とある会社ー。
一人の若き女性社員が、
憑依されるー。
社長にとって、社員は会社の”備品”でしかなかったのだ。
憑依された女性は、
体を使って、取引先との交渉を有利に進めようとする…。
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「---ははっ、大変だなぁ…」
電話をしながら、男が笑っている。
男の名前は 田辺 宗一(たなべ そういち)。
24歳の会社員だ。
「そっか…大変だな。
まぁ、、頑張れよ!
来週の土曜日には、たっぷり楽しませてあげるからさ!」
宗一が言う。
電話の相手は彼女の伊藤 愛結(いとう あゆ)
来週の土曜日は彼女の誕生日だった。
愛結とは高校時代からの付き合いだ。
高校の生徒会活動をしている際に意気投合して、
そのまま付き合い始めた二人。
大学は別の大学だったけれども、
それでも二人の絆は揺るぐことなく、
そのまま宗一と愛結は、今も付き合いを続けている。
「--じゃ、また明日」
宗一が電話を切る。
「大変だな…愛結も」
愛結は、とある会社の事務職をしている。
とても可愛らしく、美人な彼女は、
よくセクハラまがいの発言も受けると言う。
宗一にとってはとても心配なことだったが、
とりあえずは見守ることぐらいしか出来ないのも事実だった。
「誕生日…か
喜んでくれるといいな」
宗一は用意してある愛結へのプレゼントを見つめて、
そう呟いた。
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翌日。
愛結は、会社のとある集まりに出ていた。
取引先との忘年会のようなものだ。
「---可愛い御嬢さんだ。
お名前は?」
会社の取引先の男、
又吉 吾郎(またよし ごろう)が
イヤらしい目つきで、愛結の方を見る。
スーツ姿でも、そのスタイルの良さがよく分かる。
「--伊藤 愛結です…。」
嫌そうな表情にならないように笑顔を振りまく。
「--はははっ!
可愛いなぁ!初々しいところもまた魅力だ。」
取引先の又吉が笑うと、
愛結の会社の社長・鴻上 竜馬(こうがみ りゅうま)も
笑った。
「--いやぁ…こんな子を抱けたら、
お宅との取引、2倍、3倍にするんですけどねぇ」
取引先の又吉が言う。
愛結は「ふふ・・・」と愛想笑いを浮かべながらも、
手を震わせていた。
愛結は、そういうことが嫌いな性格だったのだ。
”どこまで清純なの?”と大学時代友人に言われたぐらいだ。
「--どうだい?このあと一緒に?」
又吉が平気でセクハラ発言をする。
「ごめんなさい。。
失礼しますーー」
愛結は我慢できなくなって、その場から退散した。
他の社員たちが不思議そうにその様子を見る
「チッ!あ~あ、つまんないの!」
取引先の又吉が不愉快そうにそう言い放った。
「申し訳ございません。
よくしつけをしておきますので」
鴻上社長は、酒を注ぎながらそう呟いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。
酒の席から会社の社長室に戻った鴻上は、
冷蔵庫から水を取り出して飲み干す。
そしてー
窓の外に見える、夜の街を見つめた。
「社員は家族ーか。」
先代社長が掲げた理念。
だが、先代は2年前、
若い女性社員に毒を盛られて急死した。
そしてー
鴻上 竜馬が、後継ぎとして、後を継いだのだ。
竜馬は、まだ40代。
社長としては、若い。
「私にとっては
社員は家族などではないー
社員はーーー”備品”だ」
鴻上はそう言うと、笑みを浮かべる。
2年前、父を殺害した新入社員の女は、
”記憶にない”と容疑を否認し続けた挙句、
最後は自ら命を絶った。
「記憶にない…か」
当たり前だ。
鴻上社長がーーー。
「-----くくく」
鴻上は机の中から、とある薬を取り出した。
”憑依薬”
これを使って、思いのままにーー
あの女を操ったのだからー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
愛結が出社すると、
社長から呼び出された。
「--社長から直々の呼び出しなんて珍しいな。
何の話だろう?」
同期の脇 拓哉(わき たくや)が言う。
「うーん、何だろう…
昨日の宴会で、途中退席したことを怒られるのかも…」
愛結が言うと、
拓哉が呆れた様子で言う。
「いやぁ、昨日のセクハラ発言だったらああして当然だろ!
伊藤さんは何も間違ってないよ」
拓哉の言葉に、愛結は「ありがと」と言うと、
そのまま社長室へと向かった。
ーーー失礼します。
社長室に緊張した面持ちで入ると、
鴻上社長は笑顔で愛結を出迎えた。
「---お話とは、何でしょうか?」
愛結が聞くと、鴻上社長が笑った。
「--私は、数か月間”出張”することにしたよ」
出張?
鴻上社長の意図が分からない。
「はぁ…出張ですか…どちらに?」
愛結が尋ねると、
その瞬間、鴻上が突然愛結にキスをした。
「んくっ…」
慌てて引きはがそうとする愛結。
だがーー
愛結の意識が、薄れていくー。
体がビクン、ビクンと何度も痙攣する。
そしてー
そのまま愛結は白目をむいて倒れた。
鴻上社長も同じく倒れるー。
数分が経った。
「---」
愛結がゆっくりと起き上がる。
視界の邪魔をしている髪の毛を乱暴にどかすと、
愛結は呟いた。
「ひひひ…憑依ってのは何回してもいいものだ…」
口元をゆがめて、イヤらしく笑う愛結ーー
「---出張…、きみの体の中に出張させてもらうよ…
くくく…なーんてな!!!」
愛結が表情をゆがめて笑う。
「--伊藤 愛結の体、ゲットぉぉぉぉお!
ひひひひひひひっ、
あはははははははっ!!
うふふふふふふふっ♡」
社長室の中で一人笑う愛結。
「あ~~最高」
嬉しそうに髪の毛を乱しながら、社長室の机に座る。
足を組んで座ってみるが、
スーツだからイマイチ色っぽさにかける。
「---くふふ・・・明日から私服にしよっと」
愛結のマネをしながら笑う。
社長権力を使えば、愛結を私服出勤にするのはたやすい。
そして、愛結は舌で唇を舐めながら笑った。
昨日の宴会での言葉を思い出すー。
取引先の又吉が、体を売れば、取引を2倍、3倍にすると言っていた。
「--うふふふ・・・
…ん?あ~彼氏いるんだ、わたし」
愛結がつぶやく。
愛結の記憶を鴻上社長が読み取りながら笑った。
「--ま、いっか。
わたしも会社の備品だし!
会社のために、体をおじさんに売っちゃおっと!
あははは、ふふふふふ♡」
わざと色っぽく歩きながら、
愛結は、自分の部署へと戻って行った。
「--あ、おかえり。どうだった?」
同期の拓哉が愛結に尋ねる。
「--うふふ♡ とってもいい話だった」
愛結はそう言って、笑みを振りまく。
拓哉はいつもと違う妖艶な笑みの愛結を前に
顔を赤らめた。
「---あら、そんな赤くなっちゃって!」
愛結はわざと、ボディタッチをして、そのままご機嫌そうに
座席へと戻っていく。
「----」
拓哉は自分のドキドキが止められなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日。
愛結は、挑戦的なミニスカートと胸元を強調した服装で、
会社に出社した。
「---な、、、、何だその格好は?」
部署の部長が叫ぶ。
「--うふふふ♡ ご不満ですか?部長」
愛結は挑発的な表情で部長を見た。
「--お、、不満とかそういう問題じゃない!
今すぐ着替えてきなさい!」
部長がそう叫ぶと、
愛結が、色っぽく歩きながら、
部長の机の上に座り、足を組んで部長の方を見た。
「き…きさま!何をしている」
そう言いながらも、目の前で、
足を組んでいる愛結に視線が釘付けになっている。
顔も赤くなっている。
愛結の綺麗な足が目の前にある。
「ーー社長からの許可、出てるんですけど」
愛結が言う。
「なんだと!?」
部長はそう言いながら、パソコンで通達を確認する。
すると、愛結が突然、体を密着させて、
社長の手の上から自分の手を被せて、
パソコンを操作し始めた
「くっ・・・な、、何を?」
部長は、前かがみになっている愛結の胸元に目が釘付けになった。
「ほら…これですよ♡」
通達を開き、部長の耳元でささやく愛結。
「--あ、、、、あ、、、ああ、わかった」
部長は顔を真っ赤にして放心状態で呟いた。
「---ふふ♡」
周囲の社員たちを”アリ”を見るかのような目で
見下しながら自分の机に戻る。
「ーーーお、、おい、、どうしたんだよ?」
同期の拓哉が尋ねたが、
愛結は笑うだけだった。
そして、呟いた。
「--ねぇ、、、今夜、空いてる?」
愛結が甘い声で囁く。
彼氏がいるのは知っている。
だがー同期の拓哉は、愛結が好きだった。
その言葉に、拓哉は即答で返事をした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夜。
彼氏の宗一のところに電話がかかってきた。
「ねぇ宗一…」
彼女の愛結からだった。
「--愛結?どうした?
なんか、声が変だけど…?」
宗一が違和感を感じて言うと、
愛結は笑った。
「ううん…
あ、そうだ、宗一、
わたし、しばらく会社に泊まるから
あっ♡、、
だから♡
よろしくね!!」
その声に違和感を感じながら宗一は聞き返す。
「え?そんなに仕事忙しいのか?」
「え? あぁ、、そこ♡ そこもっと♡、、
うん、、、忙しいの。。
わたし、会社に尽くさないといけないから、、、
だから、、、しばらく会えない!」
愛結が喘ぎ声のような声を上げている。
「おい、、愛結…?
土曜日は…?」
宗一が聞くと、
愛結は答えた。
「土曜日?大事な取引先との時間が
入っちゃったから、会えなくなっちゃった!えへっ♡」
悪びれる様子も無く、電話口の愛結が笑う。
「---…そっか…わかった…」
宗一はショックを受けた。
本当に、誕生日を楽しみにしていたのだ。
「---じゃ、また」
宗一は電話を切った。
あまりのショックで
”今、何してるんだ?”と聞くのも忘れてしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あぁ、、最高だよ、、、伊藤さん!」
同期の拓哉が愛結の体を抱きしめながら笑う。
「あぁん♡ わたしも、、、さいこう♡
あは♡あははは♡」
ナース服を着た愛結が笑う。
「まさか、伊藤さんにコスプレ趣味があったなんて」
拓哉がイヤらしい目で愛結を見た。
これはー
”予行練習”
取引先の又吉を満足させるための。
「うふふふふふふふっ♡」
愛結は笑う。
「あはははははははははっ!
あははははははははははは♡」
狂ったように、社長室で、同期の拓哉と
ナース服姿で抱き合いながら、笑う愛結。
その部屋の片隅には、
セーラー服や、チャイナドレス、メイド服などが
用意されていた…
全ては、取引先を満足させるためーーー。
翌日ー。
拓哉は、”愛結を襲った”という情報を流されて、
懲戒解雇となったー。
もちろん、愛結自身が流した情報だー。
「---ばいばい、拓哉くん」
愛結は、笑いながら、その通達を見つめて微笑んだー。
②へ続く
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「他者との関係をよくするために体を奪われる」という
リクエストから生まれた作品です!
続きは明日です!!
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