弁護士、甘利 卓(あまり すぐる)。
弁護士としての腕前は2流だが、彼には
「憑依能力」があった。
彼はそれを駆使して、真実を捻じ曲げていく。
「真実は、捻じ曲げるためにあるー」
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とある夜道。
若い男が、女子大生を追っている。
「いや…来ないで!」
弱弱しそうな…どことなく守ってあげたくなる感じの
美人女子大生が、怯えた様子で逃げている。
男はー
スキップしながら満面の笑みで、女子大生を追っている。
「ヒャッハー!」
男は叫ぶ。
男はーー夜道で女子大生を待ち伏せして痴漢行為を
働いている常習者だった。
女子大生がつまずく。
そしてーーー
男は女子大生の上から覆いかぶさった。
「ホラ、全部見せてみろよ!
その体を全て俺にゆだねろぉ!」
男が乱暴に女子大生の服を
ひきちぎるようにして脱がせている。
この通りは、人通りが少ない。
特に、夜は。
だがー。
「ちょっと!何してるの!」
つい数分前まで一緒に帰路を歩いていた友人の女子大生が、
駆け付け、その異様な事態に気付き、叫んだ。
「---やっべぇ!」
男は慌てて走り出し、逃走する。
「里美(さとみ)大丈夫!?」
友人が服を脱がされかけた状態の里美に駆け寄る。
「--優子(ゆうこ)…」
駆けつけてきた友人、優子の姿を見つめながら、
被害女性の里美は目に涙を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日、近くの監視カメラに映っていた男は逮捕された。
内海 哲伸(うつみ てつのぶ)
一流企業、内海物産の社長の息子だった。
息子の逮捕に、憔悴した様子の
内海社長は、どうにかして、事態のもみ消しを図った。
そしてー
とある噂を聞きつけ、
ある弁護士の元を訪れた。
弁護士の名はー
甘利 卓(あまり すぐる)
腕前は大したことはないのだが、
時折、”明らかに黒”な事件でも、何故か無罪を勝ち取ってしまう。
そんな伝説的な噂のある弁護士だった。
一説によれば
”気に入った人”を弁護するときにしか、
”本当の実力”を見せてくれないのだとか。
「--甘利先生。うちのバカ息子を救ってやってください」
保釈となっていた息子の哲伸の頭を下げさせながら言う。
甘利は、
”逮捕の決め手”となったという監視カメラの映像を
見ながら笑う
「でも社長さん、
ザンネンながらアンタの息子、
完全にヤッちゃってますよ」
甘利弁護士は不遜な態度で言う。
その失礼な態度に内海社長は少し腹が立った。
甘利弁護士は映像を見ながら笑う
「あ~あ、ヤられてる女子大生、可愛いな。
途中で見つかっちまうとは、ツメが甘かったな」
甘利弁護士はコーヒーを飲みながら
加害者の哲伸を見つめて笑う。
「ヤッちまったのは、間違えないんだろ?
一応、否認してるみたいだけど?]
甘利弁護士の言葉に
内海社長の息子の哲伸は叫んだ。
「しょうがねぇだろ!
あんなエロい体してる方が悪いんだ!
アンタだって、
目の前にコッペパンが置いてあったら
喰うだろうが!?」
哲伸が言う。
とことんダメ息子のようだ。
だが、
甘利弁護士は、そのどうしようも無さを
”面白い”と思った。
「確かに、目の前に美味しそうなコッペパンが
おいてあったら、私もスキップしながら食べるだろう」
甘利弁護士がイスから立ち上がり、
父親の内海社長の方を見る。
「社長ー、
息子さんがしたこと。
被害者女性に謝ることはありますか?」
甘利弁護士がコーヒーを飲み終えて、
空き缶をゴミ箱にシュートする。
そんな様子を見て、内海社長は言った。
「ないー。
むしろ、余計な騒ぎを起こしやがって…
女は男に体を売ってナンボだろうが!
そんなことよりもわしは、息子を助けたい!
力を貸してくれ、甘利先生」
内海社長が頭を下げると、
甘利弁護士は拍手した。
「目の前にコッペパンがあったら食べてしまう息子。
そして、反省もせずに体を売れという父親。
どうしようもない親子だ」
甘利弁護士の言葉に、
哲伸が叫ぶ。
「なんだとテメェ!」
ーーーだが、甘利は笑った。
「--お引き受けしましょう。
私の”全力”でなー」
世間は知らないー。
彼がー
”憑依能力”を持つことをー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第1回の公判が行われる。
被害者の岩淵 里美(いわぶち さとみ)。
可愛らしい雰囲気の薄幸そうな守ってあげたくなる雰囲気の少女。
大学生で、一人暮らし。
夜道で、哲伸に襲われた被害者。
証人として友人の本村 優子(もとむら ゆうこ)もやってきている。
大学生でポニーテールがトレードマーク。
大学内のミスコンで上位入賞経験を持つ。
事件の際に、哲伸の姿を目撃している。
被告人ー、内海 哲伸(うつみ てつのぶ)27歳。
大企業の社長である親のすねかじりで、何か問題を起こしては
父親を頼っている。
事件当時、里美を襲い、乱暴を働いた。
父親の内海社長は、傍聴席で膨張している。
原告側の弁護士がやってきた。
緒方 深雪(おがた みゆき)弁護士。35歳。
”女性の味方”をモットーにこの手の事件で
数多の勝利を勝ち取ってきた凄腕の弁護士。
そしてー。
法廷に甘利弁護士が入ってきた。
甘利弁護士は、やる気のなさそうな表情で
相手弁護士を見る。
「緒方ーーか。」
興味なさそうに自分の席につく。
甘利 卓、33歳。
弁護士としての実力は2流。
ただし、時折、恐ろしいまでの力で勝訴を勝ち取ることがあるー。
「---ちょっとふけたな?」
甘利弁護士が、前に会った時よりも緒方弁護士の化粧が
濃くなった気がして、そう言い放った。
「---ふざけた態度は止めなさい。
ここは法廷よ」
堅物の緒方弁護士が不機嫌そうに言う。
「私は、痴漢事件を許しません」
そう言い放つと、緒方弁護士は席についた。
「---ちょうどいい」
甘利弁護士は小声でそう呟き、口元をゆがめた。
そしてーー
公判が始まった。
監視カメラの映像が流される。
哲伸がスキップしながら里美に近づき、乱暴をし始めている。
誰の目から見ても結果は明らかー。
そして、友人の優子が証言台に立ち、言う。
「私は現場で見ました。
あの男が、里美ちゃんに覆いかぶさっているのを…
里美ちゃん…本当に辛そうでした…」
優子が言う。
その優子に、甘利弁護士が訪ねた。
「本当に、内海哲伸さんが、彼女を襲っていたんですか?」
その問いに、
優子は「はい」と断言した。
甘利弁護士は微笑む。
そして、緒方弁護士の発言が行われるー。
哲伸の有罪は誰が見ても明らかだった。
「甘利弁護士ー、
何かおっしゃることは?」
緒方弁護士に尋ねられる甘利弁護士。
哲伸の父親、内海社長は
甘利が、どんな手段で息子を無罪にしてくれるのか、
楽しみにその様子を見守った。
「---ありません」
内海社長が目を見開く。
甘利弁護士は、何の反論をすることもなくー
公判は終了した。
公判終了後、廊下で内海社長が慌てた様子で言う。
「おい!なんだあのざまは!
言われっぱなしだったじゃないか?」
甘利弁護士の腕をつかんで叫ぶ。
だが、甘利弁護士は笑った。
「心配不要ですー。
”準備は整いました”」
甘利弁護士はそういうと、不気味な笑みを浮かべた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彼はー
憑依能力を持つ弁護士。
自らの魂を分離させて、魂の一部を相手に憑依させることで
その人間の体を操る。
神経を使うから3人が限界だが、
同時に複数の人間の体を操ることもできる。
この能力で、甘利弁護士は、近所の女子高生を毎晩操り、
性におぼれたこともある。
その女子高生はー散々に弄ばれたあと、甘利に解放され、
今は廃人同然になっている。
自分の体と、女子高生の二人を同時に動かして、
性行為を毎晩行ったあの日々は最高だった。
そしてー。
先ほどの心理の際に自分の魂の分裂体を
既に憑依させておいた。
その気になれば、いくらでも操れるー。
憑依して操る間、
彼の視界は、2つの映像が見える。
感覚も二つ。
意図的に、意識を遮断することはできるが、
そうするとボーっと突っ立つだけの人間になってしまう。
周囲から不自然に思われないように操るのは大変だ。
普段は憑依させた魂は眠らせてあるから、
本人はなんてことない、いつも通りの生活を送っているはずだ。
だが、甘利がその気になれば、いつでも体を乗っ取ることができるー
甘利弁護士はー
事件関係者の女性の体に次々と憑依して、
真実を捻じ曲げていく。
甘利弁護士は、一人呟いた。
「真実はーー
捻じ曲げるために ある」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
後日。
第2回の公判が行われた。
お手洗いで手を洗っていた、被害者女性の友人・優子。
「あれ…?」
突然、手に違和感を覚える。
手に、力が入らない。
「何これ・・・?」
優子が不思議そうな顔をしていたその時だった。
頭の中が急激にー
”何かに覆われていく”感触で満たされた。
「ひっ…???
な、、、なに…あ、、、、あ!」
優子が苦しそうな顔を浮かべたーー
が、その直後、
不気味な笑みを浮かべるー
「やった…♡
優子ちゃん…可愛い体…お借りするよ…
くふふふふ♡」
優子がイヤらしい笑みを浮かべて、
自分の胸をチラっと見つめる。
「まあまあだな…」
そう言うと、2、3回、胸を揉んでから、
お手洗いを後にした。
公判が始まった。
甘利弁護士は、優子と自分の体の感触を同時に味わっていた。
自分(甘利)の感触を遮断することもできるが、
そうすると自分の雰囲気が不自然になってしまう。
そのため、同時に体を操っていた。
「--被告人が罪を犯したのは
間違えない事実と思われます」
ピチッとスーツを着た緒方弁護士が言う。
甘利弁護士はじっと、彼女の胸のあたりを見つめていた。
証人として準備している優子も思わず、笑みを浮かべてしまう。
二人同時に操作するのは難しい。
気を抜けば、”優子”の口で喋ろうとしたことを
”甘利(自分)”の口で喋ってしまう危険もある。
だが、甘利弁護士は訓練した。
今ではほぼ完ぺきに操れる。。
優子は座りながら
自分のスカートの中を弄び続けていた。
「ん・・・んふっ…♡」
思わずあふれ出そうになる声を抑える。
「---証人の本村優子さんにお伺いしたい。
彼女が自分から誘ったということはありませんか?」
甘利弁護士が訪ねた。
その質問に応じて、優子は立ち上がった。
少し下着が濡れてしまっているが、大丈夫だろう。
証言台に立った優子は、笑う。
「実はー、
里美ちゃん、ああみえて結構エッチな子なんです」
甘い声で言う優子。
被害者の里美が突然のことに思わず声を出す
「えっ…?な、、何言ってるの?」
そう呟く里美の方を向き、
優子は微笑んだ。
「里美ちゃん、あの日も、夜道で見つけた彼に
自分から近づいて行って、胸を触らせたでしょ?」
優子の言葉の意味が理解できない
「--な、、何…何なの…?」
里美がおびえた様子で言う。
「自分から胸を触らせておいて、笑いながら走って逃げだした。
でも、その途中でやっぱり怖くなって、泣き始めてー
あの監視カメラに映ってた通りのことになった
とんだエロ女よね。」
優子の言葉に緒方弁護士も動揺している。
「本村さんー、なにを言っているの?」
その言葉に、優子は微笑んだ。
「わたしと、里美、エッロイ女なんです。
ホラ、私もこ~んなに濡れちゃってますし!
ふふふ…♡」
法廷で突然スカートをめくって
濡れた下着を見せつける優子。
「や・・・やめてよ優子!
どうしたの!!!変なことしないでよ!」
里美が叫ぶ。
その様子を甘利弁護士はニヤニヤしながら見つめている。
「--私、そんなことー!」
里美が叫ぶと、
突然、優子が大声を出した
「言い逃れすんじゃねぇよ!」
優子とは思えないような怒声に
里美は「ひっ…!?」と声をあげて涙ぐむ。
「---里美ちゃん、あんたが誘ったのよね?
それなのに、あの男の人を悪者にするなんてひどくない?
わたし、アンタを軽蔑するわ!」
優子が敵意むき出しにして言うと、
里美は涙ぐんで黙り込んでしまった。
直後、裁判長が騒ぎをたしなめて
その日の公判は終了になった。
「---ふふふ…♡」
里美が優子を呼びかけるが、
優子はそれを無視してモデルのように歩きながら、
お手洗いへと入っていく。
「---ご苦労様」
優子はそう呟いた。
もちろん、甘利弁護士の意思で。
そしてーーー
「私はーーえっちなことにしか興味のない女ー
えっちのためならー友達も捨てるー」
そう刻み込むように呟く。
脳の思考が”黒い意思”に塗りつぶされるー。
「----クク」
そう呟くと、甘利弁護士は、優子から離脱したー。
”もう、この子に用はないー”
数分後、トイレで目を覚ました優子はー
もう、今までの優子ではなくなっていたー。
甘利弁護士は缶コーヒーを飲みながら廊下を歩く。
悠々自適と。
レッドカーペットの上を歩くかのように。
”今回の裁判の支配者は私だ。
これから第2ステージへと突入するぞ…くくく”
甘利弁護士は一人、ニヤニヤしながら
裁判所の外へと歩いて行った…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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極悪憑依弁護人、甘利弁護士。
明日はどんな憑依を見せてくれるのでしょうか。
続きは明日です!
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