妹は、憑依された…。
守るべき存在でありながら、
牙をむく存在でもある
”憑依された妹”
そんな妹と向き合うことになった兄は…
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「--ねぇ、わたしのモノに触らないでって言ったでしょ!?」
中学生の中崎 帆花(なかざき ほのか)が、大きな声で
怒っている。
「--あんだよ、ちょっとずらしただけだろ!」
高校生で、兄の中崎 統也(なかざき とうや)が、
反論する。
「はぁ…ねぇ…キモい!本当にキモい!」
妹の帆花は、
可愛らしい容姿とは裏腹に、最近は反抗期なのか、
兄との喧嘩が絶えない。
「--アンタに触られたと思うと寒気がする!」
アンターー。
少し前まではお兄ちゃんと呼んでいた妹ー。
けれど今では…
「あぁそうかよそうかよ!凍え死んでろ!」
統也がそう言うと
「ふん!あんたなんか大っ嫌い!」と言って
帆花は、自分の部屋に引っ込んでいった。
「ケッ!俺もお前なんか嫌いだよ!」
統也も怒りに満ちた声で叫び、
そのまま扉を閉めた。
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翌日。
「--また、妹に怒鳴られたよ」
友人の厚盛(あつもり)に語りかける統也。
「へぇ…またお前がなんかしたんじゃねぇの?」
厚盛の言葉に、
統也は首を振る。
「いやぁ、ちょっと邪魔なものをどかしただけなのにさ」
統也が言うと、厚盛が首を振る。
「女の子ってのはなぁ…
大事なモノを触られたくないものなんだよ」
統也はその言葉を聞いて「へっ!お前に何が分かるんだよ!」
とつぶやいた。
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妹の帆花は中学生。
今日も学校に登校してクラスメイトと談笑していた。
「---はぁーあ・・・またアイツと喧嘩しちゃった」
帆花が言うと、
友達の乃枝(のえ)が苦笑いする。
「お兄ちゃんと少しは仲良くしなよ…」
乃枝とは、小学校からの付き合いだ。
少し前まで、帆花と兄が仲良しだったのを
良く知っている。
「・・・うん・・・」
帆花が複雑そうな表情で言う。
「でもさ…、どう接していいか…
なんかわかんなくて…」
帆花は首を振る。
兄のことを心から嫌っているわけではない。
どんな時でも兄は自分を守ってくれた。
けれどー。
最近は、男と女・・・
別にそういう目で見ているわけではないけれども
どうしても意識をしてしまう。
自分が年頃になったからだろうか。
「---ふぅん…
でも、あまり喧嘩してると嫌われちゃうよ?」
乃枝が言うと、帆花は「うん…」とうなずいた。
夕暮れ時…
いつものように下校する帆花。
”嫌われちゃうよ”
友人・乃枝の言葉が重くのしかかった。
「---…」
帆花は暗い表情で帰路を歩く。
「---文句ばかりの妹なんて…
可愛くないよね…」
寂しそうに夕日を見上げたその時だった。
ーーーードクン…!
心臓が大きく音をあげた。
「----!?」
その直後、風のような何かが、一瞬にして流れ込んできて、
からだがビクンと跳ね上がった…。
暗い表情をしていた帆花は
満面の笑みを浮かべて、歩き出した。
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「---ただいまー!」
帆花が帰ってきた。
今日は先に高校の授業が終わっていた統也は、
自分の部屋で漫画を読んでいた。
「--こいつ、じきに死ぬな…」
漫画を読みながら”死亡フラグ”が立っている
キャラクターを哀れむ統也。
「--あ、いたいた”お兄ちゃん”」
帆花が明るい笑顔で部屋に入ってきた。
「--え?」
久しぶりに”お兄ちゃん”と呼ばれた気がして拍子抜けする。
「--ちょっとお願いがあるんだけど…」
甘えるようなしぐさで言う帆花。
「ん?なんだよ?」
統也が言うと、帆花は微笑んだ。
「…お金…貸して?」
統也はあきれ果てた。
お金を貸してほしいから、甘えるようなしぐさを
とっているのか、と。
「---はぁ、呆れたな」
統也はそれだけ言うと、帆花を無視して、机の漫画を
手に取り、再び読み始めた。
「ねぇ…お兄ちゃん」
耳元で甘い声が聞こえた。
「---!?」
統也が振り向くと、すぐ近くに妹の可愛らしい顔があった。
「---おねがい…♡」
誘惑するかのように囁く帆花。
統也のからだに手を置き、
優しく微笑んでいる。
「----!!」
統也はドキッとしてしまう。
妹とは言え、
最近はとても可愛くなった。
こんなことをされると、妹が相手でも
ドキドキしてしまう。
「--ちょ、、わ、、分かったよ…いくら?」
統也が財布をいじりながら言うと、
帆花は微笑む。
「---10万円」
「は?」
「--10万円、欲しいの…」
”借りる”と言っていたのに”欲しい”に変わっているー。
いや、それどころか中学生が10万…?
「--いやいやいや、何に使うんだよ?
っつーか、父さんか母さんに相談しろよ」
そう言うと、帆花は、
「--わたし、なんでもするから…
お兄ちゃん、お願い…」
と言いながら、わざとらしくスカートを触って、
誘惑した。
「------」
統也は思った。
そして、口を開いた。
「----お前・・・帆花じゃないな?」
と。
統也は冗談のつもりで言った。
ちょうど、今、読んでいた漫画がそういう展開で
「お前・・・ジョージじゃないな」と言うセリフがあったのだ。
それをまねて言ってみたかっただけだった。
「------チッ」
帆花が舌打ちをした。
「へ?」
統也が間抜けな声を出して、
帆花を見る。
「---黙って金を払えっつってんだよ!」
帆花が突然、鬼の形相で、
統也にせまり、統也の胸倉をつかんだ。
「ひっ…な、、離せ!」
統也が叫ぶ。
そして、必死に振り払おうとするが、
帆花の力は、いつも以上に強かった。
「せっかく気持ちよい夢を見せてやろうと思ったのによ…
いいか?よく聞け。
こいつのからだは俺がもらった」
帆花が乱暴な口調で言う。
「--な、何だと?」
統也が、苦しみに満ちた声を出すと、
帆花が笑った。
「--いつもいつも、妹に蔑まれて同情するよ!
だからさ、ここはWinWinに行こうぜ。
俺は、お前から金を貰う。
代わりに俺は、このからだでお前にたっぷりと
イイ思いをさせてやる!
お前の理想の”妹”を演じてやるー」
帆花が自分の胸を揉みながら笑う。
「くへへ…発展途上のからだで、
遊べるチャンスだぜ?ぐへへへへへっ」
欲望に染まる帆花の表情を見て、
統也は「やべぇ、コレマジなやつかも…」と思いながら
冷静に言った。
「---…お前は誰だ?」
そう言うと、帆花は笑う。
「--お兄ちゃんの妹の帆花だよ♪」
と。
「--ふざけるな!お前はーー」
「----うっせぇんだよ!!!!!!!」
帆花が大声で怒鳴り声をあげた。
「----っ」
統也は妹の怒鳴り声に気圧されてしまう。
「--いいか?お前に選択権はない。
この女は人質だ。
俺が憑依してるってことは、どういうことだか分かるか?
俺が服を脱ぎ捨てて、そのまま外に走って行くこともできる。
このからだで夜の街を歩いて、男と寝ることもできる。
…そうそう、高いところから飛び降りることも…。」
帆花の言葉に、
統也は開いた口がふさがらず、
”死亡フラグが立っているのは俺だったか”と小声でつぶやく。
「--なんかいったか?」
帆花が腕を組みながら壁に片足をつけて言う。
「--わ、、、わかった。10万払えば、
帆花を解放してくれるんだな?」
統也が言うと、
帆花は微笑んだ。
「うん、”お兄ちゃんがそれを望むなら”ねー?」
妹の笑顔ー。
例え、蔑まれようとも、
統也は、妹を守りたい気持ちでいっぱいだった。
「---1週間…1週間待ってくれ。
その間に金は用意する」
1週間後にはバイトの給料が入る。
貯金を合せれば10万になるだろう。
「---うん。いいよ。
でも、その間は、
”わたし”がお兄ちゃんの妹だからね!ふふっ♡」
統也の腕に可愛らしくしがみつくと、
帆花は「うふふふふふ♡」と笑い声をあげた。
「---」
腕にしがみつく、小柄で、スラッとした体系の帆花を見ながら
統也は決意した。
「-ーー帆花、必ずお前を助けてやるぞ」
と。
②へ続く
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プロローグで1話を使ってしまいました。
どのように兄の心境が変化していくのでしょうか。
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