大雨の中、傘も差さずに逃げ惑う少女。
背後からは人型スライムのようなものが猛ダッシュで
少女を追っていたー。
逃走の行き着く先は?
少女の運命はー?
スライム憑依、完結です!
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雨水を跳ね上げて、少女が車道に飛び出す。
車が急ブレーキを踏み、
窓を開けて顔を出す。
「っぶねーな!なんだよ急に!」
いかつい男が亜彩菜に対して怒鳴り声をあげる。
亜彩菜は、ずぶ濡れの状態で、
運転手の方を見て
「ごめんなさい…」とつぶやいた。
乱れきった髪、
ずぶ濡れの制服、
すりむけた手。
「---お、、、おい、どうかしたのか?」
男は事件のニオイを嗅ぎつけ、そう尋ねた。
「----……」
亜彩菜が、追われていることと、家に帰りたいということを
男に告げる。
警察を呼ぶことを勧められたが、
まさか”スライムみたいのに追われている”なんて言っても
笑われるだけだろう。
男は”これ、誘拐と勘違いされるんじゃね?”と思いつつも
亜彩菜を放っておくことはできず、車に乗せた。
そしてー。
車は亜彩菜の家を目指して走り出した。
びちゃっ…
びちゃっ…
真知子の口と片目だけをドロドロとした表面に
くっつけたままのスライムが、たった今、車の走り去った場所にやってきた。
「---にがさない・・・ょ!」
破裂して死んだ真知子の口が不気味に動く。
スライムの意思で。
目は嬉しそうに笑っている。
そう呟くと、スライムは口と目をその場に
ポタポタと落として、再び走り始めた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「---ここでいいのか?」
車の男が言う。
男からもらったタオルで、亜彩菜は
ずぶ濡れになった体を拭く。
こんなこと、気休めにしかならないが、
それでもないよりはマシだった。
「---ありがとうございました」
亜彩菜が気持ちを落ち着かせて、
タオルを差し出すと、男は言った。
「いいよ、いいよ、それはやるから。
じゃあな…」
そう言うといかつい男はそのままアクセルを踏んで
走り去っていく。
一層強くなる雨。
亜彩菜は玄関の前で空を見上げながら思う。
ーーさっきのは何かの見間違いだ。
真知子がスライムみたいのに入り込まれて”破裂”した・・・
なんてこと誰も信じやしないし、
ありえない。
亜彩菜は家の鍵を開ける。
今日は、母も父も仕事中で夜まで帰ってこない。
「---はぁ…」
真冬にズブ濡れになってしまった亜彩菜は
さむぅ…と思いながら家のストーブの電源を入れる。
ストーブが音を立てて、
温かい空気を出し始めた。
室温は13.5度。
かなり低い。
震えが止まらないー。
何故かー。
寒いからなのかー。
違うー。
真知子が”破裂”して、
残った片目と口だけがスライムのような物体に付着している
あの光景が忘れられない。
下着が透けてしまっている制服を見て、
ため息をつく亜彩菜。
コートは途中で、転んだ時に脱ぎ捨ててしまった。
それだけ、慌てていた…。
スカートがビタビタと足にくっついて気持ち悪い。
体を震わせながら、ストーブに当たる亜彩菜。
スマホを取り出し、真知子にLINEを送る。
けれどー
返事は来ない。
既読もつかないー。
「うそっ…嘘よ…あんなの…ありえない」
真知子が”破裂”した。
そんなこと、ゼッタイにーありえない。
「-真知子!返事を!返事をしてよ…」
焦った様子でLINEの画面を凝視する。
けれども、返事は来ない。
当たり前だー。
真知子は本当に”破裂”して死んだのだからー。
LINEでは、あの世と連絡を取ることはできない。
「はぁ…」
体があったまった亜彩菜は水道の蛇口をひねる。
キッチンにあったグラスに水を入れる亜彩菜。
「少し、心を落ち着かせなきゃ…」
雨の音が激しく聞こえる室内で、
亜彩菜は水をグラスに入れて、そのまま口に運んだ。
「------!?」
亜彩菜が口に運んだものから伝わってくる感触に
違和感を覚えた。
”水がこんなにドロドロとー?”
その時だった。
水…だと思って口に含んだものが
”自らの意思”で喉の奥に”移動”し始めた。
「---ぐぼっ!」
口の中を何かが移動する感触。
喉が焼けるように痛い。
「げほっ!げほっ!げほっ!」
咳き込む亜彩菜。
あまりの苦しさにその場に蹲る。
音を立てて、グラスが床に落ち、
粉々に砕け散る。
亜彩菜が咳き込み続けている。
「けほっ…けほっ…ぐ…ごほっ…」
喉を抑えながら涙を目に浮かべている。
”これはーー
さっきのスライムみたいなーーー”
亜彩菜はそう思った。
スライムはーー
水道を通して、自宅に侵入していたのだった。
それを知らずに、亜彩菜はスライムを水と勘違いして
飲み込んでしまった。。
ついには、
喉がゴクリと、それを飲み込んでしまう。
「---ひっ…
や…やめて…お願い…やめて…」
真知子が膨張して”破裂”した場面が目に浮かぶ。
体の中を”何かが移動”している感触がする。
胸のあたりをかきむしるようにしてもがく亜彩菜
「や、、、、め、、てぇ!」
その場にあおむけに倒れて、胸を抑える。
胸が苦しい。
お腹のあたりがボコッ ボコッと波打っている。
お腹が波打つたびに、激痛が走る
「ひっ…うっ…うぅっ…うっ…あああああああっ!」
あまりの苦しさに、亜彩菜は仰向けに寝転がっている
体を反り返らせて痙攣している。
”何かが広がっていくー”
「--や…や…イヤだ…
いや…出て行って… うっ…あああああああっ!」
激痛が走り、床を転がりまわる亜彩菜。
紙も、制服も、何もかも、全てが乱れきっていた。
「うっ…おえっ…お…」
亜彩菜の胃を何かが逆流している。
吐くーーー
そう思った。
けれど、、吐く一歩手前で、
それは”さらに上”へと上がって行った。
頬が不自然にふくらみ、歪む。
そして、次の瞬間
「うぎっ…ぎ・・・ぎ・・・あぁ・・・・あっ…が・・・」
亜彩菜が頭を抑え始める。
今度は激しい頭痛。
それと同時に、
頭の中に”別の意思”が広がるような錯覚を味わう。
いやーー
錯覚などではない。
腹部の方の激痛は落ち着いている。
頭が痛いーー
とにかく痛いーーー
「は・・・やく・・・でんわしなきゃ」
うつろな目で立ち上がり、亜彩菜は机に置いたスマホを手にする。
考えがまとまらない。
どうして自分は…
あたまのなかで”なにかが”ひろがっている…
「---あれ・・・わた・・・し」
スマホをその場に落とす。
「--わ・・・た・・・し・・・」
何もわからない。
自分は何におびえていたのだろう。
頭からごぼごぼと音がする。
何のおとー?
なにも、わからない。
”怖がらなくていいよー
何も考えなくていいよー”
そう、聞こえたー。
口から唾液か…
それともスライムの液体か…
どちらともとれないものを流しながら
亜彩菜は笑った。
「わ・・・たし・・なにもかんがえなくていいの…?」
子供のような不気味な声で言う亜彩菜。
”うんー、そうだよ”
スライムの声が脳から響く。
亜彩菜に憑依するため、亜彩菜の体内に入ったスライムは、
亜彩菜を完全に支配するための部位を体中を駆け巡り、
見つけ出した。
そう、脳だ。
既に亜彩菜の脳は、ほぼすべてが掌握されていた。
憑依したスライムによって。
そのため亜彩菜の思考がまとまらなくなり、
次第に何も考えられなくなっている。
「---えへへへぇ…♡」
脳に憑依したスライムが、特殊な成分を分泌させた。
人間の”楽”を刺激する成分。
亜彩菜は中毒者のように、不気味に笑い、その場に倒れる。
地面にうつ伏せになりながら満面の笑みで笑う亜彩菜。
「えへ・・・なにも・・・かんがえなくていいの…♡」
そう言うと、亜彩菜は動かなくなった。
スライムによる憑依が、完了したのだーーーーー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいま」
母親が帰宅した。
亜彩菜は、母と父の分のご飯を用意して待っていた。
「--おかえりなさい」
いつものように、ほほ笑む亜彩菜。
「あら?今日は随分豪華なのね?」
母親が机に並ぶ料理を見て笑う。
席には
”コップに入れられた水”
「---うん。たまには私も頑張ろうと思って。
今日は”わたしの”誕生日だしー」
「--え?」
母親が首をかしげる。
亜彩菜の誕生日は、まだ先だ。
「---さ、食べて食べて!」
その日ー、
一家は、人ならざるものにー
乗っ取られてしまったーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2週間後。
学校では最近、奇妙な噂が広がっている。
あの真面目な亜彩菜が、放課後、
男を空き教室に連れ込んでは
性行為をしているという噂だ。
亜彩菜は否定も肯定もしない。
それに最近、亜彩菜が色っぽくなったと噂になっている。
スカート丈が少し短くなったり、
時々、甘い声で男子に話しかけたりーーー。
だが、クラスメイトたちはそれを
”些細な異変”としてしかとらえていなかった。
放課後…
空き教室で、
喘ぎ声が響いていた
「中に出して♡」
亜彩菜が裸で男を誘惑していたー。
「--ま、、まじかよ…いいのかよ!」
不良男子生徒がニヤニヤしている。
「いいよ♡ うふふ・・・♡
ねぇ、、、はやくぅ…♡」
亜彩菜が男を誘惑すると、
男はひと思いに・・・
「んっ♡あっ♡あはぁあああああああ♡」
スライムの目的はーーー
人間の女の体を使い、
”自分の一族のDNAを混ぜた”
新しい赤ん坊を産むことー。
”人類”は、スライムによって、
徐々に浸食されていくのだー。
既に、スライムに憑依された女性が産んだ子供が、
この世の中には存在する。
その一見すると普通の人間たちはー
人間には無い力を持っている。
そして、いつの日かー、
人間は”新人類”にとって代わられるのだー。
「…変わったな~亜彩菜ちゃんも!
こんなことする子だったっけ?」
不良男子が笑う。
その言葉に亜彩菜は妖艶に微笑んだ。
「ヒトはーー変わるものよ」
・・・と。
身の回りに突然”豹変”した人はいないだろうか。
「あんなことするはずなかったのに」
そんな人は、居ないだろうか。
もしかしたら、既に始まっているのかもしれない。
”未知”の侵略が。
人は、全てを”知ったつもり”になっている。
けれども、決してそうではない。
”非現実的”
それは、人が勝手に決めただけのこと。
現実逃避をしている間にもー
確実に”奴ら”は広がり続けている・・・
おわり
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コメント
憑依…
乗っ取られるまでの過程にこだわった小説です^^
いつも憑依シーンは手短に終わらせることも多いのですが
あえてこういうのも書いてみました!
以前予定表に載せて延期した「常闇」という作品が
ベースになっています。
「常闇」は駅のホームが舞台の予定でしたが
ちょっと変えたので題名も「雨水」に変えて
今回、ようやく皆様にお届けすることができました!
お読み下さった皆様、ありがとうございました^^
コメント
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ううむ同じ憑依作品でも今回のように自分の好み?にあったりするのもある。
やっぱ自分も憑依するならこんな感じって考えてるのと似てるからかな
そして自分も熱過ぎて脳がオーバーヒートしたのかついついホラーと分かってて見ちゃうんです。
スライム=俺って考えると何か楽しいしな!(テンションもおかしい