<皮>君のことが大好きだから①~だいすき~

皮ー。
とあるところに、人を「皮」に出来る力を持った男が居た。

そしてー、ある少女に起きた悲劇とはー?

憑依空間 最初で最後(?)の皮モノ小説です!

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「や…やめてこないで!」

一人の少女が路地の角に追い詰められて怯えた様子で、
反対側から来た男を見つめている。

「くくく・・・別にきみに乱暴するわけじゃない」
男が笑う。

「いやっ!いやっ!」
近くにあったビール瓶のケースのようなものを投げつける。

だが、男はそれをかわして笑った。

「俺はただ、君を”着たい”だけだ」

男が少女の頭をわしづかみにして笑う。

「やめて!助けて!誰か!助けてぇ!」
少女が泣き叫ぶ。

可愛らしい雰囲気のメガネをかけた少女の悲鳴を聞き、
男は笑う。

「---怯える姿、美しい。 だが…」

男が少女の後頭部に手をかざすと、
少女の動きが止まる。

「ひっ!?」

そして、男は少女の後頭部に現れた
ファスナーのようなものを静かに下におろしていく。

少女の体から力が失われていき、
まるで”着ぐるみ”のようにーー

そう、”皮”のように、
背後がパックリとわれる。

「あ・・・っ あっ…」
うつろな目に恐怖を浮かべながら少女が声を出すー。

「---美しい―。
 意思なく皮となった姿はーー
 何よりも美しい」

「----や…め…」
少女が手を震わせる。

男がニヤッとして、ファスナーを力強く下まで引いた。

そこでーーー
少女の意識は途切れた。

・・・・。

・・・・・。

「大丈夫か!」
少女の悲鳴を聞きつけた近くの商店の店主が路地にかけつけた。

だがーー
そこに居たのは、路地の行き止まりの方を見つけて立ち尽くす
少女だけだった。

「---あ、ごめんなさい」
少女が振り返る。

唖然とした表情で店主が少女を見つめる

「わたし…、演劇の練習していて… えへへっ…
 間際らしいことしてごめんなさい♡」

可愛らしく謝る少女。
店主はなんだか微笑ましくなって、ほほ笑んだ。

そして、少女は歩き出したーー

「---なかなか良い着心地だねっ うふふ・・・♡」

笑いながらも、少女の目にはーー
さっきまで泣いていた時の、涙がまだうっすらと残っていた…。

”自宅”にやってきた少女。

少女ー。
いや、ここは男の自宅。

男の自宅には、
”ある女子高校生”の写真が壁中に貼り付けられていた。

それを見て、少女は微笑む。

「---菜穂ちゃん…」
少女が口元を不気味に歪めた。

「君のことが大好きだからーーーー」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1か月後…。

とある家。

「お姉ちゃん!最近、どう?」
女子高生の村野 菜穂(むらの なほ)が姉の
村野 克美(むらの かつみ)に話しかける。

少し年の離れた姉は、高校卒業後、
1年間専門学校に通い、公務員として採用された経歴を持つ。

しかし、2か月半前に当然公務員を退職して、
自宅で、フリーランスの仕事を始めたのだった

「え~わたしの仕事?
 順調だよ」

姉の克美が言う。

妹の菜穂は、若くして自分で稼ぐ道に辿り着いた
克美に一種の憧れを抱いていた。

「でもびっくりしたよ~お姉ちゃん、役所の仕事
 あんなに楽しそうにやってたのに、
 急に退職しちゃうんだもん」

菜穂が言うと、
姉は微笑みながら言う。

「--ふふっ…
 人間思い立った時が重要なのよ」

諭すように言う克美。
菜穂は微笑んで、時計を見て呟く。

「あ、そろそろ学校行かないと!」
菜穂が言うと、
克美は「うん、行ってらっしゃい」と微笑んだ。

菜穂が、部屋から出て行く。

その様子を見て克美は呟いた。

「--思い立った時が、重要なんだから…ふふっ…」
姉の克美は、後頭部のあたりを優しくなでながら
不気味に微笑んだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校に到着した菜穂。

「お姉ちゃんすごいなぁ~」
呟きながら、ふと思う。

”そういえば、姉は何の仕事をしているんだろう” と。

結構な収入があるのは間違えない。
家にもお金を入れているし、
公務員時代よりも収入的には多いのだろう。

だがーー

「……何の仕事だろう?在宅ワークの何かなんだろうけど」

菜穂は、ふと好奇心を抱いた。
”こんど、こっそり確認してみようかな” とー。

不思議なことに姉の克美は、
菜穂がいるときは、何もしていないのだ。

つまり、菜穂が居ない時間に何か仕事をしていることになる。

「ーーーおはよ~!」

親友の佐川 美来(さがわ みく)が元気よく教室に入ってきた。

「-ーあ、おはよう 美来ちゃん!」

菜穂が挨拶すると、美来はとても嬉しそうに微笑んだ。
美来は、菜穂の大親友で、大の仲良しだ。
いつも、美来がベタベタとくっついてくるため、
一部のクラスメイトからは変な噂も立っているほどだ。

・・・放課後。

「-ーーまだ彼氏とか居ないんだよね~」
菜穂と美来が雑談をしている。

友人のカップルの話になった際に、
思わず愚痴を言う菜穂。

「じゃ、キスとかもまだなんだ?」
美来がほほ笑みながら言う。

「---え?まぁ…
 あ~小さいころお父さんのほっぺにしたことはあるかも…」

菜穂が言うと、
「そ~れはカウント外でしょ!」と美来は笑いながら言う。

そして、真剣な表情で、
「--じゃ、わたしとキスしよっか」

とまっすぐ、菜穂の方を見ながら言う。

ーーーえ?

一瞬、意味が分からず菜穂が固まる。
「---え、、?? え??えぇっ!?」
菜穂が意味を理解して驚きの声を上げると、
美来が笑った。

「ウソウソ!冗談よ!
 そんなにびっくりしないでよ!」

ポニーテールをなびかせながら、笑う美来。

「--なぁんだ…びっくりしたぁ…」
菜穂は時計を見て”そろそろバイトの時間か~”と、
座席を立ち上がった。

「じゃ、わたし、バイトだから帰るね!」
菜穂が言うと、美来も「あ、じゃあ、私も帰らなきゃ!」と
言って、手早く帰宅準備を始めて、教室の外に出て行こうとした。

「-そういえば、美来ちゃん、部活やめたんだっけ?」
菜穂が、美来に尋ねた。

美来が振り返って笑う。

「あ~うん、なんか絵をかくの面倒になっちゃって…
 ホラ、思い立った時に行動!って言うでしょ!
 だから部活辞めたの!」

そう言うと、美来はにっこりとほほ笑んでそのまま教室から出て行った。

「--お姉ちゃんと同じようなこと言ってるなぁ…」
菜穂は、朝、姉に言われたことを思い出して微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

パン屋でアルバイトをしている菜穂は、
今日もパン屋で、販売を続けていた。

「--ありがとうございました」
菜穂が接客を終えると、
先輩バイトの高木 麗子(たかぎ れいこ)が近付いてきた。

「今日も頑張ってるね!」
麗子が言う。

先輩の麗子は、4か月前にバイトを始めた菜穂に
とても親切にしてくれた。
接客態度も良く、後輩への気遣いも良いため、
客・身内問わず人気が高い。

そんな麗子は女子大生だと聞いている。

「---いえいえ、いつも高木さんに助けられてばかりですから」
菜穂が笑いながら言うと、
麗子は「ううん、こちらこそ、いつも菜穂ちゃんには癒されてるから」と笑う。

麗子にとって初めての後輩だったらしく、
麗子は菜穂にとても親切にしてくれている。

「--あ、そうだ!ちょっと店長にお話しすることがあるので、
 少しだけお任せしても良いですか?」

菜穂が言うと、麗子は優しく微笑んだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後。

「じゃ、バイトに行ってくるね!」

”いつもの時間”にアルバイトに出かける菜穂。

「は~い!行ってらっしゃい!」
姉の克美がほほ笑んで見送る。

菜穂は玄関先で笑みを浮かべた。

「---今日はお姉ちゃんが何をしてるのか
 突き止めちゃおっと!」

好奇心旺盛な菜穂は、
憧れの姉・克美の仕事がどうしても気になった。

だから、前回のバイトの時に
店長に相談して
”バイトの開始時間を1時間遅らせてもらった”

店長には学校行事と伝えてある。

「----忍び足~忍び足~♪」
小声でつぶやきながら部屋の方に戻る菜穂。

部屋の前につくと…
声が部屋の中から聞こえてきた。

「あんっ…♡ あっ♡ うふふ♡ ふふふ♡」

「えっ…・?」

その声はーー
姉の甘い喘ぎ声だったーー。

「---お姉…ちゃん?」
こっそり部屋を覗くと、、、
そこには”メイド服”を着て、一人体を弄び、
その様子を机に置いたカメラで写している姉・克美の姿があった。

「------!!」
菜穂は驚いて部屋を閉めて、反対側の部屋に身を隠す。

「お・・・おねえちゃん…??」

「ふふふ…♡ 女の体ってお金になるわぁ…♡」
姉の声が部屋から聞こえてきた。

まさか…
姉の克美が自分の体でお金を稼いでいるなんて…

動揺しながらも菜穂は心を落ちつけようとする。

ガチャ…

反対側の部屋から克美が出てきた。

そしてーー
克美が階段を下りていく。

「お母さん、出かけるね」
そう言うと、克美が、外に出る。

「---どこ行くんだろう?」
菜穂が後をつけるようにして、母に見つからないように
こっそりと家を出る。

克美は早足でどこかへと向かう。

かなり急いでいる。

そしてーー
とある、大き目の家へと入っていた。

ガチャ

当たり前のように鍵を開けて中に入っていく克美。

「---誰の家…?」
菜穂が表札を見ると「皮野」と書かれていた。

「--人の家に入るのは、、気が引けるけど…」
菜穂はどうしても気になって家の扉を開けた。

そして、奥へと進んでいくー。

リビングから人の気配がする。

こっそり覗く菜穂ー

そこにはーー。

バイト先の先輩、
高木麗子の姿があった。

スタイル抜群で、自信に満ち溢れた麗子。

「うふふ・・・♡
 きょうも…綺麗!」

ミニスカート姿で自分の太ももを
味わうようにして撫でている麗子。

「--どうして…高木さんがここに…」

ふと、床に落ちている
服のようなものが見えたー

「---ひっ!?!?」

それを見て菜穂は、驚きで目を見開いた。

そこにはーー
”皮”のようになって、表情ないまま横たわっている
姉・克美の姿があった。

しかも、背中がぱっくりと割れている。

まるで、着ぐるみのように。

「きっ…きゃあああああああああああ!」
菜穂はあまりの恐怖に叫んでしまった。

「----あら」
麗子が振り返る。

「---ひっ…た、、高木さん…こ、、、これって・・・」
菜穂は恐怖で身を震わせながら言う。

「--な~んだ、見ちゃったんだ…」
麗子が笑いながら近づいてくる。

「せっかくーーー
 ”いつも”菜穂ちゃんのそばにいようと思ったのに…」

麗子が菜穂の頬に触れる。

菜穂は恐怖でガタガタと震えている。

「---お、、、お姉ちゃん・・・」
皮になった克美に近づく。

表面はペラペラになっていて、
開いた後頭部から背中にかけて、ファスナーのようなものがついている。

「お姉ちゃん!お姉ちゃん!しっかりして!
 た、、高木さん!これ、どういうことですか!?」
泣きながら菜穂が言う。

すると、麗子は笑いながら、後頭部に手をかけた。

そしてーー

ファスナーを引く音が聞こえたーー

ぺらり・・・

麗子の体を脱皮して脱ぎ捨てるようにーー
中から男が現れた。

「きゃあああああああああっ!」

姉と同じく、意思を持たぬ皮と化した麗子。

そして、中から出てきた男が笑う。

「---怖がらないでよ…
 ”いつも”一緒だったじゃないか…」

男は微笑みながら言った。

「お姉さんも、この女も、
 俺の”皮”になってもらったーー」

男の言葉に、菜穂は恐怖しながら言いかえす。

「--か、、かわって…??
 、、、ど、、、どうなってるの…」

その問いに男は、満面の笑みで答えた。

「---君のことが大好きだからー。
 ずっとそばにいたいからー。
 この子たちには”皮”になってもらったんだよー」

男の邪悪な笑みー。

菜穂は、ただ、身を震わせることしかできなかった…

②へ続く

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コメント

初の皮モノに挑戦です。

でも、憑依メインなので、
たぶん最初で最後になります!!

コメント

  1. 柊菜緒 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    どうなるか楽しみですねぇ!

  2. チラ より:

    SECRET: 1
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おぉ、そういう皮モノも大好きです!最高!
    ありがとうございます!

  3. チラ より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    あ、そうだ
    皮モノみたいな憑依はどうですかw
    こんな感じで:
    http://blog.livedoor.jp/xxhogexx/archives/2874896.html

  4. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > あ、そうだ
    > 皮モノみたいな憑依はどうですかw
    > こんな感じで:
    > http://blog.livedoor.jp/xxhogexx/archives/2874896.html

    ありがとうございます!
    参考にさせて頂きます!

    「皮要素」を入れた「憑依」というカタチで、
    またネタが浮かんだら書くかもしれません!

  5. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > どうなるか楽しみですねぇ!

    ありがとうございます!
    今から…書きます笑

  6. toshi9 より:

    SECRET: 0
    PASS: 85e42e40f0fd4dae2553e63f678d9a1d
    皮モノ、いいですね。最後まで一気に読んでしまいました。続きも楽しみです。

  7. 無名 より:

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    > 皮モノ、いいですね。最後まで一気に読んでしまいました。続きも楽しみです。

    ありがとうございます!大変光栄です!
    今後もがんばります!