていらないんで。
見るのは好きだけど、自分の彼女になると
邪魔って言うか…。
ホラ、デート代とかかかるし、
俺、そんなことより課金しないといけないんで」
我妻の言葉にさくらは失笑した。
そして、自分の腰に手を当てて、
挑発的に太ももを見せつけて言った。
「こんなに可愛い女の子が、
誘ってるのよ?」
さくらには、我妻を落とせる自信があった。
しかしーーー
「・・・・」
我妻はため息をついてから言った。
「アンタ、例のうわさのオタクだろ?
バレバレなんだよ。
面白いから黙っててやったけど
そうやって誘惑するなら、
もういいわ」
我妻がイライラした様子で続ける。
「俺、彼女とか要らないんで」
我妻が言うと、さくらが叫んだ。
「-ー彼女なしのままでいいの?あり得ない!!」
ポーズまで決めたのに誘いを拒否された
さくらは頭に来ていた。
「いいっすよ。魔法使い目指すんで」
我妻の言葉にさくらはカッとなった。
誘惑しても、誘われないなんてー。
「--据え膳喰わぬは男の恥よ!
わたしが誘ってるの!ホラ!来なさいよ!」
さくらが怒鳴ると、我妻は失笑した。
「--据え膳喰ってるヒマがあったら課金しろ。
…ばーちゃんが、そう言ってた。」
我妻はそう言うと、事務所から足早に立ち去って行った。
さくらは「あはは…」と一人笑う。
そして、髪の毛を滅茶苦茶に掻き毟り始めた。
「あぁあ~~~~~~~~~!
すっげぇムカつく~~~~~~!」
髪の毛がボサボサになるまで掻き毟り続けるさくら。
イスを蹴り飛ばし、倒すと、
その場で壁を何度も何度も殴り始めた。
可愛らしいさくらが狼のような目付きで、
怒りをにじませている。
「---どいつも、こいつも僕を馬鹿に
しやがって…
こうなったらもう容赦しねぇ…!」
さくらは怒りのまなざしで、
痣になった拳をさらに壁に叩きつけた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日 夜。
閉店後、
オタク男は事務所に明美を呼び出した。
この女も滅茶苦茶に壊してやるー。
どうせ、気づいてるんだろう?
そして、自分は憑依されないと
イキリたっていることも、オタク男は御見通しだった。
”お前も復讐対象なんだよ”
「---市川先輩、御用ですか?」
明美が言うと、
さくらは笑った。
「--うふふ・・・そうね…」
さくらは自分の服のボタンを一つ一つ開け始めた。
「どう…わたしのからだ…」
服をはだけさせたさくらは微笑む。
「・・・・・・・」
明美は答えない。
「分ってるんでしょ?こんなことわたしがするはずがない…!
ククク…コイツは、僕に支配されてるってぇ!」
さくらはそう叫ぶと、
自分の胸を嬉しそうに揉み始めた。
明美は、冷たい目でさくらを見つめる。
「---明美ちゃん…!
おまえのことも滅茶苦茶にしてやるよ」
明美は、オタク男の言葉を聞きながら後ずさった。
”近寄らせなければいい”
その時だった。
背後から明美は取り押さえられた。
ーーー!?
胸の感触がする。
「---し、白崎さん?」
明美を背後から押さえていたのは
風香だった。
「--ちょ、離して!
脅されてるんでしょ!?
だったらわたしと…」
明美の言葉を聞いて
さくらは微笑んだ。
「違うわ…”暗示”をかけたの。
その女は、今じゃ、わたしの忠実な下僕よ」
さくらが笑う。
「--あんたどこまでも…」
明美がさくらを睨む。
「--さぁ、今度はそのエロいからだを
遊びつくしてあげる!くくく…」
さくらが笑いながら近づいてくる。
「ふふふふふふ・・・」
背後の風香も生気のない顔で笑っている。
「--やめて!」
明美はもがき、叫びながら言った。
けれどー
明美は、ポケットに隠し持っていたスマホを密かに操作した。
明美は、
さくらが憑依されているだけだと思っていた。
けれど、風香も暗示をかけられて操り人形だったなんて。
油断した。
他の二人にも伝えないと。
明美はそう思って、手探りで文字を入力する。
本当は木藤にメッセージを送ろうとしたけれど
時間が無い。
仕方がないので、五十音順で一番上の
我妻にメッセージを作る。
さくらはもう眼前に迫っていた
「--明美ちゃん、お邪魔しま~す!うふっ♡」
さくらにキスをされる直前、
明美は入力途中の文章を送信した。
そしてーー
最後にこう思った。
”このオタクは、からだを移動するのが好きみたいだから、
必ずまたチャンスは来る”
とーー。
キスをされた明美は、さくらの唇の感触を味わいながら、
意識が途切れ、その場に倒れた。
さくらもその場に倒れる。
風香は倒れた二人を直立不動で、見つめていた。
「--うっ…」
明美が髪を触りながら起き上がる。
「--ふふふ♡」
甘い笑みを浮かべる明美。
明美も、オタク男に憑依されてしまった。
「---あははははははぁっ♡
このクソ女!
僕と渡り合えるつもりだったなんて!
むっかつくよなぁ!」
明美はそう叫ぶと、
自分の着ていたブラウスを引きちぎるようにして
脱ぎ捨てた。
「くっふふふ・・・♡
僕に反抗的な女だって、憑依してしまえば、
全部僕の思いのままだ!」
明美が可愛い声で叫ぶと、
スカートもびりびりに引きちぎるようにして、
床に投げ捨てた。
下着姿になった明美がほほ笑む。
「くくく…どうだ!
お前も僕のいいなりだ!
ホラ!ホラ!ホラ!」
明美が下着姿で鏡に向かって
色っぽいポーズを決めていく。
「あははははははははは!
エロいぜ~~~!
僕に好き勝手されて悔しいか?
あ?ふふふふふふ♡
でも、今は、今は
僕が、いや、わたしが
山西 明美なんだもんねー♡
ひひひひ、あはははははははははっ!」
明美が大笑いして、自分の体を抱きしめた。
風香はぼんやりとその様子を見つめている。
「--うっ…」
さくらが意識を取り戻した。
「---あらぁ、市川先輩」
明美がほほ笑みながらさくらの方に向かっていく。
そして、さくらの方を見つめた。
「ひっ…」
さくらはブルブル震えて怯えている。
”暗示”をかけようと思った。
けれどー
さくらはこのまま屈服させるのが面白そうだ。
「見て。市川先輩。
わたしのからだ…
先輩に負けないぐらい綺麗でしょう?」
明美が言う。
さくらは明美が憑依されていることを理解した。
「あ、、、明美ちゃん…目、目を覚まして…」
さくらが震えながら言うと、
「や~だ♡ ふふふ♡」
と明美がほほ笑む。
「こいつ、僕と渡り合えるつもりでいたからね…
思い知らせてやるんだ!身の程を!」
下着をも脱ぎ捨てて、明美は微笑む。
「ほら!わたし、自分が嫌悪していたオタクに
好き勝手されて、裸になっちゃった!
わたしったら変態!
あはははははは♡ は~~~ははははははは♡」
唖然とするさくら。
明美はふと、床に落ちているスマホを見つけた。
そのスマホにはーーー
我妻に明美が最後に送ったメッセージが表示されていた
「白崎さんがアンジーー」
そこで文章は途切れていた。
「---余計なことしやがって」
明美のオレンジ色のスマホを力強く踏みつぶす。
「---ふざけやがって!このクソ女が!」
明美がそう叫びながら自分のスマホをボロボロに
なるまで踏みつける。
最後にスマホの残骸を思いっきり投げつけると、
明美は呟いた
「僕に逆らいやがって…
この女・・・」
明美は顔を上げて微笑んだ。
「---わたし、”自分を許せない”
滅茶苦茶にしてあげるー
くくく・・・♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家でガチャを回していた我妻が
明美からのメッセージに気付いた。
「白崎さんがアンジ―ー」
我妻はそのメッセージを見て
鼻で笑った。
「白崎さんがガンジー?
なんだそりゃ?」
我妻はすぐにメッセージから
興味を無くし、再びガチャを回し始めた。
⑦へ続く
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明日は1周年記念で別作品を書きます!
続きの⑦は2/26に書きますよ~~
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