メリークリスマス!
けれど、彼はくりぼっちだった。
仲良し4人組男子の中で、
一人だけ彼はくりぼっちだったのだ。
彼は決意する。
友達のリア充どもに、悪夢をプレゼントする、と。
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12月22日。
とある教室の高校で4人の男子が楽しそうに話していた。
そのうちの一人、
倉橋 良哉(くらはし りょうや)は、
ため息をついていた。
「---あ、良哉!お前は今年もくりぼっちか!?」
友人の一人、我妻が言う。
我妻はお調子者で、クラスメイトの汐音(しおん)と
付き合っている。
クラスメイトの坂下 汐音は、
大人しく、真面目、けど奥手で恋愛からは一線を
引いているような子だった。
とても可愛く、”狙っている”男子もいると噂されている
汐音を、我妻は射止めたのだった。
「--俺は汐音ちゃんとデートだぜ」
我妻の言葉に舌打ちする。
「-俺は、夜にイルミネーションを見に行く約束をしてる」
ーーイケメン男子生徒、増森(ますもり)が言う。
「---僕は、ファミレスでお食事です」
インテリ男子生徒の都留(つる)が言う。
我妻も、増森も、都留も…。
「お前は?」
我妻が、ニヤニヤしながら訪ねる。
「--お、、俺は…
俺は、クリスマスイベントで忙しいんだよ!
エロゲーとスマホのな!」
倉橋は叫んだ。
「---それは大変そうだな。頑張れよ!」
皮肉にしか聞こえない増森の言葉に
倉橋は腹を立てた。
普段、4人はとても仲が良い。
だが、クリスマスだの、バレンタインデーだのになると、
決まって倉橋は冷やかされる的になってしまう。
倉橋はー、
何故か昔から彼女が出来なかった。
別に”いらない”と思っているわけでもない。
なのに、なぜだか知らないが、一向に彼女が出来ないのだ。
不思議だった。
「--ま、僕たちは楽しみますから、
倉橋くんも楽しむといいですよ。
イベントをね…ふふふ…」
メガネインテリ、都留が笑いながら言う。
明らかにバカにしている。
倉橋は机をたたいた。
そして叫んだ。
「リア充、爆発しろ!!!!!!!!!!」 と。
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下校。
「はぁ…畜生、何だってんだよ?
あいつらクリスマス本来の意味知ってんのかよ!」
倉橋が一人呟く。
怒りが収まらない。
「クリスマスなんて、ケーキ屋の陰謀だね!」
そんな倉橋に、背後から
一人の女性が声をかけた。
「---ねぇ…」
「--え?俺?」
倉橋が振り返ると、そこには、
ライダースーツに身を包んで、
フルフェイスヘルメットを被った女性の姿があった。
顔が見えなくても、その美しい体つきから
女性だと分かる。
「---悔しい?」
女性が訪ねてくる。
「え?」
倉橋が意味も分からず聞き返す。
すると、女性が、ポケットからとある液体の入った
容器を取り出した。
「---リア充を酷い目に合わせたいんでしょう?
あなたに、その力をあげる」
女性が、容器を倉橋に差し出す。
「な…なんだコレ…?」
倉橋が受取りながら、疑問を口にすると、
女性は笑った。
「---人に憑依するための薬よ。
それを使って、あなたが憎むカップルの幸せを
壊してみたらどうかしら」
そう言うと、女性はバイクにまたがって
走り去ろうとした。
「---ちょっ!マジで憑依できるのか!?」
倉橋が叫んだが、
女性が
「信じるも、信じないもあなた次第」
と言って、そのまま走り去ってしまった。
「---憑依・・・?」
倉橋は、一人、容器の中を見つめた…。
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23日と24日は連休だ。
23日の間、倉橋はこの薬を使うかどうか考えた。
そしてーー
使うことにした。
もし、何かの罠だったとしても、
どうせクリスマスイベントでニヤニヤするだけの人生だ。
何かあっても悔いはない。
それにーー。
”もし、本当ならー?”
倉橋は決意した。
3人の友人のクリスマスを滅茶苦茶にしてやろう、と。
我妻は自宅デート。
ちょうど両親不在の汐音の自宅を我妻が訪れることになっている。
確か、昼前には行くと言っていた。
続いて、インテリの都留が、
夕方から、ファミレスで彼女とディナーを楽しむと聞いている。
最後に、夜にイケメンの増森が、彼女とイルミネーションを
見に行くと言っていた…。
「・・・まず我妻たちを滅茶苦茶にして…
次に都留、最後に増森だ」
倉橋は不気味にほほ笑んだ。
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24日。
意を決して倉橋は「憑依薬」を飲んだ。
すると…
「---うっ!?」
気づくと、自分の体が宙に浮いていた。
いや…自分の体が下で倒れている。
「え…まさか、俺、死んだの?」
苦笑いする倉橋。
だが、すぐにとある考えに辿り着いた。
「いや…これが、幽体離脱か…?
この状態なら、憑依できるのかもしれねぇ!」
そう言うと、倉橋は、最初のターゲットである、
汐音の家へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---もうすぐかな…」
汐音はドキドキしながら、彼氏・我妻の到着を待っていた。
奥手な汐音にとっては、
彼氏がいるのも、彼氏を家に呼ぶのも初めてだった。
控えめに束ねられた髪とメガネが特徴的な汐音。
服装も控えめだ。
「---あぁ…緊張してき…うあっ!?」
突然、体に異常な衝撃が走った。
何にぶつかったわけでもないのにー。
「---あっ…え…??ひっ…か、、、からだが…?
うごか…」
汐音は恐怖に表情をゆがめた。
「---い…いや…誰か…」
スマホに手を伸ばす汐音。
そして、汐音は、、必死に手を伸ばして
スマホをその手につかんだ。
だがー
「ふふふふふ…」
汐音は不気味に笑い始めた。
「ふふふ、ははははははははは!
マジで!マジで憑依できたよ!!!
うははははははははは~~!」
いつも出さないような大声で笑い始める汐音。
目には、さっきの恐怖で、
浮かんだ涙がまだ残っている。
「あはははははは!
あはっ!あはっ!」
自分の胸を両手でわし掴みにして
揉みまくる汐音。
涙ぐんだ目で大笑いしている。
「あはははっ!はははははははは!
すごい!すごい!すげぇ~~~~!」
あまりに興奮してしまい、
その場で汐音は座り込んだ。
「はぁっ…♡ はぁっ…♡」
そして汐音は呟いた。
「---我妻…お前にクリスマスプレゼントを
してやるよ!
彼女の本性と言う名のクリスマスプレゼントをな!
ククク…ひひひ!は~はははははは!」
倉橋は思った。
自分は、3人のリア充どもに悪夢をプレゼントする。
そうーー。
”サンタクロース”いや、
”サタンクロース”となって。。
「---大人しい汐音が…」
そこまで言いかけて、汐音は不気味な笑みを浮かべた。
「大人しい”わたし”が変態だと知ったら、
ど~んな反応するかな!?えへへへっ!」
笑いながら汐音は、服を脱ぎ捨て始めた。
「ふん!可愛いのに、こんな地味な服装なんて
罪だよ!」
乱暴に服を脱ぎ捨てる汐音。
「ふふ・・・わたし、大変身しちゃうから!」
そう言うと、母親の部屋と思われる部屋に侵入して、
化粧品を一式、乱暴に取り出した。
自分の顔を見つめながら、
汐音の顔を妖艶に変えていく。
汐音もノーメイクではなかったようだが、
ほとんど化粧はしていない印象だった。
その汐音の顔を、
汐音の意思に関係なく、変えていく。
化粧の仕方も、必死に昨日、勉強した
口紅を塗る。
「--ふふふ♡たまらない…」
”変身”した自分の顔を見て微笑む汐音。
そしてー、
「--お届け物です」
「来た来た・・・!」
汐音はそう呟きながら、とりあえず、適当な服を着て、
それを受け取った。
昨日、汐音の家に届くように手配しておいたものだ。
網タイツに、超がつくほどのミニスカートのドレス。
「くくく…くふふふふ♡」
今まで来ていた服を引きちぎりながら、脱ぎ捨てる汐音。
そして、ドレスと網タイツを身につける。
「くはははっ…♡
もう、汐音ちゃんじゃないじゃん!わたし!
あっははははは♡
完全に別人みたい!」
あのおとなしい汐音が、挑戦的な格好をして、
化粧をして、自信に満ち溢れた表情で鏡を見ている。
「そして…」
髪を束ねていたゴムを引っ張りぬいて、
髪を降ろす。
「ふふ・・・すげぇ…
これが汐音ちゃんか…♡
これが、、、ふふふ・・・
完全に別人じゃんか!!!」
汐音はかけていたトレードマークのメガネをも投げ捨てた。
愛用していたメガネをゴミ箱に投げ捨てる。
「---ふ~ん…素顔も可愛いじゃん!」
視界がぼやけているが、そんなこと
どうでもいい。
汐音は、注文していた”おもちゃ”を容赦なく
あの場所へと持っていく。
「ふぉぉぉぉぉぉぉっ♡」
あまりの快感に、
汐音の体が激しく震える。
「おぉぉぉぉっ♡ あっ♡ あぁ♡
あぁあああああ♡
汐音、壊れちゃう♡ 壊れちゃうよぉ~♡
って…もう
壊れてるか!あはははははは~♡」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
我妻が家にやってきた。
インターホンを押しても返事が無い。
「---入っていいのかな?」
我妻が玄関の扉に手をかけると、
扉は開いた。
中へと入っていく我妻。
「---汐音ちゃん?お邪魔するぜ?」
2階から物音がする。
家の中が散らばっている。
「---何かあったのか?」
我妻はそう思いながら、2階の汐音の部屋の扉を開いた…
「はぁ~♡ うふぅん♡ はぁっ♡」
喘ぎ果てた姿になった汐音が、床に仰向けになって倒れていた。
部屋中、愛液まみれ。
イヤらしい香りにつつまれている。
床に放り投げられた大人のおもちゃ。
ミニスカート姿で、だらしなく寝転んでいるため下着も見える。
しかも、その下着はびしょ濡れだ。
胸元もだらしなくめくれていて下着が見えていて、
網タイツが引きちぎれて生足が見えている。
「は~~~~♡」
汐音はうつ伏せになると、床に落ちていた自分の愛液を
舐め始めた。
「んふぅ…♡ ふふっ♡ ふぅっ♡」
嬉しそうにペロペロと、クチュクチュと音を立てながら
それを舐める汐音。
「---し、、、しおん…?」
我妻が唖然として名前を呼ぶ、
汐音は、笑いながら振り返った。
その手には、学校の制服のスカート。
「うふふ・・・♡ こ、れがぁ!わたしの本性。
あぁ~興奮が!!興奮が止まらない!
わたし、わたし、狂っちゃう!!えへへへぇ♡」
そう言うと、スカートのニオイを嗅いで、
奇声を上げ始めた。
「うふふぅ ふいううぅぅぅううふふふ♡」
「---……」
我妻は首を振った。
「汐音ちゃんが…こんな子なんて思わなかった。
汐音はスカートをハサミで切りながら笑う。
自分の学校の制服をハサミで切り刻んでいる。
「---ごめん。俺、ついていけないわ。
別れよう」
我妻の言葉を無視して、汐音はスカートの切れ端を
口に放り込んでおいしそうに食べている。
自分の体を両手で抱きしめながら。。
「----おい!」
返事がないことにいら立って我妻は叫ぶ。
「----舐める?」
指についた愛液を我妻の方に差し出す汐音。
「--もういい!」
我妻はそのまま怒って帰ってしまった。
その様子を見て汐音は笑う。
「やったぁぁあああああ♡
リア充、だいばくはーつ!」
そして、汐音は部屋の扉から、屋根の上に乗って
大声で叫んだ。
「メリークリスマース!あっははははははは♡」
屋根の上で胸を揉みながら大笑いする汐音。
「あははははははは あ・・・」
突然、汐音が白目を剥き、そのまま痙攣しながら倒れた。
「---十分だ」
倉橋が汐音から離脱した。
「さて…と、次は…」
次は夕方からデートのインテリ男子・都留と、
その彼女、古田 彩恵(ふるた さえ)に
クリスマスプレゼントを贈らなくてはならない。
サタン・クロースとして。
②へ続く
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コメント
倉橋君の暴走タイムはまだまだ止まらないようです。
ちなみに、憑依されていた汐音は、ちゃんと生きてます。
無事です。
精神面がどうなるかは知りませんけれど…(他人事)
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