生徒会の中に広がっていく憎悪ー。
歪められていく日常。
生徒会長である志穂の豹変は次第に、
日常を壊していくー。
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「---宮渕さん」
昼休み、
廊下を歩いていた生徒会長の志穂を
聡は呼びとめた。
「----なに?」
不機嫌そうな様子で振り返る志穂。
いつも心優しい志穂に何があったのだろう。
イライラした様子で腕を組み、聡の方を
見つめている。
「---夕紀から聞いたよ…
三園のやつに、何か言われたみたいだって…。
何があったんだよ?
俺に言えよ。力になるから!」
聡が言うと、
志穂は心底バカにしたように笑った。
「ふん…何言ってるの?
わたしが、三園くんに何か弱みを握られてるとでも
思ってるわけ?」
低いトーンの声で言う志穂。
メガネの下の瞳に、嫌悪感がにじみ出ていた。
「--だ、、だってそうだろ?
このところ、三園のやつと、生徒会室でやりたい放題だって
聞いたぞ!
宮渕さんが、そんなこと自分の意思でするわけがー」
「----わたしは、好きでやってるの」
志穂が冷たい声で言う。
「--わたし、三園くんのこと、好きになっちゃった♡
だからね、わたし、三園くんのためなら何でもするの!
三園くんの思い通りの女になるの!」
志穂が甘い声を出し始める。
浮いた話を聞いたことがない志穂が、
こんな声を出すとは思えなかった。
「---な、何言ってるんだよ…
ど、どうしたんだよ宮渕さん!」
聡がなおも食い下がる。
「うふふ・・・知ってる?
わたし、三園君に言われたから、勉強するのやめたの!
だってさ、勉強なんてバカらしいじゃない?」
「--な、何だって!?」
聡が心底驚いた声を出す。
「ーーでね、今は毎日、わたしの部屋で
夜、えっちしてるの!
三園くんが、わたしの体、もっともっと楽しんでくれるように…」
志穂が顔を赤らめながら言う。
記憶を塗り替えられた志穂にとって、
今や三園の存在が全てだった。
勉強なんてどうでもいいー
他のやつら何てどうでもいいー。
そう思えるようになってしまった。
「---み、、宮渕さん」
唖然とする聡を一人残して、志穂は颯爽と歩き去ってしまった。
教室に戻った聡は、
幼馴染で生徒会副会長の夕紀と目が合う。
「--駄目だったんでしょ?」
夕紀がため息をつく。
今日もポニーテールがよく似合っている。
「あぁ…何があったんだろうな?」
夕紀から、志穂のここ数日での異変について
聞かされた聡は、「俺が話してみるよ」と自信満々に
志穂のところに向かったが、
結果は、ご覧のとおりというわけだった。
「---絶対、三園が何か志穂の弱みを握ってるのよ!」
夕紀が怒りをこめて言う。
「--そうだといいけどな」
聡は呟く。
何かーー
何か違う気がする。
志穂のあの甘い表情…
脅されている人間のできる表情じゃない。
「ーーどうしたの?
世界が10秒後に終わります、みたいなカオして?」
夕紀が、聡の顔を覗き込む
「俺は一体どんな顔してんだよ!」
聡はそう突っ込みを入れて、笑みを浮かべた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーねぇ、刈羽君へのいじめ!
最近酷くない?」
生徒会室。
今日も話し合いが行われていた。
夕紀たちのクラスメイトでもある「刈羽」という生徒が
最近、三園によっていじめを受けている。
前々から問題になっていたことではあるものの、
先生たちがなかなか動かないため、
生徒会で密かに助けの手を差し伸べようと
以前から、生徒会長の志穂を中心に話し合いが続けられていた。
「同級生がいじめられてたら、わたしたちが救いの手を差し伸べないとねー」
志穂は、そう言っていた。
けれどー
最近は三園と一緒になって志穂まで嫌がらせを始めていたのだ。
「---うざいやつをいじめるのは当然だろ?」
三園が、志穂のひざの上に乗りながら笑う。
「---うん、三園くんの言うとおりよ!」
志穂がうっとりとした表情で続ける。
「---…志穂、最近の志穂、変だよ!
どうかしてる!!
刈羽君を苛めるなんて、おかしいよ!」
夕紀が叫ぶ。
志穂は涼しい顔でそれを聞き流す。
「---ねぇ!みんなも何か言ってよ!」
他の生徒会メンバーに声をかける夕紀。
生徒会メンバーは
会長の志穂、副会長の夕紀、そして後輩で書記の彩月、
他に3年の男子が二人、2年の男子が一人、1年の男女が一人ずついる。
「---そ、、そうですよ!
宮渕先輩!どうしたんですか!?」
後輩の彩月も、夕紀に賛同して声をあげた。
だがー。
他の男子たちは黙っている。
一人はトラブルに関わりたくないからー、
一人はそもそも生徒会のやる気が無いからー、
一人は誰にも嫌われたくないからー
そんな理由で、関わろうとしなかった。
そして1年の男女二人は、
既に、三園に一度憑依されて、三園の忠実な手ごまとなっている。
「---ねぇ、夕紀ちゃんこそ、
いつまでもわたしに反抗的な態度とるのやめてくれる?」
志穂が挑発的に言う。
「---」
夕紀が悲しそうに俯く。
「--わたし、志穂のこと、いつも頑張っていて
同じ年だけど尊敬してた!
なのに何よ!今の志穂、そいつの言いなりじゃない!
カッコ悪すぎるよ!」
夕紀が叫ぶと、
志穂が表情を曇らせた。
「そいつ?」
低い声で言って、夕紀を睨みつける志穂。
「-ーーー訂正しなさい」
志穂が怒気を込めて言う。
「はぁ?何言ってるの?
そんなやつのどこがいいのよ!
いじめはするし、学校の雰囲気は乱すし、
最低じゃない!」
パチン!
志穂がーー
夕紀の頬を思いっきり叩いた。
「---最低」
憎悪に満ちた目で夕紀を見つめる志穂。
暴力なんて絶対に振るわなかった志穂。
けれどー
今の志穂には我慢できなかった。
”ご主人様”である三園を侮辱する夕紀の
ことを許せなかった。
「---夕紀ちゃん…ううん、
あんたには失望したわ!
もう絶交よ!
生徒会室にも来なくていいから!」
もの凄く不機嫌そうな様子で、乱暴に夕紀の荷物を
まとめて、夕紀の方に投げつける志穂。
「---し、、、志穂…」
夕紀は唖然としている。
そして、くやしさで目に涙を浮かべている。
「--あんた、、、志穂に何したのよ!」
三園を睨んで叫ぶ夕紀。
「--別に?
ちょ~~~っとだけ”カスタマイズ”しただけだよ」
「---カスタマイズ?あんた何をいっ…」
ガン!
イスがもの凄い勢いで、夕紀のそばに投げつけられた。
「---早く出てけ!」
志穂が怒鳴り声をあげた。
「--三園くんに対して失礼でしょ!!
本っっ当に許せない!
出て行け!二度と来るな!」
志穂がさらに机を投げようとしたところで、
三園が止めに入る。
「---志穂、もう十分だよ」
三園が言うと、志穂は、嬉しそうな表情で
「うん・・・♡」と答えて、その身を三園に任せた。
「----バカ!」
夕紀はそう叫んで、後輩の彩月の手を引いて
生徒会室から飛び出した。
「---み、、宮渕先輩、どうしちゃったんですか?」
戸惑う彩月。
「--わからない。
でも、三園のやつが関係してると思うの」
夕紀がそう言うと、聡がやってきた。
「---夕紀!生徒会の話し合いは?」
聡が不思議そうに言うと、
夕紀は、言った。
「-ー知らないわよ!
また志穂が三園とイチャイチャしてるだけで
話にならない!
他のみんなもやる気がないし!」
夕紀が怒り心頭な様子でそこまで言うと、
突然、涙ぐみ始めた。
「志穂…どうしちゃったの…」
思わず本音がこぼれて、涙をこぼす夕紀。
ふだん、気丈に振る舞っている夕紀の涙を見て
聡は心を打たれるー。
「…夕紀……
泣くなよ」
優しく言うと、
聡は続けた。
「--俺が、話してくるから」
そう言うと、夕紀の肩を叩いてから顔を覗き込んで微笑んだ。
「--世界が終わる10秒前みたいなカオして泣くなよ!な?」
その言葉を聞いて夕紀は「わたしのセリフ、パクってんじゃないわよ」と
少しだけ微笑んだ。
聡は、夕紀の笑顔を見て、笑い返すと、
そのまま生徒会室へと向かった。
「---先輩」
後輩の彩月が、涙を流す夕紀を
寂しげに見つめた…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生徒会室の前に立つと、
中から喘ぎ声が聞こえてきた。
「あぁ♡ ご主人様ぁ♡
もっと♡ もっと、志穂をめちゃくちゃにしてください♡
あぁん♡ あん!!」
聡は握りこぶしを作り、生徒会室に飛び込んだ。
聡はー
志穂のことが好きだった。
その志穂を、こんな…。
「---あぁ♡ …---!?」
志穂が振り返り、唖然とした表情を浮かべる。
制服を脱ぎ捨てた下着姿だ。
「---宮渕さん…
なんてことしてるんだよ…」
聡が悲しそうにつぶやくと、
志穂と抱き合っていた三園が笑った。
「---お前か」
三園は志穂をどかすと、バカにしたように笑いながら近づいてきた。
「---お前・・・宮渕さんに何をした!」
聡が叫ぶと、
三園はニヤリと笑った。
「---憑依」
三園の呟きに、聡が「は?」と聞き返す。
「--憑依だよ。
言ったろ?生徒会を支配するって…。
そのために志穂に憑依して、思いのままに
したってわけさ」
三園の言葉に唖然としながらも、
自分の胸を一人揉み続けて喘いでいる志穂を見て
”普通ではない”ことは聡にも理解できた。
「---お前が操っているのか?」
聡が聞くと、
三園は人差し指を立てて「チッチッチッチッ」と言いながら
不気味な笑みを浮かべた。
「---”カスタマイズ”
俺はそう呼んでいる」
三園が言うと、
聡が「何言ってんだお前は?」と呆れた様子で言う。
「---憑依してる最中にさ、
志穂の記憶に直接呼びかけて、
志穂を作り変えてやったんだよ。」
そう言うと、三園は志穂のアゴをつかみ、
そのまま口づけをした。
「---お前!」
聡が叫ぶのを無視して、三園は続ける。
「--今じゃ志穂は俺のことしか考えられない。
俺の為に忠実に生きる最高の女・・・
いや、雌になったんだよ!
知ってるか?今の志穂はもう勉強も何もしてねぇ!
毎日家に帰ってから一人でえっちを繰り返す、
最高に乱れた女になったんだよ!」
笑いながら言う三園。
志穂も一緒になって笑っている。
「---な、、何だって!?
み、、宮渕さんの人生を何だと思ってるんだ!」
「---おばあちゃんが言ってた」
三園が言う。
「”人の嫌がることはするな”ってな」
聡が三園を睨みつけながら話の続きを聞く。
「--でもさぁ、見ろよ!この志穂の嬉しそうな顔!」
三園が志穂の綺麗なロングヘアーを後ろから掴んで
引っ張って、聡に顔を見せつけた。
髪を引っ張られながらも、志穂は
「んぁ・・・♡」と言いながらとても嬉しそうにしている。
「---人の嫌がることはしてないぜ 俺はぁ!!
ひひひひひ!はははははははははっ!」
三園が笑う。
「そうよね~~♡
うふふふ、わたし、大喜び!うふふふふふ♡」
志穂も笑う。
「---お前!今すぐ宮渕さんを元に戻せーー!」
そう言うと、三園が言った。
「いいのか?俺が”カスタマイズ”したのは志穂だけじゃねぇ。
生徒会の1年の男女も、カスタマイズした。
今、その二人に俺が”お願い”して、
お前の大事なお友達の夕紀と、後輩の彩月のからだを
”カスタマイズ”してくるように指示しておいた。
くく…
志穂も、1年の二人も、俺の手ごまになったあと、
憑依薬を飲んでるからな…
俺に変わってどんどん他人の記憶を塗り替えることが
できるのさ」
三園の言葉に
聡が叫ぶ。
「貴様!!!まさか夕紀たちを!!!」
幼馴染の夕紀ー。
男女関係じゃないけれどー、
大切な存在。
「くそっ・・・!」
聡が慌てて生徒会室から飛び出そうとした。
「----おい、待てよ!」
三園が笑いながら聡を呼び止めたーー。
闇は広がり続ける。
生徒会が浸食されつくすその日は、
着実と近づいていたー。
③へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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あぁ…早く最後の展開を書きたいデス(笑)
ゾクゾクできるかも!?
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